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 2024飛島








宵から夜へ


 島では、もちろん公共の移動手段はない。その代わり観光用に酒田市がレンタサイクルを用意してくれており、無料で利用可能だ。

島は南北に細長く、人々が住んでいるのは北端部と、東側の海岸沿いだけである。道路としてはこの東海岸沿い、つまり標高の最も低い場所から、島の中心部、つまり最も高い場所を通るような長楕円形で、島をほぼ一周できるような形になっている。ただし、東海岸側から中心部側へ這い上がるには、かなりの坂道になるので普通の自転車ではそれなりの覚悟が必要だ。台数は限定されるが、パワーアシスト式自転車もレンタル(有料)であるので、そちらの選択肢もある。


島の南端には、「飛島海水浴場」があり、フェリー乗り場からもすぐそこだ。南端ということで南に海が開けているので、QRVポイントとして狙っていた場所の一つである。入り江にはウミネコの一大繁殖地があり、小島ひとつすべてを埋め尽くすほどの数だ。いったい何羽いるのか想像もつかない。QRVするには、少々鳴き声がうるさいくらいである。

初日の夕方、この海水浴場の浜辺でCQを出してみる。どうも相変わらずコンディションは悪いようだ。時たま出すCQはどれも空振りだが、唯一、アキタSS229局からコールが入ってくる。信号の感じは明らかにグランドウェーブだ。

SS229局と言えば、5月26日に千葉県の磯笛公園(南房総市)からQRVした時につながったのがすぐに思い起こされる。当局はもともとアクティビティが低いので、QSOした局をすぐに思い出せるのが、唯一のメリットだ(笑。


   飛島海水浴場



SS229局は仕事帰りだそうで、国道を走行中に当局のCQが飛び込んできたので車を停めてでていただいたようである。ちょうど山形と秋田の県境辺りらしいが、こちらのロケは陸地側(国道側)にはあまりロケが良くないのだが、それでも55で入ってくる。こうしてローカルの局長さん、それもつい先日EsQSOさせていただいた局長さんとグランドウェーブでお話しできるのはうれしい限りである。


夕方から夜にかけての時間というのは、どうしても宿の近くでのQRVということになる。島には基本的に外食できる場所はないので、必ず宿で夕食を摂る必要があるからである。朝食も同様だ。

どこへ行ってもコンディションが上がる時間帯は、朝夕がほとんどなので、したがって、どこでどのように朝・夕食をとるのかあらかじめ計算に入れておくのは離島運用ではイロハのイである。当局がお世話になっている旅館のすぐ目の前は漁港になっているのでその点は便利だ。部屋を出て、1分もかからずにQRV可能である。

特に防波堤の上はそよそよと風が吹いているので、横になって海を眺めながらワッチするにはうってつけの場所である。今日も出だしはB73局、そしてくまもとDX55局、4エリアへ移ってヤマグチTS118局などが入感してくる。とっとりAJ683 局とも久々のQSOだ。夕方も、薄い反射がメインのようで、4エリアから東にはなかなかつながらない。

たまたま偶然なのだろうが、ここに来てからというもの、島全体に海が静かだ。これまでいろいろな離島で運用を行ってきたが、これほど海の音を感じない場所は珍しい。漁港の岸壁の上に立っていても、防波堤の壁の上に立っても、潮騒やら波が砕けるような音はなぜか何も聞こえてこない。

夕食後、87Rを片手にモニターを続けていると、夕映えを残した空に、防波堤の街灯が輝き出した。

 



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