[三国山山頂にて。霧氷が青空に映える。]


高原の空気を吸いに

朝7時。野辺山高原。気温はマイナス2℃。11月3日の各オン(各地一斉オンエアデー)は、長野県川上村の三国山(標高1,834m)から出てみることにする。長野県川上村と言っても、三国山は群馬県上野村、埼玉県秩父市との境にある。「三国山」という名前の山は全国いたるところに存在するが、この三国山は、信濃、上野、武蔵の三つの国の国境に位置する山である。場所的には、1985年に日航ジャンボ機が墜落した御巣鷹山のすぐ南といった方が分かり易いかもしれない。三国山は墜落現場から直線で3、4キロの距離である。日航機関係の話は、いつか別途「コラム」等ですることにしよう。

三国山は特段眺望が良いわけでも、無線のロケが良いわけでもない。ただ、以前から何とはなしに気になっていた場所である。今年も春先から来ようと思っていたが、5月の連休明けに秩父側から通ずる中津川林道の土砂が崩落し、現在でも通行止めになっているため、なかなか来る機会がなかった。今回は、「秋の高原の空気を吸いに行こう」、ということで、基本的には目的地は八ヶ岳のふもと野辺山だが、そこで高原の雰囲気を楽しみ、無線の方は三国山で楽しもうという寸法だ。したがって、三国山へは中央道の小淵沢方面から野辺山を経由して長野県川上村からのアクセスだ。

空は快晴だ。天は高い。まだ紅葉の彩り残る川上村の集落を過ぎ、快調に三国峠を頂上に向かって飛ばしてくると、いつの間にか木々は一面白銀ならぬ、真っ白な氷の世界に変わる。うっかり?していたが、気温は以外に低く、あたりはいつのまにか息を呑むような見事な霧氷の世界になっている。思わず車のスピードを緩める。光が透けてくる梢の間は、そこだけきらきらと輝いている。こんな時期に、こんな見事な霧氷が見えるとは…全く思ってもいなかった。高原の朝を満喫しようと野辺山でうろうろしていたので、もう9時になろうとしているのだが、こんなことならもっと早く出発してくるんだった…(笑。そういえば、これまでにも移動運用の際に奈良県の高見山や愛知・長野県境の茶臼山でも見事な霧氷に出くわしている。運用のためには朝早くから移動するので、こんな経験もできるのかもしれない。

左:朝の野辺山天文台&八ヶ岳。 中・右:三国峠に登って来ると見事な霧氷が出迎えてくれる。


青空の下で
峠の頂点から、わずか20分ほどで三国山山頂に到着(笑、さっそく本日のメインリグ、707とデジ簡を設置、ワッチに入る。先週の顔振峠移動では、秋も深まったというのに、未だにピュルピュル音や、ホニャラのかぶりが異様にうるさかったが、今日はどうだろうか?・・・先週ほどではないにしても、やはり依然として今日も悩まされそうな雰囲気だ。いつも比較的静かな8Chさえ今日は他のチャンネルよりむしろうるさい感じだ。

「各オン」はどうせ運用局は少ないだろうから、今日はのんび~り午後3時近くまで運用の予定だ。幸い天気はピーカン、空気は冷たいが太陽は燦燦と輝いている。CQもぼちぼち飛ばしてみるが、意外と運用まもなくピックアップいただく。筑波山男体山移動のつくばA3局だ。信号も57と強力だ。

ヨコハマFUR98局は、当局が朝までいた、野辺山に移動されているようだ。FUR98局とは久々のQSOで、今日はどうせ暇なOADと分かっているので、あれやこれやいろいろと会話が弾む。今日は運用後、上田の方まで移動されて、某局と合流、明日は美ヶ原近辺から運用されるようである。

朝10時近くになってもまだまだ霧氷は
見事だ。中央奥右側金峰山(2,595m)、
左側朝日岳(2,579m)。右端三角形は
小川山(2,418m)。

気温は2~3℃だろうか。それにしても、もう10時過ぎだというのに、未だに運用場所近辺の枝枝には霧氷が溶けずに白く輝いている。直射日光が体に降り注いでいるので、気温の割には、全く寒くはない。もっとも、厚手のフリースにダウンを羽織っているからかもしれないが…。山頂の小さなケルン?には、イスに適した平らな岩があり、腰掛けて707をワッチしていると、まどろんでしまいそうになる。山頂は予想通り、南面以外は木々に覆われているが、それほど密集しているわけではなく、青空のせいか明るく、快適な運用場所となっている。視界が開けた南面からは、川上村の集落へと続く窪地の向こうに、金峰山や小川山が逆光の中に良く見えている。山はすっかり色づき、そして紅葉はもう終わろうとしている。

