[ほんとの空 (日山山頂より安達太良山)] 






千貫森



昨年の春オンは、福島県矢祭町の檜山(標高509.7m)からだった。最近のOADは運用局が少ない?ので、基本手持無沙汰なのだが、その時ようやく2局目につながったのが、フクシマYN104局だった。運用ロケは「千貫森」(せんがんもり)という所らしかった。その時は、もちろん千貫森がどこにあるのかもわかっていなかったし、まして、まさか自分がちょうど一年後にそのあたりをうろうろと徘徊していようとは夢にも思ってもみなかった。まあ、人生とはそんなものでしょう(爆。

今年の春オンの運用場所は、福島県二本松市の日山(三角点1,054.2m、最高点1,057m)である。なぜ、日山なのか???

昨年のSVでは、宮城県村田町の東北自動車道村田ジャンクション近くで、東京FMの回折波受信実験をしていた。その後、11月末になって、その電波の東京側回折ポイントと思しき八溝山西肩の検分?を行っている。ただし、もとをただせば、それ以前の2018年に、栗駒運用から東京方面へ帰る時に、東京FMの受信実験をしたのが、そもそもの始まりである。

すべてこれまでの運用記に記している通りだが、経緯をもう一度整理してみると次のようになる。

① 2018年、栗駒運用の帰りに東北自動車道村田ジャンクション付近で東京FMを確認
② 2022年7月、①の再確認のために、高速道上ではなく、18年に受信したと思しき近辺で、受信の再実験を実施。東京FMの受信を再確認。ただし、同じく東京のFM局であるJ-WAVEは受信できず。(東京FMは、東京タワー送信、J-WAVEは東京スカイツリー送信である)
しかし、J-WAVEについては、宮城県白石市内の東北道上で受信を確認。
③ 2022年11月、東京側の回折ポイントとおぼしき八溝山西肩の稜線上で、現地の地形などの状況やFM電波の受信状況の確認、および伝搬の参照とするため11mでの運用を実施。

これまでで分かっていることは次の通りである。

a)上記①の村田ジャンクション近辺の受信ポイント(以下、便宜的に「A地点」)と東京タワーの伝搬経路は、東京側から見て、八溝山西肩の稜線(以下、便宜的に「Xエリア」)を通過した後、福島市の千貫森地区、特に一貫森山頂(標高520.7m)付近を経由している。(ただしこれは最短経路であり、複雑な飛び方をする電波の伝搬経路と一致するとは限らない。以下同様。)
b)上記②の白石地区のポイントと、スカイツリーを結ぶ伝搬経路(=J-WAVE)は、上記と同様、Xエリアを通過し福島市の千貫森地区(天井山西側)を経由している。
c)Xエリアは当然、東京タワー及びスカイツリーからは見通し範囲である。
d)しかし、上記a)、b)の伝搬経路において、千貫森地区は、実はXエリアからは直接の見通しにはなく、伝搬経路上のXエリア至近の無名峰(標高792.9m)の頂上エリア(以下便宜的に「Y地点」)からの見通しとなっている。同時に、Y地点はXエリアより若干標高が高いものの、東京タワー及びスカイツリー側からは、ぎりぎり「見通し」ではない。
e)②のスカイツリー-白石回線も、Y地点を通過している。

そこで、XとYはマクロには一つの回折ポイント、ミクロには二点間で更に回折しているとみなし、Xエリアから千貫森地区への電波はY地点からの見通し範囲に飛んで行っていると仮定してみる。

Y地点からの千貫森地区の見通し範囲は、下の図の赤色の範囲の通りである。この中には、当然、村田町のA地点-東京タワー回線の通過経路(=地図2の赤いライン)である一貫森山頂近辺が含まれている。

左)八溝山近辺のXエリアとY地点
右)千貫森近辺の、Y地点からの見通し(赤色部)
地図1:一貫森、女神山地区拡大  地図2:天井山近辺拡大 


したがって、後は本当に「赤」どおりに電波が飛んできているのか、現地で確認してみれば、千貫森・一貫森辺りからは村田町のA地点までは見通しなので、二点回折の場所の確認に一歩近づく・・・かもしれない、という素人的発想のノリでいってみる(笑。(まあ、プロ的には(笑、今の時代、ソフトで一発でいろいろと解析できてしまうのかもしれないですが・・・。)

