レールの音を、わすれてました。
尾幌にて
高校のクラスメートの親友が北大に進学していたので、毎年遊びに行っていた。進学した最初の夏もそうだ。その札幌の友人を根城にあちこち道内を回っていた分けだが、確か、稚内へ旅立つときだ。『汽車の時間はどうなっているんだ?』と聞いてくる。何を言ってるんだ、SLじゃぁあるまいし、と思ったのもつかの間、得意げに笑みをたたえて畳み掛けてくる。『北海道ではなぁ、電車は「気車」って言うんだ、気動車だからな。SLじゃぁないぞ。』
生まれてこの方、レールの上を走ってくる箱型の輸送車両はすべて「電車」と呼んでいた当局にとってこれはかなり衝撃的だった(笑。しかし、ディーゼルで走るのだから、気車と呼ぶのは当たり前のことだ。夏目漱石の『坊っちゃん』の主人公が陶器はすべて「せともの」と思っていたのと同じようなものだ。同様に「せともの」は陶器をさすものと思っていた当局もその昔、これを読んだときは坊っちゃんの主人公と同様の衝撃を受けた(笑。気車はそれに匹敵するぐらいの衝撃だった(笑。
根室線尾幌駅。一日にやってくる気車の本数は7本程度(片方向)。間隔が5時間も3時間も空く時間帯がある。平日この駅から乗る乗客の数は平均11.0人。それでも尾幌は比較的厚岸の街に近いので、更に乗降客の少ない他の根室線の駅に比べれば未だましなほうだ。同じ根室線の初田牛駅は0.2人なので、10日間ぐらい観察していると、乗る人が2人ぐらいやってくるということだろうか。昨年の運用では、全くの偶然で初田牛駅に立ち寄ったのだが、この駅が日本全国の到達難易度が高い秘境駅ランキングのベスト10に入っていたことなど全く知らなかった。
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右):この列車には二人乗客が乗り込んでいく |
この尾幌「駅前」には砂利敷きの車の回転スペースがあり、ちょっとしたロータリーのようだ。もちろん人は誰も居ない。87Rを片手に、ようやく雲の取れた青空にアンテナを伸ばしてみる。しかしこの場所はどうも人工ノイズが多くて使い物になりそうにないようだ。今朝は厚岸の港から結構な数の局長さんとQSOできていた。それからかなり時間が経っているが、それでもEs局はこの陸地でも小さめながら入感はやんでいない。もうこうなるとEsも、Sporadicではなく、単純なE層という言葉の方がふさわしいような感じだ。それとも今年の夏だけが異常なのか??
ところで、なぜ尾幌なのか?別にここは海が近いわけでも何でもない、何の変哲もない集落だ。木曜の晩にここのセブンイレブンに立ち寄ったことは前述の通りだが、それ以来、集落に一軒しかないお店とも思えるようなこのコンビニがなんとはなしに気になっており、厚岸から釧路湿原に向かう途中、再び立ち寄ってみたくなったのだ。
昼間に来てみると、夜の人気のなさとは対照的にかなりのお客さんがやってくる。これなら経営は大丈夫そうだ(笑。ただ、しゃきしゃきとした働き振りと、接客振りのあの女性は、この時間は勤務時間外のようだ。
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