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 2023硫黄島3島MM



 【南硫黄島】



準備は整った!


 朝4:10分、丸窓の外を眺めてみると、ぼーっと1点だけ明りのようなものが遠くに見える。硫黄島の明りである。船は硫黄島の東側にさしかかったようだ。父島の二見港を出たのは、昨晩の19時、かれこれ9時間ちょっとである。

硫黄島3島クルーズは、南硫黄島⇒硫黄島⇒北硫黄島の順に、南から巡回する。船は一旦硫黄島の南東側を通過し、最初に一番南にある南硫黄島に向かうのである。クルーズのしおりによれば、父島から南硫黄島まで333Kmの道のりである。

南硫黄島到着予定時刻は7月1日6時、到着後は島の周りを反時計回りに2周、周回する。こちらはもちろん、到着前から既に準備万端だ。5時20分くらいから87Rで定期的にCQを飛ばし始める・・・もちろん入感はない(笑。違法が聞こえるわけでもなければ、ホニャラが聞こえるわけでもない、バンド内はスカッとさわやかコカ・コーラ状態が続いている。つまり、源静香ちゃんだ。

船上ではポータブル機では周りに迷惑がかかる可能性もあるので、87Rのようなハンディ機でのQRVが必須だ。しかも当局の場合は、こそっと?ゲリラ運用である。「定期的」という意味合いもそこにある。コンディションは聞けばすぐにわかるので、上がっていなければCQ3回、アンテナを伸ばしている時間はせいぜい2~3分程度である。

もっとも、クルーズの乗船客の多くは、バードウォッチング、ホエールウォッチング等のウォッチング系の方々なので、船側のデッキには所狭しと望遠鏡クラスの大型レンズをつけたカメラの三脚がずらりと林立することになる。それに比べれば、87Rで離れたところからこそっとやる分には、見方によってはその方が他人に迷惑がかかる可能性ははるかに低いともいえる。それにしても、世の中に珍しい海鳥やクジラを熱心に撮影しようとする方々がこれほど多かったとは新鮮な驚きだ。



  4:50 一日が始まる    一旦硫黄島の南東を通過。
  擂鉢山も見える。
 朝日を浴びた南硫黄島が近づいてきた 



6時、船は予定通り南硫黄島に到達する。一旦停船状態となり、微速前進に変わったようだ。島をよく観察してもらうためだろう。それにしても、この大きな船体で、ここまで接近してくれるとは・・・船長さん、ありがとう(笑。島の海岸まで500m、水深は20m内外のところを進んでいるらしい。安全マージンも考慮していることを考えると、何気に高度な技術と思われる。しかも、南硫黄島の場合、海から直立するように島が形成されているので、さぞかし海辺から急峻に深くなっているのだろうという、我々素人の予測とは全く反対に、海辺からはずっと浅瀬になっているのだという。

南硫黄島は、他の硫黄島もそうだが、なかなか映像で見るチャンスはない。しかし、最近では、たまたま先月(6月)、NHKの「東京ロストワールド 秘島探検の全記録」という番組の中で、孀婦岩とともに、上陸調査の様子が再放映されていたので、ご覧になられた方もおられるかもしれない。前述の通り、歴史的に定住者のいない、全くの自然状態の島なので、孤立した生態系の中で生物も特異な進化を遂げているようだ。(孀婦岩は、伊豆諸島の最南端、太平洋上に突如突き出た100m程のタワー状の岩。)


南硫黄島は、外形上は南北、東西それぞれ2Kmほど、島の最高部は916mという、海面からほぼ断崖状に三角形に突き出たような島である。トカラ列島悪石島の運用記でも記したように、最高標高地点が最も低い都道府県は千葉県で、408m、二番目が沖縄県で、526mである。つまり、この島の半分にも満たない高さの幅の中に、千葉県全部の最も低い場所から高い場所までがすっぽり入っていることになる。この916m、奥多摩のそこそこの山と同じぐらいの高さなので、東京都内でもかなり高い部類に入る。無線的スーパーロケの日の出山(902m)などよりは高いということになる。



島への到達前からゲリラ運用は続けているが、唯一の誤算は、到達後だ。島の周回中に船内放送でガイド(島の解説)が入るとは聞いてはいたが、これが周回中の1時間以上に渡って、船上、船内のスピーカーで続くのである。せいぜい20分程度で終わるのだろう、あとはQRVに回そうと勝手に思い込んでいたのだが・・・こいつは、うっかり八兵衛だ。

しかも、幸か不幸か、聴いているとこの解説が面白い(笑。島の植生や生物、島の成り立ちなどの地形学的説明、船の周りを実際に飛んでいる、ここでしか見られない?鳥の解説などなど・・・。また、実際に上陸して学術調査に加わった専門家からの解説も入るので、ライブ感満載でついつい聞き入ってしまうのである。

ということで、島の周回中=解説が入っている間は、ワッチもCQも一切QRVなし、ということに決める。つまりアンテナはたたんだまま、スイッチオフである。事前の運用の「お知らせ」では、周回中にQRVするようなお知らせになっていましたが、解説が流れている間にへらへら「CQ、CQ・・・」でもないだろうと判断しましたので、QRV予定時間の齟齬についてはお詫びいたします。(以下、硫黄島、北硫黄島も同様)

念のために付け加えると、島の周回中は乗客は島が見える側の船側のデッキに集結してしまうので反対側の船側には人っ子一人いなくなることや(=つまりQSOで周りに迷惑がかかる可能性は完全にゼロ)、解説はスピーカーから流れてくるだけで、QRVできないほどの音量でもないので、QRVは十分可能ではある。




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