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 2025南大東島


 【陽は沈んでいった: 北港の宵先】




北港の夜
 
 金曜日、夕暮れから宵先にかけて北港で一人、QRVしていると、隣におじさん(おじいさん)がやってきて、話しかけてくる。コンディションがそこそこ上がってきているようなので、本当はおしゃべりをしている場合ではないのだが、無線機をOFFにして結局1時間近くしゃべり込んでしまう。

おじさんは、当局が釣りをやっているものと思ったらしい。もちろんこちらは同じ「ロッド」でも釣り竿ではなく、ロッドアンテナだ。岸壁で11mをやっている時によく勘違いされるパターンだ。

おじさんは、当局が「底もの」を狙って夜釣りにきたものと思ったようだ。「底もの」というぐらいだから、海底近くにいる魚ぐらいのことはわかるが、何が釣れるのか???いろいろと名前を教えてくれるのだが、方言のせいかよく頭に入ってこない(笑。ここでは基本的には赤や黄色の鮮やかな魚が多いらしく、刺身にするとおいしいのだという。ただ鮮度の関係上、自家消費ぐらいで、島外まで出回ることはないのだという。

今夜は半月に近い月明かり。ただ、底ものは、新月の真っ暗闇の時にねらうのが基本なのだという。あるいは、月が出る夜であれば、月の出や月の入りの時刻に狙うのだという。

どうも、月夜の晩にたった一人で「ロッド」を操る当局を見つけて、そんなことをアドバイスしに隣にやってきたようだ。
「もっと月がなくならいとダメだね。」
この時間だと、あと一週間ぐらいしないと月の光は底ものには向かないらしい。


おじさんは、当局がただ無線だけをやりにこの島に来たことが不思議らしい。
「まあ、観光するような場所はほとんどないからね~」と笑う。
「でも、星空はすごいよ。今日は月で余り見えないけど。」

今日でさえ、当局にとってはかなりの星空なのだが・・・。実際、街灯のようなものはまったくないが、半月だというのに月明りであたりは明るく、おじさんの顔もよく見える。都会で暮らしているだけでは想像できない明るさだ。

星空が奇麗なのは、ここに来るのは初めてではないのでよく知っている。
「新月の時は星影もいけますかね~」と当局が冗談半分に尋ねると、「そこまではね~、どうだろう」と笑う。

おじさんは、太陽が沈む間際のグリーンフラッシュも見たことがあるし、スターリンクの人工衛星が群れて飛んでくるのも見たことがあるという。
「沈んだ太陽の光がうまく反射するとね・・・最初はUFOかと思ったよ。」

おじさんは、これまでの人生でいろいろなことをやられていたようで、無線も一時期齧られていたらしい。
「(やっていたのは)SSBね。でも、この島ダメなのよ、電波が・・・スキップしちゃって。」
向こうからはたくさん飛んでくるのだが、こちらからは、スキップしてしまって、なかなか難しいのだという。もっとも、「スキップ」ということば、なかなか出てこなかったので、当局がフォローした言葉だ。しかし、まるで当局の今日の電波そのものだ(笑。

島の中心部には、大きなタワーに大小の八木とループアンテナなどを備えた、すぐに目につくアマチュア局があるのだが、その方のことも知っているらしい。以前からそこには、アマチュア局がおられたらしいが、仕事を引退して7、8年前に新たに外からやって来られた方が一部設備を引き継ぐなどして、運用されているようだ。




北港では、土曜日も日曜日も夕方からQRVしてみるが、今シリーズでは結果的に夕方~夜の時間帯につながった局長さんは相対的に少ない。

気合を入れていないことももちろんあるが、特に日曜日は夕方から近距離が発生していたので、バンド内は大混信大会、当局はほとんど黙って聴いていただけだ。

近距離が終わって、夜になると、8Chは静まり返った。こっそりCQを出してみると、かながわCU64局だけには見つかってしまったようだ(笑。すぐさま強力な応答が返ってくる。

やはりまだまだ聞いておられる局がおられるようだ。







 
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