そよ風
由布島は、西表島側から遠浅の海を500mほど渡ったところにある島である。歩いても渡れるが、ここには牛車(ぎっしゃ)ならぬ、水牛車が渡しのために往き来しており、ひとつの観光名所にもなっている。当局の目的はもちろん観光ではない。本土方向に海が開けた、島の東北部のビーチからQSOを狙うためである。
折りたたみ椅子2個、ICB-770kai、87R、リチウムイオン電池、ペットボトル2本、その他諸々を詰め込んだ、おおよそ観光地に似つかわしくない、重くて大きなバッグを肩から下げ、全体が植物園?になっている島を通り抜け、ビーチへと一直線に向かう。ビーチは干潮のせいか、ただでさえ遠浅の海が、更にどこまでも歩いていけそうなほど、平坦だ。
浜辺の椅子にセットした770kaiからは、相変わらずコンディションが良い時の、ピュルルン系ノイズが激しく踊っている。時々ホニャラが入感してくるが、本土の違法の入感はなく無線の信号らしきものは、ほとんど聞こえてこない。
11:30も過ぎ、そろそろ早めのお昼休み運用に入った局が聞こえてきてもよさそうだが、聞こえてくるのはピュルルンのみ。コンディションは良さげだが、気合を入れたCQはどれも空振りだ。由布島に渡る直前に、しずおかDD23局とは、2回目のQSOができていたが、コンディションは落ちてしまったのか?
ピュルルン系ノイズが好調にも係らず、違法が聞こえないということは、本土方面とはほとんど薄いつながりだと思われた。5Chでは去年南大東島で聞こえたのと同じ、ネイティブ英語のCB波が入感してくる。う~ん、ということは、南には開けているが、北方向(本土方向)には開けていないということか?
本土各局は基本的に「昼休み」運用なので、交信できる時間は限られている。あきらめずにCQを出していると、突然再びしずおかDD23局(迎撃のため常待機中)とつながり、続いてカゴシマSS167局ともつながる。どうもお空の状況がよくわからない。ただ、8Chでは、ようやく合法局が2、3局、聞き取れるか聞き取れないかぐらいの強さで瞬間入感するようになっていた。残るは、あと20~30分の勝負だ。
浜辺で運用していると、そよそよと常に風が吹いてくる。扇風機にたとえると、「微風」と「1」の中間程度の心地よい風だ。しかも時折、生ぬるい風ばかりだけでなく、ひんやりとした風の塊が、背中とTシャツの間を通り過ぎていくから不思議だ。
沖縄は八重山はもとより本島も含めて確かに南国だが、よく知られているように、夏の日中の最高気温は30℃から32℃、とりたてて暑い日でもせいぜい35℃くらいまでしか上がらない。したがって、真夏は沖縄より本土の方がはるかに「気温」は高い。しかし、日差しの強さは本土の比ではない。とにかく直射日光の紫外線が強いビーチの炎天下などでは、この風がなかったら何時間もQRVすることなどとても不可能である。石垣島のタクシーのオジサンによると、この風が止むと本格的な夏がやってくるのだという。一方、西表島のレンタカー屋さんのオニイサンに聞くと、この風は一年中吹いているそうで、冬場は特に北からの風が強くなるのだ言う。
13時を回り、昼休み時間が過ぎると、ピュルルン系ノイズもおさまり、バンド内は静かになり始める。さきほどから「ビクター」ステーションが断片的に聞こえていたが、アイチDV65局だった。何度かやりとりするうち、ようやくQSOを完了することができた。QSBというより、入感の仕方が瞬間的な場合が多いのである。
結局昼の時間帯でつながったのは、しずおかDD23局を入れて3局のみである。
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水牛車水牛は文句ひとつ言わず、黙々と働く。 |
マーハル・ジェラート西表島手作りアイス。かぼちゃ味。ほどよい甘さだ。ビーチ脇のお店のお客さんは 当局一人のみ。 |
遠浅後ろに小浜島が見える。海はどこまでも平坦。 |
(QSO局は最終ページにまとめて掲載しています。)
© Nagoya YK221
2011沖縄