2024運用記
宝生峠
栃木県佐野市


  【宝生峠にて】 





「峠」のイメージ



峠という言葉には、そこを越えた先に何があるのだろうという、少しだけワクワクするような期待感を持たせる、独特の場所であるような雰囲気を感じる。

峠というと、山稜を越えていく、九十九折れとなった山道全体のイメージが強いが、もともとは山道を登りつめてそこから下りになる場所、つまり、山脈越えの道が通る最も標高が高い「地点」を指すらしい。峠の語源は「手向け(たむけ)」で、旅人などがこれから先の無事を祈り、また、帰り着いた時の無事を感謝する場所でもあったという。たしかに、峠には道祖神はもとより、祠などが祀られている場合が多い。

宝生峠(ほうしょうとうげ)は、栃木県佐野市と群馬県みどり市の間の山稜を越える峠だ。佐野市と言っても、ほぼ市の北端にあり中心部からは直線で30Kmほど北北西の、全くの山の中である。こんな山の奥まで佐野市だったとは、全く知らなかった(笑。

峠には、道祖神や祠がないまでも、林道開通の記念碑がある。名称は「林道作原沢入線」である。平成29年(2017年)に開通したようだ。峠の近くには宝生山があるので、おそらく峠の名称はこの山に由来するのだろう。「宝生」自体の由来は宝生如来と関係しているのではないかと思われるが、峠から見て宝生山の向こうには、氷室山神社という神社もあり、もともとこの辺りは畏れ多い神聖な山域なのかもしれない。

それにしても、こんな人跡未踏の山中に、いつだれがどうして何百年?も前に祠を建てて神社として祀ったのだろうかというのは、日本のそこかしこを旅していると、良く出会う疑問ではある。ちなみに峠を佐野市側に下ったところには、蓬莱山という霊場もあり、蓬莱自体は日本全国いたるところにある地名だが、そもそも、蓬莱というのは仙人が住むとされる異界の領域の意味だ。このあたりがいかに山深いかを象徴している。なお、ここの蓬莱山は1200年前の開山らしい(笑。

ということで、今日のQRVポイントは、九十九折れという意味での宝生峠のほぼてっぺん、標高1,106mの地点だ。ここは峠のてっぺんなので佐野市とみどり市の境ということになるが、本日のQRVポイント自体は佐野市側にほんの少し入った場所になる。


峠にて:
看板の奥が群馬側
 
看板の手前から右側が栃木側  峠より:
左端:赤城山(黒檜山)~袈裟丸山~右端:皇海山(頂上部のみ)
 



対戦相手が悪すぎた???(笑



今日の目的は、引き続きSR-01Xを試すことだ。特に、9月7日の初運用で違和感を覚えた外部スピーカーの試聴である。また、リグの比較相手として、今日は東海770DXを持参してみた。770DXは、しずおかDD23局製作の新技適機である。DD23局は、新技適機をいくつも作製されているが、最近の運用はアンテナチューナー付きの新技適機がメインになっている。この770DXは最近は使われていないということを聞いたので、つい先日譲っていただいたものだ。

3年前の沖永良部島運用の時、このリグをお借りして初めて運用させてもらったわけだが、その時の衝撃は今でも忘れていない。その衝撃の中身は運用記で記したとおりだが、『その場の空間ノイズを表現できるリグ』という賛辞の言葉にすべてが凝縮されている(爆。まあ、「そんな大げさなことあるかっ!!」と思われる局長さんも多いと思いますが・・・。

いずれにしても01Xの比較相手としては、相手が悪いような気がしないでもないが、久々の770DXなので、こちらのリグも運用が楽しみだ。


峠自体は稜線を越すという意味では、確かにてっぺんだが、周りの木々が生い茂っているので、視界が開けているのは西側の一部だけだ。皇海山?らしき山の頂上が見えている。将来的にはこのあたりに展望台が造られるらしいので、その時はもっと視界が開けるはずなので、それはそれで楽しみである。

