両神山荘
日曜の朝5時、山荘の窓から眺める南の空には、月が煌々と輝いていた。天気は気持ちよい晴れのようだ。11mリアル板にQRV情報をインプット、6時前に宿を出発する…。


両神山(1723m、百名山)は秩父の中心街から更に西の山奥へ直線距離20Km、登山口のふもとへはバスを乗り継いで秩父から正味1時間半かかる。もう2、3キロ北へ行けば群馬との県境、西へ12キロほど行けば長野県との県境に位置する。リフレッシュをかねて土曜の午後から出かけてみることにする。出かけると言っても、休みの朝(土曜の朝)に早起きする必要もないので、午後から思い立ったときにぶらりと出かけるのにもちょうど手ごろな場所でもある。もっとも当局の住んでいる都内からは4時間以上かかるが。

日が伸びて、暮れるのが遅くなった土曜の夕方、登山口の両神山荘(民宿)の総ヒノキ風呂に、一人のんびりつかりながら、唯一聞こえてくる川のせせらぎを聞いていると、ゆったりとした気持ちがよみがえってくるようだ。


…日曜日。天気は快晴、9時半過ぎに山頂に到着すると、富士は雲で見えないが、西の方には雪をかぶった八ヶ岳が奥秩父の山々の向こうによく見えている。山頂から見える景色のすべてに、明るい春の日差しが降り注いでいた。

山頂はほとんどが岩場でスペースがあまりない。登山者の邪魔にならぬよう、崖っぷちのわずかな平地に三脚を設置する。707をセッティングしたり、日焼け止めを塗ったり(笑、山頂に先着の登山者と話し込んだりしているとあっという間に30分が過ぎる。

10時ちょうどに707で第一声を出し始める。今日は特小の代わりに、パーソナルハンディ機を持ち込んでみた。1エリアではほとんどパーソナルを運用していないので、どんなつながり方がするのか、楽しみだ。

イヤホンでCBの各チャンネルをワッチしてみると、今日はいかにも海外局がうるさい。スタンバイピー常用の南方系からロシア系お姉さんまでオンパレードだ。ノイズもさまざまな「外来」ノイズが入ってくる。全チャンネルが同じような状況に、つい「う~ん」とため息をついてしまう。サイクル24が立ち上がって黒点数も上昇してきているのでF層によるものだろうか?今後ずっと夏までこの調子かと思うと思いやられる。

今日は移動局が少ないせいか、QRVから一時間近く経ってようやく、ぐんま5424局に最初のコールを頂く。聞きなれたコールなので、だいたい見当はついているのだが、海外の交信音が肝心のところで被ってくるので、なかなか数字が聞き取れない。つづいて、いつもお世話になっているサイタマAB960局にピックアップいただく。吉見町の荒川河川敷からの運用のようだが、どうも「下界」のほうは、曇っていてかなり肌寒いと言われている。

桜もほぼ満開だと言うのに、花冷えだろうか。山頂では気温3度くらいだが、中厚のインナーダウンを羽織っている程度でちょうどよい、というか、日が差していて風もほとんどないので十分暖かい。いつもとは、山と平地でパターンが逆のようだ(笑)。
同様にいつもお世話になっている、さいたまBB85局とぐんまAD17局は羽生市の利根川河川敷で合同運用されているようで、52から54で両神山まで信号が飛んでくる。普段ならもちろん全く問題なしの信号レベルなのだが、ややもするとつぶされかねないほど海外ノイズやピュルルンノイズが激しい。おまけに日曜日だと言うのに、今日は違法局の電波もかなり入感してくる。しかも強力に…(笑)。

ポン太


ナニカ御用デスカ?

今日は出だしから入感局もなく、CQも空振りなので、手持ち無沙汰に無用な写真撮影をしていると、突然するすると柴ワンコ風の犬が山頂に現れる。毛並みといい首輪といい、飼い犬には間違いないが、山頂は勝手知ったる場所のようだ。やや遅れて上がってきた、前夜同宿だった人に聞くと、この犬は両神山荘の飼い犬で、朝出てくるときに山荘の主人に頼まれて一緒に連れてきたのだという。ポン太…確かそう言ったと思うが…は、山頂往復は手馴れたもののようで、「ちゃんと道案内してくれるから、一緒に連れて行って」と頼まれたそうである。

