2021運用記
十二ヶ岳 (GW一斉OAD)
群馬県高山村



[ロックハート城 (群馬県高山村): イギリスより移築した本物のお城。]






赤城山経由で



QSOを続けていると、サイタマKM117局さんから力強いお声でコールが入ってくる。今日も大持山周辺を周回されているようで、その合間にQRVされたようだ。

OAD一日前の今日は、目的地方面へ移動しがてらの気ままな運用だ。わざわざ山の上に上がるのも面倒だし、車から手軽に運用できる場所として、ちょこっと立ち寄ったのがここ赤城山である。

KM117局さんも、そのブログ「山岳移動の香り」(5/4付け)で見透かされている通り、極力無線的にメジャーな場所からは出ないことを旨としている当局なので、こんなシチュエーションでない限り、赤城山から運用することはもうないかもしれない(笑。

OAD前日ながら祝日とあって、結構みなさんおなじみの場所から出られているようだ。さいたまFL20局は、いつもの嵐山町、横瀬町の丸山にはサイタマBY36局、そして東京湾の向こう側、袖ケ浦海浜公園にはちばMR21局などだ。

赤城山は、最高峰の黒檜山、地蔵岳や長七郎山で構成される山だ。山上にはカルデラ湖もあり、ボート遊びもできる。以前はカルデラから地蔵岳に向かってリフトやロープウェイもあったが、もう廃止されて久しい。赤城山や、近く?の伊香保温泉というと、当局的には未だにいわゆる「昭和な」観光地のイメージが強い。東京方面からだと、もはや高速道路を使えば新潟や、草津温泉そして夏場にはさらに志賀高原へとちょいと行ける、途中の場所的な意味合いで、基本的に通過してしまう場所ということで、ここを目的地に泊りがけで観光に来られる方などほとんどいないのではないだろうか。むしろいまは、観光地というより、ハイキング目当ての地域という意味合いが強いのだろうか。

赤城山を訪れるのは25年ぶり以上、久しぶりに少し散策してみたが、25年前とイメージは変わっていない。残念ながら、新しい要素が何か付け加わったという印象を全く受けないのである。このまま更に退色していくのではないかという危機感のみが残る。人々のライフスタイルの変化に応じて、この赤城山というすばらしい自然の観光資源からどのようなあたらしい価値を創出するかについて、積極的な新たな試みが行われるとすれば、それはいつの日になるのだろうか。

 
 左: リグの左上が地蔵岳。
 右: 赤城山を下りて、高山村にあるロックハート城に向かってみる。
    本日の立ち寄り先は、パティスリー・シャンティリー (沼田市)。
 




OADが始まる





3Dのパノラマ


OADの運用場所は十二ヶ岳(じゅうにがたけ、群馬県高山村)である。関東平野では左上(北西)の隅にあたる部分にある山岳だ。山岳といっても、1,200mほどしかない。ここから関東平野に向かってどういう飛び受けをするのか? 1,200mという高さ(低さ)が微妙におもしろいところで(笑、平野をフラットな板と見立てた場合、感覚的には東京の中心部あたりが限界か?実際事前にカシミってみると、一応都心部までは「見通し」だが、見通しだからといって必ず電波が通じるわけではない。高さがないところからでは、進入角が浅くなるので地面の影響を受けて減衰しやすいからだ。まして都市部では建物の影響をもろに受けることになる。「1,200m」という高さで、地上高0mのどこまで通じるかが興味深いところである。

朝、登山口の気温は4℃ほど。この時期にしては若干低めか?しかし、昨日の予報では今日は26℃ぐらいまで上がるらしい(笑。今のところ幸いなことに、昨日吹き荒れていた風はなさそうだ。昨日はSR-01が車のルーフから吹き飛ばされんほどの強風が吹き荒れていた。