いよいよQRV開始だ。しかし、車のルーフにリグを並べていてハタと気づいた。LCRを持ってくるのを忘れた(笑。相変わらずの大ボケだ。

まずはしばらく外部スピーカーなしでの運用で、01Xのas isの音の出方を再確認してみる。リグを点けると、いきなり、JR6のオキナワMO583局が入感してくる。もう10月半ばのはずだが、時間によっては、まだEsは安定して入感してくるようだ。

3連休で天気も良いせいか、すでに運用中の局も比較的多いようで、グランドウェーブ派の当局にとってはうれしい限りだ。9時までの40分間で9局ほどとQSOと、OADでもない普通の休日としてはまずまずの出だしである。













東海770DXと並べて運用に入る。
770DXは3年ぶりの運用だ。



外部スピーカーの方は、インピーダンス4Ωと8Ωの2種類を用意している。4Ωの方は、2インチ(51㎜)2発、8Ωは2.5インチ(64㎜)1発である。いろいろな局長さんと、海外局の信号を受信しながら、チェックしてみる・・・。

9月初めに外部スピーカーを試した時は、4Ωのスピーカーだけだったが、かなりの違和感を覚えた。今回も、試聴した限りでいくと、やはり4Ωのスピーカーは違和感が激しい。聴感的には、AFアンプのダンピングファクターがかなり小さいようなイメージで、非常に締まりのない音だ。聞こえ方としては、あくまでイメージだが、AFの出力インピーダンスがかなり高いような印象だ。8Ωの方は、まあ、普通程度に聞ける感じではある。

もともとサイエンテックスは外部スピーカーとしては、8ΩのP811(第一電波工業)を推奨しているが、単にケーブルの長さの問題だけではなく、外部スピーカーを使用する場合は8Ω以上を使用した方がよさそうだ。それにしても、スピーカーのインピーダンス違いで、これほど音に差が出てしまうAF出力というのは、みたことがない。4Ωというインピーダンスは、最近ではごく普通に使われるインピーダンスなので、当局の単なる気のせいならよいのだが・・・。

次に、感度的なものも含めて、770DXとの比較はどうなのか???

まず、感度はさておき、Sメーターについては、やはり01Xは軽いようだ。S7ぐらいまでは、1~2程度、表示値としては01Xの方が高くなる。8ぐらいから770DXと同じような感じか。これは前回運用時の87R比較時と同じような数字の出方だ。音量については参考程度の話だが、770DXのボリューム「3」の位置と、01Xの1時方向での音量が同じになるぐらいの感じだ。沖永良部島運用記で記したとおり、基本、770DXはICB-770と同じAF増幅回路で、アンプは同じIC、μPC575C2(NEC)を使用している。したがって、音の出方はオリジナルの770とほぼ一緒である(聴感上のf特は若干異なる)。

いわゆる「感度」はどうか??電気的な感度はおそらくほとんど差がないのだろうが、770DXの方が圧倒的に「静か」だ。それに比べると、01Xの方はかなり「騒々しい」ということになる。つまり聴感上のS/Nはかなり差が出る。世の中に一台しかないリグを誉めても全く意味はないが、実態としてはそういうことになる。

この「静か」と「騒々しい」の違いは、表現を変えると、信号だけが浮かび上がってくるか、そうでないかの違いである。したがって、770DXの方が非常に運用しやすいし、楽チンである。なぜなら信号に神経を集中させる必要性がない、もしくは、軽減されるからである。特に、この点はノイズに埋もれてしまうような微弱信号では大きな違いを生ずる。

とはいえ、フォローするつもりは毛頭ないが、比較する相手が悪いだけで、770DXを相手に01Xはかなりいい線をいっている、というのが当局の総合的な印象だ。前述の「圧倒的に」というのは、顕微鏡のように拡大してみればという究極の意味で、その差が他局にとってどれほどの差を持つかは疑問だからである。しかも、あくまで比較上の話で、絶対的なレベルの話ではない。おそらく、01Xは基本的な送受信能力の点では、かなり満足度の高いリグである。


  試聴に用いた外部スピーカー(8Ω) 770DXは、Ch1への強制スイッチで、どのChにいても、27005を受信可能。その時、Ch表示は「4.」となる。さらに、LightスイッチONで、ノイズブランカがONになる。スケルチは通常のスケルチではなく、常に逆スケルチ機能として動作するようになっている。



