2012運用記
奥多摩周遊道路





50mW & 100mW
日曜日は時間ができたので、一路車を奥多摩周遊道路に走らせて見る。目的地は標高1,000m程の浅間尾根駐車場(東京都桧原村)だ。奥多摩周遊道路は高いところを走る割には、視界が開けた場所がほとんどなく、余り無線向きではない。この浅間尾根駐車場も東側に多少開けている程度だが、昨日から天気は良くなく、ガスがかかっていて下界は全く見えない。その代わり、半そで半ズボンで立っていると、寒いくらいの気温である。

休息所のベンチに荷物を降ろしてさっそくセットアップに取り掛かる。今日の移動目的は、50mWと100mW機のプチ運用である。50mWは東芝の52A、100mWは日立のCH-1033Rである。52Aは、2週間前の与那国島運用でも持ち込んでいたが、コンディションが爆発的に開けることも無く出番がなかったので、もう少し稼動させてあげようという思いである。まずは87Rでコンディションを一通り確認してみる。適度に上がっているようで、5、6、8ChなどでEsで福岡や山口県の局が入感しており、コールをかけている局が2~3局聞こえてくる。実験するにはコンディション上がり過ぎか?(笑。当局の方は山にいるので、Es局はガンガンには入ってこないが、下界の局は確信を持って呼びに回っているので、それなりに強く入感しているようだ。しばらくは、休息所と行ったり来たりしながら、違法などもワッチしながら52Aの受信能力を確認してみる。といっても、50mW機なので、5Chの1チャンネルしかないのだが・・・。

この休息所の屋根は、不思議なことに、電波防御効果をまともに発揮する。87RをONにしたまま、屋根の外から内に入ると、その距離に応じて信号が急速に弱まっていくのが確認できる。不思議というより、むしろ屋根で信号が減衰する方が当たり前なのかもしれないが、必ずしも電波は上からやってくるわけではないし、実際当局が出くわすこの手の屋根付きの建物というのはほとんど飛び受けに影響しない場合がほとんどである。与那国の西埼や東埼の展望台でもそうだったし、他の展望台などでもそういうケースが殆どだ。電波の飛来方向や、屋根の高さ(=アンテナと屋根との距離)が関係するのかもしれないが、屋根の素材等も影響しているのかもしれない。いずれにせよ、何がその差を生むのかは興味深いところだ。外は時々細かい霧雨が降ってくる。しかし中にいると電波は弱まるので、時に霧滴に晒されながら、常に外に突っ立ってリグを聞いている必要がある。


52A:
このリグは50mW機でアンテナも50cmそこそこしかないが、見た目と違って受信感度はなかなか侮れない。5Chでは、並行ワッチの87Rに、やまぐちAN77局(山口県宇部市)のきびきびしたQSOがずっと入感している。こちらの地上局が2~3局常にコールをかけているのが聞こえるので、電波をだすわけには行かないが、87Rと比較しながら聞くには丁度良い。AN77局はQSBが強い。87Rで41~ピーク52程度の入感である。

52Aではどうか?87Rで41で聞こえる時には(41ぐらいが8割方の時間だが)、52Aでは捉えることができないが、51を超えて聞こえてくるときは、52AでもAN77局の変調が「しっかり」、とまではいかなくとも、ちゃんと再生されてくる。したがって87R換算52~53でバリバリに聞こえてくるEs時はおそらく受信は全く問題ないはずだ。AN77局受信前には違法局もガンガンに聞こえていた。ひょっとして、当局の持っている100mW機RJ-270Dなどより感度は良いかもしれない(笑。

ところが、ずっと比較して聞いていると、あるとき52Aから87Rとは全く別の再生音が流れてくる(笑。トラックの違法局だ。イメージ混信なのか?しかも違法局は周波数がドンピシャなのか、カブリと言うよりはっきりと聞こえてくる。52Aはシングルスーパーの上側から中間周波を取っているのか、下から取っているのか分からないが、一応87Rで全Ch同じ信号を探ってみるが、その違法局は全く聞こえてこない(笑。カブリらしき信号も聞こえないので、この違法局は珍しく、比較的キレイな電波を出しているのかもしれない。それにしても、5Chでイメージ混信とするならば、限りなく28MHzに近い周波数であるか、もしくは26.176近辺という違法局にしては異様に低い周波数なので、基本的には余りあり得ない周波数である。イメージ混信ではなく、27.088近辺の別の信号を拾っているのか?