最近低山歩きでは、犬連れの人によく会うし、「道案内犬」というのも時々聞くが、せいぜい山頂まで40~50分程度の、ふもとの茶店などの犬というのが相場だ。それにしても…正味片道3時間半の道のり、両神山は途中には鎖場が連続する箇所があり、それもよくあるお飾り程度のものではなく、鎖に体をほとんど預けないと登れないような場所がいくつもある。たちはだかる岩をどうやって登ってきたというのだろうか?爆)しかも今日は北斜面の登山道は、降り積もった雪がツルツルに凍って、完全にアイスバーンになった細い道が谷沿いに数百メートルつづいていた。人にとっては?一歩滑らせたら大変危険な箇所だ。ちょっと大袈裟だが、前日には登ってきた団体がアイゼンを持ち合わせずに、そこで引き返したという話である。

「ポン太ー、帰るぞー」という、一緒に登ってきた登山者の言葉には見向きもせず、ポン太は下山せずに、のんびりと山頂の時間を楽しむことを選んだようだ。

パーソナルはどうか?

三脚のねじからストラップでぶら下げて置いたパーソナルは先ほどからピコピコと、立ち上がる気配を示していた。707の上に移して、期待してワッチしていると、見事に?サイタマAD966局のCQで立ち上がる(笑)。深谷市のモービルからのようで、当局のPR-6の小さいスピーカーでも、FMらしいクリアな変調音がガツンと響いてくる。AD966局にはいつもCBでお相手いただいているが、パーソナルでのQSOもまた一味違った?ものがある。川越からは、サイタマR32局が入感してくる。窓辺に急ごしらえのアンテナをセットされての運用らしいが、山頂までよく飛んでくる。

パーソナルでは千葉県市原市のチバSS119局からもコールを頂く。CBでは千葉市方面はいつも運用局が多いので、事前に見通し範囲を確認していたが、パーソナルでも期待通りM5で入感してくる。しかしシグナルを交換し、こちらのロケ地を送ったところでいったん交信が途絶えてしまう。SS119局には、後刻再度コールを頂き、無事QSOを完結させることができた。

昼を回った頃には、千葉県我孫子市から、チバAC532局にコールをいただく。AC532局の信号はフルスケールで入感してくる。よどみない、S/Nの効いた音がFM局のスタジオ音声のようにしっかり聞こえてくる。固定用のアンテナは高い位置に設置されているようで、当局の1W波もほぼフルスケールで入感しているようだ。

パーソナル運用を楽しんでいる間にも、CBの方では、海外ノイズが異様な盛り上がりを見せていた。幸い?CQを出しても空振りの時間が続く。今日は移動局も少ないようで、チャンネル内を探しても、合法CB局の電波はほとんど見当たらなかった。暇なうちにと、昼飯を食べていると、ポン太が食べ物をおねだりに来る。おもねる風でもないのだが、横に座ってじっと見つめられると、ついいろいろなものを与えてしまう。きっと犬には与えてはいけないものもあるのだろうが、ホットケーキやカレーパンをおいしそうに食べていた。ちなみにカロリーメイトは、チョコ味はおいしそうに食べていたが、チーズ味は見向きもしなかった(爆)


シーキューとか言ってるけど、オレにはムセンとか、カンケイニャイナァー。

ポン太は、山頂で2時間以上、当局の背中でゴロリとのんびりしていた。他の登山者からも、おやつをもらったりしながら山頂での時間を十分楽しんでいたが、やがて「一人」下山して行った。当局は結局山頂に5時間以上いたが、間違いなくこの日2番目に山頂に長居していたのはこのポン太である。

13時を過ぎると快晴だった空も、薄雲がかかり始め、しばらくすると山にもガスがかかり始める。あれだけ晴れていた午前中とは大違いで、遠くの視界が全く効かないようになってくる。体感温度も下がり始める。

