コントラスト
春のOADは山岳移動を予定していたので、その一週間前に少し体を動かしておこうと、ちょっとだけ遠出をして、静岡県の愛鷹山に移動してみることにする。正確には愛鷹山の越前岳(1,504m)である。「愛鷹山」は、愛鷹山(1,187m)のみならず、位牌岳(1,458m)や呼子岳(1,310m)などの愛鷹連峰を総称して、そう呼ぶ場合が多いらしいが、越前岳はその中で、もっとも高い標高となる。

東京から電車とバスを乗り継いでいくと9:30頃に、基点となるふもとの十里木にたどり着く。今冬は降雪が多いせいか、登山道の途中からは軽アイゼンをつけての山歩きとなる。山道を登りながら背中を振り返ると、真っ青な空を背景に、真っ白な富士が視界いっぱいに拡がる。今日は天気がよいので、青と白のコントラストがなんとも言えない。やはり富士はいつどこで見てもすばらしい。

11時過ぎに山頂にたどり着くと、お昼前とあって、多くの登山客でなかなかにぎやかだ。山頂は南の伊豆半島方面から駿河湾、西方向にかけて展望が開ける。中央アルプスの山々も烏帽子を被ったように白い頂の峰峰が空に浮んでいる。

軽量仕様の707を三脚にセットし、山頂のひと時を楽しむ人々を尻目に、片隅でワッチを開始する。周辺の人口ノイズは皆無だが、バンド内はコンディションのよいときのざわめきが高ぶっていた。南方の海外局も活発だ。3ChでしばらくCQを出すとしずおかSE30局のコールが入感してくる。自宅庭先からの運用のようで、ありがたいことに掲示板を見られて出てこられたようだ。見通しなのか信号はきわめて明瞭だ。今日は後ほど別の場所に移動されて運用を楽しまれるようである。

日当たり良好の山頂は風もなくおだやかだった。汗で湿ったシャツもすぐに乾き始める。空は底抜けに青いが、水平方向の視野には春特有の霞がうすくかかる。その空間を通しては、駿河湾の海岸線もくっきりとはいかず、穏やかに見える。海は霞を反映してか、灰白色にどことなく焦点をずらしていた。山頂の地面は雪がない代わりに、水分でぐちゃぐちゃである。太陽から熱エネルギーを受けた地面は、そこから、残り火でたばこが燃える灰皿のように、水蒸気を勢いよく煙のように上げていた。


山頂にて
駿河湾
快晴。しかし春の霞は海岸線をくもらせる。
富士山方向
山頂の地面は雪解けでぐちゃぐちゃに。

MM
掛川市の茶畑からは、同じく迎撃に出てくださったシズオカAD964局にコールをいただく。考えてみると、愛知地区でいつもお世話になっている964局とも今年になってはじめてのQSOである。964局とのQSOの途中で、シズオカES88局の信号が入ってくる。QSO中なので応答はできないが、S3くらいだろうか。964局とのQSOを終了後、再び信号が入感、QSOに成功する。先ほどのS3くらいから、今回は大幅に上昇してS7で入ってくる。ES88局はなんとMM運用らしい。ヨットを回航中らしく、ちょうど伊豆半島の先端、石廊崎を回って駿河湾側に入ったところとのこと。操船に忙しく、なかなか交信時間はとれない(笑)そうで、ショート目のQSOとなる。さすがに海上移動だけあって、高いところに対しては飛び受け抜群である。ES88局との交信後に、日本平からは、シズオカAC703局にお声がけをいただくが、もともとES88/MM局とスケジュールを組まれていたようで、駿河湾沖に入ってきた88局とも無事つながったようである。

QRVして1時間もすると、海外の騒々しさが一段と増してくる。52から53程度の信号では、FMのように完全につぶされてしまうくらいだ。各チャンネル、ノイズもかなり激しい。そんな厳しい中、シズオカT100局の信号が入ってくる。沼津の街中からのようで、こちらにはS5で入感してくるものの、T100局へはS1程度の入感でショートQSOとなる。T100局は後刻、ロケのよい場所に移動され57/56で2回目のQSOをさせていただいた。伊豆の国市の田中山からは、しずおかCV22局が出てこられる。CV22局ともQSOは久々で、昨夏の与那国島運用以来?だろうか。緩やかな日差しのせいか、ついついQSOものんびりとラグチューモードにはまってしまう。

13時も回って、握り飯を食べながらのんびりワッチしていると、「ちょっと、すみません」と、おばさんが話してかけてくる。もともとトランシーバーはイヤホン使用なので、まわりからみると、単に手持ち無沙汰で、暇そうに見えるのかもしれない。なにやらそこらに見える山を同定してほしいという。すぐ近くの位牌岳や呼子岳くらいはわかるが、それ以外は当局もはじめてのロケなのでよくわからない。地図を取り出してみせてやってもなんだか合点のいかない様子。こちらも暇そうに見えて、結構忙しいので(笑)更に詳しそうな人に相手を引き継がせてもらう。それにしても、あのずうずうしさは、よい意味で、「オバサン」固有の強みである。

707
本日は三脚仕様
駿河湾上空
西行きの旅客機が頻繁に通り過ぎて
いく
水蒸気
地面全体が、間断なく湯気を立ち
昇らせる

オブラートに
越前岳から東方面へは、箱根の山々が立ちはだかるが、神奈川、千葉房総方面の1エリアにもそこそこ電波は飛んでいるようだった。鎌倉市の大平山からはヨコハマEV638局が、湘南平からはカナガワAC288局がそれぞれ53、55で入感してくる。AC288局さんによれば、平地の?ご自宅近辺まで越前岳からの電波は届いていたようである。千葉県木更津からは、ちばAB31局が41で入感してきていたが、房総半島の南地区とは海を隔てて障害が少なくなるせいか、飛び受けは55~59と、一気に強力になる。南房総市の富山には、チバZZ664局と、かながわUA66局が移動されており、特にUA66局の交信されたポジションからは、ガツンと入感してくる。聞き間違いでなければ、当局からは59?で飛んでいるようだ。

14時を過ぎてからは、午前中あれだけにぎわっていた山頂も、ずっと当局一人だけである。スピーカー運用に切り替えて、ゆるりと運用を続ける。今年初めて春の一日を満喫しながら、15:30前に撤収を完了する。(静岡各局TNX!)
のんびり山道を下ってくると、登山道の開けた真正面に富士の端麗な姿が飛び込んでくる。登っている時は常に背中になるので、絶景ポイントを見落としていたかもしれない。
富士は、傾きだした陽の加減に、やさしく、オブラートにその姿を包まれ始めていた。

                                                     ('10/03)



運用データ
使用リグ: ICB-707
運用日:
  2010年03月14日(日)

運用場所・時間:
  愛鷹山越前岳 (標高1,504m、静岡県裾野市・富士市境) 
  11:20~15:20
  

QSO局(敬称略)
しずおかSE30/静岡県富士市 58/58 シズオカAD964/静岡県掛川市 55/54
しずおかES88/MM 伊豆半島石廊崎沖 57/57 シズオカAC703/静岡県清水市日本平 59/59
しずおかAE86/静岡県御殿場市 57/59 シズオカT100/静岡県沼津市 55/51
しずおかCV22/静岡県伊豆の国市田中山 57/57 ヨコハマEV638/神奈川県鎌倉市大平山 53/54
カナガワAC288/神奈川県平塚市湘南平 55/55 シズオカYM181/静岡県沼津市 54/54
ちばZZ664/千葉県南房総市富山 55/53 シズオカAD301/静岡県裾野市 59/59
かながわUA66/千葉県南房総市富山 55/59



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