2024運用記
仙台(中編)
宮城県仙台市・福島県相馬市


 【ゴールデンウイークの光: 相馬港】 





  
<前編>からのつづき


原町送信所


FM局の受信確認を運用と呼べるかどうかは別として、今回の運用は全体で2日間用意しているので、時間的には余裕綽々だ。そこで、最初の調査地である「丸森エリアA」で受信確認に入る前に、まずは最初の半日ぐらいは11mの本当の「運用」にあててみることにする。

運用場所は、テキトーに選んだ、福島県相馬市の相馬港だが、折角こちらまで来ているので、無線の大先輩方に敬意を表するために、運用前に原町送信所跡(南相馬市)に向かってみることにする。

原町無線送信所は、2017年の落石岬運用記でも記したとおり、1923年の関東大震災の際に、米村嘉一郎さんが欧米に向けて被災の第一報を打電した時に、電波を発信した場所である。米村さんは、日本で最初の無線通信士とも言われる。

この送信所には、アンテナの主塔として200mHのコンクリート製のタワーが建っていたのである。当局は現物は見たことはなかったが、200mなのでさぞかし圧巻だったに違いない。


 花時計と1/10スケールタワー: 花時計については、右写真、右下の説明通り(笑。


アンテナ自体は既に1932年に約12年間という短い期間で役割を終えたようだが、以降1982年に取り壊されるまで、建ち続けていたというのだから、驚きである。それだけ長い間建っていると、町の人々には相当愛着もあったようで、タワー跡の近くには、スケール1/10のレプリカの塔も建てられている。

この時の第一報も含めて、米村さんの電文はいくつか拝見した記憶があるが、大学で言語学関係もかじったことがある(笑)当局のような者に残る印象としては、打電された英文はどれも格調が高い。電信なので簡潔であることは必須だが、見事な英語だ。個人的には最近の英語教育は会話に偏重しているようにも感じるが、日本語教育(国語)が話し方など教えないのと同様、やはり読解力と書き言葉は非常に重要なようだ・・・。日本人(ネイティブでない人)が英語で書く文章については、日本では余り意識されていないようだが、その人の品性や品格が我々が想像する以上に問われているからで、例えばビジネスの世界ではそれが取引相手からの信用や評価に直結したりする。単語のつづりの誤りなどは、もちろん論外である。会話は一瞬で消えてしまうが、文章は残るのである。

米村さんが送出した電文に、海外はいち早く反応したらしい。伝えられた被災の情報に、人々の関心と同情、支援の動きがすぐに広まったようだ。米村さんは、自らも被災して困難な中、一刻も早く情報を伝えようとわが身を投げ打って海外へ向かって発信を続けたヒーローとして、海外の教科書にも載ったそうである(事実とは異なるが)。そうした影響力を持ちえたのも、情報を伝えた英語の文章力に一因があったのかもしれない。


・・・てなことを思い巡らせていると、運用場所である相馬港に到着してしまった(笑。



海浜の光景


まずは115を聞きながら、お昼までのんびりと海浜の光景をたのしんでみよう。

今回は、時間があるときに性懲りもなく作製した外部スピーカー第6弾(笑)の試聴も兼ねている。ユニットは一応オーディオ用で、能率92dBとうたっているので、それが採用の理由だが、口径5㎝なので、端からそんなスペックは信用していない。ただ、そううたっている以上少しは普通のスピーカーよりましで、家で聞いている限りでは4cm4発の「第4弾」の能率に肉薄はしてきた。しかし余りサイズダウンにはなってませんが。

今回は、パッシブラジエーターは使わずに、エンクロージャーの背面の板厚を薄くして、意図的にある程度振動させようというものだ。背面は内部で重りでコントロールすることにより、無線に適切な中域の明瞭度と低域の量感がバランスするようにチューニングしようという目論見だが、もちろんそんなことは絵空事に過ぎない。ただ、パッシブラジエーターでは、ぶよぶよの中低域になることが避けられないのは事実だ。(ただし、パッシブラジエーターは、磁石である程度チューニング可能)

コンディションはFが調子いいのか、どのチャンネルも英語局がかなり聞こえてくる。めずらしく変調も綺麗だ。JR6にはイワテB73局が移動?されているようで、いつものようにC9局とともに聞こえてくる。一定間隔で、交互にCQを出されているようだ。


階段状になった水際でボケーっとしていると、真っ白い海霧が流れていく。
ゴールデンウイークらしい、まばゆい光が、フィルターを通して輝いているように見える。
春たけなわだ。





