2022運用記
大房岬&しらびそ高原
千葉県南房総市・長野県飯田市




 [伊豆半島に陽が沈んでいく (大房岬にて)] 






久々に海を見に・・・



「秋の日は釣瓶落とし」、だという。大房岬に立って沈んでいく夕日を眺めていると、言葉の意味とは関係ないのだろうが、まるで赤い夕陽が落ちていく釣瓶のように刻々と大地に隠れていく。沈んでいくのは、伊豆半島の先端に近い天城山の左裾である。まだ10月末だというのに、ずいぶんと南に沈むものである。

「今日は車ですか?」
キャンパーと思しきオニイサンが、缶ビール二本を手に話しかけてくる。ここは駐車場から10分くらい、森の中を歩いてくる必要がある。こんな暮れなずむ時間にここにのんびりといられるのは、キャンパーならではなのだろう。
彼が言わんとするところはすぐに分かった。
「よかったら缶ビールでも一緒にどうかと思って。」
「いや、車なんで・・・すみません。」
彼は残念そうに、持参した椅子に腰を下ろして、一人で夕景色を肴にビールを楽しみ始めた。

岬の展望台に男二人、全く絵にはならないが、相模湾の向こうに陽が沈んでいく夕景に寡黙な時間が流れる。断崖の足下には、東京湾が広がる。三浦半島や城ケ島もこの時間になっても間近にはっきり見えている。


大房岬(たいぶさみさき)は房総半島、館山湾の北側にある岬だ。岬全体が自然公園になっており、磯遊びもできれば、キャンプ場や園地もある。岬の中心にはリゾートホテルも建っているが、ビジターセンターもあり、全体としては森林公園のようなイメージである。東京湾側に面した展望台からは、相模湾から東京湾にかけて一望できるのである。

 左)南芝生園地より洲崎方向  中)同園地より館山市街方向  右)第二展望台より三浦半島&東京湾



今日の収穫は、おきなわZA35局が、1分くらい聞こえてきたことか(笑。天気が良いので、どこか山の上の運用局などからグランドウェーブで何か聞こえてくるかとも思ったのだが、それもないようである。もっとも、今日は運用しにきたのではなく、海を見ることが目的なので、むしろ何か信号が入ってきただけでも大きな収穫なのかもしれない。

ここのところ週末は芳しくない天気の連続だ。9月の秋オンも天候不良で断念、10月こそはどこかに移動と思っていたのだが、自由になりそうな週末に限って悪天予報で断念続きだった。もっとも、ふたを開けたら晴天ということもあり、天気予報が外れまくっていたのも事実である・・・。

ということで?晴れの特異日、文化の日の各オンは山を見に移動だ。




OADがスタート・・・・・するとしたならば・・・。







久々に山を見に・・・


しらびそ高原に初めて移動したのは、2008年の11月3日、ちょうど14年前のことだ。前聖や兎岳などの南アルプスが眼前に迫るすごさと、ロケの開放的な明るさに、すぐにお気に入りの場所となって、その後4回ほど移動運用を行ってきている。ただし、すべて名古屋に拠点があった頃の話で、今回のように関東から移動するのは初めてである。

このロケの良さは、2、3エリア方面への抜群の飛びの良さである。こんな長野の山奥から、と思うのだが、どっこい、最初に運用した時、5エリアは徳島県旭丸峠のとくしまMN72局とつながって、びっくり仰天したのがこのロケだ。こちらの標高は2,000mに満たないし、5エリアのMN72局も高い山の上などにいたわけではないのである。

このロケは、さらにおもしろいことに、目の前に立ちはだかる南アの山々を越えて、場所によっては静岡県側とも交信できるのである。さらには伊豆半島をも飛び越えて、伊豆大島とも交信できている。

一方、難点はビリビリ、ジリジリといったノイズがS3くらい振ってくることが多い点だ。(=聞こえない時もある)ノイズは、目の前の宿泊施設「ハイランドしらびそ」の電気設備や、駐車場上の電灯線から放たれていると思われる。ただノイズについては、近隣に回避できる場所もあるので、全体としてはメリットがデメリットを大きく上回る場所である。なにより、南アルプスの山々に圧倒されつつ、開放的な高原の雰囲気を堪能しながら運用できるのがこのロケの最大の魅力である。



朝、到着時の気温は4℃ほど。思ったより低くない。晴れの特異日の面目躍如で、雲一つない快晴、しかもほとんど無風だ。明るい高原の雰囲気いっぱいである。

しかし、リグをセッティングしてみると、今日もやはり例のノイズがでているようだ。とりあえずそのままワッチにかかると、ナガノNP152局のCQが飛んでくる。ロケは伊那リ(伊那リゾートスキー場)からのようだ。NP152局とは久々のQSO、何年ぶり??か。TNX!NP152局!しかし、うれしがっているのも束の間、今日はいつにもまして、ノイズが半端ではない。もともと方角的に伊那市方面は、山がかかるので、このロケは不得意だ。信号自体は耳S52だが、ノイズ自体の音量がかなり大きく、格闘するように覆いかぶさってくる。

