しらびそ高原運用 (2008/11/3)


黄葉に染まる

峠道に入ると、勢いアクセルにも力が入る。快調に登っていくと、黄葉が道の上に覆いかぶさるように続く。道の向こうに視界が開けるとき、フロントグラス越しに見える山の斜面も、一面が黄色く色づいていた。側線のように真っ直ぐ道端に落ちた黄葉を、タイヤはスローに巻き上げながら、TVコマーシャルの車の一シーンのように走り抜けていた・・・・・なんて、かっこいいはずがないが、黄葉は文字通り見事だった。


長野県飯田市、しらびそ高原には国道152号からそれて、峠を15Kmほど登っていく。1,900mまで登りきると、しらびそ峠の標識と、大きなロッジ風の宿泊施設「ハイランドしらびそ」に到着する。7時50分。気温は4℃。南から湿った空気が入っているせいか、意外と数字ほど寒くは感じられない。車を降りて小高くなった駐車場脇の展望台に登ってみると、聖岳(3,013m)を始めとする南アルプスの山々が、高曇りの空の下に聳え立っていた。

MAP

東と西が開けた、展望広場兼駐車場に移動し、テーブルにリグをセッティングすると、高原の秋の冷たい風が時折吹き抜ける。8:20分過ぎ、100mWのRJ-270Dで、最初のCQを発信してみるが、何も返ってこない。朝一のCQはいつも空振りだなぁーと自嘲しながら、イスに座ってのんびりRJ-580の受信音に耳を傾ける。パーソナルも、時々信和のG7でサーチをかけるが、こちらも全く入感はなかった。「ピロロン」という、久々に聞くG7の操作音が、いつも使っているPR-900とは違った新鮮味を与えてくれた。


運用開始から30分以上経過する。西側の空を眺めると、伊那山脈の向こうに、恵那山と思しきなだらかな山頂が、頭だけ帽子のように浮かんでくる。しばらくすると、パソ機G7に、なごやCE79局と思われる声がポツリ、ポツリと入感し出し、朝の広場に響き始める。CE79局は、御嶽の中腹をモービル移動中のようだ。御嶽中腹とは、中央アルプス越えになるので、見通し外の回折波になると思われたが、高度を上げてCE79局の方で微妙に場所を選ぶと、M5で交信が可能になる。御嶽中腹は、300mほど高度も高いせいか、しらびそ高原よりはかなり気温が低いようだ。



展望台からの南アルプス 広場西側 パーソナル
東側は、3,000m級の南アルプスの山々が間近に迫る。 恵那山の山頂が月のように浮かんで見える。 G7を久々に稼動させる。

3エリア向けロケ?

空は天気予報通り余りパッとしない。手持ち無沙汰に、予備機で持参した87Rを持って、初めて運用する場所を確認しようと、場内をうろうろしてみる。西側の柵から眺める黄葉も美しかった。紅葉はなく、ほとんどが黄色一色だった。


柵沿いに歩きながら、ふざけ半分にCQを出してみると、なんとヒョウゴAB245局に呼ばれる。まさか、とは思ったが、やはり兵庫県六甲山からの電波だった。52/51で全く問題なくQSOできる。(見通し外269Km) 期待しないときに出すCQに限って一発で呼ばれたりするものである。

今日は、チバHI429局が、2エリアに遠征されており、三重県伊勢市の朝熊山に移動されていた。アイチHZ76局とQSOをされていたようだが、お声掛けするタイミングを逸してしまう。別チャンネルでCQを出し続けていると、HI429局/朝熊山からの信号が入感してくる。(164Km) しらびそ高原は、三重、3エリア方面とは相性が良いのか、HI429局の信号も力強い。掲示板で運用情報は拝見していたので、無事つながってほっとする。夜は寝付かれなかったとのことで体調は万全ではなさそうだが、2エリア運用は楽しんでいただけているだろうか。

奈良県の生駒山からは、オオサカAB404局のCQがずっと聞こえてくる。何度もお呼びするが、こちらからは残念ながら届いていないようだ。海外の混信とノイズが徐々に厳しくなってきていたが、同じく奈良県荒神岳のオオサカHNC24局とは苦しいながらもつながる。(見通し外271Km)


出た!カレー高原(笑)
朝昼兼用の握り飯を食べて、コーヒーを飲んでくつろいでいると、RJ-580にナガノNP152局が入感してくる。鹿嶺高原からだった。いつになく少し弱めの信号だが、しらびそ高原からだと、北方向にずれるに従って、ロケ的には厳しくなるので距離は余りないとはいえ、やむを得ない感度だった。鹿嶺高原移動のNP152局と交信するのは、’07のSV以来だ。あのときはカレー高原なんてあるのか?と仲間内では大いに話題になった(笑)。海外のかぶりとノイズも厳しい。ショートQSOとなるが、NP152局と0エリア同士でつながるというのもまた格別なものがある。