ところで、最近出てくるリグの特徴はといえば、機能が多彩になっていることで、その主なものはフィルター、ノイズブランカ、RIT、27005受信、逆スケルチ、アッテネーター(ATT)、オートチャンネルローテーションなどだ。更に個人の新技適機としては、アンテナチューナーや、ノイズキャンセラーなどがある。このうち、27005受信、逆スケルチやオートチャンネルローテーションは、受信上の能力を補強するものではなく、運用上のサポート機能だ。

これらの機能で当局的に最も有用なのは、27005受信機能である。27005はコンディションの把握には必須だし、交信相手がない暇なときは違法局の会話を聞いて楽しむこともできる(笑。逆に、逆スケルチなどは一度も使ったことはないし、ノイズブランカもほとんど使ったことはない。もっとも、当局の場合そのような機能が必要な環境では無線をやらないだけの話なので、そういう環境でやられる局長さんにとっては有用な機能だろう。RITは、フィルターと合わせ技でテクニックを駆使する時以外は、普段はほとんど使うことがないし、ATTについては、そもそもどういう場面で有効なのかが一般によく理解されていないことと、固定の8ChしかないCB機でそこまで必要か?という問題もあり、搭載されていてもほとんど使用されていないのが実態ではないだろうか。

一方、01Xの現時点での機能は、RITとATT、フィルター、逆スケルチである。フィルターについては、子供だまし程度のものという感が否めない点を考慮すると、今後の01シリーズのグレードアップについては、飛びが良いという特性を維持しつつ、全体的な回路やラジオICなどの基幹部品が刷新されることを期待したいところである。


23QSO、各局TNX!! 
(敬称略)

 (2024/10/15)







本日のパティスリー: ハックルベリー (群馬県太田市)
   店の外にはテーブルとイスが置いてあり(建物左側部分の、屋根の下)、イートイン?も可能。
   「木いちごのケーキ」と「ベイクドチーズケーキ」をテーブル席でいただく。




運用データ


 
■運用日時・場所:
  ・2024年10月13日(日) 8:20~12:15
    栃木県佐野市宝生峠
(標高1,106m)

 ■使用&装備リグ:
  ・SR-01X (サイエンテックス)
  ・東海770DX (SONY/東海無線クラブ改新技適)

 ■使用&装備電源(CB機)
  リチウムイオンポリマー電池:
    11.1V/5.1Ah、11.1V/3.0Ah




QSO局
23QSO TNX!!
  
(敬称略)

2024年10月13日(日) 晴れ 8:20~12:15   
おきなわMO583/沖縄  55/56  サイタマCT170/埼玉県加須市カスリーン公園(1)   57/59 
とちぎ4862/栃木県栃木市太平山 57/59  トチギYA306/栃木県真岡市 56/56 
エドガワAA387/東京都墨田区 57/56  つくばA3/茨城県つくば市小貝川 54/55 
ちばCB59/千葉県袖ケ浦市袖ケ浦海浜公園 52/52 ちばGY38/千葉県習志野市 51/52
ちばTK29/千葉県袖ケ浦市袖ケ浦海浜公園 56/56 ちば4126/千葉県君津市人見山* 53/53 
サイタマCT170/埼玉県加須市カスリーン公園*(2) 55/55  サイタマQBM254/東京都清瀬市 53/52 
ねりまCX72/東京都清瀬市 54/54  ちばG70/茨城県つくば市 53/53 
サイタマAB960/ 56/57  ちばMR21/千葉県木更津市 55/54 
とうきょうMS25/東京都立川市 53/53  サイタマCT170/埼玉県加須市カスリーン公園 *(3) 56/56 
バンドウNS228/茨城県坂東市* 53/55  サイタマCT170/埼玉県加須市カスリーン公園(4)  56/54 
つくばGT38/茨城県筑西市小貝川 55/55  サイタマSR400/埼玉県ときがわ町堂平山 56/53 
サイタマCT170/埼玉県加須市カスリーン公園(5)  57/59 
   
*:東海770DXによる交信。(1)~(5)については、CT170局側のリグが、それぞれ87R、ICB-680、SR-01、ICB-680、87R。




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