[石井りんご園] 






奥久慈りんご



朝8:30、農家の庭先に進入すると、そこはもう、りんごがたわわに実ったりんご林の始まりだ。納屋兼倉庫の作業所では、りんごの仕分けや発送準備などが行われている。当局の車のナンバーを見て、「ずいぶん朝早く出てきたんだね~」、と声をかけてくれる。おいしそうなふじを10個ほど調達する・・・。(たったの10個か?(笑)

茨城県大子町「アップルライン」の界隈は、リンゴ農園が点在する。大子町自体では40軒をこえるりんご農園があるらしい。このあたりのりんごは樹上で完熟させてから収穫するのが特徴のようで、関東では知る人ぞ知るりんごの産地だ。樹上完熟という特徴から、評判がいい割にはあまり市場に出回らないので、りんご通はわざわざここまで買い出しにくるのだという。だから、大きさや形などの見栄えにそれほど拘っているわけでもないのに、贈答品としても喜ばれるのだという・・・そんなことを伝え聞いたのは、ちょうど去年の今頃、ここらあたりをウロウロして帰った後だ。

その時はたまたまこの「アップルライン」に通りかかって、りんご園が多いのに気づき、入ろうかなあ、と迷ったものの、先を急ぐ関係上素通りせざるを得なかった。今回は、前述の話を聞いていたので、まずはりんごを逃すまじ、と朝イチで立ち寄って調達しておいてから、仕事にとりかかろうというわけである。




それで今日の仕事先は??



某KM117局の「脳内AI」は相変わらず大活躍(11/16日付け)のようだが(全然「某」じゃありませんが)、同局に倣って「脳内AI」にお伺いを立てるまでもなく、本日の目的地は、「八溝山」と最初から決まっている。といっても、八溝山は無線的にメジャーな場所なので、できるだけそういう場所からは出ないことをモットーとしている当局としては、八溝山は付け足しで、主題は「八溝山西肩」である。

今年のSVでは、宮城県村田町で、東京FM(80.0MHz)の回折波受信実験をしていたわけだが、その時にも記している通り、東京側からの最初の回折ポイントと思われる場所が、八溝山の西肩エリアである。今回はその回折場所を実際に検証してみようという魂胆である。この場所は、もちろんグーグルのストリートマップなどでも確認はできるが、何事にも現地・現場に出向いて実際に目で確認してみることが重要だ(笑。もっとも、そこに行ったからと言って何があるわけでもないし、87Rで発砲して宮城の局長さんや港区の局長さんとつながったりするわけでもないのですが・・・。

八溝山山頂自体は、福島、茨城の県境だが、西肩の回折ポイントにあたる場所は、栃木と福島との県境となる稜線上と想定される。八溝山方向からは、車一台がやっとの林道が栃木方向に延びており、栃木県側に入り、途中福島側へ下る林道の分岐を越えて少し行ったところが、回折場所と想定される地帯だ。今日は、反対方向の栃木側からこの林道にアプローチ、八溝山方向へと場所を点々と検証しながら車を進めてみる。


 
赤ラインは、東京タワーと村田町の回折波受信ポイントとの地図上の最短経路。


この林道は稜線上を走っているわけで、いかにもウェッジシェイプ状の「刃」の上を行く感じだ。もっとも道自体はてっぺんではなく、てっぺんに至近の斜面の部分に通されている。こうしたことは、地図を一目見ただけも想像がつくが、実際に来てみると思った以上に「刃」は、鋭いようだ。だからこそ、稜線上のてっぺんではなく、てっぺんに近い斜面に道が通してあるのだろう。

したがって、栃木県側から八溝山頂方向でいくと、道の左側に刃のてっぺん部分が残るので、福島側は見えないが、東京方向側は急峻な斜面となっている。しかも一帯では、植林されていた木が伐採されていたらしく、はげ山となっている面積も大きいことが目に付く。

