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   オロロンラインⅢ





穏やかな時間 


 本当の朝(笑)になってから、115でQRVを開始する。場所は、「こうほねの家」と呼ばれるレストハウス前の海岸だ。この辺りは利尻に最も近いので、目の前には文字通り、利尻富士がどでんと構えている。海辺に沿って遊歩道もあり、しかもQRVするにはおあつらえ向きのテーブル上の真っ平な石がいくつも並んでいるのである。

スイッチオンとともに、YL局の華やいだ声が、ひとり入感してくる。ヤマグチFS703局だ。「お~いきなり山口県か」、と幸先はよいのだが、コンディションのせいか、時間が早いせいか、8Chはまだガラガラだ。しばらくワッチを続けるが、唯一強力入感してくるのが、とやまRF87局だ。RF87局は海沿いにいるわけではないとは思うのだが、ここはなんとなく9エリア方面の海とは相性がよさそうな感じだ。その後もずっと聞こえてくる。それでも1エリアとも52程度では交信可能なようではある。ここでももちろん、「どこでもドア」のB73/6局とは53でつながる。





このロケでは交信数はあまり増えないが、それは当初の見立て通りである。

当局の経験則に基づく『間違いだらけのロケ選び』によれば(笑、同じ水辺でも大きな石がゴロゴロした海岸は砂浜に比べて飛び受けが落ちるのである。さらに、この海岸線の延長線上の海側には本州はない。つまり、本州とのパスは陸地がかかるので、最初からこのロケには期待していないのである。ここは少し舗道を先に進めば、石が途切れて砂浜でQRVすることも可能だが、今日はあえてそれもしない。今ここにいるのは、あくせくとQSOするためではなく、のんびりQRVするのが目的なので、このスポットと言い、コンディションと言い、むしろちょうどよい感じなのである。

なお、『間違いだらけのロケ選び』は、それ自体が間違いだらけなので、ほとんど信用しない方がいい。




利尻は朝の、淡い光を受けて、ずっと穏やかな表情だ。波は静かに、利尻富士の斜面に残った雪筋をゆるやかに反射させる。

のんびり利尻富士を眺めつつ、たまにCQを出してみると、今度はガツンとコールが入ってくる。おやおや、これはどうみてもグランドウェーブの信号だ。しかし目の前は海だけ、はて、どこから飛んできたのだろうと思っていると、コールいただいたのは、礼文島がホームの、れぶんQA9局だ。当局は海抜ゼロメートル、間には50Kmぐらい?の海を挟んでいるはずだが、55と強力だ。

まさか、QA9局とグランドウェーブでガツンとつながるとは思ってもいなかったので、これは大きな収穫(笑、このタイミングで出ていただいたQA9局には感謝である。







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