[19:20過ぎ、陽は沈んでいく。]


驚異のグレーライン

水納島から戻ってからは、再びふるさと海浜公園でのQRVだ。ここはいつも風がそよそよと吹いているし、ベンチの脇に車を止めて車の中から涼みながらのワッチが可能だ。もちろん707はベンチの上である。

時計は16時、17時、18時・・・と回るが707は沈黙したままだ。もちろんこちらからもベンチに座って定期的に電波を発砲しているのだが、皆目応答がない。向こうから聞こえてこないので応答がないのも当然ではある。

19時になった。今日最後の交信から既に10時間近くが経過している。ノイズも極めて静か、コンディションのかけらも感じられない。既に完全なあきらめモードだ。水平線の上に回り始めた夕日を見ながら撤収時刻を考える。八重山や先島でコンディションが上がるのは基本的には朝方と夕方の二つに限られる。19時になっても上がってこないということは、これ以上待っても再びコンディションが上がることはない。もう宿に引き上げてしまおうかとも思うのだが、そうはいかない。運用3日目だが、まだ交信できていない局長さんが何局かあることを当局は知っていたからである。わざわざ当局との交信を狙っていただいているのに、今やめてしまってはそれらの局長さんに失礼だ。コンディションには関係なしに20時までキッチリやって帰ることにする。

とはいっても暇なので、今度は87Rを聞きながら、浜辺に座り込んで沈んでいく夕日を黙って?鑑賞してみることにする(笑。空気の加減か、昨日より夕陽の形が明確だ。

 陽も沈んだ。あたりも暗くなってくる。
そろそろ車に戻り、最後のワッチ&
CQの時間がはじまる。

夕陽は何事もなく沈んで行った(笑。あたりも緩やかに明るさを失い始める。そよそよと吹く浜辺の風が一層心地よく感じられる。

すごすごと車の脇に戻り、最後にCQだけ飛ばそうと87Rを口元に構えると、驚いたことに、何やらEsらしき信号がかすかにかすってくる感じだ。???。スイッチを切り忘れたベンチの707からも同じ信号が聞こえてくるので錯覚ではない。固唾をのんで聞いていると、QSBに乗って、誰かのCQが聞こえてくる。なんと、いわてDE69局だ。こんなところでDE69局のCQを聞けるとは思ってもみなかった(笑。DE69局とは2年前の早池峰山からのQSOが印象的だ。しかし、しばらく応答してみるが反応はない。こちらからのCQに切り替えるとDE69 局からコールがかかる。51QSB/51。今まで全く聞こえてこなかった7エリアが、突如として浮き上がってきた。

これは!!!と勢いに乗って再び浜辺に駆け下り、87RでCQの連発体制に入る。するとすぐにイワテAA169局から応答がある。RS53/54。「QSBも全くなく、まるでローカルQSOのようですね~。」と言われるAA169局の信号は、そのままずっとQSOできそうな、確かにローカルQSOの聞こえ方だ。AA169局と会話を交わすのも早池峰山頂での偶然のアイボール以来で、久しぶりに声が聞けたのが多良間島からのEsというのは感激だ。それにしてもこのコンディションの急変ぶりはどうだろう。日没前どころか、さきほどのDE69局の時からも急上昇している。昨日も日没後まで運用していたが、全くこんなことはなかった。

ところが大変なのはその後だった。コンディション急上昇で、360度あちこちから電波が飛来してくる。ピュルピュルから、ザーザー?音、中国語系やらホニャラまで、ありとあらゆる信号がにょきにょきと湧き上がってくる。Sメーターは常に5ぐらいまでをびゅんびゅん行ったりきたりだ。さっきまで全く音なしの構えだったのが本当にうそのようだ。

当局からの信号は異様に強く飛んでいるようで、いたばしAB303局やカナガワAC288局などから返ってくるレポートは55~58だ。ただ、こちらに入感してくる信号はそれほど強くはない。まさしくノイズとの戦いである。この時間でもまだ運用局はたくさん出ておられるようで、同時に数局から呼んでいただくのだが、ほとんどピックアップできない。7エリアからもさっきから何局かが呼んでくれているのだが、耳フィルターを最大限に発揮しても、「交信」は極めて難しい。向こうは完全オールコピーの雰囲気だが、こちらは大変だ。いわてCA29局や、フクシマHO723局、にいがたBG69局などとは何度かやりとりしてQSOに成功する。

日没から30分、40分経ってもこの状態が続く。すでにQSOできているサイタマKM117局が、ありがたいことに所沢から2回目のコールをしてくれる。なぜありがたいかと言えば、2回コールいただくと、向こう側の状況変化が把握できるからである。1回目は2年前と同じく「山のほうでもよろしく~」と手短にQSOを終えざるを得なかったのだが、2回目は54とこちらにも強力だ。ただノイズの状況は変わらない。「こちらのコンディションはノイズとの戦いですよ~。」と思わずKM117局に叫んでしまう。

しかし日没から1時間になると今度は逆にコンディションは急降下、ノイズもうそのように影を潜め始める。20:30分のサイタマAB847局とのQSOを最後に、こちらからのCQにも反応はなくなり、元の「静かな8Ch」へと戻っていく。やはり日没一時間までがグレーラインの効力の範囲なのか?

グレーラインと言えば、2年前の西表島から、知床のいたばしAB303局さんとの交信を思い起こす。今回は、グレーラインを利用しようとか、日没前後のDXを狙おうとか、たいそうなことを考えていたわけではなく、たまたま20時まで運用しようとしただけである。しかしこんな面白い体験ができたのは実にラッキーだ。



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(QSO局は最終ページにまとめて掲載しています。)


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