[顔振峠 展望台]





やさしいご主人

この時期になると、なぜかみそおでんが食べたくなる。そう、当局にとって、みそおでんといえば顔振峠。顔振峠は2014年以来、5年ぶりだ。

顔振峠は、西武秩父線(池袋線)の吾野駅から歩いて1時間ほどの、いわゆる奥武蔵の山間にあり、標高は510mほどだ。無線の運用場所としては、そこからさらに5分ほど登った展望台(標高574m)になる。

顔振峠には3軒の茶店がある。朝8時半、これまでならこの時間すでに開店準備万端、お客を待ちかまえるばかりの店の様子なのだが、3軒のうちの一軒、平九郎茶屋は、今年はまだシャッターが下ろされたままだ。今秋の台風の影響から、秩父方面へと抜ける山上の道(奥武蔵グリーンライン)が途中で通行止めになっており、観光客やハイカーも激減しているようだ。それでも、顔振峠までは車で登ってこられるのだが・・・・・。

今日立ち寄る茶店は、顔振茶屋だ。「営業中」の小さな看板を信じて、非常階段のような鉄製の階段を急登して店内に踏み込んでみると、人が来たのを察知して中から年輩のご主人が出てこられる。店内といってもここは道路から一段と高くなっているので、富士山や奥多摩の山々が展望できるように、半屋外の場所にテーブルが据えられているのである。

「もうやってますか?」
今回もいつものように、まずは茶店でみそおでんを楽しんでから、運用に向かおうという魂胆だ。
「すみません、今日は11時からなんですよ。」・・・まだ八時半、開いているわけがない。
当局が景色を眺めるために、店内に入り込んできたのかと思われたかもしれない。
しかし、ご主人は全くそんなことを気にする気配はない。
「旦那さん、初めて?せっかく来たんだから、これ持っていきなさいよ。」
ご主人は、店の奥へ誘導し、展望台から見える富士山や周囲の山々の名前をしるした、横長の展望図を取り出した。富士山がいつもどのように見えるか、さらには、すぐ下にある摩利支天の二重塔ができたいきさつなど、いろいろと詳しく解説をしてくれる。ありがたく一枚頂戴する。
「お昼は混みます?」
その時、すでに当局の頭の中は、お昼に戻ってきて、みそおでんを食べることにあった。何気に聞いた質問だったが、答えは意外だった。
「いや、きょうはお昼は一件入っているだけ、なじみのお客さんが千葉から来てくれるんですよ。いつもここを目的にこられるんです。うれしいじゃないですか。」
今日はどうもそのお客さんのために、店を開けるような雰囲気だ。もちろん、そうでないにしても、『うれしいじゃないですか』という言葉には、ご主人の純粋な気持ちがこもっていた。

お茶かコーヒーをいれるから飲んでいきなさいよ、としきりに勧めるご主人の言葉を丁重にご辞退して、運用場所へと向かってみる。山道(やまじ)を上りながら考えた(笑。・・・もう、こんな昔気質の優しい心の持ち主も少なくなった・・・。

左:向かって左側が顔振茶屋。道路よりかなり高くなっている。
右:峠から見える富士山。



久々のブラックバード

展望台は、・・・と言っても単なる丘のてっぺんだが、ススキが繁茂している。こんなにススキが多かっただろうか?あるはずの「雨乞い塚」の標識が、全く見当たらない。昨日は快晴・無風、きれいな青空が天空いっぱいに広がっていた。今日もそれを期待して運用しにきたものの、空には雲が広がっている。

今日の運用目的の半分以上は、ブラックバード(BB)を動かすことだ。最後に使ったのは、おそらく?6月のトカラ列島、およそ半年ぶりだ。もっとも、当局は1月に一回運用すればいいほうなので、半年ぶりといっても4、5回ぶりということになる。最近は、あまりBBの運用局は聞かない。西無線研究所のNTS111が発売されたせいもあるだろうが、平均運用局数が少ないというのは、残念ながらBBが使いづらいということだろう。

 87Rを常に臨戦態勢で待機
 途中からパワードスピーカーを使用
 
BBのAF出力が小さすぎることは、今更言うまでもない。今日もパワードスピーカーを持参しているが、まずは外付けスピーカーなしで運用だ。ただし、87Rを常にアンテナ展開状態で待機、BBで取るのがきわどい信号は87Rで試してみようという作戦だ。

