2016運用記
横根高原
栃木県鹿沼市






久々のワクワク感

横根山という名前を初めて知ったのは17~18年前だったと思う。インターネットで何気にパーソナル無線を検索していたときに出くわした、とある方がホームページに掲載していたアウトドア関連の記事のようなものだったと思う。仲間と連れ立って横根高原に泊りがけで移動する計画のようで、駐車場に到着後、パーソナル無線で何気にオンエアしてみたところ、千葉の幕張辺りのマンション駐車場でまだ出発準備中だった仲間の車とつながって仰天したというようなエピソードだった。もちろんその方は無線が趣味というわけではなく、仲間との連絡用にパーソナル無線を車につけていただけの話である。普段はそんなに飛ぶ「無線機」だとは思っていなかったのだろう、その方の驚きの感想を今でも新鮮に覚えている。その方はさらに、「運用」をつづけたところ、埼玉県内の東北道を集合場所である横根高原に向かって走っている、別の仲間ともつながってさらにびっくりしたとも記していた。

無線をやらない素人の方が驚くのは当然だが、当局でさえまだその当時、パーソナル無線などは、飛ぶのはせいぜい2~3キロの範囲だろうと単純に思っていたから、当局にとっても非常に新鮮であった。もっとも、再び無線の世界にどっぷりと浸かる前の話ではある。

 
横根高原:
到着時撮影。帰りに少しはまともな写真を撮ろうと思っていたら、帰りは全くの濃霧の中でした(笑。



名古屋から1エリアに戻ってきて、DCRで運用を開始してから、横根山(高原)から初めてつながったのが、とちぎKN46局さんで、移動場所を聞いた時「あの横根山か~」、と妙に身近に感じたものである。特にKN46局さんは、横根高原からよく運用されており、その後も何度かつながっている。

今回の移動目的はサイエンテックス社の新型CB機、SR-01の試運用である。4月に突然新型CB機の発売が発表され、CBerに衝撃が走ったのは、記憶に新しい。おそらく今年一番の重大事件だろう(笑。この期に及んで、新しいCB機が発売されるなどとは誰しも思ってもいなかった。待望の新型機は、9月下旬から第一ロットのディリバリーが開始された。CBerにとっては、うれしい限りだが、それ以上に期待も大きい。当局も新品を購入するのは、2003年に87Rを購入して以来である。久々にワクワク感をもたらせてくれた新型機SR-01は、果たしてどのような実力なのか?


ボリュームが上がってません!(笑

ロケ選定としては、車でひょいと登れる場所がいい。いきなり新品をリュックに詰め込んで振動を与えながら担ぎ上げるのは気が引けるし、試運用ではいろいろなリグとも比較してみたい。その点、横根高原(標高1,300m前後)は手近に車で登れる高所(=当局基準では1,000m以上)の筆頭の一つである。車で簡単に上がれる「高所」には、富士山五合目や渋峠、八溝山、有間峠などがおなじみの場所だが、横根高原は比較的マイナーな場所なので、当局向きのロケである(笑。

SR-01を車のルーフにセット。まずは小手調べにSR-01単体で運用してみる。

電源はリチウムイオン電池の外部電源12.6V(満充電時)である。これは当局がいつも運用で使っている電池である。スイッチオン、サーというノイズが聞こえてくる。すでに各局さんが報告されているようだが、SR-01はボリュームミニマムでも、FM放送のホワイトノイズに似たノイズが結構な音量で聞こえてくるのが特徴だ。一般的に電子機器は「ボリュームゼロ=無音」と思うはずなので、これにはかなり違和感がある。慣れの問題かもしれないが・・・。

低周波増幅はD級を採用しているらしいので、これに起因するものかもしれない。オーディオをやられる方はよくご存じのように、D級増幅は、オーディオでいうところのA級やB級増幅とは全く概念が異なるデジタル増幅である。電圧が0と1の矩形波のパルスに変調をかけて増幅を行うものだ。当然ながら、高周波の方の変調もD級増幅回路になるので、再生時に絞っても音量が残るというのは、高周波変調時入力レベルと関係があるのかも知れない。