特に、回折元の確認という意味では、どちらかというと「赤色」のど真ん中ではなく、赤とそうでない部分との境界がどこにあるのかが重要である。

以上から、まずはOAD前日の夜に現地に赴き、短時間で当たりの実験をして、仮説通りなら翌日のOAD終了後に、再び舞い戻ってもう少し詳しい調査を実施してみようという魂胆だ。当たり実験をして何も聞こえないようであれば、更に時間をかけても意味がないからである。



辞令は突然に・・・


ということで、仕事を終えた20日夜、福島県の旧船引町から川俣町方向へと、国道349号線を北上しながらひた走る。ラジオは、常磐道の茨城県内走行中から、すでに東京FMにロックオン済みだ。当然、ず~っと、ひたすらホワイトノイズが続いている状態である。

川俣町で左折して国道114号に入り、いよいよ千貫森地区へと向かう。少なくともここまではノー感状態。・・・2,3の点を除いては(これについては後述)。

・・・ということからすると、千貫森地区に行った途端、そんなうまい具合に目論見通りに東京FMが聞こえるのか、全く疑問だ。ひょっとしたら馬鹿げたことをやっているのかもしれない。

これまで総称して千貫森地区と呼んできたが、最初に向かうのは、一貫森地区だ。(一貫森地区は、千貫森のすぐ隣だが、まだ川俣町内) ここらあたりは、千貫森の他、前掲の通り、一貫森、天井山(532.0m)、女神山(589.3m)の三つの山があり、この三山周辺の特定の地域が「赤色」、すなわち、Y地点から見通しとなっているのである。同時に三山山頂近辺を含めて、村田町のA地点からの見通し範囲となっているエリアと重なる部分が結構ある。ちなみに、東京タワーから一貫森までの距離は約239Km、一貫森からA地点までは約51Kmである。

これら三つの山は、標高の数字だけ見れば高さがあるように見えるが、周りの地面自体が高い地域なので、山というより丘陵のイメージに近い。実際、山の斜面のかなりのところまで、民家などが点在している。

国道114号線から、最初の狙い場所である一貫森地区へ向かうには、どこかで右折する必要があるのだが、うっかり通り過ぎてしまったようだ。ところが、引き返そうと千貫森近くの路側帯に車を停めてみると、なんとこれまで全くノー感だったラジオに、J-WAVEが52程度で入感してくるではないか。ここは「赤色」との境界線に近い。東京FMは受からないものの、俄然期待が高まる(笑。

Uターンして、国道から一貫森へ向かう道路を少しずつ標高を上げながら坂道を登っていく。この県道?(霊山松川線というらしい)は一貫森を超えて、その北側にある伊達市へ通じているようだ。いったんこの道路を山の上まで進んでみるが、道路上はすべて基本ノー感だ。このことは、地図1と一致している。つまり、この県道は山の上まで「赤」との重なりがない「無色地帯」なのである。要は高さだけ稼げば、電波が受かるというわけではないということである。

しかし、さっきの路側帯の例からして、どうもJ-WAVEの方が受かりやすそうだ。そこで、もう一度再確認のため、下から東京FMとJ-WAVEを交互に切り替えつつ車を進めてみる。この原始的な方法には我ながらびっくりだ(笑。J-WAVEの方はかすかに、S0.5~1ぐらいのスポットが道路上にところどころ存在するようだ。

いよいよ地図上の「長大田」と書かれてあるあたりで、県道から女神山方向へ右折して進入してみる。この道は、地図1に従えば、すぐに無色のエリアから赤いエリアの中に突っ込んでいくことになる。この道路はカシミール付属の地図には記載はないが、右折ポイントは地図1の①で示した地点である。(地図1の道路は当局が挿入したものなので正確ではない) この右折ポイントではもちろん入感ゼロである。

