2024運用記
雁ヶ腹摺山(各オン)
山梨県大月市


  【6時過ぎ、朝の光が差し始める: 雁ヶ腹摺山山頂にて】 






82年後の世界



朝6時、木々の間を縫って差し込んでくる赤い光が、ところどころ地面を輝かせ始めた。山頂の東側は木々が生い茂っているので、日の出は直接拝むことはできないが、ようやく陽が昇り始めたようだ。

同じように赤く染まった山頂近くの森の向こうには、富士の稜線がくっきりと空に浮かび上がっている。ただ、山容全体は思ったほど赤く染まらずに、山頂近くがほのかに赤く照らし出されている。地平からかなり上まで雲海状に積み上がった雲が水平線近くからの光を遮断しているようだ。

この場所から撮影された富士山の写真が、五百円紙幣の裏面の図柄になっていることは有名な話だ。撮影されたのはちょうど82年前の今日である。当局は恥ずかしながら撮影者の名前は存じ上げていなかったが、名取久作という方のようで、国鉄の職員であられたらしいので、当時としてはセミプロの写真家ということになるのだろうか。

1942年(昭和17年)11月3日といえば、日米開戦からそろそろ1年経とうかという戦時中のことである。戦争の真っただ中にどういう思いでこの山頂に立ち、富士山の写真を撮られたのだろうか?もちろん知る由もない。今でこそ、大峠の駐車場から簡単にやってこられるが、当時は当然下から苦労して登ってこられたに違いない。それとも大菩薩方面から稜線沿いにやってこられたのか??ただ撮影時刻は7時15分頃というから、前夜は山頂の近くに野営されていたのかもしれない。

奇しくも今年は新紙幣が発行された年となったが、昔は五百円でもお札が発行されていた。五百円札と言われても、比較的シニアーな方々でないと、見たこともない人が多いだろう(笑。盛んに使われていたのは1980年代の初めまでだ。したがって、外人の「ワッタシーニデンワシテクダサイ、ドーゾヨロシク」という、たどたどしい日本語による、テレビ通販の先駆けのようなテレビCM(笑)を知っている人は、このお札を知っているはずだ(謎。当局も実際に使った期間は短いが、お札というものは身近なところにあるせいか、図柄等はもちろん鮮明に記憶している。

そこに描かれた富士は、しっかりと6合目ぐらい?まで冠雪している。図柄は写真がベースになっていることからすると、その時に撮影された富士はそのように冠雪していたのだろう。「従来の」感覚からしても、11月の初旬と言えば、そのように冠雪しているのが自然と思われる。しかし、82年後の今はどうか??今年は特にまだ初冠雪が観測されておらず、今日まで過去130年間で最も遅い記録を更新中だ。11月になってもまるで夏と同様の裸の富士山のままである。まだ雪のかけらも見受けられないが、それでも、それはそれで美しい。

ただ、やはり気になるのは地球の温暖化だ。「地球温暖化」といったことは、どこか捉えどころがなく、なかなか実感が持てない漠然とした大きな問題だが、こうした最近の変化を目の前に突きつけられると、あらためて、それが急速に差し迫ってきた課題であることを身をもって認識させられる。

ということで、82年後の今日は、平和であることにも感謝しつつ雁ヶ腹摺山(がんがはらすりやま、山梨県大月市)、標高1,874mにQRVだ。環境や経済など世の中いつでもいろいろと課題はあるが、とにかく今でも世界中のどこかで戦火が絶えない中で、日本が平和であり続けていることだけは先人に感謝が必要だし、今後も平和ボケせずに弛まぬ努力が必要だろう。

  日の出のとき 



OADがスタート・・・・・したら、スタイリーでも始めるとしますか(謎。



  
【7:30 82年後の世界】




今日はTYPE IIで



今日持ち込むリグは01Xと87Rだ。87Rは比較用ではなく、予備機で、今日は01Xを連続して使って長時間での運用を試してみようという計画だ。今どきのリグは信頼性が高いので本当は予備機など要らないのだが、これは心配性の性分なので仕方がない(笑。

今日の01XはTYPE II仕様でいってみる(笑。LCRのアンテナは、これまでSRH140Dだったが、今日は遅まきながら104cm、λ/2フルサイズのロッドアンテナ、「d-ROD-100」を試してみることにする。