まずは、丸森エリアAへ向かってみる



さあ、そろそろ受信確認のために移動だ。最初の確認エリアは、最も南の「丸森エリアA」(宮城県丸森町)である。(「前編」で使用した図表を、図表1として下に再掲)

丸森町は、福島県伊達市・相馬市と接する宮城県の最南部で、県内西側は白石市となる。マクロの位置関係は、下の地図1の通りで、特に丸森エリアAについては、2月の天井山運用記後編の調査地域のすぐ東側ということになる。

   図表1   地図1



丸森エリアAは、茗荷沢と呼ばれる集落のようだ。下の地図2、灰色の実線が道路で、赤丸のポイント丸数字が、あらかじめマークしていったポイントだ。寺岡ラインについては、画面の右端ぐらいにあるのだが、道路Bは建設中?のため進入禁止、破線の道路Cは農作業道で、軽トラでも通行が難しいような道で、途中まで進入したものの戻ってこられるか分からないので進入を断念した(笑。したがって、結果的にポイント①と②が主な確認結果となる。



 地図2 【出典:地理院地図タイル 地理院地図Vectorより作図】



① の部分は、等高線を見てもわかるように峰の鞍部になっており、ここを道路が南北に越えているため、回線直下でありながら、ほぼ頂上部で入感を確認できるという、極めてラッキーな場所だ。図表1を見てもわかるように、「ここは楽勝で入感するだろう」と思って行ったら、やはり楽勝だった(笑。

詳細は割愛するが、①ポイントでは、J-WAVEは59と強力入感である。81.3MHzでは気仙沼のDate fmも裏で悪さをしているのかもしれないが、J-WAVEが強力入感なので全く問題ない。したがってFM補完放送局の力を借りるまでもないが、確認してみるとTBSも59、文化放送が58、ニッポン放送が57といったところで、どれも強力入感だ。東京FMは、前述の通り回線が東に大分ずれているせいか、41程度である。

次に道路Dを、①から②に向けて車を動かしながら、J-WAVEの入感具合を確認してみる。車を進めていくと、いったん58程度に落ちるものの、想定されるST村田回線直下近くで再び59に戻り、更に西に進めていくと、すぐに下がっていき、①ポイントから300m程度で52程度まで下がる。

ただし、前述の通り①ポイントから東へ至る道がないので、①より東側にまだ強いポイントがあるのかどうかは不明だ。道路Bが完成すれば、東京FMも確認できるようになるのかもしれない。

「大圏コース、意外と正確だなぁ~・・・」と、ひとりごちながら(笑、次の調査地、丸森エリアBに移動してみる。

 
  左: ②の「回線直下」部分。①方向から撮影。
  右: ①ポイントの道路分岐部。道路D上より撮影。左方向が道路A、斜め右方向が道路Cの農作業道?



丸森エリアB



丸森エリアBは、地図上では福田と呼ばれる地域のようだ。白石市との境にある丘陵地帯で、下の地図3の紫色破線が稜線部となる。

このエリアは図表1では際立って尖っており、ここも楽勝だろう、と甘い気持ちで乗り込んだのだが、着いてみると、どうも想像していたより全体的にかなり緩やかな傾斜地にある。というより、どちらかというと、平地に近い。これは、なかなか厳しそうだ。それでも、最低限③や⑤はいけるだろうと、調査を開始したのだが・・・。


 地図3  【出典:地理院地図タイル 地理院地図Vectorより作図】



① 、②のあたりについては、もともと低い場所だと分かっているので、行く前から参考程度と思っていたが、その地帯を通過すると意外にも何か信号を感じる。ただ、いわゆる音声の入感はない。

③は比較的稜線に近づくので、いけるだろうとふんでいたが、41程度で、ほとんど入感がないに等しい(笑。このエリア、図表1から受ける印象の割にはなかなか手ごわい。おまけに②と③の間ぐらい(「県道106」と記してある場所あたり)は、81.3では気仙沼のDate fmが結構入感してくる。かといって、在京3局のFM補完放送に切り替えてみても、何も受からないようだ。④もJ-WAVEは41程度、最後に期待をかけてポイント⑤の東京FM狙いに向かってみる。

