【帰り道、岩沼市(宮城県)の海岸で短時間QRV】



前編からのつづき>



続いて大河原エリアへ



次に向かうのは、宮城県大河原町(おおがわらまち)の「大河原エリア」だ。(前編で使用した地図等を下に再掲)

こちらは、TT村田ラインの観察になる。一貫森から村田ポイントはそもそも見通し範囲なので、見通しの断面図(図表1))で見た場合、この場所は見通しラインの下になるので、伝搬に影響を及ぼしている可能性があるとすれば、上方向への回折ということになる。


 地図1)一貫森・女神山エリアと村田ポイント間での伝搬ルートと、調査エリアのアバウトな地理的イメージ。
(出典:地理院地図Vectorより加工して作成)

 図表1) TT村田ライン
 左端、一貫森エリア、右端、村田ポイント
 (気差設定:地球の等価半径4/3倍)
 図表2) TT村田Kライン
 左端、女神山エリア、右端村田Kポイント
 (気差設定:同左)
 



今回の観察ポイントは、仙台南ゴルフクラブのすぐ南側で、地名的には「孤山」と呼ばれる地区のようだ。県道115号から、ゴルフコースの敷地の南側を沿うように走る小道だが、もともと丘自体の最高点が131mと高さがないのと、ラインの直下に行けるわけでもないので、強い入感は期待できないロケだ。標高は、観察ポイント①で120m程度である。

この道を東から西へ、観察しながら走ってみる。入感があるのはやはり予想通り南側に最も突き出た、ポイント①や②のあたりだけだが、入感は予想通り薄く、ピークで52程度だ(ポイント①)。この道路はポイント①から③に向かって緩やかに上り坂になっており、少しずつ高度を上げるような形になるのだが、入感を「感じる」のはポイント③まで程度である。

図表1)で見るとこのエリアは尖ってはいるが、上述の通り標高は低く実際は山というより丘陵なので、いわゆるウェッジシェイプ状ではない。したがって、実際に飛んできている信号の強さ加減も含めた単なる推察として、今回観察した限りでの結論としては、TT村田ラインにおける、村田ポイントでの入感にはあまり影響は与えていなさそうだ。

 地図5)小河原エリア 【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】
 左)ポイント①。 中)ポイント①から③方向。 右)ポイント②




村田Kポイントへ


次は、いよいよ村田地区の村田Kポイントと村田ポイントである。

まずは村田Kポイント(以下「Kポイント」)だ。このポイントは昨年5月の調査で出会った場所だ。このKポイントは、もともと寺岡ライン直下に沿った場所なので、この筋には相対的に強力な回折波が飛んできているには違いないが、未だになぜ道路上のここだけピンポイントに聞こえるのかは疑問だ。ここは永続的に聞こえる場所なのか?

図表3)は、一貫森(福島県川俣町)からの見通し範囲だ。ピンク色が見通しの場所となる。(気差設定は地球の等価半径4/3倍) 東京タワーとの最短経路は、実際には女神山の近くを通っており、そこからは見通しではないが、同じ稜線上の一貫森からは少なくとも見通しということになる。

図表3)一貫森からの見通し
ピンク色が見通し範囲
 
地図6)村田Kエリア 
【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】 



観察のレファレンスはあくまでカーラジオなので、観察できる場所は道路という線上のみの移動になる。一般的には、面で考えれば道路以外にも聞こえている場所があるのが普通だが、図表3)を見る限りは、一貫森からは偶然にもちょうど道路に沿うような形でこの部分だけ見通しになっており、しかもこの道路上では、聞こえるのはピンポイントでこのKポイントのみだ。したがって、観察できる場所としては、おそらく珍しいスポットではないかと思われる。一方、村田ポイントの方は、道路上のかなりの範囲にわたって入感するので、Kポイントがそこだけピンポイントで聞こえてくるというのは、村田ポイントとはかなり違った飛び方をしてきている可能性が高い。

まず、Kポイントそのものでの試聴の前に、地図6)のポイント①や②で観察してみる。こちらはTT村田Kラインからは東側に少しずれた場所で、前回の寺岡ラインの調査では漏れていた場所だ。行ってみると、ポイント②については、RSはゼロ、しかもここで車は行き止まりになっており③への車での進入は不可能だ。①から②へ至る部分ではところどころ41程度で信号を感じる程度だ。

