[陽が昇り、しばらくすると海が輝きだす。]
SV:みちのくデー?
運用としては今日が最終日だが、いよいよSV本番だ。今回は、沖縄運用と違い、デジ簡も装備している。対馬海峡越えに本州や九州とQSOするためである。従って、運用ポイントは海沿いというわけにはいかない。ある程度標高を稼ぐ必要がある。いろいろと事前リサーチを重ね、QRVポイントは、対馬のメインゲートである厳原(いづはら)の南、直線約5㎞ほどに位置する板置峠に設定する。標高400mポイントだ。ここは林道が、ヘアピンに近く東の海方向に突き出た場所で、車が4台程度駐車できるおあつらえ向きのスペースがある場所だ。本州から九州方向をカバーできる、北北東から南南東方向がよく開けている。
SVなので早朝運用が重要だ。4時過ぎに、QRVを開始する。しかし、天気がどーも悪い(笑。4時前までは雨がバラバラと降ってくるし、強さにかなり波があるものの基本的に強風状態だ。暗くてわからないが、雨雲が塊となって吹き抜けているようだ。標高400mとはいえ、島では山岳域に入るからかもしれない。引き続き時々雨もぱらついてくる。しかし天気だけは致し方ない。そこはSVと割り切って運用を続ける。
運用開始1時間、DCR、CBでCQを時々出してみるが、応答はない。ノーメリットは別によいのだが、風が強いのには閉口する。車のルーフに設置した707があっという間に突風で吹き飛ばされてしまった。それも2回も(学習効果がない?笑)。2回とも地面にたたきつけられたものの、アンテナも含め奇跡的にほとんど無傷だ。外部電源運用なのでもともと飛ばされやすいのだが、飛ばされた場合は乾電池仕様より自重が軽いので、それが幸いしたのかもしれない(笑。
5時半近くになりようやくDCRのCQに応答が返ってくる。フクオカAA752局だ。当局の対馬運用の情報をどこかで入手されたらしく、DCR波の到来を待ちかまえられていたようだ。(TNX!752局)AA752局はマクロ的には福岡空港の近く須惠町、当局側は5エレ八木に5W運用である。バー2本が立つか立たないかの強力入感だ。海峡越えはQSOとしては全く問題ない。AA752局は、ハンディホイップでも実験されたいということで、後から再びハンディホイップでも出てこられるがこちらもM5で全く問題なしだ。しかも2階ベランダからとのことである。さらにその後、福岡市近郊モービルでも途切れなく受信できたとのレポートを頂いた。TNX!AA752局。
CBの方はこの時間、Esはまだ眠りについたままなので、頼りになるのはグランドウェーブだが、相変わらず時々出すCQはすべて空振りだ。ようやく6時過ぎに佐賀県唐津市内からサガAA229局にコールを頂くが、なかなか他には運用局はおられないようである。しかし今日に関してはEsの立ち上がりが早い。6時40分にはすでに8エリアからサッポロHS45局が入感し始める。
その後は7、8、1エリアが続々と入感し始める。8と1、7と1エリアのQSOが両局とも聞こえてくる。8Chは混沌としてくるが、こちらからはいくら呼びかけても応答はない(笑。Esが聞こえてくる割には、ピュルルンなどのこちら側のノイズレベルは上がっていないので、Esはどうも関東より西には存在しないようである(笑。「これは南に下りてくるのを待つしかない」、とワッチを決め込む。その間も、さながら「みちのくデー」のように、7エリアを中心にEsは花盛りだ(笑。
DCRは大分県玖珠町の伐株山(きりかぶやま)移動のオオイタAA417局よりコールを頂く。こちらもM5で全く問題ない。佐賀(CB)や大分の局長さんとGWでつながるというのは、6まで移動してきた甲斐があるというものだ。
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中:スーパーの袋は、中のペットボトル2本で707の飛散防止の重しにするため(笑。 車の脇に設置しているのも風よけのためである。 右:10:30過ぎから車を移動し、デジ簡直下で運用。画面右が東方向になる。 |
八木はどうなのか?