ところで、スカイツリー発射についてはFM補完放送局があるのに、なぜ最後までJ-WAVEにこだわるのかといえば、補完放送局の3局は、J-WAVEより電波が弱いからである。このことは、来る途中、常磐道を茨城県内を走行中から気になっていたことだ。4局は空中線電力も最大ERPも同じなのになぜか?放送局は、当たり前だが、水平面無指向性が必要だが(中継局は別)、双ループアンテナなど、ゲインを稼ぐアンテナを使う関係上タワーの周りに多面配置して達成するのが通常だが、アンテナから離れれば離れるほど、どうしてもローブのでこぼこが現れてくる。だから、念の為茨城ぐらいの距離であらかじめ確認しておくわけだが、4局の強さの違いはローブの出方とかビームのチルト?といった単純な理由ではなさそうだ。

補完局3局は、アンテナ共用で、TBSとニッポン放送は2.5MHzの差しかないが、どこへ行ってもだいたい一番強いのがTBSで、次に文化放送、ニッポン放送の順だ。J-WAVEは、ニッポン放送に比べ12MHz近く低いうえ、3社とはアンテナ自体が異なる。


⑤へ向かう道は、このエリアの中では最も高い場所に近づけるので、その途中ですぐに東京FMは受かるだろうと思ったのだが、これも考えが甘かったようで、どこまで進んでもうんともすんとも言わない。この道のどんづまりは一軒の民家になっており、庭先に進入するわけにはいかないので、その手前でUターンだが、行きついた最も高い場所でも41~51程度だ。(東京FMのみ)

下りてきてからつぶさに周囲の等高線等をチェックしてみると、このエリアの稜線全体はまだまだ高い場所にあるのと、各ポイントの手前(東京側)には、陰をつくりそうな地形が結構あるので、それらの要因が影響していそうだ。教訓としては、「楽勝」とか、余り偉そうに思わないことかもしれない(笑。

   左: ④から⑤への途中。 右: ⑤周辺。



村田エリアA、B



「楽勝」とか思わないこと・・・人生の貴重な教訓をしっかりと胸に刻み込んで、今度は黙って村田エリアAへと進入していく。やはり、「男は黙ってサッポロ・・・・・一番」、だ。今日は「塩」にしておこう。(謎。

村田エリアAと、Bは下図の通りだが、出かける前は何か違いが出そうなので、忘れずにAとBを区分したのだが、結果的には、余り区別する必要はなかった。某KM117局によると、『出かける時は忘れずに・・・忘れる時は出かけずに』、ということだったので、アドバイスに従って、忘れずに区別したのだが・・・。いつも引用させてもらって申し訳ないが、それにしても本当にユーモアのあるお方だ。


 地図4 【出典:地理院地図タイル 地理院地図Vectorより作図】


この二つのエリアは、図表1では簡単そうに見えるが、全体としては台地状で、とりたてて高い場所や低い場所があるわけではない。つまり、どちらかというと平坦ということで、「人生の貴重な教訓」を生かすまでもなく、最初から難しいエリアだとは思っていた。実際、平面で見た女神山エリアからの見通し範囲も、まばらに存在するだけだ。

結論だけ言うと、今回入感を確認できたのは「村田Kポイント」と記したポイントのみだ。ここでは東京FMが聞こえてくる。

東京FMは56程度で結構強く入ってくるのだが、聞いていると入感の仕方が面白い。1分間隔ぐらいの長いQSBの山があり、落ちるときはほぼ聞こえないレベルまで落ち込む。そしてすぐに立ち上がってくるといった感じだ。耳Sなので細かいことは分からないが、正弦曲線のようには思われない。おそらく屈折率などの大気の状態を反映しているものと思われるので、時間が変われば、また違った入感の仕方をすると思われる。

この村田Kポイントは、ホントかウソか、寺岡ラインの直下に当たる。(そこをめがけて行っているので当然ですが) 地図上では少しだけずれているように見えるが、地図上の「寺岡ライン」は中間値で引いており、十分にライン内にあることになる。中間値というのは、3月運用で、最後に仙台ヒルズゴルフ倶楽部裏側の東北道上で東京FMを確認した時の、聞こえ始めのポイントと、聞こえなくなったポイントの中間という意味である。この中間ラインが、寺岡地区での入感ポイント(入感したと思われるポイント)のラインと合致するのである。(本運用記前編の写真参照)

したがって、「聞こえ始めポイント」と「聞こえ終わりポイント」のそれぞれを、東京タワーと結んだ2本のラインは、東西にある程度の幅を持っており、このKポイントは少なくともその領域内に完璧に入っていることになる。