DCRでは、甲州市の笠取山から、にしたま123局のCQが入感してくる。笠取山とは、ずいぶんマニアックなところから出ておられる感じだが、おそらく間に高い山があるにもかかわらず、バー2本で強力に聞こえてくる。さすがに5エレ八木の威力だろうか。三国山というロケ上、もともと東京や埼玉の南方面には全く期待していないが、やはり入感してくるのは群馬や栃木方向からである。前橋市内からはヤマナシJX89局、大田原市からは、トチギK249局などが入感してくる。グンマAA661局とも久しぶりのQSOだ。

福島・茨城県境の八溝山とも相性が良いようで、CBではイバラギTK911局の信号が56で強力に入感してくる。TK911局とはDCRでもつながるが、こちらもバー2~3本と強力入感だ。


交信できる局は少ないものの、深く、濃い青空の下、入感局がなくても運用は快適だ。太陽を邪魔しようという雲は、午後になってもかけらも見当たらない。石の上に腰掛けたまま、のんびり、ゆっくりと時間が過ぎていく。13時台は、とうとうノーQSOに終わるが、そんなことはほとんどどうでもよく、この天気の下でCB運用をできるだけで満足である。8Chでは相変わらずピュルピュル音がにぎやかだ・・・。


リベンジ回折?
14時も大分回った。さすがにもう運用局も増えそうにないので、「そろそろ撤収」の文字が頭をちらつき始める。というのも今日はまだもう一仕事残っているからである。そう、温泉&露天風呂だ。できれば明るいうちに南牧村にある「灯明の湯」の露天風呂につかりたい。あらかじめ「高原と温泉」はプログラムに組み込んであるのである(笑。運用を終えたら再び八ヶ岳のふもとまで戻らねばならない。

707を片付けようかと立ち上がると、そこでナガノNP152局より、メールが「入感」してくる(笑。最近は相当山の奥の辺鄙なところに行っても、意外とアンテナマークが3本立っていたりするので、三国山程度の山の中では携帯は全く問題なく使用できる。

左端伊那リ、右端三国山。
こんな状況でも回折で飛んでくる。

NP152局は、「8Chワッチ中。」とのこと(笑。たった今、伊那リ(=伊那スキーリゾート:長野県伊那市)まで移動されてきたようだ。当局が朝書き込んだ、一行掲示板を見ていただいたのかもしれない。これは9月の秋オンで失敗した、「アサヨ峰回折」のリベンジの絶好のチャンスである。長野県人でない当局が言うのもなんだが、伊那市と川上村は同じ長野県とは言え、文化的にも人の交流的にも全く別の地域だ。伊那市のある伊那谷方面と、甲州方面は南アルプスで完全に分断されているからで、単に行政区分が同じ長野県であるに過ぎない、という感覚である。(現に三国山は群馬・埼玉との県境である。)だから、ここから山岳回折で伊那リとつながったら嬉しいな、という思いでCQの連発体制に入る。

ピュルルンノイズが再び激しくなっている。CQから受信に切り替えると、NP152局のか細い信号が31から41で入感してくる。ミニチュアのようになった信号が、ノイズの狭間では間違いなくオールコピーで聞こえてくる。「聞こえるもんなんだ~。」しばし、感じ入る。我に返って、今度は大胆にも、「デジ簡でやりましょう」と、信号を送るとNP152局の「了解」との返事が聞こえてくる。デジ簡は19Chを指定してしばらくコールサインで呼びかけてみるが応答は聞こえてこない。しかしスケルチをはずして、立ち位置をずらすと、誰かが明らかに応答しているのが分かる。ただ音がまだるっこしくて音質がつかめない上に途切れ途切れなので、「誰」なのかがわからない。さらに位置をずらしてみると、NP152局の信号がよどみなく入感し始める・・・。ん~、デジ簡でもいけたか!QSOの感じからすると、どうも当局の信号ははじめからNP152局側ではピックアップできていたようである。QSO後に更にベスポジを探ってみると、バー1本振らんばかりで全く問題なく入感してくる。NP152局は誰かに呼ばれて既に他局との交信に移られているのだが、仕事の合間に運用されているようで先を急がれているようだ(笑。

図らずも伊那市とのQSOに成功(TNX!!NP152局)、距離的にどうこうというより、思いがけない場所とつながるこの意外性がやはりなんともいえない。




運用を終えて川上村の集落まで戻ってくると、傾いた西日がまだ紅葉の残った木々を照らし出していた。




11月4日



[朝の野辺山、滝沢牧場にてゆっくりコーヒーを一杯。]


昼前から露天風呂三昧

無線運用は昨日のOADで基本的には終わりだ。今日はふたたび高原と温泉がテーマである(笑。
まず、清里と野辺山で初冬の高原の空気を満喫、長野県北相木村側からぶどう峠を越えて、群馬県上野村に入り、真昼間から浜平鉱泉の露天風呂に、のんびりつかろうという作戦だ(笑。この「のんびり」という部分が最も重要だ(笑。そう、あくせくする必要はないし、時間制限もない。もちろん標高1,500m程あるぶどう峠では、せっかくなので電波も発砲してみる予定である。今日も雲ひとつない快晴だ。


