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   坂の小径 (陽殖園)





陽殖園にて 


 入り口で受け取った、クマよけの鈴のついたベルトをつけて、園内の細い道を右に曲がっていくと緩やかな坂が待っている。その左側には、花の名前は分からないのだが、紫や黄色、白い草花が咲き乱れているのだ。自然とも違う、人工とも違うその道筋の花の在り方こそが、高橋武市さんが67年間にわたって創り上げてきた、芸術作品なのだといえるのかもしれない。

当局が陽殖園を知ったのは、放映されていたNHKのEテレの番組を、たまたま見たことだ。ハーブ研究家でもあるベニシア・スタンリー・スミスさんが、高橋武市さんを訪れ、園内を散歩する。ベニシアさんは、この庭園にいたく感銘されていたようだが、ベニシアさん自身は、日本に長年住んでおられるものの、祖父が子爵であったという、英国貴族の血の流れを汲む英国人である。自然の景観美を追求する英国式庭園に代表される、英国人が伝統的に持っている美意識のようなものとは、どこかの部分で相通ずるものがあるのかもしれない。もっとも、陽殖園の方は、なんらかの様式美や庭園技法とは更にかけ離れた、見た目にはほぼ自然の状態に近い「庭園」ではある。



もともと親から受け継いだ土地を、一山丸ごと庭園にしてしまったという園は、面積8万㎡、園内の通路はのべ4,600mに及ぶ。2時間ほどかけてゆっくり回ってみたものの、まだまだ見足りない感が強い。というより、季節それぞれ、さらには一月ごとに、咲く花が異なるので、時季を変えて何度も足を運ばないと、この園の魅力を本当に理解したことにはならないだろう。

朝10時ちょうどに一緒に入ったおばさんは、足寄から来られたらしいが、今日は下見で、これから何度も来るつもりだという。実際、そういう人が多いのだろう。

それにしても67年間もの間、ぶれることもなく一つの信念を貫き通せる原動力はなんなのか? あらためてそのことに思いを巡らせるとき、この園への興味は余計に深まるのである。

朝10時の開園と同時に入園したので、園主である高橋さんご本人が出迎えてくれたので、本当はもっといろいろと話を伺っておけばよかったと今頃になって思うのだが、後の祭りである。次回は勇気をもっていろいろと尋ねてみよう(笑。



飛行機までは、時間的に少し余裕があるので、旭川空港から美瑛町まで少し足を延ばしてみる。陽殖園を後にした昼すぎからは天気がくずれ、雨が降ったりやんだりだ。

美瑛の丘に立ち、87Rを点灯してみる。するといきなり、しずおかDD23局の声が飛び込んでくる(笑。時刻はまだ16時、こんな中途半端な時間にQRVされているとは・・・。たまたま短時間QRVされたようだが、しかし、なんともはや、何と言ったらいいかわからないほどグッドタイミングだ。当局が発した「ポータブル8」にびっくりされているのだが、ご本人曰く、当局は昨日のうちに東京に戻っているものと勘違いされていたようだ(笑。昨日は日曜だったので無理もない。

それにしてもQSO終了と同時に雨が本降りになってしまった。全身濡れネズミになる前に1局だけで終了、今回もDD23局が締めくくりだ。ひょっとして、赤い糸で結ばれてしまっているのかもしれない(笑。


218QSO、各局TNX!!         (2022/7/18)

(文中敬称略)






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