右折してから車をゆっくり100mぐらい進めていくと、なんとJ-WAVEが突然入感し始める!!(「入感」が突然なのは当たり前だ。ついでに、ラブ・ストーリーも辞令も突然だ。←東 京一郎からの伝言。(謎)

この入感開始点は地図1上の赤エリアの境界とほぼ一致するようだ。

 
そこから女神山方向へ車を進めていくにしたがって、J-WAVEは S2~S4位の間で変化、そして、右写真のポイント(=地図1の②)ではS8くらい振ってくるではないか。(Sメータはないので「振って」はきませんが(笑。)ラジオの聴取という意味では、もちろん全く問題ない。東京FMの方は、52~53程度だ。

そこから更に東南方向へ車を進めていく。地図1上では完全に赤色の中を通過していく感じである。通過中はJ-WAVEはずーっとS2~S6ぐらい、強い場所で8ぐらいといったところで聞こえてくる。ただ、東京FMの方はSをJ-WAVEから3ぐらいマイナスした感じか。J-WAVEとの対比では、結構な差ができているし、強く聞こえる場所も異なる。



そして59が始まる


想定通りの結果に「しめしめ、思った通りだ」と、ほくそ笑む暇もなく(実際には、ほくそ笑んでましたが(笑)、今度は千貫森地区の北方向にある天井山西側エリアに確認に向かってみる。地図2の④や⑧を含むエリアである。なぜここなのかというと、J-WAVEの白石-東京スカイツリー回線は、こちらの方を通っているからである。

ここへは、途中、地図2の「道路1」と記した道(黒線)を経由していってみる。この道路1はすぐ上(=北側)まで赤エリアが迫っているものの、道路1自体はすべて無色エリアなので、理論的には入感はないはずだ。

・・・って本当かぁ~???実に怪しい。

しかし実際に走行してみると、確かに、この道路上ではスポット的にS0.5くらいで信号を感じる場所があるものの、赤エリアのすぐ手前(西から進んだ場合)まで基本的に入感はゼロだ。どうやら想定通りのようだ。一方、狙いの目的エリアの中にある、地図2上の④や⑧のポイントなどではJ-WAVEはFBに入感する。特に④ポイントでは、驚いたことにJ-WAVEは59+で、東京で聞いているのと全く変わりはない!!とても回折波とは思えない強さだ。

一方、こちらの赤いエリア内についても、相対的に東京FMは弱い。④ポイント近辺ではS8くらいで入感するものの、全般的にはJ-WAVEから S2~3マイナスした感じである。また、こちらのエリアでも、入感が強い場所が二つの波では異なるのである。両局では発信場所や給電点の地上高が異なるので、当然ではあるが。

夜の「あたり実験」は、どうやら計算通り成功?のようだ。したがって、明日のOAD終了後に舞い戻って、もう少し詳細に入感状況を確認してみることにする。(詳細は後述)




OADがスタート・・・・・する時もあります・・・たまには。







LCRを投入


前述の通り、回折波の確認調査?があるので、春オンの運用ロケは、そこから逆算して日山ということになった。とは言いつつ、以前から日山での運用には関心があったので、むしろちょうど良いタイミングで、悩むこともなく決定である。いつも磐越自動車道を、郡山からいわき方向へ向かって走っている時に見える姿が、移ヶ岳とともに気になっていたからである。

山頂は異様に広く、立派な展望台もあり、360°の絶景だ。西方向には、雪で真っ白になったままの安達太良山が、朝日を浴びて青空の中で堂々と存在感を放っている。(=冒頭写真)

 「智恵子は東京に空が無いといふ、
 ・・・・・・
 阿多多羅山の山の上に
 毎日出てゐる青い空が
 智恵子のほんとの空だといふ。」


今でも東京には「空が無い」のかもしれないが、確かに、ここには今でもほんとの空があるようだ。


日山は人気のある山と聞いているので、きっと多くのハイカーがやってくるに違いない。神社の祠の陰で、ひっそりとQRV開始だ。風が若干あるので、吹き抜けていく風が、落ちてくる日差しとは裏腹に、冷たい。ふんだんに陽のあたる山頂広場にすら、まだところどころ雪が残っている。

