【黒川牧場運用記より再掲】 






それぞれの昭和



1980年代半ば、PENGUIN CAFÉというカフェが吉祥寺駅南口にあり、よく通っていたことは2014年の黒川牧場運用記に記したとおりである。その名前は、「ペンギン・カフェ・オーケストラ」からとっている、と個人的には勝手に解釈していたが、当時はいわゆる「環境音楽」がはやっていた。ペンギン・カフェ・オーケストラは環境音楽系のアーティストの一つである。

環境といっても英語的にはenvironmentではなく、ambientの意味で、包むようになんとなくそこに流れている音楽で、しかし何となく気になる音楽である。環境音楽は今では堅苦しい定義を与えられているが、当時はそんなに難しいことは考えることなく聴いていた。

環境音楽としては、ペンギン・カフェ・オーケストラと同じオブスキュアレーベルに属するブライアン・イーノが代表格で、こちらもよく聴いていたが、一方でこの頃はMIKADOといったフレンチテクノポップも流行っていた。日本では80年代といえば、坂本龍一さんらのYMOが華やいでいた時代でもある。世界的にも。

一口に昭和といっても、昭和は64年(1989年)まである。初期の日本によるアジア地区への侵攻から、連合国を相手にした太平洋戦争と敗戦、その後の連合国軍による占領下を経て、「ウサギ小屋に住む働き蜂」と欧州を中心に世界からバカにされながらも、高度経済成長により「Japan As No.1」ともてはやされるほどに経済的には世界的に台頭し、やがてバブル経済とともに終焉を迎える。

良いこと悪いこと、歴史的にはいろいろあったわけで、さまざまな経験と、価値観の大きな転換が最後まで交錯したのが昭和だが、世間的には「懐かしい昭和」として回想されるのは多くの場合『Always 三丁目の夕日』に象徴される時代・・・昭和30年代すなわち1960年頃を中心とする時代だ。しかし、バブル崩壊前の10年間の80年代は、経済、文化、技術など、あらゆる面で新たな創造力の創出にもエネルギッシュな時代だったように思う。「日立 GT-20?」でも記したが、バブル崩壊後、すなわち平成に入ってから、世の中の進化のスピードが急速に衰えたというのが当局の個人的な印象だ。

ちなみに、吉祥寺駅北口には、「バロック」という名曲喫茶もありこちらも80年代によく通ったお店だ。自作の真空管アンプを数台置いて、スピーカーも曲に合わせて切り替えて使うというご主人のこだわりが印象に残る。お店は平成まで生き抜き、10年近く前に伺ったのが最後になる。もともとはご夫婦で運営されていたお店で、最後に訪れた時は奥さんがまだ頑張って経営されていたが、今はどうなっているのか・・・あえて、確認はしていない。

 紫シールはICB-770kaiの証



ところで、無線設備に対し新スプリアス基準が適用されるという、いわゆる新技適問題が浮上したのは、平成に入って17年、2005年のことである。CB機も無線機なので例外ではない。ある猶予期限以降は新しい基準に合格した無線機でないと使えなくなるというもので、その期限は平成34年(=2022年)というものだった(コロナ禍の間に、「当分の間」期限は延期)。

すわ、このままだと平成34年以降はすべてのCB機が使えなくなる、という絶体絶命の危機に敢然と立ちあがっていただいたのが、フクオカAB182局だ。自ら、現行CB機でも新スプリアス基準に合格する回路を考案し、自ら改造・確認をし、しかも他局の分まで改造を施して、自ら試験機関に足を運び、まとめて技適を通していただいた、・・・というような神様のようなお方だ。利益という対価なしに他人のリグまで責任を持って対応するというのは、並大抵の人にできるものではない。神様という言葉は決して大げさではない。

今でこそ、メーカー?製の新設計のCB機が何種類も発売されている(発売された)し、個人で技適を通す人も少なくないが、その時は真っ暗闇の中に一条の光が見えたように各局大喜びをしたものである。フクオカAB182局は、魁である。

当局のICB-770kaiも、その時(=2010年)に技適を通していただいたものである。その後は、前述の通り、ラジックスによる現行機ICB-87RやICB-707などの新技適化や、SR-01やブラックバード、NTS115などの新機種の発売もあり、770kaiはこのところしまったままだったので、今日は性能・機能維持のチェックのため久しぶりに使わせていただくことにする。当局の習性として、普段使いは別の物を使い、特に大事なものは神棚の奥にしまい込んでしまうのだ(笑。




OADがスタート・・・・・すれば・・、出会い系になりますですか???