今日は87Rも持参していたので、せっかくなので、バッテリーをつなげて、707から運用を切り替えてみる。狭い山頂も一応歩き回りながら、CQを出してみると、栃木県栃木市から、とちぎR50局、群馬県安中市からはグンマAA661局にお声がけを頂く。もともと群馬・栃木方面への飛びを期待してこの山に来たので、これは期待通りだ。グンマAA661局は、午前中にも当局の信号をモニターされていたようだが、信号が弱く、コールできるほどではなかったとのこと。リグを87Rに変更し、ロケも若干ずれたせいか、交信ができて良かったと思うのだが、なぜそんなに飛びが違うのか?AA661局との交信後に、午前中に交信いただいたさいたまBB85局が、わざわざレポートを再送してくれる。午前中は54だったRSが59に跳ね上がったと言われている。(TNX! BB85局)ん~、確かにこちらでもBB85局の信号は59だ(午前中は52)。試しに、707の設置場所に87Rを持っていくとSが3つほど落ちる(笑)。場所は5mも変わらないほどだが…。何が違うのかのんびり考えている暇はないので、以降87Rで運用を続ける。

小川町からはサイタマHK123局が出てこられる。HK123局との交信も12月以来だろうか?JARLの年会費を納めてこられたと言う話を聞いて、そういえば当局も支払い票はほったらかしになっていたことに気づく(TNX! HK123局)。最近はほとんどアマ機は運用していないので、会費と言っても、毎年JARLに寄附しているようなものである。

14時を過ぎると、いよいよ天気が怪しくなってくる。山頂を通り過ぎるガスに混じって、雪も飛んでくる。雨に降られてもかなわないので、早めに撤収しようかと思うのだが、それでも、鎌倉市の大平山のヨコハマAC306局/カナガワOT207局(合同運用)や、千葉県白井市のチバKX56局などからコールを頂きQSOしていると、予定通りの時間一杯の14:30=撤収すべき時間が迫ってくる。

例によってリグ一台だけ残し、あと片づけを済ましていると、後ろの方の、スピーカー運用に切り替えた707から、サイタマAD966局のCQが、誰もいない山頂に響きわたる。3Chで見事ヒット(爆)。午前中、パーソナルでQSO時に、時間があったらあとでCBにも出るかも、と言われていたのだが、見事最後に的中するとは…。2度目のCQに応答し、最後のQSOを終了する。雲行きも、今にも雨が降り出しそうな気配だ。速攻で707も撤収し、足早に頂上の岩場を後にする。

また山頂であのポン太に会える日もあるだろうか。(笑)

                                                     ('10/04)



運用データ
運用日:
  2010年04月4日(日)

運用場所・時間:
  両神山 (標高1,723m、埼玉県小鹿野町・秩父市境) 
  10:00~14:35
  MAP

使用リグ: ICB-707、ICB-87R、PR-6(パソ機)

QSO局(敬称略)
ぐんま5424/群馬県安中市 51/51 サイタマAB960/埼玉県吉見町荒川河川敷 51/52
さいたまBB85/埼玉県羽生市利根川河川敷 52/54 グンマAD17/埼玉県羽生市利根川河川敷 54/53
サイタマAD966/埼玉県深谷市 M5/M5 (PR) さいたまR32/埼玉県川越市 M5/M5 (PR)
くまがや39/埼玉県熊谷市 55/45 さいたま1118/埼玉県 41/41
チバSS119/千葉県市原市 M5/M5 (PR) おおさと59/埼玉県吉見町荒川河川敷 51/52
サイタマAS326/埼玉県富士見市 51/51 チバAC532/千葉県我孫子市 M5/M5 (PR)
とちぎR50/栃木県栃木市 53/57 グンマAA661/群馬県安中市 51/52
ふくおか8774/東京都東大和市 41/55 サイタマHK123/埼玉県小川町 55/57
ヨコハマAC306/神奈川県鎌倉市大平山 55/55 サイタマAC654/埼玉県小川町笠山中腹 56/54
カナガワOT207/神奈川県鎌倉市大平山 55/54 ちばKX56/千葉j県白井市 41/51
サイタマAD966/埼玉県深谷市 52/52
PR=パーソナル


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番外編
八ヶ岳&御巣鷹の尾根
八ヶ岳(中央奥)がよく見
える。撮影時は特定でき
なかったが、日航ジャンボ
機(ジャパンエアー123)が
墜落した御巣鷹の尾根も
見える。(右図参照)
御巣鷹の尾根
直線14Km。ほぼ長野と
の県境。
改めてご冥福をお祈り
する。
どこ行くの?
山道は分かってるんです
が・・・。
両神山荘
ご主人夫妻は、非常に
親切で気さく。



© Nagoya YK221
しらびそ091103
 '10/04/4 埼玉県小鹿野町・秩父市