不思議な飛び

12時からは伊勢湾ロールコールが予定されていた。13時からと思いこんでいたが、各局の話を聞いていると、どうも12時からのようである。確認しようにも、しらびそ高原は携帯圏外なので、外の世界は全く分からない状態だった。(圏内になることもあることが後に判明)12時前にパーソナルでCQを飛ばしてみると、三重県伊勢市朝熊ヶ岳のKey局イワテB73/2局とつながる。これでRCは12時からであることが確実に判明(爆)。B73局は、当局とのQSO終了後に、しずおかCV22局(伊豆半島達磨山)と交信されているようで、パーソナルも何気によく飛ぶものだと感心する。

12時から4ChでRCが始まった。チェックイン局を聞いていると、アイチAE126局がチェックインされているようだ。おや、今日はてっきりCMかと思ったが、前日の長野県平谷村移動に引き続き今日も移動されているようだ。しかし、なぜかAE126局の信号が全く聞こえない(笑)。キー局によると「AE126局/四日市港移動」と言われているので、本来楽勝で聞こえるはずなのだが…。実際、午前中には同じ四日市港から、ミエAA469局とは55/54でQSOできていた。同じ場所(地区)でもこんなに入感の仕方がことなるものなのかなぁ、と不思議に思う。AE126局とは、後刻別チャンネルで53/53で無事つながるが、後に聞いてみると、RC時も全く同じ場所から電波を出していたらしい(爆)。摩訶不思議である。


午後のひととき 午後のひととき 黄葉
晴れ間が顔を出す。 聖岳(3,013m、中央右端)もくっきりと頂を見せた。 西側も一面黄葉だった。

ハートは59で伝わる

風は時折吹いたりするが、秋の雰囲気にはちょうど良いお膳立てだったかもしれない。午後に入ると、雲もだいぶ薄くなってきたようだった。聖岳の背面にも少しだけ青空が顔をのぞかせていた。テーブルの温度計は、薄日がさすと、8度台まで上がるが、少しでも陰るとすぐに6度台に落ちる。高度計は1,925mから徐々に下がってきており、気圧が緩やかに上昇してきていることを暗示していた。


ぶらぶらと、87Rでワッチしていると、えひめCA34/3局のCQが、時々混信に邪魔されながら聞こえてくる。「今日のOADは移動できるか微妙」という情報は掲示板で読んだ気がするが、時間を見つけて京都の特小レピータ近くで運用されているようだ。早速コールしてみるが、なかなかコールサインが通じない。こちらは、混信も弱まり、オールコピーで聞こえてくる。「ポータブルゼロは分かっていますが、『ながの』ですか『なごや』ですか?」こちらも「なごやのな、こどものこに濁点、やまとのや、ヤンキーキロ…」と、必死にコールを続けるが、それでも通じない(笑)。「ポータブルゼロの局長さ~ん~」、とCA34局もあきらめずに時間をかけて必死にとってくれようとする。その姿勢がなんとも、ありがたく感じられた。

おそるべし、旭丸峠!

空のコンディションは、朝10時過ぎから、ずっとロシア語やら、南方系やら海外の混信が激しかった。それでも比較的ましなチャンネルで、CQを出していると、トクシマ局よりコールを頂く。さて、Esでもないし、2エリアぐらいにどなたか5エリアコールの方が移動されているのかと思いきや、本当に徳島県からだった。海外につぶされて、コールの数字を取るのに時間がかかったが、混信がなければ信号自体ははっきり聞こえてきていた。「トクシマ局」は、トクシマMN72局だった。旭丸峠移動と言われている。旭丸峠で思い出したが、たしか10月12日に福井県部子山移動のアイチAE114局と交信されていた局長さんだ。(そのときは、当局(滋賀県霊仙山移動)には入感がなく、さびしい思いをした。(笑))今回はつながったぞと思うが、受信に入るといかにも海外局が騒がしい。

トクシマMN72局とQSOの最中は、5エリアと交信できて嬉しいな、という思いだけで、距離などはあまり気に留めなかったが、家に帰って何気にカシミールで測ってみてビックリする。みると、MN72局のピンポイント位置は分からないが370Km以上はある。(377.2Km‐MN72局ブログより)一瞬カシミールが壊れたのかと思ったが、しらびそ高原は、見方を変えると、山梨県甲府市とは50Kmほどの距離なので、徳島とはそのくらい距離があってもおかしくないのかも知れない。おそるべし、旭丸峠! といっても、当局は「旭丸峠」のことは何も知らないのである。さほど標高も高くないようだが、いったいどのようなロケなのか、気にかかるところだ。