今日のトピック?と言えば、遅まきながら当局もLCRを初めて導入したことだ(笑。もともと、当局は、50MHzを除き、基本的にV/Uにはあまり興味はない。しかし最近の11mは、OADといえどもあまりに暇なので、空き時間対策が必要なのである。リグはほんの二日前の日曜日にふと思い立って発注したものだ。それにしても、ネットで発注したその日のうちに届いてしまうというのも、恩恵を被っておきながら言うのもなんだが、SDGsの観点からどんなものか、といまさらながら思うのである。アンテナは選んでいる時間がなかったので、今日は付属のアンテナのまま参戦ということになる。

バンド内をずっとワッチしていても、やはり11mは運用局が全く聞こえてこない。CQを出していても、ノー感が続く。ようやく一発目のコールをいただいたのは、フクシマYS950局で、郡山からだ。続いてミヤギNE410局は、今日も七ヶ浜町(宮城県)からの運用のようである。NE410局とは去年のSV以来だが、同局とはEsでつながる方が多いので、グランドウェーブはむしろ新鮮だ。

お空ばかりか、登山客も寂しいようで、こちらの方は、いつまでたっても山頂には誰一人やってこない。展望台で景色を眺めながら87RでCQを出してみると珍しく入感がある。ふくしまME71局で、田村市の桧山高原である。ME71局と言えば、昨年のSV時に、当局が村田町のA地点で回折波受信実験をしている時にコールいただいた局長さんなので、記憶に鮮明だ。



デジピーターをチェック


展望台までLCRは持ってきていないが、ME71局によると、LCRは霊山?にデジピーターが上がっているとのことで、「試されてはどうですか?」と言われる。なるほど、本拠地の祠脇に戻ってから、トーン代わりに、LCRをコンパクトに見立てて「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン・・・」と唱えながらデジピーターを試してみると、そのME71局ご本人とさっそくつながる(笑。ME71局とは距離は20Kmもないので、デジピーターでも直接波でも当然ながら59である。

ということで、LCRの記念すべき一発目は、ME71局だ。なお、別に何かに変身したわけではないので、デジピーターQSO終了時は「ラミパス、ラミパス、ルルルルル」は不要だった。

11mとLCRを比べると、相対的な話だが、やはりLCR運用の方が盛んなような感じだ。イワテSD545局は一関市の憩いの森(岩手県)のようで、156Kmと出てくる。RSは56/56だ。いわてNS22局は、同じく一関市だが室根山からの運用のようで、こちらは173Km、RS53/52である。3桁表示に釣られて、青組に参加したわけだが、その場で距離感とSの相関がつかめるのでそこそこ役に立ったようではある。ロケの相性の分析には即効性がある。

11mはOADとは思えない局の少なさだが、それでもミヤギKI529局は、仙台市泉区の泉ヶ岳に登られているようで55で入感してくる。こちらからは57で飛んでいるようで、さすが山岳移動局である。

しかし、いくら滞在していてもGW局は増えそうにないので、日山からは早々に撤収だ。最近はOADでの早期撤収が多い(笑。なお、山頂で「みかけた」人影(=「出くわした」ではない)は、わずかに3人、上り下りではゼロである。登山口の駐車場もゼロ台。天気も良かっただけに、これは全く意外である。





東京FMが上回る場所



さあ、あとは予定通り昨晩あたりを付けておいた、千貫森地区に舞い戻ってみるだけだ。もう少し回折波の入感状況を確認してみる必要がある。

今日は、昨晩入感を確認している道路上の入感具合を、もう少し細かくチェックするのがメインだが、あらたな確認場所として、地図2の⑤近辺の道路上エリアを確認してみることにする。特に、この道路は、昨晩入感がないことを確認している「道路1」とほぼ並行して走っているのだが、昨晩の道路1が無色エリアなのに対し、こちらは赤色エリアに入っている。二つの道路は、200m程度の差しかないが、理論通りなら「無色」と「赤」の違いがかなり出るはずである。つまり、今日初めて確認する方の道路は、理屈通りなら入感があるはずである。