山頂までやってくると、心配していた風もなく全くの無風状態。空は快晴、ようやくGWらしい爽やかな天気だ。しかも、山頂からの景色の評判は聞いてはいたが、これほど素晴らしいとは・・・。文字通り360度絶景のパノラマだ。

山頂は東西に10mほど、西側にごく小さなブッシュがあることを除いては、垂直面も足元まで何もない。この大パノラマは、東方向から北へ向かって、男体山、日光白根山、武尊山、谷川岳→平標までの稜線、さらに西側にターンしていくと大きな緩い弧のようになった草津白根山、そして美しい三角形を描く四阿山、その左奥には北アルプスも切れ目なしに見える。そしてさらに南に目を転じていくと、浅間山、そして南側正面にはどでーんと榛名山の全容まるごとと、おまけのように右端の奥、遠方には八ヶ岳まで見える。今の時期、山のほとんどがまだ雪をかぶった状態だ。手前の新緑の向こう、横に長く連なる白い峰々が背景の青空に映える。

左: 武尊山(山名標右下)~朝日岳(小木の上)、その左、谷川岳。(24mm)
   (カッコ内は焦点距離(すべてフルサイズ)、以下同様)
中: 右端、仙ノ倉山、平標山。中央、白砂山。山名標の上、志賀高原の岩菅山。左端白根山。(24㎜)
右: 右三角形四阿山、パルコール嬬恋スキー場が見える。その右上の小ピークが昨年秋オン運用の浦倉山
   中央奥に北アルプス。(83㎜)
左: 榛名山の全容。恐ろしいほどに全貌が見える(笑。右奥遠方に八ヶ岳。(31㎜)
中: 苗場スキー場とゲレンデトップの筍山頂上の無線施設が見える。(240㎜)
右: 中央右、朝日岳。左側に谷川岳。(90㎜)


おそらく、1,200mレベルの低山で、これほどまでにパノラマチックに展望が開けている山は極めて珍しいのではないだろうか。しかも、ほとんどの方角において、足元の麓方向まで視界が開けているのは稀有だ。つまり平面のパノラマではなく、いわば3Dのパノラマである。

景色に見とれながら山々に思いを馳せていると、QRV開始がどんどんと遅れていく(笑。普通の山頂だと開けている方向が限られているので、時間がかからないのだが、ここは見るべき方向が360度全周なので時間がかかるのである。

 
今日のリグは、春オンに引き続き「NTS115フロントガードハンドル・オーディオアンプ風仕様1/2」と、ラジックス改造による新技適87Rだ。ラジックス改87Rは、2013年ころ新技適取得のものだが、もう3、4年稼働させてないような・・・。そのまま放っておくと不具合が出ている個体もあるようなので、久しぶりにチェックしてみる必要がある。

山頂についてからかなりの時間が経ってしまったが、まずはNTS115で運用開始だ。GW一斉といえば、一年中でもSVに次ぐビッグイベントのはずだが、コロナの影響からかバンド内は静かだ。最初にコールをいただいたのは、昨日もQSOいただいた、さいたまFL20局、小川町からだ。

トウキョウAB505局さんは、今日はときがわ町の弓立山からの運用である。出されていたCQに何気に応答すると、いつになくマイリポートは「M5」。「Sメーターがないんで・・・」と言われるそのリグは、東芝の52Aだ。円筒型の50mW機である。しかし変調もSもご立派、あのユニークなかわいらしいデザインからは想像できないほど、「普通に」とんでくる。こちらにはRS52だが、今日に限っては???NTS115の外部スピーカーのコードの引き回し方が悪かったようで、ふつうならS4~S5は振っていたかもしれない。NTS115の場合、耳Sで差が出るわけではないのだが、アースの引き回し方次第で、Sメーター表示でかなり差が出てくるようだ。