 【ICB-770kai】



性能、申し分なし



今日の運用ロケは、6年ぶりの運用となる赤久縄山(あかぐなやま)である。標高は1,522.7m、基本的には群馬県の神流町(かんなまち)と藤岡市の境だが、山頂の一等三角点は微妙に神流町に属するようだ。

朝、登り口の駐車スペースまでくると、アマ局がポール4本を立てて豪快にアンテナを展開している。これは、全くよろしくない。駐車スペースをほぼ占領してしまっている。他山の石か。

アンテナからすると運用は6mぐらいだろうか、しかし、八木3本にHB9CV1本、オペレーターは一人だけのようだが、こんなにたくさんアンテナが要るのか??

 左: 他山の石。これは、いけません。アマ局が、登り口の駐車スペースを占拠。
 中: 赤久縄山頂。以前より草が刈りこまれて、すっきり。
 右: 山頂からの定番写真、西御荷鉾山と東御荷鉾山。奥に見えるのは筑波山と加波山。



天気は予報通り、曇り、薄雲の向こうに時折太陽の存在が確認できる程度だ。山頂の気温は7~8℃といったところか?

久々に点火した770kaiから聞こえてくるのは、普段より多めの天然系のノイズだ。今日はバンド内、どのチャンネルもノイズが上がっているようである。天然系なので上がり放しということはないが、時折ノイズだけでS6ぐらいまで振ってくる。加えて、8Chでは7秒間隔ぐらいで伝送系か何かの無変調ノイズが発せられている。これは今日も8Chは使い物になりそうにない。

一発目はとりあえず8ChでCQ、さっそく、ぐんまAD17局からコールを頂く。が、しかし無変調ノイズが予想以上に手ごわいので、すぐに6ChにQSYだ。AD17局は、今日は利根川河川敷から運用されているようである。

久々に770kaiで聞くQSOの信号はRS56、ひっきりなしに上がり下がりするノイズの強いSにもかかわらず、よく聞こえてくる。

もう何年も聞いていなかった770kaiの音は、むしろかなり新鮮だ。AF的には、オリジナルのICB-770より若干中域側が出ているように聞こえるので、明瞭度はオリジナルより高い。それでいて、オリジナルの770の図太さは維持している。Sメーターの振れもオリジナルのように重いこともなく、感覚的に極めて適正な振れ方だ。こちらからも、56で飛んでいるようなので、送信系も全く問題なく、改造時の性能を維持しているようだ。

AD17局に送信しながらSメーターを見ていると、こちらも振れ方は実に見事だ。ALCの効き方が実に絶妙である。かなり大声を出しても振り切らせることはほとんど不可能、小声で話していても、針の振れ方がいい。常に適正な変調がかかっているようである。コンプレッサーについては、AB182局がスプリアス対策として、かなりこだわられた部分であることを、改めて感じる。


AD17局から一時間後には、AD17局の盟友??とちぎ4862局からもコールが入ってくる。当局がQRVしていることは、AD17局からも伝わっていたようだ。

ロケは、太田市の北部運動公園とのことなので、金山の北側の丘陵上のロケである。信号は59+と超強力。変調がきれいなので、一聴して、新技適対応機であることが分かるが、きれいなだけでなく、たいへん力強い。リグは、R-5改のようだ。AD17局改造になる、新技適機だ。

R-5の新技適化については、当局も願望を持っていたのだが、当局はウーロン・チャ・マスクメロン氏のSNSは一切やらないので、タイミングを逸してしまった(笑。次回チャンスがあればぜひお願いしたいところだ。


