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[落石岬灯台]




『植生の調査か何かですか?』


『いえ個人的な趣味なんです』・・・。二十歳そこそこのその女性は、少し恥ずかしそうに言う。

その女性は、当局がゲート前でSR-01にかじりついて運用している時、遥か昔に当局の背中を通り過ぎていったのだが、灯台へは当局が後から追い越し、そして早くついていた。到着して30分ぐらいしてから、のんびりと運用を始めていると、やがて彼女もやってくる。わずか15分くらいの道のりを、彼女は1時間半以上かけて歩いているのである。

なぜ、そんなに時間がかかるのか?300ミリぐらいのレンズの一眼レフを首からぶら下げ、ナップザック姿の彼女は、ひとつの場所で10分~20分たたずみ、そしてかがみこみ、植物を観察?しているのである。市の学芸員か、植生調査にやってきた専門の大学生ではないのか、というのが当局の最初の推論だった。世の中にはひとつの場所で、2時間も3時間もハンディ無線機にかじりついている、物好きなオッサンもいるが(=当局)、草花をこれだけ熱心に観察している人は未だかつて見たことがない。

 

落石岬灯台、ここがかねてから来たかった場所だ。霧は既に晴れているが、幸運なことに、白く薄くなった雲からは、かなりの光が漏れてくる。しばらくすると、ほんの時々雲間から青空も垣間見えるほどだ。断崖の下からは波の砕ける音も聞こえてくる。のぞき込んでみると、水しぶきが常に霧のように漂い、明るく届き始めた光を反射させるのである。丘の向こうには一本、エゾアカマツが見える。

無線をするにはもったいない場所なので、しばらく空気を満喫しながら、のんびりとしてみる。87R点灯はしばらくしてからだ。

ハローCQ、CQ・・・、さて、栄えある落石岬灯台からのCQ第一号応答者は一体だれなのか???・・・・・・・・
おっ~と、イワオさん、ことミエAA469局だ。・・・「秒速30万キロメートルの出会い」のあの方だ(笑。岬入り口のゲート運用から結構時間がたつが、まだコンディションは落ちきってはいなかった。ただ、さっきより聞こえてくる局は少なく、そして少しだけ弱弱しい。しかしこの時間でもまだ落ちていないのは極めてラッキーだ。SVではある時間帯にEsがつながることは、毎年のことだが、全時間に渡ってコンディションが続いていることは珍しい。

2エリアからはアイチDI209局が今日も聞こえてくる。またしても伊勢湾マリタイムモービルだ。MMは不思議とQSBがかからない。天気は分からないが、さぞ気持ちが良いことだろう。最近つながるときは必ずクルーザーでのマリタイムモービル。実にロマンを感じる(笑。

ミトAG310局、かながわSC99局、チバCB750局やいばらきAY48局など、聞こえてくるのはほとんど1エリアだ。さすがに「ラヂオ東京」が昼間でも聞こえてくる場所だけある(笑。例の彼女は、灯台の向こうへ行ってしばらく姿が見えなかったが、灯台の建物の反対側まで戻ってきて、ランチタイムに入ったようだ。

   

よこはまUQ3局とはレポート交換まで完了していたが、尻切れになってしまったので、ありがたいことに再びコールをいただく。ヨコハマJA298局、ヨコハマAC581局、とうきょうB71局など引き続き1エリアが続く。B71局はジュニアCBerなのか、声が若々しい。一時間ほどで15QSOを完了、灯台での無線的ミッションは完了だ。それにしても実に気持ちの良い場所だ。あとはのんびりとこの岬を満喫するだけだ。

彼女は昼食を終えて、すでにフットパスに移動していた。フットパスとは灯台から岬の先端へとつづく、草原の中の小径である。灯台下で運用していると、Windows XP的丘の光景の中に、立ち止まってはしゃがみこんでいる姿がさっきから点のように見え隠れしているのである。彼女とは岬のフットパスでも、後から追いつき、二言三言会話を交わす。そして追い抜き、当局がゲートに先に戻ってくることになる。

再びSR-01で運用を再開してみると、Esは落ちきるどころかむしろ濃くなっているようだ。またもや近距離Esで、道内函館からサイタマHK118局、はこだてGT44局とつながる。7エリアも三沢に移動されている、かながわCE47局や秋田寒風山のアキタAO899局など至近距離からの入感だ。

1時間以上たったころ、ようやく彼女はゲートに戻ってきた。時は15時前で、当局はもうすでに撤収にかかっていた。当局が岬へ向かったのは10時前、そして戻ってきたのが14時前である。無線運用という意味では実質一時間ほどだが、いつも一つの運用場所に最低3~4時間は居るので、入れ替わり立ち代わりやってくる人を見送るのがいつも役割のようになっている。当局より先に出て、後から戻ってきた人は、未だかつてなく彼女が初めてである。

撤収してゆっくり車を走らせ始めると、彼女は既に例の『30円坂』の途中にさしかかっていた。集落まで下りきるこの30円坂までは、まだ砂利道が続くのである。聞くと、これから落石集落の海岸を経由して、落石駅まで歩いていくのだという。駅まで4㎞ぐらいだろうか。『乗っていきますか?』と暴挙に出た当局に対し、自分で歩いていくという。確かに4㎞という道のりは、歩くにしても北海道的感覚では、むしろ短い距離だ。それに駅に早く着いたとしても、一日に5~6本しか汽車はやって来ないのである。しかしそれ以前に、よほど怪しいオッサンに見られたことに違いない(笑。当局はと言えば、昔砂利道で軽トラのおじさんにピックアップしてもらった霧多布のことが頭をかすめていただけである。

104QSO 各局TNX!!

('17/8)



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