前回調べに来なかったのは、この地区は微妙に低い山谷が入り混じった地形なので、入感しそうにないと考えたからだが、やはりその想定通りだったようだ。


今度はKポイントそのもので、再度観察だ。右写真(上)が、Kポイントを南向きに写したもの、(下)が北向きに撮影したものだ。

今日は昨年5月の受信時に比べてかなり信号は強く、59で強力入感である。ただ、前回同様2~3分程度の周期のQSBを伴っているようで、S9の時間が相対的には長いものの、落ちるときは53程度まで落ちるようである。

59で入感している間はもちろん全く普通のラジオだが、復調された低周波成分は、低い側に若干偏位しているようだ。例えて言うと、オーディオアンプのトーンコントロールにBASSとTREBLEの二つがあったとして、BASSで少しだけ低い側を持ち上げたような音だ。このことは、77.1MHzで、同じJFN系列のDate fmが東京FMと同じ番組を流しているので、クリック一つの選局で比較可能なので、大変わかりやすい。つまり、オーディオで言うところのいわゆるフラットな復調音ではないということだが、これは複数の電波が合成されている証拠だろう。

また、前回と異なるのは、前回の最強受信ポイントより今回の最強受信ポイントは前へ(南側へ)5~6m程度ずれていることだ。最強受信ポイントの入感を59とすると、その前後3m程度は57程度以上で受信できるのだが、その「山」が今回は前へ5~6mぐらいずれている感じだ(笑。飛んできている複数の回折波の経路上での曲がり方が、前回とは微妙に異なるのかもしれないが、これは更に何度も観察してみる必要があるだろう。

また、今回については、道路の左側より、右側(西側)に寄った方が相対的に強くなるようだ。道路自体は、車1.5台分程度の狭い道なので、わずかな差だが、波長はそもそも375cmしかないので、1、2mの差はかなりの影響をもたらすことになると思われる。一方、村田ポイントの方の最強受信ポイントは、東京FMとJ-WAVEとで、数十㎝程度の差はあるものの、いわゆる場所的には常に一定であり、この点も村田ポイントとは異なるようだ。

信号の入り方については、今日は前回のようなシンチレーションが加わったような複雑な聞こえ方はしないが、前述の通りQSBがあることには変わりはない。これはこのKポイントに限らずどこの場所にも言えることだが、QSBの周期は大気の状態によって異なるので、早朝、朝、昼、夕方、夜など時間帯によって聞こえ方はだいぶ異なってくると思われる。これは回折損失と、それを打ち消す台地方向への信号の屈折の仕方のバランスが、ある閾値近辺で揺れ動いているためと思われる。

参考までに81.3MHzのJ-WAVEを試してみると、東京FMからマイナスS3程度で聞こえてくる。QSBの波も合っているような感じだ。ここで聞こえるのは気仙沼からのDate fmではなく、正真正銘のJ-WAVEである。ちなみに、このKポイントとスカイツリーとの最短経路は、下の展望図(図表4))のB地点を通過する。このB地点は、本運用記前編の「丸森エリアB」の項目で記した、福田堂から西へ連なる349.7m峰の山頂のことである。図表4)の展望図の各ポイントを、丸森エリアBで使用した地図上に示すと、地図7)のようになる。

 左)図表4) Kポイントから約200°方向への展望。一貫森の山頂が辛うじて見える。
   Zは東京タワーとの最短経路の通過点。(丸森エリアBの稜線上)
 右)地図7) 【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】



村田Kポイントでの観察は今回がまだ二回目だが、今回の結果から推察すると、このポイントも村田ポイント同様、永続的に聞こえる場所であるようだ。また、女神山方向からは丸森エリアBの稜線がわずかにかかるので、やはりこの丸森Bの稜線は重要なカギを握っているように思われる。

さらに、東京FMについては、一貫森及び天井山近くの510m峰(=図表4)のD、及び地図8))から見通しであることと、23年3月の運用で、この510m峰方向へは東京FMはかなり強く飛んできていることを確認しているので、この二峰の方向からの波も到来している可能性は否定できない。




