【大満虚空蔵菩薩 福田堂 (宮城県丸森町大張)】




まだまだやります!(笑



昨年3月の泉ヶ岳運用及び5月の仙台運用では、仙台で東京のFM放送局を聴くというのがテーマだった。仙台市内でガツンと東京FMは捉えることができているものの、当然二回や三回程度では分からないことだらけで、逆に疑問は増えている。行った後に、「あれも調べておけばよかった」、「あそこも調べておけばよかった」と気付いたこともたくさんある。

そこでもう一度聴きに行ってみようという企画だが、ただし、今回は日帰りなので時間は限られている。そこで、仙台市内での受信はまた別の機会にやることにして、今回はあれもこれもと欲張らずに、とりあえず放送局は東京FMのみにフォーカス、更に地域も宮城県の村田エリアまでに限定して、もう一度聴きにいってみようという寸法だ。

そもそも回折波というのは、あちこちに、それぞれのルートでたくさん飛んでいるので、1点の受信点での受信にこだわってもあまり意味はないのだが、それでも、昨年5月の仙台運用(以下「前回調査」)後でも、村田エリアに関しては、やはり次の二点が引き続き気になるところだ。

1)村田Kポイントはなぜそこだけ聞こえるのか。そこは永続的に聞こえる場所なのか。
2)村田ポイントは、なぜ一つの点で、東京FMとJ-WAVEの両方の波が強く聞こえるのか、つまり、東京タワー発射の電波とスカイツリー発射の電波がなぜ全く同じ場所で強く聞こえるのか。

1)、2)の両方の疑問とも、受信できる、もしくは強く聞こえるのがピンポイントの「点」であることからすると、一般論としては、単純に考えれば複数の特定の場所からの複数の回折経路及び/または回折波と地面の反射波の位相が強め合う、もしくは反射波が邪魔をしないポイントであると考えられる。

東京タワー及びスカイツリーからの電波の両方とも、一貫森~女神山間の稜線からの回折と考えられるが、例えば東京タワーから見た場合、一貫森と女神山の角度差は、約0.3度だ。しかも、この一貫森から女神山の稜線上には無名の540m峰や580m峰などの回折に適したピークが幾つもある。したがって、村田ポイント、村田Kポイントの両ポイントとも、この稜線上の特定の複数の同じ場所から飛んでくる回折波が強め合っているポイントである可能性はある。しかし、東京タワーとスカイツリーからの両方の電波が、偶然に一点で経路長差による位相が強め合う回折点などが、たまたまそれぞれの経路に存在することなどあるのか???

いずれにしても、一貫森~女神山間にある回折ポイントと受信点、すなわち村田ポイントと村田Kポイントとの間で、想定される回折波が強く飛んできていなければ話にならない。

そこで、今回はとりあえず第一段階として、前回調査同様、経路上でちゃんと強く飛んできているのかを確認してみることにする。特に、前回調査では「寺岡ライン」を想定して調査しているものの、東京タワーと村田ポイントを結んだラインについては、確認しきれていなかった。したがって、今回は東京タワーと村田ポイントとの最短経路として「TT村田ライン」、東京タワーと村田Kポイントの最短経路として「TT村田Kライン」の二つを想定してみる。もっとも、TT村田Kラインの方は、前回調査の中編で記したように、村田Kポイント自体が寺岡ラインのほぼ直下にあるので、寺岡ラインの経路とほとんど変わりはない。したがって、こちらのラインの方は、前回の調査の継続といった形になる。

村田地区までの確認エリアについては、前回と同様、丸森A丸森Bだが、今回TT村田ラインについては、大河原を追加している。

TT村田ラインと、TT村田Kラインの見通しについては、図表1、2のとおりである。


 地図1)一貫森・女神山エリアと村田ポイント間での伝搬ルートと、調査エリアのアバウトな地理的イメージ。
(出典:地理院地図Vectorより加工して作成)

 図表1) TT村田ライン
 左端、一貫森エリア、右端、村田ポイント
 (気差設定:地球の等価半径4/3倍)
 図表2) TT村田Kライン
 左端、女神山エリア、右端村田Kポイント
 (気差設定:同左)
 




まずは丸森Aへ



最初に確認するのは、TT村田ラインの、前回で言うところの「丸森エリアA」(宮城県丸森町)におけるポイントだ。今回のポイントは前回調査のJ-WAVEの確認ポイントから500メートル程度しか離れていないので、前回の時に合わせて確認しておくべきだった(と後から気付いた(笑)。ラインの関係を、あえて前回調査で使用した地図をそのまま利用して表示すると、地図2のようになる。