見た限りでは、回折波の教科書通り、見事な?ウェッジシェイプだ。少なくとも、ここらあたりで回折していると、当局のようなシロウトが思い込むには十分である(笑。

前述の通り、道の福島側にはてっぺんまでの斜面が残るわけだが、一か所だけ、道路上からでも福島側と東京側(関東平野側)の両方が見える場所がある。(=前掲写真①のポイント) 実は、木が伐採されていたのは、斜面の東京側だけでなく、福島側(厳密には足下はまだ栃木県)でも伐採されており、この場所は斜面の福島方向側へ作業用の車などが、林道から出入りできる場所として選ばれている(いた?)ようである。

 左写真の電柱間の領域が①のポイント。この場所は、関東側(中写真左側)と、福島側(右写真正面方向)が、
 吹き抜けになっている。また、両斜面とも木が伐採されている。


道路上から東北側と関東側の見通しが効くので、87Rを取り出し、まずはここで発砲だ・・・・・・
・・・う~ん、宮城県村田町から反応あるかと思いきや、感なし(笑。

関東側はどうか?

ここは標高730m程度あるので、運用確率が高い関東平野へは一応ある程度のところまで見通しのはず。こちらは何か反応があるかと思いきや、感なし。当然港区からも応答はない(笑。

この場所だけ部分的にタイムマシンで時間を7月30日に巻き戻して、村田町にいる自分と交信できるかもしれないと思うと大変残念だ(爆。

無線機を片手に立っていると、冷たい風が、白いガスに混じって稜線上を吹き抜けていく。聞こえてくるのは風の音だけだ。それにしても、今日も天気予報は大はずれ。今にも雨が落ちてきそうな気配だ。

一応東京FMを点けて確認してみると、当然ながら59++で元気よく入感してくる。この勢いで、ここからさらに村田町まで飛んでいっているのか?見えない電波は、その伝わり方を想像しているだけで楽しませてくれる(笑。



回折ポイント?へ


さらに道路沿いにいくつかの場所で検証を進めながら、いよいよ地図上の最短経路上へと車を進めていく。もちろん地図の性格上、実際の最短経路(=伝搬経路)と地図上の最短経路が完全に一致するわけではないだろうが、妙に気分が高まってくる(笑。幸いなことに、直ぐ近くのカーブに車を停められるスペースがある。(=前掲写真②ポイント)

この「最短経路」上の稜線は更に「刃」が鋭いようで、道は稜線からの急斜面の途中に通されている。おそらく福島側も、急峻なのだろう。

電波はここらあたりで回折しているのか???(笑。そう思うとなんだか不思議な気もするのだが・・・。しばし、そんな余韻に浸る。

 左)②ポイントより、「最短経路」直下。(写真中央右側の辺り)
 中)「最短経路」直下より栃木方向。
 右)「最短経路」直下より②ポイント方向。


ここでも、もちろん87Rを発砲してみるが、関東側からは何も返ってこない。誰かとつながれば何か参考になるかもしれないと思って発砲しているのだが、それにしてもどこにも運用局がいないとは・・・。そうこうしているうちに、とうとうポツリポツリと、雨粒が落ちてきた。


もともと、今日は「晴れ時々雨」という怪しい予報だったが、一応「晴れ」という文字があったはず。それに、日曜より土曜の方が天気が良い、という話だったので土曜日に出てきたのだが・・・。

天気が悪くて何が問題なのかと言えば、雨予報では圧倒的に移動局が少なくなるのと、ガスで関東平野側や東北側の遠方の視界が全く効かないことである。せっかく「検証」に来たのに、これでは検証にならない。さらにもう一度出直すか、やはりタイムマシンが必要なようだ(笑。

これでは、八溝山山頂で運用どころではないが、一応山頂まで移動してみる。





OADがスタート・・・・・するはず・・・ないですょ




 [Rêve] 



激変する天気


山頂では、雨脚が強くなってきたので、ここぞとばかりお昼寝タイムに突入だ(笑。しかし12時過ぎに目覚めると、雨は上がっているようだ。相変わらず100m先は真っ白な世界で、風も強いが、一応展望台まで移動して、87Rを稼働させてみる。

