[山の端に陽が沈んでいく(鹿嶺高原より)]



さて行先は?

OADではどこから出るのか、というのがいつも一つの悩みでもあり、逆に悩むのが楽しみでもある。ナガノNP152局さんと連絡を取ってみると、どうやら今回は合同運用も可能とのことのようなので、ナガノAA601局主催?の鹿嶺高原(かれいこうげん)でのお泊りOADに一緒に参加させていただくことにする。このイベントは信州地区のフリラーを対象としたもので、昨年も開催されていたようだ。鹿嶺高原とは伊那市の東側にある、標高1,800m程の高原で、夏季はバンガローなどが営まれている。ただこの時期はキャンピングにはまだ寒く、バンガローはクローズドなので場所だけお借りして運用するといった感じである。鹿嶺高原は、2011年の長野地区でのお泊りアイボール会後に運用して以来だ。

とはいえ、せっかく伊那市まで出かけるので、忘れてならないのは、例の『木枯し紋次郎』のオープニングに出てくる場所だ。ここまで来て訪れない手はない。そう、木枯し紋次郎が砂利道をこちらに向かってズンズンと歩いてくるシーンの場所である。これらのことは、コラムや、2013年の運用記で記している通りである。

と、その前に、更にせっかくなので、現地へ向かう途中、所々で少しだけ運用してみる。今日のコースは、埼玉県の入間の方から、飯能、秩父経由、佐久へ抜け、麦草峠経由で茅野市に降り、さらに杖突峠を経て高遠に出て、まずは紋次郎ポイントへ向かうというコースだ。秩父からは志賀坂峠を抜けて群馬県上野村へ抜けるのだが、なぜこのような道筋かと言えば、通称「御巣鷹の尾根」にある、JAL123便の慰霊碑に伺って、亡くなられた方々に手を合わせるためである。今回が初めての慰霊となるが、すでに事故から32年経過しており、あまりに遅きに失していることは誠にお恥ずかしい限りではある。520人もの尊い命が奪われたJALの事故については、コラムでも触れ、2012年の三国山の運用記でも触れているが、その時も後からもう一度コラムで書くつもりでいたが、そのままになっているので、そちらの方の話は別途ということにしよう。

慰霊登山終了後、まずは、群馬県上野村と長野県佐久市境の十石峠からQRVしてみる。QRVというより、短時間ワッチをしてみるという感じだ。朝からコンディションは上がり目なのか、近距離のEsが出ているようで、ふくしまFD55局やミヤギステーションが入感してくる。といっても夏のようにドカンと聞こえてくるわけではなく、41~51程度だ。しばらく様子をみていると、やがてフェードアウトしていった。グランドウェーブではトウキョウAB505局がちょうどQRVを開始されたところのようで、CQが舞い込んでくる。ただ聞こえ方は51程度で弱弱しい。埼玉県ときがわ町の二宮山からでられているらしい。こちらは峠の頂上手前でまだ上野村の領域だが、標高は1,300m超で比較的見晴らしの良い場所だ。しかし、残念ながらあまり飛びは良くない。こちらからは41である。群馬と長野県境にはこれより南にぶどう峠があり以前QRVしたことがあるが、標高や見晴らしの印象とは違って飛び受けが余り良くなかったが、その時の印象と全く同じだ。

八千穂から麦草峠へ上がる途中
でもQRV。向こうに見えるのは
浅間山。

続いて、長野県の佐久側に抜けてから、「八千穂レイク」サイドからワッチをしてみる。標高は1,500mほどだが、レイクということからもわかるように、湖の一角で特段山の上や丘の上といったわけではない。小海線が走る野辺山と同様、土地全体が高いだけである。

車を降りて87Rを点けてみると、なんと三毳山(みかもやま)で運用中のさいたまBB85局のQSOが入感してくる。三毳山と言えば、栃木県栃木市、繰り返しになるが4月に運用した岩船山のすぐ近くである。BB85局がいつも運用しているのは「富士見台」なので、標高は190mほどしかない。三毳山の飛び方にはこれまでに何度も驚かされてきたが、こんなところまで飛んでくるとは・・・。無論、群馬・長野県境を成す山々を飛び越える回折波ではある。ここでは、二宮山で引き続き運用中のトウキョウAB505局も51で入感してくる。長野県と群馬・埼玉側との山岳回折も、なかなか研究してみると面白いのかも知れない。

次は麦草峠のQRVだ。佐久側から蓼科側へ抜ける国道が299号で、その最高点が麦草峠(標高2,120m)である。麦草ヒュッテのある峠の頂上近辺はまだ辺り一面真っ白な雪の世界だ。87RでCQを出してみると、ナガノAA601局から応答がある。すでに鹿嶺高原に到着して、テントやバーベキューの設営にかかられているようである。一緒にキャンプに参加されるまつもとHN50局やナガノCR210局もすでに到着されているようだ。当局の方は、設営のお手伝いもせず、例の紋次郎ポイントへ立ち寄ってから、鹿嶺高原へと上がることになる。


