D



  追直漁港にて





SVが始まる 


 東海770DXを借り受けて、最初に試運用した時の印象は、周波数の選択度特性がいい点と、AGCの効き方がかなり平準化されており、絶妙な効き方をするということだった。沖永良部島に持ち込む前の、自宅近所でのわずか10分ぐらいの試運用だった。リグをもう一台用意して、1~2mとなりで、別のチャンネルで送信しても、770DXのSメーターはほとんど振れることはない。通常のリグなら、隣のチャンネル等で至近距離から送信されれば、ひずんだ再生音とともに、強制的に音声まで再生されてくるのが関の山だ。

トラックの違法局の電波は、周波数が幅広く放射されるので、合法チャンネルの周波数ドンピシャにもそのエネルギーの一部が乗ってくるのだが、なぜかこの770DXは、違法の方はあまり拾わずに、合法の信号をレベル差を以て再生してくれるのが特徴だ。最近のリグは、通過帯域幅を可変させるフィルタリングがついているわけで、例えば、NTS115は、狭帯域フィルターを積んでいるわけではなく、フィルターの上側と下側から同時にIFをシフトさせて帯域を絞るという方法だが、770DXの再生音を聞いていると、はたしてそのような仕組みが必要なのだろうかと思えてくるくらいである。実際、770DXには付いていない。もっとも、当局の場合、115のフィルターは意外に重要だ。ただし、それは選択度を上げるためではなく、AF再生音のひずみを緩和させるのがメインの目的である。



日曜日のSV本番は、まずは、室蘭市最南端にある、追直漁港からだ。この漁港は南側が海に面しており、本州方面と交信するには都合が良いはずだ。770DXを車のルーフに展開してみると、朝から電離層は絶好調だ。1~8Chすべてが、合法局の混信だらけ、高い山の上にいるときにGWがどのチャンネルでも聞こえてきて、CQを出す隙間もない時と同じ感じだ。それが電離層反射で起こっているわけだが、同じチャンネルから聞こえてくる局の数からすると、「高い山」をはるかに超越しているようだ(笑。6時前にQRVを開始したものの、30分もすると、こちらからの電波も55~59で飛んでいるようで、ややもすると、他局への大きな妨害になりかねない。最近ではコンディションがこれだけ上がるのも、めずらしい。大混信大会だ(笑。

ここまでコンディションが上がると、すでにQSOを終えていたトウキョウAB505局(埼玉県二宮山)も大胆な行動(笑)をとられたようで、50mWで室蘭まで飛ばしてこられる。東芝の52Aのようだが、RS52/52だ(笑。

バンド内は余りの局数なので、こちらから電波を出すのはしばらく停止、ただ、折角の大混信大会なので、NTS115を770DXと並べて、比較のために同時受信を試みてみる。今回、115用には、「試作第4弾」の外付けスピーカーを持参している。これまで115用には、「試作第2弾」のスピーカーを常用してきたが、各局の信号を受信してみると第2弾より聴感的にアバウトに2dB近く能率が上がっているような感じだ。薄型設計なので、駆動ユニットも近く、パッシブラジエーターも中低域面でそこそこ効果を発揮しているようだ。一応第2弾より良い方向へ向かっているということか?(笑。115は総合的にAF能力が非力なので、このリグを聞くには2dBは結構大きな差である。

こうして、リグを並べて聞いていると、やはり各々の特性がよくわかる。770DXについては、冒頭に記したような特性だ。NTS115も相当よくできたリグで、これを使っている限り送受信性能(AF再生を除く)については、なんら不満はなく満足度は高い。しかし、個人が新技適化したリグで、それを上回っているというのは、やはり恐るべし770DXだ。

770DXは、DD23局が相当改良しているとはいえ、基本形は40数年前のICB-770のアナログ回路技術だ。PLL+DSPの送受信機が普通である現在でも、完全アナログの回路技術はまだ太刀打ちができるということで、アナログであるからこそ、回路の応用範囲が広がっているとも思われる。帯域幅が6KHzという、AMに特化した回路は、まだまだ奥が深いということかもしれない。




前ページ  次ページ     



© Nagoya YK221

 SV2021 アポイ岳