アマではV/Uはやらないので、この周波数で八木を使うのは全く初めてである。HFでは、水を打ったような静けさの中から突然信号が湧きあがってくるような感覚を味わえるのは、八木の醍醐味の一つだ。当局は基本的にバーチカル愛好派だが、無指向性アンテナはどうしてもノイズを拾いやすい。DCRの場合、もともとスケルチが効きまくっているので、HFと同じ意味での醍醐味はないが、飛びという面ではそこそこ役に立つのかもしれない。
5エレ(Radix)は公称ゲイン11.15dB、F/B比は19dB(以上)である。5エレは第一電波からも販売されているが、Radixの方は、指向特性図を見る限りは、右後ろ、左後ろのローブが若干大きく、フロント特性も第一電波の方がややシャープに見受けられるが、まあ、そんなものは誤差範囲だろう。第一(シャレではないが)、第一の方は基本的に固定用の5エレであるから、そんなものを移動用に使うのは面倒である。また、第一の方はF/B比の記載がない。そもそもカタログ値などは参考程度にしかならない。特にモービルアンテナのゲインなどは、理論値だけのいい加減さそのものだ。以前パーソナルが全盛だったころは、よくあるトラブルとして、コネクタのはんだ付けがいい加減だったり、細いケーブルを不要に長く使っていたりと、リグの出力は5Wでも、アンテナ直下では1Wも出ていれば御の字というケースがよく見受けられた。パーソナルの半分以下の波長のDCRではそれほど問題にはならないが、ゲインを気にするくらいなら、そうした基本的なことにもっと留意すべきだろう。
実際のところはどうなのか。移動のちょうど一週間前のことである。西東京市の自宅で移動運用用の荷物をパッキングしていると、堂平山移動のサイタマR32局より、たまたま窓辺においたパッキング待機中のDPR-5に入感がある。これはチャンスとばかり、慌てて八木を組立て、屋上で入感状況を実験してみる。正面はバー2~3本、180°(つまりリフレクターが正面)方向で、バー0~1本、90°方向でバー1本といったところである。135°方向が最も弱く、バーは立たないが、受信の上では全く問題ない。垂直偏波のせいもあるかもしれないが、5エレのサイドの切れは、もともとこんなところである。
DCRでは、山口県華山(げさん)移動のヤマグチAZ431局、そして瀬戸内海に面した岩国市銭壺山移動のやまぐちLX16局とQSOさせていただく。後から確認したところでは銭壺山とは271kmほどの距離だ。距離的には見通しなら、ハンディホイップでも楽勝の距離だ。ただし、銭壺山と板置峠は、下の通り、完璧な見通し外である。飛びという意味では、八木が少しは役に立ったのかもしれない。
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左:オーソドックスなガンママッチ |
各局TNX!
CBの方は、9時前に同じく対馬移動のオオサカHNC24局(上見坂公園)とご挨拶させていただき、しばらくワッチを続けていたが、10時過ぎからようやく、Esが南下?してきたようで1から8への応答がなくなってくる。すかさず、さいたまMK2/8局(北斗市)、サッポロTP7局とQSOいただくが、すぐにコンディションは落ち気味だ。しかしコンディションは落ち切ることはなく、12時近くになると、1、2、7エリアが再び活況を呈し始める(笑。久々のQSOとなるシズオカYM181局、八丈島からはとうきょうCT73局もFBに入感してくる。SVはこれまで山岳移動がメインだったので当然GWが中心だが、今日ほどEs中心のSVも珍しいのではないか?これならどこにいても、かなりの局と交信できそうな感じだ。
昼を過ぎてからは風も弱まり、薄日もさし始めていたが、夕方、運用を終えて空港の近くまで戻ってくると、また夏の日差しが戻っていた。近くの漁港に寄って、試しにワッチしてみると、えひめCA34局/京都のCQが飛び込んでくる。最後にCA34局とのQSOで対馬運用を締めくくることができた。QSOいただいた各局TNX!!
最後にCA34局とつながる。漁港では子供たちが、防波堤から飛び込んだりと、海水浴を楽しんでいた。
© Nagoya YK221
2013対馬