村田ポイント


最後は村田ポイントでの観察だ。今回の観察の目的は二つある。一つは、見通し範囲との関連で、聞こえ始める場所や、強く入る場所をもう少し正確につかむ、ということだ。この村田ポイントへは、一貫森~女神山に至る範囲の稜線からの回折波が届いているはずだが、見通しとの関連を確認することで、回折に有効に働いているピークや逆に関与していなさそうなピークを考えるうえで、参考になる可能性がある。

二つ目の目的は、側道より上側(北側)の地域でも受信可能かどうかを確認することである。村田ポイントの裏側(北側)は村田ポイントより少し高い台地になっており、TT村田ラインを延長した方向には、進入可能な道がいくつか走っていて観察ポイントが取れそうなので、今回はそこでも確認してみようということだ。

下の地図8)が、この地点への回折に影響していそうな一貫森~女神山の稜線と、稜線上の代表的なピークだ。ここでは、天井山近くの、図表4)Dの510m峰も加えてある。

図表5)から図表8)は、これらのピークからの見通し範囲だ。図の通り、それぞれのピークからの見通し範囲は、当然だが微妙に異なる。例えば、もっともわかりやすい違いとしては、東北道村田ジャンクションの北側のエリアなどは、それぞれのピークの違いが比較的よくわかる部分だ。

そこで、この見通し範囲と実際の入感度合いを比べてみて、各ピークがこのエリアへの到来電波にどのように影響していそうなのかをざくっとつかんでみようという試みだ。したがって、重要なのは、例えば、ピンク色(見通し)となっているにもかかわらず、聞こえないところはないか、といったことである。もちろん、飛び方はその時々の大気の状態によっても異なるので、こんなアバウトな方法では、正確なところは何もわからない。まあ、確認しないより、した方が増しといったレベルの話ではある。


 地図8) 510m峰は図表4)のDに等しい。  【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】


図表5) 510m峰からの見通し範囲 図表6) 一貫森からの見通し範囲 
図表7) 523m峰からの見通し範囲  図表8) 580m峰からの見通し範囲 



側道では



まずは、側道上での確認だ。

例によって、東北自動車道の側道を北側の県道から進入し、村田ポイントへ向かって緩やかな坂を下っていくことにする。進入口近辺では、通常81.3MHzでは、気仙沼中継局のDate fmが、元気がいい時は55~56で聞こえるのだが、今日の今の時間は53程度のようだ。

そろりそろりと下っていくと、入感し出すのは、地図9)のスポットAからだ。更に進んでいって、52程度を維持していた波が急に強くなるのはスポットBのあたりだ。その後村田ポイントで今日は59、更に進んでいって聞こえなくなるのはスポットCだ。村田ポイントからスポットCまでは52~55程度で入感し続けることはいつもと変わりはない。この観察は、時間を変えて何度もやらないとあまり意味はないかもしれないが、一日中やっているわけにもいかない(笑。何回かやってみるが同じ結果だ。

聞こえだしのスポットAは、図表5)~8)のどの図においても、ピンク色が側道にかかり始める部分とほぼ一致する。

地図9) 【出典:地理院地図Vectorより加工して作成】 


図表5)~8)の各見通し範囲図で、側道の入り口側が見通し外になっているのは、側道とは高速道路を隔てて反対方向にある丘のせいなので、電波の入感には意外とこの丘が効いている(=邪魔になっている)ことが分かる。この丘は側道からは数百メートル離れており立ちはだかるような壁でも何でもなく、通常の無線家の感覚からすると簡単に回り込んできて余り邪魔になるような感じはしないので、これは意外だ。

このスポットAから先は、どの図でもピンク色になっているので、どのピークからも見通しであるはずだ。しかし、なぜ急にスポットBで強くなり始めるのかは、もちろんこんな単純な作業だけで何かが推定できるわけもなく、村田ポイントと同様に引き続き疑問である。ただ、強いて言えば、一つ共通項として考えられるのは、受信点の後ろ側の地形だ。両ポイントの後ろ側はちょうど、崖がパラボラチック?に後ろに膨らんでおり、反射波が影響を与えている可能性はある。

聞こえなくなるスポットCがピンク色エリア内にあることについては、このスポットを境にして、高速道路より上を走っていた側道が、このスポット辺りで、高さが逆転して高速道路の陰に潜り込むようになるためである。したがって、入感がなくなるのは見通しとは関係ない。