おそらく20㎞も離れていないであろう嵐山町には、さいたまFL20局さんが運用されている。下界は風が凄いらしく、リグが風で持っていかれそうだという。QSOを開始すると、リグはBBですか?と一発でバレてしまう。変調に合わせてSがプラス側に振れるので、一発でわかるのだという。まあ、それはそうかもしれない。

RSはお互い59+の入感だ。FL20局さんは、使う頻度は少ないものの運用時はだいたいBBは持参されているということで、今日も持参されているとのことだ。折角なので、あとからBB同士でQSOお願いしますよ、とお願いしておく。風が強過ぎて、今は87Rでなんとかやり過ごしているものの、BBだとアンテナがやられそうで、すぐに出すのは危険のようだ。

全くの平地にも何局かおられ、51~52程度でつながる。ここらあたりのS度合いでは、まだまだ内蔵スピーカーでもいける。もっともそれが当たり前田のクラッカーなのだが(笑。(こんなセリフを知っている人はもう居ないと思いますが)。

そうこうしているうちに、再びさいたまFL20局よりお声がかかる。お約束通り今度はBBだ(Tnx!FL20局)。出力は300mW、RSは59+で、先ほどの500mW機とほとんど差はない。FL20局としては、500mWまで上げると、BBの変調音はよろしくない、ということでいつも300mWに絞り込んで運用されているようだ。よろしくない、というのはもちろん相対的なものだが、通常出力(500mW)だと、妙にf特の上下がカットされたような詰まったような変調音になるので、それがお気に召さないとのことである。ALCのかけ方やフィルタの特性によるものかもしれないが、確かにBBの変調音の音質については、FL20局の言われる通りではある。試しに500mWに上げてもらうと、やはりわずかながら300mWの方が音に伸びがあることが実感できる。

お互いに50mWに絞り込んでみると、無変調時、つまりキャリアだけだとS7、変調をかけると7から9+を行ったり来たりというのは、お互いメーター上全く一緒のようだ。キャリアの電力を仮に50mWとすれば、変調時に振幅に合わせて送出電力が増減するということである。

内蔵スピーカーで運用を続けていると、とうとう、ピックアップが限界ぎりぎりの局長さんが現れた(笑。ほぼほぼボリュームいっぱいでも、コールサインが取りきれない。とうとう87Rの出番だ。呼んでいただいていたのは、おおさと59局さんだ。しかし87Rに切り替えてみると、RS53で、何ら問題ない。場所も熊谷市なので、それにしてもBBと差があり過ぎると思っていると、おおさと59局のリグの電池がなかったということで、当局が87Rにチェンジしている間に、電池を交換されたとのことだ(笑。

その後は、パワードスピーカーで運用続行だ。今日はだいたい100㎞圏内のグランドウェーブ局ばかりということもあり、どの局も53~56程度は振ってくるので、運用は予想外に快適だ。ちなみに、念のため、繰り返しになるが、パワードスピーカーを使う場合は、回り込み対策が必須だ。そうでないと、送信時に自分の変調音が大そう派手に、スピーカーから拡声されることになる(笑。また、デジタルアンプのものは避けることだ。

運用当初こそ雲が広がっていたが、途中から空は完全に晴れ上がってきた。昨日同様完全な青空が広がり、太陽もさんさんと降り始めた。このまま気持ち良いお昼時に突入していく。





ポータブル機の意義とは??

BBを使う度に思うのは、ポータブル機の音の出方だ。これはトランシーバーに限らず、最近の市販のラジオなどにも言えることだが、単に音がでればよいと思っているのではないか、と思われる時が多々ある。

CB機について言えば、昔のICB-770やR5、RJ-580を使っている方は良くお分かりのように、決して「鳴ればいいじゃん」という作り方はしていない。コンパクトサイズのICB-707に至ってもそうだ。聴感上のAF出力や、スピーカーの大きさを必要最低限十分なものにして、聴けるだけの音を出している。無線機では、とかくRFの回路に注目が行きがちだが、AFも重要な要素であることには変わりはない。特に我々のように、外部スピーカーを前提とせずに屋外で移動運用するCB機では、大きなスピーカーとそれなりの出力を持って受信音を楽しめるように作ることが、重要なのである。

