[時を感じる: 北面周回道路にて]
北港その1 (6月22日 夕)
宿にチェックイン後さっそくレンタルバイクにまたがり、最も本土向けに飛び受けがよいと思われる(勝手に思っている)北港に移動してみる。北港は文字通り、島の北側海岸にある港だ。港といっても、外洋を遮断する防波堤があるわけでもなく、岩を切り開いて造った、岸壁があるだけである。その代わり釣りをするには好適なのか、17時を過ぎると、三々五々、既に仕事を終えた人たちがどこからともなく釣り糸を垂れにやってくるのである。これは7年前、南大東島の北港で見た風景と全く同じだ。
釣り人の邪魔にならぬよう、岸壁の一番片隅に、ささやかに87RとSR-01を展開させていただく。北大東島では車ではなくバイク移動なので、ほとんどスペースを取ることもない。87Rでワッチに入ると、夜に向かったコンディションは徐々に上がってきているようだ。
試しにCQを出してみるとすぐさまつながる。しかし8ChにいてはEs各局の邪魔になるので、ここでも「クレイジー7Ch」で運用してみる。普段は見向きもされない7Chのはずだが、すぐさまコールバックがある。ひょうご3946局だ。7Chでもありがたいことに各局からお呼びいただく。
コンディションの上昇に合わせてチャンネルを移動しながらの運用だ。一旦CQを出すと、ものすごい数のコールが返ってくる・・・らしい。QSBも激しい。信号も激しく上がり下がりする。たくさん呼んでいただいていることだけはわかるのだが、コールが輻輳して、なさけないことにコールサインが「全く」解読できない・・・。「ほとんど」ではなく、「全く」である。いまだ体験したことのないすさまじさだ。
『ん~~~』、『はぁ~』、『ん~~~』というのは受信に移るたびに聞こえる自分のため息だ。判読の難しさと、取れないことへの申し訳なさに、口から出るのはため息ばかり。まるで各局への応答になっていない。少しずつ、自然とロングスタンバイになってくる。『ん~~~』。普段ならコールが輻輳しても脳内ログでコールサインを瞬時に検索することで対応できる場合が多いのだが、何しろスピーカーから聞こえてくるのは、単なる重なった「音」だけで、日本語ではないのだから、どうしようもない。こちらからは応答のしようもなく、コールをしてくれている局長さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。
一度に頂くコールの数から察しがついたが、こちらからは平均54から56程度で比較的強く飛んでいるようだ。こちらには輻輳する合法局、ピュンピュンと跳ね上がるノイズ、QSBの中、なんとか一局でもピックアップせねばならないというプレッシャーだけがかかる。耳をそばだてていると、それでも何かの拍子に完全解読できるタイミングがある。そこで聞こえてきたのは、例えば、『ナガノでナンシーポーチカル・・・』というコールサインだ(笑。コールサインさえ確認できれば、そこから先の交信はなんとかなる。ナガノNP152局と交信成立だ。そうしてみると、独特な特徴のあるコールサインの呼び方は、何かの時に役に立つのかも知れない(笑。
SR-01の脇で、難しい顔をして、一人ため息をついている当局に、近くで釣りをしていた無口そうなおじさんが、沖縄訛りの抑揚のない言葉で声をかけてくれる。地面に置いた87RはアンテナMaxの臨戦態勢で常にバイクに立てかけてある。
「釣れる?」
「いやぁ~、釣りじゃなくて、無線をしに来たんで・・・」
「西港の方に行った方がいいよ・・・」、「西港の方が釣れるよ。」、「西港の方が釣れるから。」
どう弁解しても、2mのロッドアンテナは釣竿に見えるらしい・・・(笑。
時を感じる瞬間 | ||
ほんの一瞬、夕陽と反対方向の海と空がピンク色に染まる時間がやってくる。 少しして振り返ると、数十秒前にあったはずの輝きは、もうそこにはないのである。 |
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