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 2025五島列島


 【夕暮れの小田河原展望台】




陸地に海が入り込んでいる!?
 
 最初の運用地は、奈留島だ。福江港からは高速船で30分ほどである。

福江港を出てフェリーは海上を滑走していくのだが、とても海の上を走っているとは思えないほど波は静かだ。

船は、福江から北方向へ進んでいるのだが、すぐ左手にはずっと陸地(島)が続いていくので、波の静けさと言い、湖の上を滑っていくように感じる。そして湖の上と勘違いしてしまうもう一つの理由は、島々の陸地が複雑に入り組んで、すぐそこまで迫っているからだ。

海と言えば水平線だが、そんなだだっ広さとはまるで異質で、それでいてまたいわゆる静かな内海とも違った雰囲気である。海に陸地が入り込んでいるのではなく、完璧に陸地に海が入り込んでいる印象だ。この印象は、この後福江島に行って更に強くなる。そしてそれが五島独特の美しさを創り出しているように思われるのである。

 左: フェリーは奈留島へ向けて湖のような海を滑走していく
 右: 陸地に入り組む海(福江島 玉之浦)。湖でも河でもありません(笑。



奈留島での運用地はいくつか目星をつけているが、メインの運用地は、舅ヶ島海水浴場(しゅうとがしまかいすいよくじょう)である。五島から本州方向のQSOを狙うには、原則東側に海が開けた海岸沿いということになる。奈留島は南北に伸びた島で、日本の島ならごく当たり前の光景だが、この島も山が海まで迫っているので、QRVポイントは自然と限られることになる。したがって東側に開けた、この海水浴場は、運用と景色を楽しみながらのんびりと時間を過ごせるという意味で、貴重なQRV好適地ということになる。


木曜日の夕方、誰もいない浜辺で、運用を開始してみる。寄せては返す波を見ながら、ゆったりと時間を過ごすには、やはり両手が自由になるポータブル機に限る。手頃な石の上にSR-01Xを展開、ボツっと電源を入れると受信音のほかに聞こえてくるのは波の音だけだ。

QSOは、みやぎSA33局から始まる。イバラキAB399局、ふくしまBB29局、トチギCD125局・・・・と続いていく。どうやら、7エリア~関東北部あたりとパスができているようだ。海水浴シーズンでもない、海水浴場の夕方、しかも木曜日・・・誰一人とやってくる人もいない。そもそもここは最も近くの民家・・・それも2、3軒ほどしかないが・・・まで100m以上ある島の南端に近い場所だ、人通りなどないのである。

運用は適当に切り上げ、島の夕景色を眺めに展望台に登ってみる。展望台でボケーっと景色を眺めていると、時間の経過とともに斜めになった光が徐々に色を帯びてくる。ただ、思ったほどには赤くはならないようだ。それでも、向こうに小さな灯台が見える湖のような瀬戸を、やや赤みががった景色にゆっくりと染めていく。

夕陽は熟れていく。

思い出すそばから葬られるのはヒメジョオンと一緒にある「彼」の記憶だが、あれは川向こうの町からやってくる宵闇だ(謎。

陸に海が入り込んでいるだけに、すくなくとも、ここでは、夕陽も山に沈んでいくようだ。


  奈留瀬戸(左)と、宵先の大串集落(右)



 
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