紋次郎ポイント

この紋次郎ポイントは、今は伊那市だが、高遠町上山田という場所なので、おそらく旧高遠町に属していた場所だろう。(旧高遠町は伊那市と合併) 高遠といえば、小藩ながら江戸時代の高遠藩で有名な場所だ。名君と呼ばれる保科正之が礎を築き、大奥の絵島事件などでも知られる藩である。今では城址の桜が有名で、春にはたくさんの観光客を集める。笹沢佐保原作の『木枯し紋次郎』はもちろんフィクションだが、この高遠近辺も何度か登場する。

時代劇TVドラマとしての『木枯し紋次郎』のオープニングの撮影はおそらく1971年の晩秋のはずである。当時から46年近くが経過し、すっかり周りの木々は成長したが、さすがに山の形自体は変えられない。正面に見える一番奥の山並みに見える、ひょこんと出た山の峰、そしてその山並みから手前へと降りてくる、山筋の形などは、あのころとは全く変わっていない。もちろん大きく変わったのは当時砂利道だった道が、舗装になり、電柱が建てられ、道端の段差のある畑が、コンクリなどで整備されたことだ。

今この場所を見たところで、それが何か意味を持つということではない。最も重要な点は、46年後においてもそこに行ってみたいと思わせるような映像を46年前に創り上げていたということである。

向こうから、紋次郎がズンズンと歩いてくる。
ぴょこんと出た峰のズーム。
山筋のアップ。



紋次郎ポイントでひととき、感慨にふけって、鹿嶺高原へと上がる。もうNP152局も含め、今日参加するほぼ全員の局長さんが集まっていた。夕日はいつになく、赤紫色に空を染めて沈んでいった。遠く下の方の伊那市の街の一角や、川面が赤い光を薄く反射していた。

この日は、夜11時近くまで、長崎など九州方面から入感があり、コンディションの良さを感じさせた。キャンプの方は大盛り上がりなので、もちろん運用はほとんどそっち抜けなのだが・・・。

翌日は運用もせずに、早々に撤収を決め込む(笑。しかし、Esの波は朝からこの高原にも結構落ちてくる。さすがにOAD本番とあって、日本各地で運用局が活動している。お泊り各局は、展望台まで上がって、Esに応答しているようである。当局にとってはコーヒーの方が重要であったりもするので(笑、Es運用はそれらの局長さん任せだ





四日市ポイント

東京へ戻る前に、ナガノNP152局さんにお願いして、「四日市ポイント」に案内していただくことにする。この四日市ポイントは、伊那市の天竜川沿いの場所だが、なんと三重県の四日市とグランドウェーブでつながるという場所だ。NP152局が発見して以来、一躍有名?になったポイントだ(笑。このポイントのすごいところは、3,000m級の中央アルプスを越えて、四日市と電波の行き来ができるということだ。山岳回折とはいっても、眼前に3,000m級の山々がそびえているのである。ほかの回折波のように、回折ポイントである山頂などから50㎞も100㎞も離れているわけではない。つまりその回折角度たるやものすごいものがある。しかもここの面白いところは、冬場は使えないということだ。山に雪が残っている間はダメなそうである。おそらく雪が電波を吸収するものと思われるが、実際には回折や反射が複雑に絡み合っているのかも知れない。山岳回折は基本的には頂一つでの回折はあり得ず、山の峰がウェッジシェイプ状に衝立のように水平上に広がっていることが原則だ。回折ポイントにあたる衝立の「刃」の部分や、反射が関与している場合には反射面が雪に覆われていることが回折に影響しているのかも知れない。

今日はOADなので、四日市港には誰かQRVしている可能性もあるが、やはり四日市は聞こえてこない。まだまだ山にはたくさん、雪が残っているのである。

もう一度、当局も夏場にここに戻って四日市とQSOしてみたいものである。


4QSO TNX!!             ('17/5)


 
 左:四日市ポイントにて。
580デルタはナガノNP152局のリグ。

右:鹿嶺高原より撮影した木曽駒ケ岳(右端)~空木岳(木の陰)。
四日市ポイントはこの雲の下にあり(右端に近い位置)、四日市からの電波はこの中央アルプスを越えてやってくる。





運用データ

■運用日時・運用場所:
 
 ・2017年5月3、4日(日) 
  ・群馬県上野村、長野県茅野市、伊那市他
  

■使用&装備リグ:
  CB : SR-01(サイエンテックス)、ICB-87R(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ
  
■使用電源
  ・リチウムイオン電池10.8V/3.2Ahほか

←木曽御嶽も顔を出す。
  


QSO局
4QSO TNX!!  
(敬称略)

5月3日  
トウキョウAB505/埼玉県ときがわ町 51/41 まつもとHN50/長野県伊那市鹿嶺高原 51/M5
ナガノAA601/長野県伊那市鹿嶺高原 52/53 ナガノCR210/長野県伊那市鹿嶺高原 52/52


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2017運用記
鹿嶺高原(GW一斉OAD)
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