高原の空気を吸う。左、中:清里、右:野辺山高原。

ぶどう峠に到着して車を降りると、もう11時近いのに、空気はシンとしている。峠は南北に伸びる尾根を東西に越える形なので、無線を運用するには長野側(峠の西側)で発砲し、50m程歩いて群馬側(峠の東側)に出て、またCQを出すといった感じだ。今日はOADでも何でもない、単なる日曜日なので、運用局があるのかどうか分からない。それでも、群馬側でCQを出してワッチしていると、2~3分も経たないうちに、イバラギAB399局のCQが飛んでくる。昨日のOADでイバラギTK911局が運用されていた八溝山から運用されているようである。温泉に早くつかるために、もともとここでの運用時間は10分ぐらいと決めていたが、やはり関東側は誰かしら運用局がおられるものである。


再び顔振峠へ
温泉はさておき、秩父から飯能を抜けて東京に戻るので、帰り際顔振峠でもあいさつがてら?運用してみることにする。顔振峠では先週運用したばかりで、2週連続で同じ場所から出るというのも能がないような気もするのだが、今日は先週とうって変わって非常によい天気なので、ついつい国道から峠方向へとステアリングを切ってしまう。丸山やら関八州見晴台やら、このあたりには良く無線運用に使われる場所はたくさんあるのだが、顔振峠は国道から5分もかからずに上がれるので、もっともアクセスし易い場所である。穏やかな日曜日の午後、皆さん出ておられるだろうか?

見晴台に上がってCQを出してみると・・・湘南平、城山湖、みかも山・・・やはり皆さん今日も出ておられます(笑。ナゴヤAB449局によると、城山湖には今日は、なんと11局も集結されているようだ。みかも山は今日は2局体制のようで、いつもの主、さいたまBB85局のほかに、ゲスト?としてヨコハマAC306局が遠征して運用されている。

超短時間運用ながら5局ほどとQSO、見晴台から茶屋まで降りてくると、あのおばあちゃんが今日は手持ち無沙汰に店の中に座っている。温泉でのんびりしていたので、残念ながら今日は味噌おでんを楽しんでいる暇はない。茶屋の向こうには逆光の中に武甲山のピラミダルな影が、くっきりと見えていた。 
                                               ('12/11)


右端:武甲山。


運用データ
■運用日時・運用場所:
 
 2012年11月3日(土) 9:30~14:45
  
 長野県川上村三国山山頂(標高1,834m)
  2012年11月4日(日)
   10:48~10:58
 群馬県上野村ぶどう峠 
                    (標高約1,500m)
   14:50~15:10 埼玉県飯能市顔振峠見晴台
                    (標高574m)
■使用&装備リグ:
  CB: ICB-707(SONY)、ICB-87R(SONY)
  DCR351(デジタル簡易無線):
      IC-DPR5 (ICOM)+1/4λホイップ (第一電波)
■使用電源(予備含む)
  ・Li-ion: 7.2V/6.2Ah×1、7.2V/1.8Ah×1
       
10.8V/2.6Ah×1
  ・ 乾電池  

 
      

QSO局
(敬称略)

11月3日三国山
つくばA3/茨城県筑波山男体山 57/59 ヨコハマFUR98/長野県南牧村野辺山 57/55
にしたま123/山梨県甲州市笠取山(DCR) M5/M5 やまなしJX89/群馬県前橋市(DCR) M5/M5
ヨコハマFUR98/長野県南牧村野辺山(DCR) M5/M5 トチギK249/栃木県大田原市御亭山(DCR) M5/M5
イバラギTK911/茨城県大子町八溝山 56/57 カナガワVT250/栃木県那須町茶臼岳 51/51
グンマAA661/群馬県安中市 51/51 イバラギTK911/茨城県大子町八溝山(DCR) M5/M5
ナガノNP152/長野県伊那市伊那スキーリゾート 41/41 ナガノNP152/長野県伊那市伊那スキーリゾート(DCR) M5/M5
11月4日ぶどう峠
イバラギAB399/茨城県大子町八溝山 53/52
11月4日顔振峠
ショウナンYS55/神奈川県平塚市湘南平 52/43 ナゴヤAB449/神奈川県相模原市城山湖 54/53
ぐんまRB32/埼玉県東秩父村 53/56 ヨコハマAC306/栃木県佐野市みかも山 57/59+
さいたまBB85/栃木県佐野市みかも山 58/59+
DCR:デジタル簡易無線



ひとつ前の運用記 次の運用記  TOP



© Nagoya YK221

2012運用記
GW一斉OAD
長野県川上村