サイタマMS118局は、ICB-303からのオンエアだ。こちらは当局も欲しいと思いつつ、手に入れることのなかったリグの一つだ。筐体の色鮮やかさと、いかにもソニーらしい垢ぬけたデザインが印象的なハンディリグである。こちらも変調は申し分なく、帯域を絞ってRITで勝手に試してみた限りでは、Fズレもなく全く問題なく動作している。


高さがなぜ重要なのか

今日はOADの割には圧倒的に運用局が少ないので、本日のテーマ「関東平野地上高0m」と思しき局に出くわすチャンスも少ない。それでも、おそらく遠い順に並べ替えると、ふくおかOC68局/さいたま市、サイタマF886局/坂戸市、サイタマAB960局/吉見町、さいたまMK2局/熊谷市、などとつながっていく。それぞれ、当局からの飛びは、52、54、56、54である。距離的にはそれぞれ、104Km、82Km、77Km、64Km(後から計測。距離は市役所・町役場基準なので参考値)といったところで、S同様、聴感的にも距離的感覚に一致している。吉見町と熊谷市でSが逆転しているのは、AB960局は家屋などの障害物がないところから、逆にMK2局は自宅の庭先とのことで周囲に障害物のあるところからやられているからと思われる。

入間市の桜山展望台には、さいたまUG100局が出られており、当局からの飛びはRS54。こちらは距離的には92Kmだが、標高は展望台の高さを入れると200m+αなので、この高さの分が30Km程度の距離を稼いているというところだろうか。電界強度という意味では、高さのミエル化は計算式を使えばすぐに出てくるのだろうが、直感的にとらえられるような指標があればなぁと思うのである。本当はさいたま市以遠、東京湾沿い、もしくは千葉県側の局と交信・CBLできていれば、地上高0mとの交信限界点の考察に役立ったかもしれない。なにせ今日は運用局が少なすぎて、時間の経過とともに聞こえてくる局もほとんどない状況だ。これは当局のロケの低さだけの問題でもなさそうだ。


回折波は飛んでいく

一方で運用前からひそかに意識していたのは、0エリア、特に新潟側への飛び受けだ。もちろん0エリアといけるとすれば、上信越の山々を飛び越えての回折波ということになる。

日本海に浮かぶ佐渡島と、神奈川県の大山や秩父の丸山間では、回折波による交信が可能であることは、よく知られている事実である。その回折波の形成には、新潟と群馬の県境に連なる山々、特に平標山から谷川岳に至る稜線が有効に機能しているのではないか、というのが当局の勝手な推測だ(笑。このロケなら電波はそれらの壁に至近距離から直接ぶち当たる。さらに、十二ヶ岳はどちらかというと孤峰に近いので、回折波的には有利に作用するのでは、という推測も働き、漠然とした期待をもっていた。

まあ、飛ぶか飛ばないのか全くわからんが・・・とQRVを開始して、FL20局との一発目のQSOを完了すると、どなたかが「群馬の局長さんっ!!取れますか~」とコールしてくれる。ん?そんなに「群馬」の局が珍しいかぁ?と不思議に思いつつ応答すると、コールしてくれたのは、ふだんはEsでお世話になっているニイガタAA462局だ。新潟市の弥彦山かららしい。なんと開始早々二発目に新潟、しかも日本海沿いとつながるとは・・・。

つづいて、一局挟んで4局目、今度はニイガタEJ206局からコールが入ってくる。EJ206局もEsではよくお世話になる局長さんだ。運用場所は上越市のオガミダケ(尾神岳)とのことで、標高は750mぐらいらしい。後で調べてみると、尾神岳も弥彦山同様、どちらかというと孤峰に近いようなので、回折にはそうした条件が重なっているのかもしれない。

0エリアという意味では、長野県美ヶ原のナガノMA205局からもコールをいただく。こちらも後で調べてみると、浅間山が経路のど真ん中に立ちはだかっているので、山頂での回折波もしくは山腹の回り込みによる伝搬と思われる。