さすがに山頂にはこの時間では一番乗りだったが、富士を眺めているとアッという間に1時間が過ぎる。東京、埼玉、神奈川方向の局長さん狙いで、東側の縁に陣取ってさっそくQRV開始だ。ただ前述の通り、山頂は富士山方向以外は木々が生い茂っているので、電波的にも余り見晴らしは良くない。



 少し下ったところから見る山頂。
 富士山方向以外は木立になっている。
 山頂の東縁で開局   今日はTYPE IIでいってみる。
 次回はTYPE III登場か?(笑
 



CQを出してみると、さっそく横浜や立川、千葉市からコールをいただく。立川のトウキョウTM269局やとうきょうMS25局は57/55~56だ。しかし、距離的には圧倒的に遠い千葉市のちばTK29局も57/58で同等以上のRSである。TK29局は美浜区の新港のようなので、標高はほぼゼロメートルのはずだが、このロケは千葉方面とは俯角が小さくなるため相性が良くなるようだ。東京の多摩地区とは、距離が近い分逆に俯角が大きくなるため、間にある奥多摩の山塊が影響するものと思われる。いつもの城山湖からは、今日もかながわCE47局にコールをいただく。

バンド内をワッチしていると、4Chで突然強大な信号が入ってくる。とうきょうSS44局だ。これは近くにおられるに違いない。雁ヶ腹摺山は、大菩薩から小金沢山、黒岳へと続く連嶺のすぐ東側に位置する山だが、SS44局は今日はその小金沢山にQRVされたらしい(笑。SS44局とは超久しぶりの交信だが、まさかこんな所で接近遭遇するとは・・・。

箱根の駒ケ岳には、今日はかながわCB124局が運用されている。駒ケ岳はFBなロケなので、各局さんから立て続けにコールを受けている。フリラを何年もやっていると、いろいろなQSOを経ることで、仮に会ったことなど一度もなくても、思い入れの深い局長さんというのがどうしても出てくる。CB124局もそんな局長さんの一人だ。CB124局とはSV以来だろうか?久しぶりにつながってうれしい限りだ。



対天然系ノイズは?


今日のバンド内は、比較的天然ノイズレベルが高いようで、各局さんQSOには少し苦労されているようだ。この時期にはよくある電波のコンディションである。

先日えひめCA34局さんが、こういうコンディションではNTS115ではかなり敏感に反応して若干ピーキーな印象になるとブログで書かれていたが、当局も115については全く同感である。もっともCA34局によると115Aでは115よりピーキー感が抑えられ、比較的マイルドになってはいるようである。

01Xはどうか・・・。

実は、今日のコンディションは大体予測できたので、どういう反応をするのかまだ不明である01Xはやめて、当初は最も静かな東海770DXを持ち込もうかと考えていたほどだ。せっかくのイベントデーだからである。

しかし、実際に01Xを使ってみると、適度に穏やかで、過剰なピーキー感はなく、特段受信で苦労するようなことは全くない。


01Xは01(1stロット)に比べてかなり音量が小さくなっているが、山の上で普通に運用している分には全く問題ない。11mはしばらくすると予想通りかなり暇になってくる。勢い、リグを離れて山頂にやってくるハイカーの方々とダベっている時間が長くなるのだが(笑、リグから20mぐらい離れている山頂標のある場所まで全く問題なく聞こえてくる。ボリュームは10時位置程度だ。山の上はダイナミックレンジが広いためである。もっとも普通のハイカーにとっては迷惑な話なので、「問題なく聞こえてくる」というより、「聞こえてきてしまう」と言った方がよいだろう。したがってリグを離れるときは音量をミニマム近くまで絞る必要がある。

外部スピーカーについては前回の運用記でコメントした通りだが、当局は特に必要性を感じない。この点、AFのクオリティが低く山の上でも外部スピーカーが必須な115とは違いが出てくる。

外部スピーカーについては、そもそも01Xの内蔵スピーカーがφ77mmあり、リグの筐体がある程度大きいので、用意する場合は、口径100㎜以上でエンクロージャーもそれなりに大きいものを用意しないと意味がないと思われる。また、インピーダンスは8Ω以上が必要だ。喧噪な都会の車の上などで運用する場合はそれもいいが、少なくとも山登りや山歩きが必要なロケでは、有用性はない。



d-ROD-100はどう?