次に、この側道より西側の地域でも観察してみる。図表5)~8)を見てもわかるように、この側道の西側エリア(村田ジャンクションの北側エリア)では、それぞれの図で相対的に結構な違いがみられるからだ。

比較的強めの入感を確認できたのは、ポイント①で、52~54程度だ。この西地区では、それ以外の部分では電波を感じる場所はあるものの、まともな入感はない。この結果と見通し範囲の図だけからすると、一貫森あたりからの回折波はこのあたりにも飛んできているのは事実のようだが、ここまで西に来てしまうと、稜線上では一貫森よりさらに東にある523m峰や580m峰などは、東京FM的には回折には効いていないと思われる。

以上から、村田ポイントのピンポイント性について言えるのは、次の二つが可能性としてありそうなことぐらいか?(笑。

1)受信点の後ろ側からの反射が効果を及ぼしている、2)村田ポイントは、側道上に関していえば、どのピークからもピンク色の中心に位置するので、2a)稜線上のすべてのピークが有効に働いており、2b)したがって、稜線上に互いに強めあう回折スポットの組み合わせが存在する確率が高くなっている。


   左)側道を村田ポイントへ進んでいく。夏なので草が生い茂っているが、左側のすぐ下は東北道だ。
   右)スポットB近辺。

  村田ポイントから一貫森~女神山方向を見ると、このように見える。(135㎜ズーム相当) 
  そこだけ見えます(笑。 その手前の稜線は、丸森エリアBの稜線。



側道北側エリア



続いて二つ目の目的である側道北側部分での観察だ。

 突当りの辺りがポイント②
こちらは、行政区分的には村田町ではなく、お隣の川崎町ということになる。本来確認しに行きたかった場所はポイント②よりさらに進んだ場所にあるのだが、実際に行ってみるとポイント②から先は、農場会社の所有地になっており進入は不可だ。したがって、結果的にポイント②のみの確認となる。

このポイントでは、ピーク52程度で東京FMを確認できる。ただし、この辺りは台地状の平坦地で、更に電波の到来方向が若干高くなっているので、電波の入感条件としてはかなり厳しいのが実態だ。まあ、それでもそんな悪い条件でも一応聞こえてきていることからすると、逆に村田ポイントへ普段から強く飛んできているという事実はよく理解できる。というのは、村田ポイントはこの台地のエッジ部分の崖に相当する場所にあたるからだ。

これまで見てきた限りでは、回折波の受信には、いつもより増して足下側の第一フレネルゾーンに障害物がないことが重要だ。これは寺岡ポイントや落合ポイントなど仙台市内を含めて、すべての受信可能なポイントについて共通していることだ。低い山からの回折波を追いかけているので、到来角が小さいのでこれは当たり前の話だが、普段11mなどを運用しているときはQSOはできてしまうので、余り気になることはない。ただ、こうした回折波の受信では、身を以てその重要性を体感できるようだ。


今日のところはこれまでだ。次回は仙台市内での再確認に移りたいところだが、村田地区でもまだまだやりたいことはある。次回はもう一度村田地区なのか、仙台市内なのか、迷うところだ(笑。


東京への帰りがけに、岩沼市(宮城県)の海岸に立ち寄って、ちょっと間87R片手に運用してみる。陽は山の向こうへ沈んでいこうかという時刻で、大地のすぐ上の空気をみかん色に輝かせているようだ。Esもそこそこ上がっているようで、盟友しずおかDD23局の信号も入ってくる。


14QSO、各局TNX!!

(2025/07/11)





QSO局 14QSO TNX!!  
(敬称略)

2025年6月22日(日) 晴れ    
やまぐちSH33/山口県* 53/53 かがわMC36/香川県丸亀市* 53/54
トウキョウLM502/5* 53/53 みやぎDU79/福島県新地町  58/59
なごやCE79 52/53 ギフNH739/岐阜県  52/54
しずおかDD23/静岡県  54/53  シズオカZZ237/静岡県下田市 55/55 
シズオカTR537  54/53  コウベYS212  53/53 
ワカヤマSK747  54/55  きょうとKP127 53/52 
ミエAA469  55/55  ワカヤマFK183  53/54 
   
*:当局運用地は川崎町。無印:岩沼市。




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