「北海道」のイメージとは?


それはスケールの違う広大さ、例えば美瑛の丘に代表されるような、いわゆる異国情緒漂う日本離れした光景なのかもしれない。北海道に足を踏み入れるのは、よく考えてみると実に20年ぶりだが、当局のイメージの根底にあるのもウン十年前に学生時代にうろちょろしていた、広大で原初的な美しい光景だ。それは例えば、ウォークマンでブライアン・イーノを聞きながら砂利道を歩いて訪れた霧多布岬の灯台かもしれないし、北大に進学した高校時代の親友とともに訪れた、礼文や天売・焼尻の丘の花の光景かもしれない。

霧多布岬も昔とはずいぶん周りの雰囲気が変わってしまったようだが、そのイメージは映画「ハナミズキ」(2010年公開)で、新垣結衣と生田斗真が演ずる主人公らのキスシーンに出てくる灯台そのものであるし、そうした自然の光景だけでなく、映画「僕等がいた」(吉高由里子、生田斗真主演 2012年公開)に出てくる、何の変哲も無い、住宅街のシーンや『釧路第一高校』の屋上の向こうに見える光景などには、やはり北海道らしさを感じる。

二つの映画ともなぜか、釧路を舞台とする、遠距離恋愛もののストーリーで、離れ離れになった二人が紆余曲折を経て、最後に結ばれるという物語である。「僕等がいた」のカメラワークは特に秀逸で、時々挿入される無機質な雪の校庭や町並みの遠景のカットシーンなどにも、それが北海道が舞台であるという先入観があるせいか、北海道らしさが良くでているように思える。


SVはまたしても、CMの出張でご破算。今年も例年通りナガノNP152局さんと合同運用すべく、南アルプス仙丈ケ岳の山小屋も予約していたのだが、すべてパーだ。その腹いせに、翌週末は強制的に北海道利尻・礼文に移動することにしてみる。利尻ではついで?に利尻岳(1,719m、百名山)に登って、頂上からQRVするという計画だ。といっても移動を決めたのは、移動開始の4日前、月曜日(7月30日)のことである(笑。



8月3日(金)

20年ぶりに北海道の大地に足を踏み入れたのは旭川空港だ。ここから稚内へと車で向かう。飛行機の遅れで出発したのは10:15分、稚内までは250Kmほどだが、利尻島鴛泊港行きの最終フェリー(といっても16時過ぎ)に間に合わせねばならない。車を選んだのは、列車で移動したのでは最終フェリーに間に合わないのと、久しぶりに北海道の大地のドライブを楽しむためである。また、車なら好きなところ、好きな時間にQRVすることができる。昔は急行「利尻」という夜行列車が札幌から走っていて、時間はあってもお金が無い当局などには重宝したが、それも今は廃止されてしまったようだ。

今日はウイークデーなので、お昼の12時まではコンディション確認・QRVは一切せずにとりあえずは先を急ぐことにする。昔は、名寄ぐらいまではもっと人家が少なかったような気がするのだが、気のせいか?

12時を回ったところで、音威子府近郊でいよいよ初QRVだ。国道から畑へ通ずる脇道にヴィッツを停めて、さっそく87Rのスイッチをいれてみる。・・・ん~、静かだ(笑。異様にダイナミックレンジも広い。しばらくソバの花咲く畑を眺めながらCQも出してみるが、コンディションが上がりそうな気配は微塵も無い。上がりそうも無いコンディションで粘っていても仕方ないので更に先を急ぐことにする。

しばらくは天塩川に沿って北上、ここら辺まで来ると人跡未踏の趣で昔と違わぬイメージだ。ところどころにある駐車帯でQRVしてみるが、相変わらず、信号らしきものは何も聞こえてこない。それにしても、どの駐車帯にも必ず公衆電話が置いてあるのは、ひょっとして携帯が通じないということか???

旭川空港から4時間ほどで稚内に到着、結局87Rの方はQRVポイントで何も入感が無いままだ。ノシャップ岬でもQRVしてみるが、違法はおろか南方系も聞こえてこない。かすかに中国語系?の信号が低チャンネルでかぶってくる程度である。旭川を出るときは今にも雨が降りそうな気配だったが、ようやく雲が少し切れ始め、利尻岳の上部も海の向こうに見え始めてきた。


金曜日は暮れようとしている。87Rは相変わらず寡黙なままだ。この時期になると、Esはすでに終わりに近いので、コンディションに対する期待は特に無い。上がればラッキーだし、上がらなくても普通だ。利尻島の北端に車を停めて、礼文島の上に沈んでいく夕陽をじっくり眺めていると、そんなことはどうでもよく、今朝まで山手線に乗っていた自分が今こうして礼文に沈んでいく夕陽を眺めているのが不思議に思えてくる。

果たして明日は晴れるのか?うしろを振り返ると利尻岳が覆いかぶさるように迫っている。





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