4862局にAB182局の770kaiを久々に使っていることを伝えると、ありがたいことに変調のレポートを送ってくれる。変調はすばらしく、くっきりスッキリ、たいへんきれいとのことだ。改造の新技適対応機というと、ラジックス改の87Rなどは、謎の「ピー音」が出てきて変調をきたしているものが多いという話も聞く。さすがはAB182局、770kaiは寸分たがわず当初の性能を維持しているようだ。




もう一つのリグを確認してみる



今日のもう一台のリグも、久々の性能チェックだ。リグは三菱のTX-830、100mWの6Ch専用機である。このリグは、同じCB仲間でも、「持っているョ」という人は今のところ見聞きしたことはないので、おそらくかなりの激レアリグだ(単にこちらから聞いてないだけですが(笑)。

しかし、持っていても使えなければあまり意味はない。TX-830を使ったのは、18年のGW一斉OADが最後だから、稼働させるのは5年ぶりということになる。製造は1967年(=昭和42年)、「懐かしの昭和30年代」からは少し外れるが、56年前製造のリグということになる。18年の運用では、サイタマMS118局と交信させていただき、QSOの限りでは、全く正常であることを確認している。

このリグは、外部電源も使用できるようになっており、今日は機能チェックも兼ねて外部からの電源供給だ。電源は9Vだが、ソニーと同じく、珍しくセンターマイナス仕様である。

電源スイッチは、ボリュームを兼ねたラウンド式のスイッチが左側面にある。スイッチをオン、そのまま回していくとAF音が普通に上がってくる。いい感じだ~(笑。今日は全般的にノイズが上がっているコンディションだが、その一つ一つをよく再生している。しばらくワッチしてみるが、受信音からすると全く問題はないようだ。

三菱TX-830



いよいよ送信だ。電源スイッチ上の白いプッシュボタンを親指で押しながら、スピーカーに語り掛けてみる。そう、このリグはスピーカー変調である。・・・・しかし、残念ながら応答局はない。そもそも6Chだし、今日は770kaiでも相手局がなくかなり苦労しているので、「出会わない系SNS」で相手に出会うのと同じくらい、出会うのは難しい。(そんなSNSがあったら面白いですが。) やはりOADのように、もっと運用局が多い日に試してみないとダメだ。

今日は、いつになくコーヒーはまだ3杯目。いきなり80年代に話を戻すと、そのころ当局がいつも挽いて淹れていたのは、珈琲館の炭火焙煎のマンデリンだ(笑。それにしても、なぜ珈琲館の炭火焙煎のマンデリンでなくてはダメだったのか???・・・今となってはその頃の理由や思いは知り得べくもない。タイムマシンがあったら、戻ってみたい。

今日味わい深くいただいているのは、SVの時に迷友(笑)アイチAE126局にいただいたコーヒーセットのマンデリンだ。こちらはドトールである(笑。(AE126局に感謝!)


のんびりと、一人コーヒーを楽しんでいると、もう12:30が近づいてくる。そろそろ撤収しようかと、最後のCQを出してみると、さいたまFL20局よりコールが入ってくる。今日はNTS115Aをお使いのようで、いつもより明るい変調音だ。当方は、今日の使用リグ-AB182局の770kai-とお伝えすると、「全く何の問題もなくFBに来てますよ~」とのことだ。勢い、リグの話で盛り上がるが、ご本人曰く、最近ブラックバードの実力を見直されたようで、今年はよく使われるようになったと言われる。「Esでも飛び受けよし、いろんな使い方ができるし、2、3回使ってダメ出しせずに、是非もっと使ってみてほしい」と熱弁を振るわれる(笑。ご本人の経験に基づいて言われており、語り掛ける熱気も半端でないので(笑、それは確かにそうなのかもしれない。こうなると、ブラックバードもまたそろそろ試してみる必要がありそうだ。

FL20局とのQSOを終了すると、まだ呼んでいただいている局長さんがおられる。今日のノイズ加減のせいで、なかなか厳しい入感だが、呼んでいただいているのは、やまなしAB38局だ。このロケで「やまなし」と聞こえただけでうれしいのではあるが、細かい運用地だけは最後まで確認できない。ただ、通常のコンディションなら容易に全く普通にQSOできそうな感じだ。実際AB38局からのレポートは52である。