LCRは、今回d-ROD-100(以下「d-ROD」)を試してみる。d-RODは周知のとおり、全長104cmのロッドアンテナである。

運用ロケは木々で見晴らしは良くないので、144MHz帯ではそれなりにマイナス要因となっていると思われるが、横浜市やさいたま市は9オーバーのフルスケで入ってくる。SRH140Dと並べて比較したわけではないが、感覚的にはSRH140DよりSは2~3以上は跳ね上がるようだ。

LCRはデジタル変調なので、普通に聞こえている信号のSが3程度増えたところで、別にどうということはないが、限界すれすれに近いところの信号では効果を発揮するように思われる。また、アンテナが長い分、入感するスポットが広めになるので、受信のべスポジなどを探る場合は有効に働いているようだ。

d-RODについては、自重が70gあるため、直付けだとLCR本体とのコネクタ部へのストレスがよく心配されているところだ。リグと分離するため手持ち用のハンディ基台も販売されているが、当局が使用した限りでは、アンテナを鉛直方向に保って普通に使っている分には全く問題ないように思われる。また、ロッドアンテナなのでリュックで山へ持ち込むには非常に便利なアンテナだ。

LCRでは、運用終了間際に某KM117局のQSOをキャッチするが、チャンネルを持たれているわけではないので、コールはできない。なにやら大持山におられるようだ。今日も周回でもされているのか??呼び出しチャンネルに回って、コールサインで直接呼びかけてみるが、残念ながら応答はないようだ・・・残念(笑。



     山頂標の横で富士に見入るハイカー




「13V」対応として欲しかったですが・・・



今回は01Xを連続して使ってみた。結果的に使用時間5時間半ほど、QSO数にして20程である。使用した電池は、いつもの3S(3直)のリチウムイオンポリマー電池(リポ)で、額面容量は5.1Ahである。3Sなので本来なら満充電時は12.6Vだが、満充電せずに12.0Vスタートで、運用後の電圧は11.55Vだった。なぜ満充電しないのかというと、メーカーが外部入力電圧は12Vまでとしているからである。当局は11mでは昔からリチウムイオン電池を愛用しているが、こと01Xに関してのみ中途半端な使い方となる。

  リポ、5.1Ah
電池はもちろん中華製なので、額面通りの容量はないので、大食らいの01のイメージからすると予想していたほど食わなかった印象だ。ただ、これは使用時間の割にQSO数が少なかったことと、途中でボリュームを絞ったりしていた時間があったためだろう。実際には、01Xの送信時電流は、無変調時380mA、ALC動作域までの変調時が540mAで、カタログ上は01よりそれぞれ80mA、140mAほど増大しており、単純比較では01Xの方が消費電力は増えている。

前述の通り、メーカーは外部電源入力については「動作電圧」は12Vまでと謳っているわけだが、しかしながら、「12.0」という数字の設定はいかにも中途半端な数字だ。というのは、「12Vまで」というのは、外部電源入力は「8直のニッケル水素」を使え、と指定しているようなもので、他の選択肢が全くなくなるからである。サイズの割に高容量なリチウムイオン系電池の利便性を考えると、上限の数字は1V程度引き上げて「13」ぐらいにしておいて欲しかったなぁという気はする(笑。

つまり、「6直のニッケル水素」では、満充電時8.5V程度で、送信時約9.9V動作(=公開されている認証書類による)の01Xとしては、容量的に使える時間が短くなるし、「8直の乾電池」では新品時は12.6~12.8Vになる。(乾電池は内部抵抗が高いので、スイッチオンで電圧は若干下がるが。)容量的に最も有利なリチウムイオン系電池の3Sの満充電時の電圧は、前述の通り12.6Vで、この「12.6」という数字はもはや世の中の常識である。なお、「約9.9V」の「約」の意味合いは、定格電圧9.0Vの+側10%である9.9Vを上回らない範囲で9.9Vに近い電圧、という意味である。つまり、01Xは、5Vや3.3V系以外の送信系の主要回路は、定格電圧の仕様の上限側の電圧で動作させているということである。

一般的に、上限電圧を制限するのは安定化電源のレギュレータの熱負荷を抑えるためだが、上限を13Vにしたところで、1V程度の違いであれば、送信時でも単純計算で熱損失は最大0.6W程度の差だ。運用中の送信時間は受信時間に比べて圧倒的に小さいので、実際には負荷の増大は更に小さいものになる。

