7月8日(日)

これまで八重山では、波照間島や西表島などで何日も運用しているが、いまだかつて東の海に昇る朝陽を拝んだことがない。せっかくすぐそこに水平線が見えるところがあるのにもったいない話だ。これまで何度も早起きにトライしてきたが、前日遅くまで運用している疲れでついぞ日出に間に合ったことがない。しかし、この日はなぜか4時過ぎの起床に成功(笑、バイクを飛ばして、文字通り日が上がってくる東埼に向かってみる。東京の感覚で、4時半過ぎを目指してきたのだが、まだ真っ暗、月はいつまでも煌々と輝いている。よく考えてみると、こちらは日出が一時間以上遅いはずだ。結局日が昇ってきたのはなんと6時近くになってからだ。少し損した気分だが、とはいえ、与那国で東埼の向こうに日の出が拝めるのも貴重な体験だ。今日は早起きのおかげで一日が長くなりそうだ。そう思うと今度は少し得した気分。

夜明け前、最後の光を放つ星々(左)。やがて灯台の明かりも停止していく(中)。そして最後に月だけが残った。



すばらしいCB魂Ⅱ-いたばしAB303局さん-

いったん宿に戻ってからリグや飲み物などの移動準備を整え、ふたたび東埼へと急ぐ。移動前に部屋で日焼け止めを塗りたくってからとも思うのだが、もう時計も7時近くを指しており、のんびりしている暇はない。このままだとまたしても遅刻してしまう。今日も天気は快晴だ。

7:10分過ぎ、少々の?遅刻で到着。東埼では、灯台脇が最もロケが良いと思われるが、いきなりそこで運用していたのでは体が持たない。日陰が全くないからだ。体力温存のため、今日のメインの居場所は屋根付きの展望所にする。この岬は、常に適度な風がそよそよと吹いており、展望所は紺碧の海を見ながらのんびり過ごすにはもってこいの場所である。ベンチもあるので、昼寝もしようと思えばいくらでもできる(笑。

まずは、ベンチにワッチ用の707をセッティング、他のチャンネルではホニャラが入ってくるが、8Chは比較的静かだ。ただ、ボリュームを少し上げてみると、どことなくざわついた感じがある。とりあえずリグは放っておいて、肝心の日焼け止めだ。昨日は足の塗り方がいい加減だったせいか、ふくらはぎの上部がかなり赤くなってしまった。SPF50を完璧に厚塗りしていても、顔や腕などは夜になってシャワーに触れるとひりひりするくらい日に焼けてしまうほど日差しは強い。

日焼け止めを念入りに塗りたくりながら、何気に8Chを聞いていると、なにやらQSOらしき信号がボソボソ入感してきている。韓国語だろうか?とりあえず日焼け止めを塗る方が重要な作業なので(笑、かがんで塗りたくりながら、聞くともなしに聞いていると、どうやら韓国語ではなく日本語のようだ。しかも、合法局っぽい。うん~??と、一応707に戻り、半信半疑で絞り気味だったボリュームを上げてみると、なんと明らかに合法局である。展望所の屋根の下なのによく入感してくるな~と、我ながら妙なことに感心しているのだが、途中でQSBで落ちたりするので、コールサインは分からないが、誰かとQSOしているようだ。……しかし、この渋い、やや濃い目の変調音には確かに聞き覚えがある。ん~~、ん~~、まさか!、と思った瞬間には、もう既に87Rを握り締め展望所の階段を泡を食って降り始めている自分がいた(笑。障害のない牧草地にダッシュ、急いでアンテナを展開、慌てて87Rのスイッチをオンにするが、何も会話は聞こえてこない(笑。しからば、こちらから、とCQを繰り出してみる。
「ハローCQ、CQ、CQイレブンメーター、CQイレブンメーター・・・」
「あーちょっと今、YK221局与那国島から入感してきてますね。」
相手の局に言われている。まだQSOは続いていたようだ。(大変失礼しました。)
「はい、それでは、すみませんが…」と、QSOの途中で、当局向けにチャンネルを譲ってもらっているのがよく聞こえてくる。このとき既に、その局が、北海道知床に移動中のいたばしAB303局さんであることは確信に達していた。念のためもう一度CQを出すと、すかさずAB303局さんからコールバックがある。RS52。こちらからも52だ。去年の西表島とは打って変わって、余りにはっきりした、全く信じられないQSOだ。ちょっと油断してしまったせいか、「感動した」とか、「うれしい」とか、「後から動画とります」とか、ずいぶんと余計なことを長々?しゃべってしまったような気がする。しかし、落ちるのは余りに早い。QSO終了後にあわてて展望所からカメラを持ち出し、動画を撮ろうと、何度もコールするのだが、うんともすんとも聞こえない。ぱったりと落ちてしまったようだ。しかし、「また撮り損ねた」、という落胆など打ち消して余りある感動の余韻に、カメラを手にしたまま、しばらくそこを離れることができなかった。感動はじわじわと沸きあがってくるのである。AB303局さんに感謝、感謝!

今回は、ロールコール連絡網等でAB303局さんが知床に移動されることは予め知っていたので、それなりに気合を入れるつもりだったが、つながるとすれば昨年の西表島同様、日没前後と踏んでいたので、朝の早い時間帯は全くノーガードだった。朝の7時台前半という早い時間につながったことは驚きだ。それにしても、タイミングというのは恐ろしい。AB303局さんとのQSOは、運用開始10分に満たないタイミングだったことだ。あの時もし展望所ではなく、宿で日焼け止めを塗りたくっていたら(笑…、来る途中でのんびり写真でも撮っていたら…、と思うと、やはり超幸運だったに違いない。誰に感謝したらよいか分からないが、とにかく感謝。

展望所
AB303局さんとのQSOはダッシュで駆け
下り、岬の原っぱへ
展望所内よりⅠ
この海の色には本当に癒される。
仮にベンチに寝転がっていても海は良く
見える。
展望所内よりⅡ
サンニヌ台展望台



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