ノイズの状態は、Sにして5~7を行ったり来たり。5が消灯することはない。例のビリビリノイズはノイズブランカーオンで防げるが、それでもS4程度、更に帯域を思いっきり絞ってようやく全体がS2に収まるという半端ないすごさだ。仮にS2に収まったとしても、気持ち悪くて精神衛生上よくない。

いつもと違うのは、いつもの人工ノイズに加えて、今日は天然系のノイズが大きく上がっていることだ。ピュルルン系のノイズもかなり大きい。電離層の状態がいいのか、あちこちからノイズが飛来してくる感じだ。まるで、夏の南の島で運用している時に、最高にコンディションが上がっている時のようなノイズの出方である。そこにいつもの人工ノイズが加わるのだから、これはたまらない。

NP152局とはかろうじてQSOを完了、しかし、これでは今日は先が思いやられる。この駐車場を離れて、近場に行けばノイズを避けられるところはある。ノイズ対策用に、2013年の運用時に見つけておいた場所だ。しかし今日に限っては、天然系のノイズがほとんど上回っているようなので、おそらくどこに行っても同じようなものだろう。移動するのも面倒なので、その場でがまんしてしばらくQRVを続けてみることにする。これまでの経験則では、10時ごろになれば、少なくともジリジリ系の人工ノイズはおさまるはずだ。

伊那市からは、にいがたEJ206局のCQも飛んでくる。ノイズは手ごわいが、それを上回る変調音である。まさかここでEJ206局とつながるとは思っていなかったが、今日は同じゼロエリアでも伊那地区からサービスされるようだ。

それにしても、せめて人工ノイズぐらいは何とかしないといけない。87R片手に周囲をつぶさに探ると、ノイズの信号同士が相殺しあう?スポットがある。87RではS0.5ぐらいにおさまる。ごくかすかにホワイト系ノイズも混じっているようだが、ビリビリ・ジリジリノイズはなくなる。ただし、直系20㎝ぐらいの目に見えないスポットなので(笑、車のルーフに乗せた115のアンテナがそのスポットにくるようにするには、かなり車とリグ位置の調整が必要である(笑。

天然飛来ノイズが多いということは、やはり、電離層のコンディションが上がっているのか?おきなわYC228局が強力に飛来してくる。S7だ。しかも、ローカル信号のように安定している。ホニャラや英語局、エコー局もいつも以上により強力に聞こえてくるので、やはり電離層に何かが起こっていそうではある。

 北アルプス
 奥穂、北穂、槍ヶ岳
 中央アルプス
 南駒ヶ岳、空木岳、宝剣岳
 南アルプス
 中・前岳、大沢岳、兎岳、前聖、
 上河内岳



TT314局が聞こえてきましたが・・・

周りからは、要らない信号はたくさん聞こえてくるのだが、肝心の、2、3エリアからはだ~れも、聞こえてこない(笑。ここから四日市港は余裕だし、3エリアの800m程度以上の山なら交信可能なはずだが、だ~れもいない(笑。YC228局を呼ぶ、ヒョウゴTT314局がなぜか聞こえてきたのだが、どこから運用されていたのか、不思議なところだ。

2、3エリア、少なくとも高い場所には誰もいなさそうだ。昔は、OADといえば、こぞって山の上に上がったものだが、そんなことは遠い昔になりつつあるようだ(笑。

今日も「暇だろう」予測を基に、エアバンドレシーバーを持ち込んでいる。今日は2台である。南アルプス上空は、と言えば、関東から見て西行きの航空機の管制周波数が切り替わる場所である。普段聞いている関東西セクターの管制(120.5MHz)からだと、主に東海セクター(123.9MHz)への切り替えである。いつも聞いているのは、南アルプス上空に達した航空機に対する「Contact Tokyo Control, one-two-three decimal niner.」の指示と、航空機からの復唱までだ。

自宅ではいつも5チャンネルをワッチしているが、航空路管制については関東西と北だけで、その先のエリアまではワッチしていない。その先はどうなっているのか、気になるところだ・・・・と言っても、パイロットは切り替わった先の周波数で、まずは現在高度を連絡するぐらいの話なので、聞いたところで別にどうということはないですが・・・(笑。2台持ち込んでいるのは、関東西と東海セクターを同時に聞いて、普段は聞けない切り替わり前後の交信を確認するためである。

関東西(所沢)の方はもちろん航空機側しか聞こえてこないが、東海セクターは管制側もFBに聞こえてくる。東海セクターのRCAG(対空送受信所)は三河湾スカイラインの桑谷山と思われるが、FBに聞こえてくるということは、そことはほぼ見通しのようである。エアバンドでは管制側が聞こえてくるのとそうでないのとでは、月とスッポンの違いがある。管制も聞こえると、情報量は単純に2倍だが、面白味は3倍、4倍にもなるのである。もっとも、これは航空無線に限らず、コミュニケーション一般の法則だろう。