しばらくワッチしていると、何とこんな天気でも運用局があるではないか。サイタマステーションからコールがかかる。サイタマCT170局だ。埼玉県加須市の平地?からのようで、入感は41と厳しい。しばらくしてから当局にも沖縄のEs局が聞こえてきたので、本当はEs狙いで出てこられたのかもしれない。それでも、今日はゼロQSOを覚悟していた当局としては、一つでもできたので感謝である。その後、いばらきJN28局からもコールをいただく。天気の様子をみながら、朝日峠(茨城県土浦市)まで移動されてきたようだ。どうやら、あちらは天気が徐々に回復の方向に向かっているらしい。

今日はもともと運用目的ではないし風も強いので、運用スタイルとしては「基本、車で待機⇒時たま山頂に出向いて発砲、3分で撤収」というスタイルである。運が良くても一回の運用で一局がやっとか?(笑。ミトKM531局は自宅からコールしてくれたらしい。やはり時たま出すCQに反応が返ってくるのは非常にありがたい。


運用というより、ほとんどが車での待機時間だが、しばらくしてふと気づくと、なんたることか、ガスが途切れて日差しが地面まで落ちてきているではないか。

それでもしばらくの間は、落ちてきた光がガスを縦じまに輝かせているだけだったが、やがて上空のガスが切れ始め、青空が少しづつ見え始めてくる。すると、そのあとはどんどん加速度的に青い色が広がってきた。滅多に経験しない目まぐるしい変わり方だ。

晴れてくると今まで見えていた世界ががらりと変わる。今まで、なぜこんなところに展望台があるんだ、と思っていたが、視界が開けてみるとそこからの景色をみて納得である。展望台からは特に、西から北にかけて、日光連山から那須連山まで、大地の起伏が手に取るようにわかる。


4回目の展望台運用、これがラストだ。87Rを点灯してCQを飛ばすと、かながわCE47局からコールが返ってくる。今日も城山湖(神川県相模原市)からのようだ。CE47局は、いつも肝心なタイミングでつながる、そしていつもレファレンスになっていただける、当局にとってはありがたい局長さんである。


激変する天気。180°見える世界が変わった。

右)右手前、高原山。中央奥は日光連山。
   


Rêveへ


今日は、ここまでくれば営農サンバーの「水戸の隠居」ともひょっとしたら交信できるかとも思ったが、この天気ではやはり無理だったようだ。運用を切り上げれば、あとは残るミッションは唯一つ、「Rêve」 (福島県鮫川村)に立ち寄ることだけだ。

「懐かしのパティスリーシリーズ」で、Rêveを再訪しようとしたのは、今年3月の春オンの時だ。しかしその時はたまたま休業日、目的を達成できなかった。八溝山は福島県棚倉町との境で、棚倉町の隣が鮫川村である。今日は、棚倉町の「フランス菓子のコミネヤ」(=3月にRêveに代わり訪問)の真ん前を通過して、コミネヤをも確認(外見だけ)した後、Rêveに向かってみる。


店内は、去年の春オン時に初めて訪れた時と変わりはないようだが、ケーキの種類が気のせいか以前より少なくなっているような??・・・・。パンナコッタ系はいろいろ種類があるものの、ケーキに関してはイチゴのショートやモンブランなどの定番商品+αだけで、以前訪問した時のような独創性にあふれるものは、少なくとも今日に関しては見当たらない。これは到着したのが午後3時過ぎというせいもあるかもしれないが、イートインでの飲み物のメニューが、コーヒーと紅茶のみに縮減されているところからすると、やはりケーキの種類も減らしているのか???