おそらく、01時代に乾電池を10直で使うといった、恐ろしく誤った使い方が一時流行ってしまったという経緯もあり(当初01の外部電源電圧の上限は「15.0V」だった)、メーカーとしては12V以上を保証対象外として明確にしたいのかもしれないが、「13」を境界にするぐらいの配慮が欲しかったなぁというのが正直なところだ。言うまでもなく、送信系の回路を含めてすべて安定化されているので、電源電圧を上げたところで送信出力が増えることはない。使える電圧が上がるメリットは電力容量が増えることにある。


暇に任せて、山頂にやってくるハイカーを眺めていると、中には五百円札持参でやってこられる方もおられる(笑。9時以降は、ほとんどの時間、富士山は間の地面から湧き上がってくるガスで隠れてしまっているのだが、五百円札と景色を見比べながら残念がっているようだ。お札を持参しないまでも、11月3日が撮影日であったことを理解したうえでやってこられる方も今日は結構おられるようだ。

今でもこうした方々がおられる様子を、もし天国から見られているとすれば、名取さんは今どういう思いでおられるだろうか。


34QSO、各局TNX!! 
(敬称略)

 (2024/11/7)







本日のパティスリー: おかし工房エイゲツ (大月市)

   聞くところによると、大月にはほとんどパティスリーはないらしく、貴重な一軒?
   今日いただくのは、フルーツタルトとミルフィーユ。



運用データ


 
■運用日時・場所:
  ・2024年11月3日(日) 7:00~12:30
    山梨県大月市雁ヶ腹摺山山頂
(標高1,874m)

 ■使用&装備リグ:
  ・SR-01X(サイエンテックス)
  ・ICB-87R(SONY/ラジックス改新技適)
  ・DJ-PV1D(ALINCO)+d-ROD-100(CQOHM)
  ・DJ-R20D(ALINCO)


 ■使用&装備電源(CB機)
  リチウムイオンポリマー電池:
    11.1V/5.1Ah、11.1V/3.0Ah、11.1V/1.5Ah







QSO局
34QSO TNX!!
  
(敬称略)

2024年11月3日(日) 晴れ 7:00~12:30   
ヨコハマAE869/横浜市磯子区  55/55  トウキョウTM269/立川市 57/55 
ちばTK29/千葉市美浜区新港 57/58 とうきょうMS25/立川市 57/56
よこはまLS45/御殿場市太郎坊 53/53 とうきょうTY64/東大和市(49Km) 59/M5
ちばTK29/千葉市美浜区新港(109Km) 54/54 ヨコハマGT999/横浜市瀬谷区(58Km) 59/59
かながわCE47/相模原市城山湖 56/55 とうきょうSS44/大月市小金沢山 59/59
かながわCB124/箱根町駒ヶ岳 55/57 サイタマYT220/さいたま市西区(67Km) 59/59
トウキョウAR705/日野市 57/57 トウキョウMI218/相模原市緑区陣馬山 58/58
とうきょうSS44/大月市小金沢山(4.2Km) 59/59 さいたまBB85/栃木市太平山(104Km) 55/M5
ちばYK16/鹿嶋市(160Km) 54/M5 はちおうじRS248/富士山須走口(37Km) 54/55
ちばCB59/ 52/52 シズオカAL330/相模原市緑区陣馬山(特小) M5/M5
トウキョウAR705/日野市(47Km) 59/59 ヨコハマHY807/横浜市旭区(63Km) 59/59 
シズオカAL330/相模原市緑区陣馬山 56/53 とうきょうOT173/東京都江東区若洲海浜公園 54/55
よこはまAD195/稲城市みはらし緑地 58/58  ヒョウゴAB337/伊東市遠笠山  52/52 
とちぎCB72/大田原市御亭山(173Km)  57/56  ヨコハマJA298/横浜市大黒(78Km)  55/57 
はちおうじRS248/富士山須走口  53/53  アイチAA182/稲城市みはらし緑地 57/51
かながわZ489/横浜市港南区さえずりの丘公園  54/55  かながわCB124/箱根町駒ヶ岳  56/53 
カナガワHI173/富士山須走口  56/56  シズオカAL330/相模原市緑区陣馬山(26Km)  59/強 
   
注:距離表示があるのはLCRによる交信。「(特小)」は特小による交信。11mはすべてSR-01Xを使用。




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