アンテナは着脱式で使わないときは、ベルトの鞘(左上)に入れておく仕組みになっている。
市民ラジオでアンテナが着脱式と言うのはきわめて珍しい。


送信の方はどうか?5ChはほとんどEsで使われており、なかなか電波を出す機会がない。それでも運用開始後しばらくして、一旦コンディションが下がった(と思われた)ので、CQを出してみるが全く応答はない。やはり飛びはダメか?ところが、何度かCQを繰り返していると、とうきょうMS25局さん(多摩川河川敷移動)に応答していただいているのが聞こえてくる。M5だ。ところがこちらから応答してみてもレスポンスがない。後から100mW でつながったときのMS25局さんの話では、コンディションが上がってきてEs局と混信になるのでコールを止められたとのことだ。MS25局さんには、52Aの50mW波はRS52位で届いていたとのことである。後からでもレポートをいただけたのは非常に有難い。(TNX!MS25局)当局もうっかりしていたが、52Aでワッチ⇒チャンネルチェックをかけても余り意味がない。87R等でコンディション確認してからCQを出すべきだったと反省、その後は52A送信時も87Rとで並行ワッチ体制で臨むことに。特に1,000mHの山域なので、平地よりEsの入りは弱いので余計である。
43年前の50mWでも何とか52で届いているようで安心、あとはどこまで飛ぶかだが、こんなデザインのリグでいろんな局と交信できたとすれば、どんなに楽しいことだろうか。


1033R:

クロームメッキ?の外枠、黒地の艶消しボディに、白地の「1033R」、オレンジ色の「HITACHI」の文字が光る個性的なリグだ。日立の古いリグは、どれもデザイン的にはイマイチだが、このリグだけは唯一「使ってみたい」、という気持ちを起こさせる・・・当局だけか?(笑。
1033Rは、昨年10月、秩父の武甲山から試運用している。そのときは短時間運用だが、今回もEsコンディションが上昇しており、うかつに電波は出せないので短時間運用になりそうである。(このリグは3Ch仕様)。ただ今日のEsに関して言えば、8以外では、3Chよりむしろ、5、6、4、といったチャンネルの方が使われているようである。

どんな聞こえ方がするのか?1033Rの低周波再生音は力強い。ただし、どちらかというとガラガラ音の再生音で余り品が良いとは言えない。その分、余り耳障りな音が聞こえないという点はメリットかもしれない。このリグもご多分に漏れず、スピーカーをマイクとするスピーカー変調である。

まずは、送信の方はどうか。余り長い時間CQを出すわけにはいかないが、こちらもとうきょうMS25局にピックアップいただく。距離はおそらく20~30km程度だが、53で届いているようである。MS25局側では、海外QRMがかなりひどいようだが、当局側ではほとんど全く聞こえてこない(笑。リグの違いもあるが、むしろ山側というロケが影響しているようである。

87Rと並べて聞いていると、チバCB750局のCQが飛んでくる。おそらくEsDX向けCQなので、半分申し訳ないなぁと思いつつ、一応コールさせていただく。若干ノイズは混じるがメリット5の入感だ。こちらには全く問題なくオールコピーなのだが、どうやらCB750局側では、やはり海外QRMがあるらしい。当局の移動地(「桧原村」)を取っていただくのに少し時間がかかったが、CB750局からのレポートはRS42でまずまずは問題ないQSOだ。QTHは千葉県南房総市で、当局の100mW波も房総半島の南端まで無事に届いているようだ。CB750局といえば、5月12日に当局が野島崎にQRVしたときにつながった局長さんで、そのときの話をいろいろ伺いたかったのだが、DX向けCQであるのでショートにてQSO完了である。

Es受信の方はどうか?87Rで41程度の入力だと、1033Rだとかなり厳しい・・・というか、ほとんど取れない。それ以下に落ちると、当然全く聞こえなくなってしまうようだ。やはり87R換算51以上の入力が必要なようだ。ノイズの方は、選択度特性がシャープなナショナルの100mW機などに比べると、帯域幅が若干広めのせいか、ノイズは比較的いろいろな細かい音も拾っており、静か過ぎる270Dなどに比べれば無線機っぽくてこのほうが良いかもしれない。もっともリグの開発年代や、コンセプトは違うので同レベルで両機を比較すべきではないのかもしれない。


無線機の品格
言うまでもなく無線機の基本は受信能力、すなわち「耳」の良し悪しに尽きる。QRP交信を成り立たせるのも、「耳」である。「受信能力はダブルスーパーで500mW機並み以上」というような50mW機が昔世の中に出ていたら・・・・夢のような話だが、今とはまた違った楽しみが増えていたように思われる。

                              ('12/08)
                          

運用データ
■運用日時・運用場所:
 
東京都桧原村奥多摩周遊道路浅間尾根駐車場
   2012年7月22日(日) 10:15~13:30
    
■使用&装備リグ:
  CB: 52A (東芝)、CH-1033R (日立)、
      ICB-87R (SONY)
  DCR351(デジタル簡易無線):
   ・IC-DPR5 (ICOM)+1/4λホイップ (第一電波)
  

■使用電源
(予備含む)
  ・Li-ion: 10.8V/1.6Ah×2 (87R)
        7.4V/6.4Ah×1 (DCR)
  ・ 乾電池 (52A、1033R) 


 
      

QSO局
(敬称略)


とうきょうMS25/多摩川河川敷 (100) M5/53 ふくおか8774/二子多摩川 52/53
とうきょうK767 (DCR) M5/M5 としまFZ52/豊島区 (DCR) M5/M5
トウキョウAA909/町田市小山田町 (DCR) M5/M5 チバCB750/南房総市 (100) 51/42
キタカントウRC1/筑波山 (DCR) M5/M5 トウキョウAB625/立川市 51/53
さいたまBB85/栃木県佐野市みかも山 52/54


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