ということで、今日いただくのはスタンダードな「いちごのショート」と、「ジャージー牛乳のパンナコッタ」だ。別に、旨いとか、そこがいいとかいう意味ではないが、このニュートラルで主張しない味は、なぜか当局の舌にはしっくりとくるのではある。

しかしなぜパティスリーに赴くのか?当局がいつも気になるのは、「田舎×(かける)カフェ」や「田舎×パティスリー」のかけ合わせだ。そのかけ合わせを実現させている背景には、なんらかの思い入れや信念があるに違いないと思うからである。もちろん、そんなことは訊いてみるわけにはいかないのだが・・・。

特にRêveに関しては、「村」という限られた人口の世界で、パティスリーをやっていくのは容易なことではないだろう。続けていくには様々な知恵と努力が必要なはずだ。仮にさまざまな困難があったとしても、個人的にはぜひ永らく続けていってほしいと願うのである。

 
  右)鮫川村中心街?Rêveの道路を挟んだ向い側は廃業済みのガソリンスタンドだ。
 



興味深い回折-伊那谷回線の醍醐味


今回のテーマは、回折場所に足を運んで、その場所を実際に見分してみるということだった。今一度「回折」に立ち返ってみると、我々のような無線交信の世界における「回折」とは、典型的な説明例に従えば、距離を離した同じ高さhのA、Bの2地点間で、十分に周波数の高い、すなわち波長の短い波で交信することを想定し、その中間に衝立を置いた時に、衝立の高さを下から徐々に上げていった場合に、受信側の電界強度は衝立の高さとの相関で表現されるが、A、B間を遮る高さhをある程度超えても、直ちにゼロにはならないといった形で説明される。実際には、アンテナには大地からの反射波もあるので、地面からの影響も主要パラメーターとして加わる。つまり、回折には、波長やアンテナの地上高も関係するということである。

実際には、CBの交信で我々がよく回折と称しているものは、A、B地点がそれぞれある程度の高さh1、h2の山等であり、間にそれらを超える高さh3の山稜Cなどがある場合における、一見有り得ないと思える見通し外交信である。ただ当局の経験則としては、通常A、C、Bのそれぞれの地点間の距離が十分に大きいのに比して、h3の高さは相対的に、比べ物にならないくらい小さい場合が多く、したがって地球が丸いことによる遮蔽物(=間にあるC)の高さの沈み込みにより、h3が見かけ上h1もしくは、h2と同等程度に近づく場合に起きている場合を指していることが多いように見受けられる。この場合、上記の説明例でいくと、衝立の高さがhを少し超えた程度のレベルである。

しかし、当局のような素人にとってもっと面白いのは、たびたびこのサイトでも取り上げている、ナガノNP152局がいつも使われている、長野県伊那市と三重県四日市港との回線である。伊那市側も、四日市側も、地上高はほぼゼロメートル、間に伊那盆地基準で高さ2,000~2,300m程度の中央アルプスが、遠くではなく、目の前に立ちはだかっているロケからの回折回線である。

地表面のすべてという観点から見ると、無線局が存在するのは、天文学的に小さなスポットに過ぎないことからすると、実際には上記のようなとてつもない回線は理論的にはたくさん存在するのかもしれない。しかし、実際には確率的にヒットする可能性が極めて乏しいからこそ、そこが面白いのだということだけは間違いなさそうだ。


4QSO、各局TNX!! (2022/12/3)

(文中敬称略)






運用データ

  展望台より那須連山

 ■運用日時・場所:

 
  ・2022年11月26日(土) 12:20~14:00 
    茨城県大子町・福島県棚倉町 八溝山山頂
  
     

 ■使用&装備リグ:
   CB : NTS115 (西無線研究所)
        ICB-87R (SONY ラジックス改新技適)

 ■使用&装備電源
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ah
   ・リチウムイオンポリマー電池11.1V/1.5Ah






QSO局
4QSO TNX!!  
(敬称略)

2022年11月26日(土) 曇りのち雨のち晴れ ときたまQRV      
サイタマCT170/埼玉県加須市 41/51 いばらきJN28/茨城県土浦市朝日峠 52/52
ミトKM531/茨城県水戸市 52/53 かながわCE47/神奈川県相模原市城山湖 52/52
  




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2022運用記
八溝山
茨城県大子町・栃木県大田原市・福島県棚倉町