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[霧多布への道]




SVは道東へ


7月29日朝、霧多布への道は深い霧に包まれていた。真っ白く佇んだ霧の気配は、それでいてどことなく明るい。その先に岬はあるのである。まだ朝5時過ぎ、道を通るものは誰もなく、道端近くまでやってきた馬だけが一頭草を食んでいる。

ウン十年前の学生時代、この道を今日とは逆方向、浜中の駅の方向に向かってテクテクと歩いていた。当時はまだ砂利道で、今よりもさらに牧歌的な風景が広がっていた。2012年の利尻・礼文運用記でも記したように、この時ブライアン・イーノのFirst Lightという曲をウォークマンで聞きながら歩いていたのである。ウォークマンはまだカセットテープの時代だ。駅までは10km以上あり、今から思うと、本当に駅まで歩くつもりでいたのだろうか疑問だ。その時はたまたま通りがかかった軽トラの地元のおじさんが助手席に乗せてくれた。

あの時、今日ほど濃くはなかったが、霧が漂っていた。その時以来、その霧の牧歌的岬の風景とこの曲とが、脳内のどこかで結びついてしまって、片隅にしまわれているのである。もっともこの曲は、昔『エゴン・シーレ』という映画の中でも使われていたので、そちらの印象ももう一つのチャンネルとしては存在する。映画はもちろんオーストリアの画家エゴン・シーレを描いたものだったが、どちらかというとクリムトのインパクトの方が強すぎて、映画的にはほとんど面白くなかったような気がする(笑。

・・・・と、今年のSVの目的地は、霧多布と思わせぶりだが、そうではなく、根室の方向にある、落石岬にある灯台だ。その落石岬灯台は以前から当局が行きたかった場所である。こんなところでのんびり時間を過ごせたらなぁ~、なおかつ、こんなところで無線ができたらなぁ~と思っていた場所だ。今回のSVはそれを実現するのが目的だ。「根室の方向」というのは、行政区分上は根室市ではあるが、市の中心部から20キロほど南に離れた、太平洋に突き出た岬という意味である。つまりいわゆる根室の街のイメージとはほど遠い場所である。

SV当日は、落石岬から運用するとして、せっかく北海道まで行くのなら一日ではもったいないので、ついでに(笑、もう二日、合計三日間運用しようという魂胆だ。SV当日は一日だけのピンポイントなので、Esが上がらない可能性もあり、これはリスクヘッジにもなる。といっても、落石岬以外は目的地は決めていない。観光には基本的には興味はないので、アバウトに道東エリアということで、車で走り回りながら電波の飛び受けのよさげな場所でQRVするという作戦である。

  霧多布岬(湯沸岬)    標茶町

愛冠岬



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 SV2017