その前に、まず最初は、昨晩あらかた入感を確認している、一貫森地区の女神山の山腹を回り込んでいる道路だ。昼間に行ってみて分かったが、この道路上には女神山の登山口もあり、車2台ぐらいおけるスペースもある。(=下写真) 入感の詳細は下の図1の通りだ。女神山登山口ポイントでは、特にJ-WAVEが良く入感する。ここは稜線上の半島部分(主稜線から峰状に枝分かれした部分)に相当する。

この道路は、そこから更に東方向に回り込んでいくと、急激に弱まり女神山の主稜線まで到達する前にほぼ聞こえなくなる。

 図1: 道路上の入感状況。(一貫森⇔女神山地区)
・緑字がJ-WAVE、青字が東京FM。数字はすべて耳S。
・S1未満は、信号を「感じる」場所でも「0」と記している。
・記入のない場所は、未計測区間。
以上については、図2も同様。
ただし、この図の県道は、すべて「0」区間である。

左:女神山登山口ポイント(=地図1⑦) 若干切通しになっていることからも、稜線状に突き出ていることが分かる。
  ここでは、J-WAVEがFBに入感する。
右:地図1⑥近辺。左奥に見えるのは千貫森。





次に、昨晩FBな入感を確認している地図2の④エリアだ。少し詳細に確認したのが、下の図2である。面白いことに、地図2の⑨と記した場所は無色エリアとなっているが、実際にここだけほとんど入感がなくなる。したがって、入感具合は赤エリアと相関関係を持っているとみてよさそうである。

 図2: 道路上の入感状況。(天井山西地区)
・丸数字は地図2の番号。
・茶色の両矢印区間は、登り(北向き)と下り(南向き)では、
 若干感度が異なったので、
強かったほうのSを記入している。
 (車のアンテナ面の違いか???)

なお、蛇足だが、限界すれすれの信号を感じて車を停めると
聞こえなくなり、エンジンを回して動き出すと再び感じるという、
ラジオの特性を確認(笑。当局の車のラジオの固有特性か?
普通は逆のようにも思われるが、エンジンの回転が上がると、
信号のマスクにつながる高周波の流れが変わるのか??
(笑。―こちらも原因不明。



続いて、今日新たに確認する道路である。地図2の⑤と記した民家前を通過する道だ。この道は、その細さといい、ほぼ私道に近い。いや私道以下か。道幅は「狭い」を超えて、3ナンバー車だと車幅というより、トレッド一杯の感じで、カーブでは曲がりきれないぐらいの狭さだ。営農サンバーでも簡単にはいかない道路だ(笑。絶対に車で通らないことをお勧めする。したがってハンドル操作に懸命で、入感状況の確認はかなり上の空になった感はある(笑。

この道路を西側から進入してみる。最初は入り口が分からなかったぐらいで、前述の通り歩道かと見まがうほどの狭さだ。地図2では、この道は入り口から300mぐらい入った所で赤色に変わるが、実際には進入して150mぐらい進んだ、地形的に突き出た部分から入感が始まる。

以降、地図の赤エリア通り、基本この道路上では、だいたいどこでも聞こえるが(カーブを北側へ回り込むと厳しくなる)、一番強く入感するのは、⑤の数字の民家の前あたりで(以下、便宜的に「民家前ポイント」)、ここは東京FMが強く入感する。ここはJ-WAVEも入感するが、J-WAVEが入感する場所で、東京FMの方が強く入感する場所は、当局が確認した中では極めて珍しい。ここは、谷状になった地形の上部に位置しており、谷の延びている方向は、電波の到来方向(=Y地点方向)と一致している。

民家前ポイント:
左)東側から西方向に撮影したもの
中)民家側から、谷の下方向を撮影したもの。正面に見えるのは、千貫森。
右)中写真の逆で、谷の下方向(地図2の⑩のあたり)から、民家方向を撮影したもの。
  中央のガードレールは地図2の「道路1」で、道路1では入感がなく、民家前ポイントで入感があるのは、
  地図の赤エリアが示している通り。



