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  そこまで歩いて行っても、ただ一人だけです。                       (焼尻島オンコ海道)




光の島 


 羽幌から焼尻・天売島までは、フェリーが2種類就航している。一隻は車を搭載できる普通のフェリー(ただし8台のみ)、もう一つは旅客のみの高速船だ。COVID-19で減便されているが、この4連休だけは両方合わせて1日4往復のダイヤだ。

焼尻までは、通常のフェリーで1時間ほどの距離。甲板上では87Rを展開、MMを試してみる。CQを出してしばらくすると、いきなりガガ~ンと、超強力59+で応答が入ってくる。ひょうごCY15局さんだ。なんと、いままさしく、フェリーターミナル(FT)におられるらしい。どうもお互い知らないうちにスライドしていたようだ。当局がFTへやってきたとき、B73局はすでにおられず、出航まで時間的余裕もなかったので、当局は運用もせず車の中で乗船待機していたのである。お互い気づかなかったのも無理はない。CY15局さんはこれから留萌へ向かわれるという。留萌と焼尻とで、またあとでやりましょう、とQSOを約束する。

フェリーは波の上を快走している。海は鮮やかな紺色なのだが、やがて逆光で白く輝く光の中に焼尻島が浮かんで見えてくる。夏の光だ。関東地区はまだ梅雨も明けておらず、雨の日や日も差さない日が続いている。東京より北海道の方が夏を感じるというのも不思議な感じだが、この快晴こそこの時期の夏の姿のはずだ。北海道にいるはずなのに、なぜか南方の、いつもの沖縄あたりの離島運用を行っている気分だ。日は燦燦と舞い降りてくる。

 
 


焼尻島も、一般的な他の島と同様、海沿いに島を周回するように道が敷かれている。島の東端にある港から、時計回りに回っていくと、灯台脇を抜けて、白浜海岸、そして西端の鷹の巣園地へとつながっている。途中からは車が一台通れるだけの、道路というより公園内の散策路のような風情だ。もともと島全体が岩場なのか、オンコの荘と呼ばれるイチイの原生林を除き基本、木々のない高原様の台地だ。ここでは羊も放牧されている。そして西へ向かうほどに、そのすぐ台地の先には海を挟んで天売島が圧倒的な存在感で目に飛び込んでくる。今度はさっきより少しだけ西に回りこんだ光が、天売島を白い海の向こうに浮かび上がらせている。

焼尻での最初のQRVポイントは、島の南側に面した、白浜海岸だ。海岸といっても、崖から降りたところに猫の額ほどの砂浜があるだけで、基本的には岩場だ。本州側に面して水際に近づける場所は、ここか港くらいしかないのである。(港も東に面しているので、南向きには厳しい。)

NTS115からCQを飛ばしてみると、さっそくひょうごCY15局さんから、お約束通りお声がかかる。51/53。留萌まで50~60Kmぐらいだろうか。こちらは、海面上数十センチ、むこうも恐らくせいぜい数メートルぐらいだろう。陸上の市街地なら考えられないことだが、なんなくつながるのが海上伝搬の凄いところだ。ただ、Esの方は夕方のコンディションとしては、かなりおとなしいようだ。

焼尻からのEs一発目は、フクオカTO723局だ。RS51/52。いつものように四六時中モニター体制をとってくれている、しずおかDD23局からもコールがかかるが、こちらも52程度の入感だ。結局今日のところは焼尻からEsでは3QSOにとどまるが、どうもコンディションが悪いというより、大雨だったりと内地の天気が余りに悪すぎて運用局が少な過ぎるようだ。明日はいよいよ天売島に日帰り移動(笑。明日に期待をかけて、体力温存。フェリーに乗るには検温されるので、絶対に風邪はひいてはならない(笑。

運用を切り上げてオンコ海道に向かってみる。利尻岳が遠く浮かんで見える。誰もいない広い大地を、通り過ぎる風だけが聞こえる。日没まであと一時間というのに、それでも夏の光はまだ燦燦と降り注いでいる。海は吸い込むようにどこまでも紺色に、そして大地はどこまでも緑色に輝いていた。


 





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