某局信奉リグ

テーブルのRJ-580は相変らずサーという感高い音をたてていた。高選択度特性からくると思われるこの音を聞いていると、真面目に造られた無線機だなーといつも感心するのだが、入感局があるたびに、87Rで比較のチェックをしてみると、87Rのほうがよほど聞きやすくて感度がいい(笑)。いや、恐らく感度は同じなのだろうが、復調音の線が太いので、より聞きやすいし、信号も強く感じるのだと思われた。そんなことを言うと、580信奉者の某アイチAE126局、ではなかった、某アイチ局に怒られそうだが…。

出かける前のリグ選定では、長丁場、のんびりワッチするのには580のこの音は、少ししんどいかなと思ったが、最近出番がないので、敢えて今回使ってみることにした。しかし、結果終わって気付いてみると、いつの間にか、QSOの殆どは「予備機」で持参したはずの87Rでこなしていた(笑)。貧乏性が災いしてか、テーブルに580は据えたものの、イスに座ってじっとしている時間は殆どなく、87R片手にあちこちうろうろしていた。とても昼寝どころではない(爆)。

JA01局と

14時頃になると、バンド内もだいぶ静かになってくる。御嶽中腹の2エリア移動部隊(なごやCE79局、アイチAE114局、ギフAA365局)も寒い中まだがんばっているようである。柵に寄りかかり、南アルプスを眺めながらCQを出していると、ナガノJA01局よりコールをいただく。お聞きしていると、当局の移動情報を見て、わざわざ確実にQSO可能なポイント(下伊那郡高森町)まで移動していただいたようである。標高750m前後とのことだが、確かに、伊那方面には、間に伊那山脈が走っており、平地からは交信は厳しいと思われた。しらびそから飯田市方面に出るにも山脈を一つ越える必要がある。

JA01局からは、長野地区の移動地情報をいろいろいただく。目の前に見えている伊那山脈を越える林道の峠にも、FBな運用ポイントもあるようだ。その方向に目をやると、伊那山脈の山々が、既に西に傾き始めていた太陽の逆光の中に見えていた。

リグをすべて撤収し、ひとつ残った87Rで、最後に名古屋市内千種区移動のギフAC114局と交信する。早朝、自分が出てきた自宅近く、しかも自分がよく運用する場所と交信するというのも奇妙な感じがするが、一日の運用を締めくくるのには、ちょうど良かったのかもしれない。
                                                    ('08/11)







運用データ
運用データ
2008年11月3日 8時20分頃~15:20分頃
リグ:
CB:RJ-580、RJ-270D、ICB-87R、
パーソナル:信和SC905 G7、アンテナ:SG900N
特小:DJ-R20D

運用場所:
  長野県飯田市上村 しらびそ高原
  ハイランドしらびそ横(標高約1,910m)

  



ロケ:しらびそ高原

標高1,900m+αの山脈の尾根上に位置します。市町村合併で現在は飯田市になってはいますが、市中心部からは程遠い、かなりの東部域になります。高原と言っても高原らしい、原っぱはありません。近くに、日本で唯一?のクレーターが確認できる場所があることで、知っている人は知っている、という程度の場所でしょうか。峠の頂上には「ハイランドしらびそ」があり、山歩きや登山、天体観測等のレジャーの拠点になっているようです。今回は「ハイランドしらびそ」横の、展望広場兼駐車場からオンエアしました。

無線用途:下調べでは、東側は南アルプスが壁のように立ちはだかり、南は尾根が続きます。かといって、近くの飯田や駒ヶ根の長野県南部方面によいロケかと言うと、間に1,700~1,800m級の伊那山脈が走るため、下伊那地区からでも平地局との交信は厳しそうでした。北側は更に高い山々の尾根が連なるので、北信方面にも飛びそうにはありません。名古屋方面はどうかというと、愛知との県境近辺には、蛇峠山をはじめとして、1,400~1,600レベルの山々が間に入るので、こちらも平地移動局との交信は厳しいことが想定されました。

しかし、以前からここで運用してみたかったので、今回は、最近のCM疲れをいやすべく、日帰り温泉狙いと、のんびり半分昼寝でもしながら運用しようか、と不謹慎なことも考えながら、移動してみました。

視界は真北と真南以外は広角で開けており、特に東には南アルプスの眺望が堪能でき、残雪シーズンなどは観光としてはすばらしい場所と思われます。無線運用した印象としては、やはり、北西から南南西向きの角度のロケといえると思います。




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