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  月に灯台





オニイさんTNX!! 


 えりも岬は、365日、24時間、強風が吹き荒れることで有名な場所だ。風を避けるために、QRVポイントも灯台のある岬の上のほかに、バックアップでいくつか他の場所もあらかじめ検討済みだ。海に突き出た岬の下には、さらに水に近いFBそうな場所もあるのである。

金曜日の夜、ぶらりと訪れてみる。えりも岬に来るのは、学生時代以来、なんとなく感慨深いものがある。昼間に来れば、木のない草原状の岬は清々しく美しく見えているはずだ。QRVは明日だが、夜来た目的は、その下見だ。駐車場内のどこに車を停めるのかと、ノイズの具合をチェックするためである。灯台の脇にはレーダーもぐるぐると回っているのだが、11mは静かでノイズレベルは全く問題ない。夜のせいか、風も比較的穏やかだ。

真っ暗な広い駐車場には、車が3台だけ、そのうち2台の白い車は、金曜の夜を仲間とおしゃべりするため?連れだってやってきた、若いイケイケ風のオニイさんたちだ。明らかに、仕事が終わった後か何かの、地元のオニイさんたちである。

ノイズをチェックしながらうろうろしていると、車の前で仲間と話し込んでいた一人が、つかつかとこちらに近寄ってくる。30m位離れているので、結構な距離なのだが(笑。しかし、茶髪で、いかにもイケイケのヤンキー風とも見間違えられそうな、そのオニイさんが発した言葉は、驚くほど普通のことばだった(笑。

「どこから来られたんですか?」
やや、躊躇して「東京の方から・・・」と答えたものの、コロナなど一向に気にする様子もない。
「せっかく来たんだったら、朝、コンブ漁を見るといいですよ。そこの下の港から、漁船が合図とともに一斉にスタートするんですよ。なかなか壮観で、面白いですよ。明日は風は、こんなもんじゃないと思いますが。」
「それはいい話を聞きました。わざわざ、ありがとうございます~。朝の何時ですか?」
「4時45分です。」





果たして、土曜の朝4時45分、防災無線のような放送塔からサイレンが鳴り響くと、港の防波堤の外で待ち構えていた漁船が一斉にスタートした。各船、希望する場所へまっしぐら、やはり場所取りが重要なのだろうか。漁船の数はもうすこし多いかと思ったが、それでも、日の出から30分、まだ遠くに穏やかに輝く岬と水平線を背景に、漁船がダッシュしていく姿は、当局のようなよそ者にはかなり印象的だ。昨日の情報がなければ、こんな光景に出会えることもなかっただろう。昨夜、言葉をかけてくれた親切なオニイさんには感謝だ。


今朝のえりも岬は、奇跡的に風がほとんど全くない。したがって、昨日の夜に目星をつけていた、駐車スペースで予定通りQRV開始だ。崖にもっとも近い角地の駐車スペースである(どこのスペースでも変わりないと思いますが(笑。)。 ただ、細かい水滴の粒の霧の中にいるため、東海770DXを出すわけにはいかない。リグに何かあってはDD23局に申し訳ない。NTS115で運用開始だ。

7時前、QSOはトットリAJ683局からスタートする。浅い反射から入り、1、2エリア側に近づいてくるというパターンは昨日と同じなのだが、どうも各局入感が薄く、聞こえてくる局は昨日に比べると圧倒的に少ない。最近は、本州側から見た8エリアとのパスは、早朝がいいらしいが、今日に関してはなかなかコンディションは上がりきらないようだ。

8時ちょうど、漁船向けにコンブ漁の終了を合図する放送が、岬にも鳴り響く。しかし、時間の経過とともにコンディションは更に下り坂、9時以降はパッタリ、聞こえてくる局さえなくなった。

コンディションが落ちている間に、豊似湖まで足を延ばしてQRVしてみるが、全くのノー感状態だ。豊似湖は、「白い恋人」の石屋製菓のコマーシャルで有名になった、ハート型の湖(ハートレイク)だ。もちろん空から見ないとハート型であることは分かりませんが(笑。


左、中: 最初はNTS115でQRV開始。霧が晴れてきたところで、770DXを投入するが・・・
右: 人っ子一人いない、静寂さに包まれた豊似湖。87Rにも、感なしだ。





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