「大圏コース、意外と正確だなぁ~・・・」と(笑、ひとりごちながら、また次の調査地へと向かうのではある。

   左)東京FMを受信中の「村田Kポイント」。(南向きに撮影) 右)ポイント③の道路のカーブ(南向きに撮影)



村田ポイントでは、またしても想定を超える???・・・(笑


村田エリアBの後、村田エリアC、そして茂庭台エリアへと調査に回ってみるが、結果としては信号らしい信号は補足できなかった。村田エリアCは村田町の西北部で、西隣の川崎町にほぼ接するエリアである。愛宕山と呼ばれる山腹では、ロケがいいのか、仙台付近のコミュニティFM局はたくさんFBに入感してくる。茂庭台は3月運用に続いての再訪となるが、FM補完局でスカイツリー波の受信トライを試みてみるが、残念ながら功を奏さなかった。また、なとらじは、相互台と愛島台に1Wながら中継局を持っているので、やはりこれらのエリアでの80.0MHzそのものの調査は難しいものがある。


村田エリアC
櫛挽地区  東湯沢山地区  愛宕山中腹(仙台市太白区) 


今回、村田ポイントはどうだったのか??

今回村田ポイントを調査エリアに加えているのは、前編の冒頭で記しているように、いまだにくすぶっている疑念のかけらのようなものを(笑、完全に払拭するためだ。

村田ポイントへは、村田エリアBの後の昼間と、茂庭台を終えた後の夜(19:30過ぎ)の二回訪ねてみた。夜になってから二回訪れたのは、最初から計画していたわけではなく、単に時間に余裕ができたので寄ってみただけである。

今回も、北進入口(⇒3月運用記参照)から側道をゆっくりと下っていく。昼間来た時は、なぜか今日は気仙沼のDate fmが大変元気が良く、進入してから400mぐらいは、平均56程度で聞こえてきた。夜は、少し元気が落ちたようで、「平均56」は入り口から200mぐらい程度に後退したが、それでも入り口近辺は3月の運用時よりも強いようだ。日にちと時間によってずいぶん違うものである。ただ、村田ポイント手前200m~300mぐらいからは、いつもと同じ入感具合である。そこから先は、J-WAVEとDate fmの混信を楽しんでみる(笑。

ポイントにそろーり到着して、すぐに80.0MHzにスイッチしてみる。昼間来た時は、J-WAVEは相変わらずほぼ59と、これまで通りだったが、東京FMの方はやはり全く受からなかった。疑念は残ったままだが、どうなのか???

・・・と、なんと、ほぼ59で入感しているではあ~りませんかぁ(笑。これで完全に疑念は晴れた。

ほくそ笑みながら、調子に乗って89.7のinterfmも試してみる。まあ、こちらは受かるとは全く思っていませんが・・・。なんと、ピーター・バラカンさんの声が聞こえてくる。しかも、56ぐらいだ。う~ん、恐るべしinterfm。東京FMより100m以上アンテナが低いのに、よくここまで飛んでくるものだ。出力も全然小さいのに、偉い!(笑

ただ、ちょっと聞いていると、QSBで信号が弱くなりだす。東京FMに切り替えてみると、東京FMも全く同じ動き方だ。東京タワーからの回線は、どうやら、1分~2分くらいの長周期のQSBがかかっているようだ。谷間に入ると、東京FMもinterfmも全く聞こえなくなる。もちろん、信号はすぐ復活しますが。

昼間、村田Kポイントでは東京FMが聞こえていたわけだが、そのQSBのかかり方とはまた微妙に違う印象だ。Kポイントの方は、シンチレーションやマルチパスなど、更に複雑な入り方をしている感じだったが、こちらはそれほどの複雑さはない。

一方、J-WAVEの方はQSBは全くかかることはない。アンテナ高の違いか??なお、TBSは53、文化放送は52、ニッポン放送は51だが、これはJ-WAVAEが最も強くなる場所に合わせているためで、FM補完局についても、数十センチから数メートル程度の移動でもっと強くなる場所があると思われる。(interfmについても同様)


これで、J-WAVEと勘違いしたのではないかという疑念は完全に払拭できた。ただ、22年のSV時の東京FMは、注意しないと分からないぐらいのごくわずかなQSBだった。やはり電波は生き物、その日その時の大気の状態等のコンディションの変化が、回折波では如実に表れるようだ。

村田ポイントで、interfmが受かったことは、驚きだったが、翌日も仙台市内エリアでは驚きの展開が続いていく・・・(爆。

(2024/5/5)


       
<後編に続く>



   村田ポイントでinterfm受信中





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