この道路Dを何度も行き来して、東京FMの入感度合いを確認してみる。この道路沿いには、はちみつ農家(石塚養蜂園)が一軒あり、このライン自体は、このはちみつ農家の脇のあたりを通過している。

地図2) 丸森エリアA: ブルーの丸が今回の確認場所。   【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】



入感度合いの確認結果は、まさしくTT村田ライン近辺のポイント⑥、⑦と、ST村田ラインに近い場所であるポイント⑤、及び②と①において強く入感する。②と①は前回J-WAVEを確認していた場所だ。ただし、ポイント⑥、⑦がS7~8程度であるのに対し、ポイント⑤、②、①の方はS9で、こちらのほうが強く入感する。⑤と⑥の間では51~53、⑦から西側では道が下っていることもあり、入感は急速にS1~S0ぐらいまで降下し200mぐらいでほぼゼロになる。

なお、同じ東京タワー発射のinterfm(89.7MHz)については、⑤でS6~7、②でS4~5といった感じだ。ただし、東京FM同様QSBがかかっており、落ちた時は51程度まで落ちる。また、⑤では神奈川県大山発射のFMヨコハマ(84.7MHz)は、なんとほぼS9の強力入感だ。

結果は上記のような感じだが、念のため補足すると、感度を確認する上では道路自体の状況、例えば、すぐ脇が崖になっているかどうか、木々が生えていないかどうか等については留意する必要がある。上記のSは耳Sの数字そのものなので、それらの条件の違いはもちろん考慮されていない。また、これまでにも記している通り、少なくとも当局のカーラジオのアンテナは指向性を持っており、正面の左右それぞれ60°ぐらいの範囲の電波がその他の方向より相対的に強く受かる特性があるようなので、向きを変えて走ったり、場合によってはその場で転回して車の向きを変えながら確認することも必要になってくるが、それらを完全に試せているわけではない(他の場所でも同様)。そういう意味では、すべてのポイントで条件が同じになっているわけではないのは言うまでもない。

せっかくなので、ついでに参考までにJ-WAVEの方の状況も確認してみるが、状況は当然?前回と一緒で、ST村田ライン直下の②や①では、超強力で、東京都心でラジオを聞いているのと全く変わりはない。これはTBSや文化放送など、ほかのスカイツリー発射のFM補完放送局も同じだ(J-WAVEよりはSはわずかに弱い)。一方、TT村田ライン直下側(②より西側)では、J-WAVEの方はS0~52程度と、かなり弱くなる。この点も前回と変わりはない。


本日の結果としては、1)TT村田ライン側で東京FMは強く飛んできているのは事実だが、少なくとも道路上では、そちらのラインよりST村田ライン直下ポイント周辺の方が強いということ、2)ST村田ライン直下で東京FMが59~56程度で4~5分周期程度のQSBがかかるのに対し、J-WAVEは変化はない(QSBはかかっているのかもしれないが、59のレベル内での変化なので、感知できない可能性が高い)ということだ。

また、前回調査では、ポイント②では東京タワーは全く聞こえなかったのに対し、今回の調査では東京タワーが強く聞こえてきていることに加え、この地点でも既に東京タワーとスカイツリーからの波がほぼ同じ場所で強くなっているというのは興味深い点だ。

いずれにしても、この丸森エリアAには東京FM、J-WAVEともに強く飛んできているのは事実だ。したがって、前回と今回の結果から村田ポイントへの伝搬を考えると、一貫森エリアから村田ポイントはもともと見通しなので、見通しライン上への上向きの回折(一般的な概念でいうと反射)にかなり関与している可能性がある。

なお、TT村田Kラインについては、前回の寺岡ラインとほぼ等しいので、この地区についての確認すべきポイントは③や④より少し東側になるが、こちらは今回も車でのアクセスは不可なので、不明のままだ。


 左)ポイント⑤より東方向。中)⑤より南方向。右)⑤より西方向。
 左)ポイント⑥より⑦方向。奥に見えるのは、はちみつ農家。
 右)ポイント⑦より⑥方向。左に見えるのは、はちみつ農家。
 




丸森エリアBは新しい場所を追加



次に、前回難易度が高かった丸森エリアB(宮城県丸森町)での聴取だ。こちらも前回使用した地図で表すと、下の地図3)のようになる。赤丸の①~⑤は前回確認した場所だ。

このエリアの難易度が高い理由は、この地区は車でアクセス可能な、いわゆる稜線的な尖った部分がなく、ほとんどが緩やかな傾斜地だからだ。地図3)の県道106については、ポイント③近辺で稜線を越えるわけだが、注意していないと、知らないうちに通過してしまうくらいのレベル感だ。