ナガノNP152局さんがよく使われる回折ルートに、長野県伊那市と三重県四日市港というルートがある。伊那谷から眼前に迫る3,000m級の中央アルプスを越えて、四日市港とつながるルートだ。回折角度が急峻なこともさることながら、地上高はほぼ0m to 0m。このとてつもなく信じられないルートは、山に雪がある冬場がダメで、夏限定のルートという面白い特徴を持っている。(注

今回の十二ヶ岳から0エリアへの回折は、夏場にはまた違った飛び方を見せてくれるのかもしれない。


36QSO、各局TNX!!
                              ('21/05/06)

 弥彦山(左)、尾神岳(右)との見通し。いずれも左側が相手局。


注)5/8日追記: ナガノNP152局さんの5月5日付ブログによると、今回のOADでは残雪が残る中、この回折ルートで四日市と交信できているようだ。



運用データ


 ■運用日時・場所:

 
  ・2021年5月3日(月、祝) 10:55~11:40 
      群馬県前橋市 赤城山軽井沢峠 (標高約1,410m)
   ・2021年5月4日(火、祝) 8:00~11:30 
      群馬県高山村 十二ヶ岳山頂 (標高1,200.9m)
 
     

 ■使用&装備リグ:
   CB : NTS115 (西無線研究所)
       ICB-87R (新技適ラジックス改)
       
 ■使用電源
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ah
   リチウムイオン電池10.8V/1.6Ah×2
   ・乾電池



QSO局
36QSO TNX!!  
(敬称略)

2021年5月3日 晴れ 赤城山軽井沢峠:10:55~11:40   
ねりまTN39/埼玉県志木市 52/52 さいたまFL20/埼玉県嵐山町 54/54
イタバシAY621/埼玉県 54/52 サイタマYM518/埼玉県嵐山町 55/55
サイタマKM117/埼玉県横瀬町大持山 57/59 グンマTK429/群馬県みどり市 55/55
サイタマTT480/埼玉県嵐山町 55/55 ふくおかOC68/埼玉県さいたま市 53/53
さいたまBY36/埼玉県横瀬町丸山  55/53  サイタマLB380/埼玉県吉見町  52/53 
ちばMR21/千葉県袖ケ浦海浜公園  52/53  おおたY16/東京都足立区 51/51 
さいたまKK007/千葉県袖ケ浦海浜公園  52/53  ながのA101/埼玉県川越市  41/51 
   
2021年5月4日 晴れ 十二ヶ岳山頂:8:00~11:40   
さいたまFL20/埼玉県嵐山町  52/52  ニイガタAA462/新潟市西蒲区弥彦山  51/51 
グンマTK429/群馬県赤城山長七郎山  56/59  ニイガタEJ206/新潟県上越市尾神岳  51/51 
さいたまF886/埼玉県坂戸市  51/54  サイタマGB940/埼玉県東松山市  51/53 
サイタマYM518/埼玉県嵐山町  52/51  サイタマMS118/埼玉県越生町黒山展望台  51/M5 
おおさと59/埼玉県ときがわ町堂平山剣ヶ峰  55/56  トウキョウAB505/埼玉県ときがわ町弓立山  52/M5 
さいたまUG100/埼玉県入間市桜山展望台  53/54  ナガノMA205/長野県上田市美ヶ原  51/52 
ふくおかOC68/埼玉県さいたま市  51/52  さいたまAJ22/埼玉県東秩父村  53/54 
サイタマAD421/埼玉県ときがわ町弓立山   53/56  サイタマAB960/埼玉県吉見町  54/56 
ぐんま4183/群馬県伊勢崎市  53/55  さいたまMK2/埼玉県熊谷市  54/54 
ぐんま1328/群馬県前橋市  54/56  イワテB73/6  56/56 
サイタマYS909/埼玉県深谷市利根川河川敷  55/55  まえばしHS75/群馬県赤城山  54/53 
:ラジックス87R改使用



© Nagoya YK221/なごやYK221