しらびそ上空は東西方向の航空機が良く飛び交う場所で、真上をひっきりなしに旅客機が飛んでいく。したがって電波は10Km程度先の真上から降りてくることがしばしばだ。信号は59++である。しかも今日は天気がいいので、飛行機もよく見える。エアバンドを聞くにもいい場所だ(笑。



大川入山、再び

11時を過ぎてからようやく人工ノイズは少しずつおさまってきたが、天然系ノイズの方は留まることを知らない。昼を回ってからはむしろ強まってきた感じだ。しかも今日のNTS115はいつにもまして、ノイズに敏感だ。試しに87Rを並べて比べてみると、115では常時S7ぐらい振ってくるのだが、87RではS0.5である(笑。87Rが壊れているわけではない。どうも今日に限っては、115のSメーターの方はノイズのピークに敏感に反応しているのに対し、87Rのメーターは平準化されて出てくるようだ。しかし、こんなに差がでたのは、未だかつて見たことがない。不思議な現象である。

それでも115を使い続ける当局(笑。ノイズのSも大きい分、入感時の信号も大きいからだ。そんなS7の「盛大な」ノイズと格闘しながらナガノSS360局との交信を終えると、正真正銘の強力な信号でお声がかかる。マツモトTK304局だ。ロケは大川入山(おおかわいりやま)と言われている。ウん~??、大川入山???・・・このロケと、このコールサイン・・・ピピピーンと瞬時に脳内ログが稼働する(笑。

「あ~、去年の今日も全く同じ場所から運用されてましたよね~」(当局)
「そうです、その通りです」(TK304局)

去年の今日は、当局は浅間山の黒斑山(小諸市)からだった。その時の運用記に記した通り、大川入山には少しだけ思い入れがあったので、記憶に鮮明だったのだ。もちろん、某KM117局の「脳内AI」の性能には到底及ばないが・・・(謎。

「去年はこんな場所から浅間山とつながるもんなんだと、しきりに感心していたので、つながったのはよく覚えていますよ~。」(TK304局)
TK304局のメモリーにも記憶が呼び出されたらしい。

大川入山(1,908m)は、登り2時間半~3時間かかる。大川入山でわざわざ運用されるということは、TK304局も2、3エリア向け狙いだろうか。しかし、今日のこのコンディションだとなかなか手ごわそうな感じだ。

左)87RでS0.5が、なぜか115では
  S7振ってくる(笑。

右)奥、中央左に恵那山、左端近くに
  大川入山


いつまでたっても山岳移動局は一向に聞こえてこないのだが、TK304局以外に唯一聞こえてきたのは、能郷白山(1,617m)のギフYK331局である。能郷白山とはなかなかFBな場所である。能郷白山は、大川入山同様、当局も2エリア時代に移動しようと思いつつ、結局叶わなかったロケである。交信をお聞きしていると、当然だが、9エリア側にもよく飛んでいるようだ。


そろそろ撤収の文字が頭をかすめだすころ、再びにいがたEJ206局と、ながのBN6局からお声がけをいただく。グッドタイミングだ。本日二度目、しかも終盤にコールをいただけるのは、非常にうれしい。ご挨拶かたがた、いろいろ話を伺っていると、やはり、ノイズに悩まされていたのは当局だけではないらしく、各局さん同じだったようである。今日はノイズに振り回された一日だったが、久々にしらびその秋の空気感にふれることができた。

なお、後から確認したところでは、ヒョウゴTT314局の運用場所は、兵庫県太子町の平地???だったようだ。(同局Twitterより。) だとすれば、おもしろい伝搬ではある。


10QSO、各局TNX!! (2022/11/6)

(文中敬称略)






運用データ


 ■運用日時・場所:

 
  ・2022年10月30日(日) 13:30~15:30
    千葉県南房総市大房岬
   ・2022年11月3日(木、祝) 7:00~14:00
    長野県飯田市しらびそ高原
     

 ■使用&装備リグ:
   CB : NTS115 (西無線研究所)
        ICB-87R (SONY ラジックス改新技適)

 ■使用&装備電源
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ah
   ・リチウムイオンポリマー電池11.1V/1.5Ah





QSO局
10QSO TNX!!  
(敬称略)

2022年10月30日(日) 晴れ     
おきなわZA35 (CBL) 51
2022年11月3日(木、祝) 快晴      
ナガノNP152/長野県伊那市伊那スキーリゾート  52/52  ながのBN6/長野県伊那市 56/53 
にいがたEJ206/長野県伊那市 53/54 おきなわYC228/JR6 57/56
ながのDF73/長野県伊那市 52/51 ナガノSS360/長野県伊那市 52/52
マツモトTK304/長野県阿智村大川入山 59/M5 にいがたEJ206/長野県伊那市みはらしファーム 55/56
ながのBN6/長野県伊那市みはらしファーム 55/56 ギフYK331/岐阜県本巣市能郷白山 58/59
  




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