 地図3) 丸森エリアB 【出典: 地理院地図Vectorより加工して作成】



この地区でのTT村田ラインは、標高236.7mの三角点のある山側を通っている。したがって、確認ポイントとしては車でアクセス可能な⑥や⑦になるが、結果的には、両方ともピークで51~52程度だ。

もっとも、⑥は東京方面から見ると236.7m峰の陰になるし、⑦については、どちらかというと丘と丘のはざまになる場所になるので、もともと電波は受かり難い場所だ。

なお、前回の調査結果で、「① 、②のあたりについては、もともと低い場所だと分かっているので、行く前から参考程度と思っていたが、その地帯を通過すると意外にも何か信号を感じる。ただ、いわゆる音声の入感はない。」と記していた、②のエリアだが、今回については、「②」と数字が記してあるT字路の部分で52程度で東京FMを受信することができた。


    左)ポイント⑥、右)ポイント⑦



⑥、⑦での入感が薄いであろうことは、大体行く前から予測できたので、今回このエリアについては、この稜線上のすぐ東側にある福田堂(ふくでんどう)というお堂を観察ポイント(=ポイント⑧)として加えている。ここは前回調査後に、改めて地図を眺めていて、ここなら間違いなく受信できるだろうと、遅まきながら気づいた場所だ。

ただしこちらは、TT村田ラインではなく、前回でいうところの寺岡ライン、すなわち、今回のTT村田Kラインに近いポイントとなる。

実際に行ってみると、お堂に到達するかなり前の、ポイント⑨(地図4))のあたりから東京FMはFBに入感し始める。ここではJ-WAVE(81.3MHz)も強力入感だ。ここでは、77.1MHzのDate fm (エフエム仙台)も全く問題なく入感してくるので、それがJ-WAVEであることはすぐに確認可能だ。


 地図4) 丸森エリアB福田堂付近拡大【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】



さらに少し高度を上げてポイント⑧のお堂の入り口まで到達してみると、ここでももちろん東京FMはS9で強力入感、interfmは、ピークでS4~5といったところだ。

ただ、こちらでは面白いことに、81.3MHzで受かるのは、J-WAVEではなく、気仙沼中継局からのDate fmだ。これも77.1MHzと比較することで一発判定できる。ここではJ-WAVEも強力入感しているはずだが、Date fmの方が更にそれを上回っているようだ。なおポイント⑨→⑩→⑧へ至る道程では、東京FMはS5~S9でずっと受信可能だ。

お堂の入り口で受信しながら坂上の方を窺ってみると、予想に反して(笑、お堂はかなり立派な建物っぽい。せっかくなので、参拝してみよう。お堂の他、鐘楼や子安観音、更に同じ敷地内に神社もあり、全体の敷地はかなり広く大変立派なお堂である。

この福田堂の由緒は、弘仁元年、3メートルもある大猪が、京に現れ村々の田畑を荒らして人々が困っているのを見て、これを霊獣とみた嵯峨天皇から虚空蔵菩薩の尊像を授けられた小野篁が、最終的に大猪をこの地に追い詰めて退治したことによるものという。したがってこのお堂は大猪の供養と、虚空蔵大菩薩を祀るものだ。弘仁元年とは西暦810年なので、退治したのが小野篁であるかどうかは別にして、歴史のあるお堂だ。

 左)ポイント⑧の鳥居前。中)お堂の前から、⑧の鳥居方向。左側は鐘楼。右)正面の参道から見たお堂。



このお堂の入り口の、鳥居前のポイント⑧は(=神社もあるので鳥居もある)、標高347mほどだ。お堂のある山の最も高い部分が354m程度なので、ほぼほぼ「山頂」に近い場所で受信可能ということになる。おまけに南側は急峻に崖状に下っているので、入感にこれほど好都合な場所はない。

このポイント⑧からTT村田Kラインが通過する稜線上のポイントとは、600m強離れているものの、間には、349.7mのピークもあり、このお堂のある一帯からその中間のピークを含めてTT村田Kライン直下にかけては、ラインに直交する様に稜線を形成しているので、この稜線エリアが、村田Kポイントへの回折に大きく寄与していそうな感じだ。

ただし、S9で強力入感の東京FMだが、ここでは2~3分周期のQSBがかかっており、S9の時間が長いものの、落ちるときはS3ぐらいまでおちるようだ。

この地区での本日の観測結果をまとめると、
1) TT村田ラインについて確認できたのは、ピークでRS51~52程度、
2) TT村田K ラインについては、直下ではないが、すぐ東側の山稜にはかなり強く飛んできている。
ということだ。

    左)ポイント⑨のカーブ。ここですでに東京FMとJ-WAVEはFBに入感する。
    右)ポイント⑩より、南南東方向。




  <後編>につづく



 (2025/7/2)



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