その点若干心配なのは、現在開発中のNTS115だ。コンパクトな筐体に小さなスピーカー、「音が鳴る」という点では何の問題もないのだろうが、NTS111のようなハンディ機とは違うので、比較的しっかりした音を出せないとポータブル機であることの意味合いがどこにあるのか、ということになりかねないと考えるのは当局だけだろうか。もちろんポータブル機のメリットは、長いロッドアンテナを搭載できるということにもあるので、送信に関してはポータブル機であることのメリットを享受できることは間違いない(はず)。NTS115のAFアンプは、LM386という、自作機や電子工作では超定番のICだ。ただ、言うまでもなく、ハイファイオーディオ用途では、S/Nが悪すぎて全く使い物にならないアンプではある。無線機にハイファイを要求するつもりはないが、電波の入り口から音としての出口までで総合S/Nが決まることを考えると、少しでもよりよい無線機に仕上げようとすれば、できるだけローノイズのアンプを使おうとするはずだ。まあ、実績のある西無線研究所さんのことなので、完成度の高いものに仕上げてくれるだろう・・・発注者の一人として、期待を込めて(笑。


約束

「旦那さん、今朝ほどはどうもありがとうございました。これを使って今からそばをつくりますんで。」

顔振茶屋のご主人とは、朝別れるとき、お昼に絶対戻ってきますから、と約束をした。今度は開店中の店内に侵入すると(笑、今朝話していたお客さんだろうか、イノシシ鍋を食べ終えてちょうど寛いでいるところだ。一人で鍋を食べるわけにもいかないので、それでもイノシシ肉が食べたかった当局が頼んだのは、「イノシシそば」だ。本当は、お礼を言うのはこちらの方なのだが、先にありがとう、と言われる。そして、わざわざ調理前に手にして見せに来てくれたのは、これからそばに使う、綺麗なイノシシの肉だ。

「まったく臭みがなくて、豚肉と全く変わんないんですよぉ。」
確かにそのように見える。

展望デッキとなっている店内からは、まだこの時間でも富士山がくっきりと顔をのぞかせていた。

22QSO、各局TNX!! (´19/12/21)


中: イノシシそば。




運用データ


 ■運用日時・運用場所:

 
  ・2019年12月15日(日) 9:00~12:40
   ・埼玉県飯能市顔振峠展望台
     雨乞い塚(574m)
  

 ■使用&装備リグ:
   CB : ブラックバード(ポラリス)
        ICB-87R(SONY)
        GT-06(学研)

 ■使用電源
   リチウムイオン電池11.1V/4.2Ahほか






本日のケーキ
本来移動運用記であるはずなのに、なぜこうもケーキが登場するのか???その理由は「今回も」定かではない。
今日は帰りがけに、日高市にある「シャロン」に立ち寄ってみる。レアチーズケーキは上品で緻密な味わい。



QSO局
22QSO TNX!!  
(敬称略)

2019年12月15日(日) 9:00~12:40  
ちゅうおうM88/東京都中央区佃大橋 57/53 とちぎ4862/群馬県太田市金山 59+/59
さいたまFL20/埼玉県嵐山町 59+/59+ はちおうじX25/東京都八王子市小仏城山 57/58
とうきょうE50/埼玉県和光市荒川河川敷 51/51 さいたまAB93/埼玉県加須市 52/52
ネリマMT390/ 51/51 シズオカAL330/東京都八王子市 51/52
チバKF728/千葉県木更津市 56/56  さいたまFL20/埼玉県嵐山町(300mW,50mW,500mW)  59/59
おおさと59/埼玉県熊谷市熊谷運動公園  53/55* さいたまCY55/埼玉県嵐山町  59/57* 
かながわCE47/神奈川県相模原市城山湖 58/58* さいたまUG100/東京都小金井公園 55/54
さいたまBB85/栃木県栃木市大平山謙信平 59+/59+ ちばMR21/千葉県袖ケ浦市袖ケ浦海浜公園 55/54
トウキョウHT135/東京都八王子市小仏城山  55/56 アツギRM121/神奈川県厚木市鳶尾山 59/52
トウキョウAB505/埼玉県吉見町 53/53 トウキョウLM502/東京都日野市 54/54
アダチSU217/東京都足立区舎人公園  54/53  さいたまKS73/埼玉県鴻巣市  57/M5 
       
備考:当局使用リグ 無印=ブラックバード、*=87R。



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