以上のように、女神山登山口のように空間上に突き出た部分や、上述の民家前ポイントや、昨晩最初にS8でJ-WAVEをとらえた場所のように、谷状になった地形の上部で、谷が電波の到来方向に合致している場合、そういった場所では電波の飛び受けがよくなることは、我々が普段から認識している無線の経験則とも合致しているようだ。

これまでの確認で八溝山近くのY地点方向からの電波が飛んできていることはだいたい分かったが、Y地点だけで回折していると考えるのは早計だ。電波の飛びは、点と線だけで捉えられるほど単純ではないし、受け側である女神山地区から天井山近辺までは東西にある程度の幅を持っているので、八溝側でもXエリア、Yポイントを含むそれぞれの稜線上で、ある程度の幅を持った範囲が回折に寄与する領域を形成していると考えられる。この二つの稜線は、ナイフエッジモデルででてくるような衝立上になっているのも特徴的だ。

ところで、村田町のA地点では東京FMは受信できるものの、J-WAVEは受信できなかった。無理やり理由付けをしようと思えば、A地点とスカイツリーを結ぶ伝搬経路上に、Y地点は乗ってこないから(=経路はY地点よりかなり南を通る)、と言うことはできるが、果たして本当にそうなのか???ここは残された課題だ。ちなみに、村田町のA地点から千貫森地区への見通しと、その逆(一貫森山頂から)は下の図の通りだ。

 左)村田町A地点→千貫森地区見通し
 右)一貫森→村田町A地点方向見通し(黒点がA地点)



今回の運用は回折波の確認がメインになったが、回折波といっても、点と線で考えるのではなく、面で考えればいろいろなところに電波は落ちているわけである。例えば、前述のとおりOADの前の晩は、船引町から川俣町へと国道349号線という「線上」を移動しているわけだが、その間に東京FMが全く受信できなかったわけではなく3~4か所、入感を確認している。例えば、(株)ミツバ福島工場(田村市船引町北鹿又沼ノ下100)入り口手前50mぐらいのポイント(笑、(株)久野製作所(福島県二本松市針道大来ヶ作14−1)入り口手前100mぐらいのポイント、二本松市役所東和支所(二本松市針道蔵下22)手前300mぐらいのポイント(J-WAVE)などだ。どれも車の移動速度で、1秒から5秒程度のスポット的入感で、Sも0.5~せいぜい2程度である。そのようにいろいろなところに落ちていながら、意識していないせいか意外と?出くわすこともなく、ましてそれを活用しようとすると極めて難しいのが回折波だ。

これまで何度か言及しているように、ナガノNP152局の伊那谷-四日市港回線のように、どこかに面白い回線を見出すというのも、運用の醍醐味の一つであるかもしれない。


10QSO、各局TNX!! (2023/3/26)

(文中敬称略)






運用データ


 ■運用日時・場所:

 
  ・2023年3月21日(火、祝) 7:45~11:45 
    福島県二本松市日山山頂 (標高1,057m)
  
     

 ■使用&装備リグ:
   CB : NTS115 (西無線研究所)
        ICB-87R (SONY)
   LCR: DJ-PV1D (アルインコ)

 ■使用&装備電源
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ah
   ・リチウムイオンポリマー電池11.1V/1.5Ah






QSO局
10QSO TNX!!  
(敬称略)

2023年3月21日(火、祝) 快晴 7:45~11:45      
フクシマYS950/福島県郡山市 53/53 ミヤギNE410/宮城県七ヶ浜町 53/53
ふくしまME71/福島県田村市桧山高原 59/59 いわてDE56/岩手県 56/53
ふくしまME71/福島県田村市桧山高原 (LCR) 59/59 イワテSD545/岩手県一関市憩いの森 (LCR) 56/56
ふしまSG56/福島県田村市殿上山 (LCR)  59/59  ふくしまVR46/福島県猪苗代町鬼面山 (LCR)  59/59 
いわてNS22/岩手県一関市室根山 (LCR)  53/52  ミヤギKI529/宮城県仙台市泉区泉ヶ岳  55/57
  




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日山 (春オン)
福島県二本松市