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   周回路にて





湿原より 


 おそらく下界の雨竜町は快晴なのだろうが、湿原上空にはガスがかかっている。標高は850m程度だが、海にほど近い山岳域なので、雲やガスがかかりやすいのだろう。

雨竜沼湿原は、全体としては、登山口から湿原入り口にある「湿原テラス」までのアクセスが3.5Kmほど、湿原内は1周4Kmほどの周回路が設定されているという構成になっている。木道の周回路は狭いので、時計回りに一方通行になっている。入り口から見て、折り返し点にあたる最奥側の周回路上からは、南暑寒岳(1,296m)、そしてさらにその奥、暑寒別岳(1,492m)へと登山道が延びており、周回路から500mほど登った登山道の途中には湿原全体が見渡せる見晴らし台もある。登山道では熊の危険性があるため、早朝などは湿原や南暑寒岳方面へは上がらないようにという注意喚起もなされている。

湿原テラスから木道を進んでいくと、右に左に池塘がすぐ手の届くところまで、思わず水に触れたくなる程に存在感を放っている。水面は鏡のように研ぎ澄まされている。自分の膝ぐらいの高さに水面が見えるというのも新鮮な感覚だ。

最初はガスがかかっていた湿原だが、周回しているうちに徐々に落ちてくる光が増してくる。もっともガスっているうちからかなり明るかったのだが・・・。



それにしても、どこに行ってもエゾカンゾウの咲きぶりが実に見事だ。木道の右左、池塘の脇、そして湿原の中など、至る所に咲き乱れている。まさか、ここまで群生しているとは・・・。はるかに想像を超えている。

お花畑の中で過ぎていく至福のひととき(笑。誰に感謝したらよいのか分からないが、とにかく感謝である(笑。

周回路上の景色を堪能しつつ、数少ないハイカーの3倍ほど時間をかけて一周してくると、さらに下りてくる日差しの時間が長くなってくる。すると湿原は一層輝きをましてくる。いい感じだ(笑。普段は湿原全体が見渡せるであろう展望台まで足を延ばした時は、ガスがかかっていて半分くらいしか見えなかったが、湿原テラスまで戻ってくると、さっきはガスがかかっていた南暑寒岳、暑寒別岳の斜面も見えてくる。まだ雪が残っているようだ。



まだ雪が残る南暑寒岳(左)と
暑寒別岳(右)。
黄色い点々はエゾカンゾウ

「湿原テラス」では、ハイカーが2、3人ほど休んでいるが、もともとやってくるハイカー自体がかなり少ない。この広い湿原全体でも、いるのはおそらく十数人程度だろう。それでもやってくるハイカーに迷惑をかけることがあってはいけない。テラスからかなり離れた場所で、ごく短時間、87RでQRVさせてもらうことにする。

コンディションは薄~く上がっている感じか? B73/6局のCQがQSBに乗って弱~く聞こえてくる程度だ。それでも一応CQを出してみると、なごやCE79局から応答が入ってくる。今日は休みを取られて、三重県志摩市まで移動して、QRVされているようだ。んんん?「休みを取って」???。確かにそう言われたが、妙な違和感だ。自分がすっかり天国のような花園でくつろいでいるので、完全に休日の気分でいたが、そういえば今日はまだ金曜日だった(笑。


CE79局に続いて、さきほどCQが聞こえていたB73局からもコールが入ってくる。B73局とは、3週間前、南の徳之島から、今日は北海道の雨竜町から、日本全国どこに行ってもいつでもどこでもつながるのがB73局のようだ。

インターバルを挟んで、とうきょうMS25局、おおさかTK27 局と続くが、このあたりで打ち止めにしないといけない。この静寂な湿原をこれ以上汚してはならないのである。







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 2022 雨竜沼湿原