念のため後から11mリアル板を覗いてみると、ありがたいことにAB38局が書き込みをされている。ロケは甲府盆地のご自宅庭先らしい(TNX!AB38局!)。つまり平地だ。距離がそれほどあるわけではないが、間には甲武信ヶ岳や国師ヶ岳などの2,500m級の山々がずらりと連なる。まさか甲府盆地に信号が届くとは・・・全く意外だ。これだから、グランドウェーブはやめられません!!(笑。



昭和な「まるはち」は元気か?


運用後は、今日のもう一つのテーマ、「まるはちカフェ」である。こちらも前回は、18年の東御荷鉾山運用の帰りに立ち寄った時なので、もう5年ぶりということになる。

神流町の人口は現在1,600人を切っている。5年前の運用記では1,700人と書いているので、やはり人口は減り続けているのか?減り続ける人口の中で、「カフェ」はがんばっているのか??

まるはちカフェは、昔ながらの雑貨店?の片隅を改造して造られたカフェだ。建物全体の外観は相変わらず「昭和」そのものだが、一見して5年前と異なるのは、店の外壁にあった、「まるはち」の文字が消え失せていることだ。もちろん、看板は消え失せても、雑貨店ともども元気に営まれていれば全く問題はない。

 左: 「まるはち」の文字がなくなった外観。「まるはち」は、江戸時代の当主、黒澤八衛門からきているようだ。
    黒澤姓は、この辺りに多い姓である。


さっそく中に入ってみると、カフェとしての席数は前回より増えているようだし、ジェラートのメニューも以前より充実しているようなので、引き続きがんばって集落に憩いを提供されているようだ。

前回は「かんな恐竜パンケーキ」を頼んだので、今回は「ふわふわパンケーキ」だ。つくりたてのパンケーキの温かみとバニラアイスの冷たさが、口の中で心地よくバランスする。

向かって店の左側は現在増築改装中である。カフェの規模が広がるのかと思いきや、お聞きすると、新たにレンタルスペース事業をやり始められるそうだ。残念ながらカフェが成長するようではないのだが、カフェでなくても店として事業が成長していくことは、もちろん良いことである。

また近いうちにやって来よう。



14QSO、各局TNX!! (2023/10/12)

(文中敬称略)




運用データ

 秩父今宮神社

 
■運用日時・場所:
 
  ・2023年10月8日(日) 
    8:45~12:45 群馬県神流町
             赤久縄山山頂 (標高1,522.7m)

 ■使用&装備リグ:
   CB : ICB-770kai (ISHIMARU)
       TX-830 (三菱電機)
       ICB-87R (SONY/ラジックス改新技適)
   LCR: DJ-PV1D (アルインコ) + SRH140D (第一電波)
 ■使用&装備電源(CB機)
   リチウムイオンポリマー電池:
     11.1V/5.1Ah
11.1V/3.4Ah、11.1V/1.5Ah

 




QSO局
14QSO TNX!!
  
(敬称略)

2023年10月8日(日) 曇り     
ぐんまAD17/群馬県利根川河川敷 56/56 グンマTK429/群馬県高崎市 59/57
トウキョウTK285/東京都雲取山(33Km) 55/55 サイタマHA528/埼玉県鴻巣市(62Km) 52/53
さいたまCY55/埼玉県嵐山町 53/55 とちぎ4862/群馬県太田市北部運動公園 59+/58
サイタマAB960/埼玉県吉見町 58/56  つくばF3/茨城県宝篋山(116Km) 56/56
ちばBX61/千葉県流山市(97Km) 57/M5  ちばBK61/千葉県流山市  42/42 
サイタマGB940/埼玉県東松山市(53Km) 53/52  トウキョウYM137/東京都足立区(98Km)  54/54 
さいたまFL20/埼玉県小川町 57/?  やまなしAB38/山梨県甲府盆地  51/52 
   
注: 距離表示があるのはデジコミ(LCR)による交信





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