8Chでオンエアを開始してみる。反応はない。この横根高原は、駐車場からそれぞれ10分ないし20分の範囲に、象の鼻展望台や、横根山山頂、方塞山山頂といった飛び受けの良い場所があるが、意図的に飛び受けが劣る駐車場そのものを選んでいる。実験のためにはある程度飛び受けが良くないといけないが、良すぎてもいけない。制限をかけることで限界ギリギリの信号も聞けるかもしれない・・・という余計な配慮だ(笑。

それにしても誰も応答がないということは、運用局が少ないのか???祝日とはいえ月曜日だし・・・・と思いきや、全くの大ボケの大間違いだった(笑。CQを出してから5分ぐらいして気づいたのだが、ボリュームが全く上がっていなかった(爆。いつものようにサーと適度に聞こえているので、応答がないものと勘違いしていたのである。ボリュームを上げて、あわてて再度CQを出してみると、すぐさま応答がある。『さっきコールしたんですけどね~、応答がなかったんですよ』、とはつながったサイタマHK118局、霧降高原移動の弁だ。申し訳ない!HK118局!完全に無視してしまったことになる。HK118局には事情を説明、平謝りだ。(皆さんも気を付けましょう!・・・って、こんな大ボケするのは当局ぐらいか?)

RSは57/57、変調もクリアだ。HK118局もSR-01をお使いということで、いきなりSR-01同士のQSOとなる。低周波再生音に関しては、きわめて聞きやすい。聞こえ方は定評のあるICB-770と同等かそれ以上である。中低域に厚みがあり、線が太く、聴き疲れしない音である。信号がない時のサー音ノイズとは全く裏腹である。低周波出力も強力で、一般の使い方ではおそらく半分以上ボリュームを回すケースはほとんどないのではないかと思われる。もっとも、中低域が厚い分、入力が強い信号でボリュームを上げすぎると(半分以上回すと)筐体の鳴り(ビビり)が時々生じるようではある。音質を重視する中型のラジオ等では、スピーカーにおける吸音材同様に、スポンジシート等を筐体内に挿入して少しでもビビりを防ごうとするものもあるが、これは無線機なのでそこまでやる必要もないという判断だろう。いずれにせよ普通に使う分には全く問題となるような話ではない。


TNX!!! KM08局!!

続けてCQを出してみる。

コールをいただいたのはあんなかKM08局だ。お~なんということだ、ここでKM08局さんとつながるとは、神の思し召しか?(笑。新幹線の安中榛名駅近辺からQRVされているようだ。KM08局さんとQSOしたのはこれまでに2回ほどだが、二つとも記憶の底に焼き付いている。最初は沖縄の南大東島から(2010年)、そして二回目は翌年の西表島からのQSO(2011年)だ。最後のQSOから5年だろうか?、実は当局はその後も一回QSOしたようなあいまいな記憶もあったのだが、KM08局さんの方がよく覚えておられ、最後は西表島だったとのことだ。まさか今日グランドウェーブでつながるとは・・・。しかもちょうど撤収されるところだったという。過去僅かに2度のQSO、しかもEsによる超短時間のQSOでありながら、懐かしい旧友に再会できた時のようなうれしさがこみあげてくるようなことがCBの世界以外にあるだろうか?KM08局さんも『この趣味をつづけていてよかった』、と言われている。ん~全く同感、感謝の一語に尽きる。


恐るべき性能

 

いよいよ比較の開始だ。SR-01の隣に707そして、ドアミラーに立てかけるように87Rを待機させる。87Rは今回は新技適機をチョイス。

おおさと59局は、北奥千丈岳(山梨県山梨市、標高2,601m)に移動されているようだ。イベントデーでもないのにずいぶんとFBな場所に移動されているものである。RS55/55。試しに707で受信してみると、Sメータは1である。Sメータの振れで、リグの感度は比較できないが、耳SではSR-01は、メーター通り、707は53程度で、聴感上も明らかにSR-01が上回っている。正直これほど差がつくとは思ってはいなかった。新技適87RではRS52/52、耳Sでは707と同様53程度である。明らかに87Rも上回っている。ICB-770同様、余計なノイズを再生しないので、ノイズとともに音量が上がってくる707などより信号が際立つため、聴感上はS/Nが高く感じるため余計に感度が高いように感じられるのかも知れない。

続いて、ねりまTN39局にコールをいただく。埼玉県飯能市の子の権現からだ。SR-01では53/53でFBに聞こえてくるが87Rではメーター読み51。こちらからの送信も87Rに切り替えてみると『いきなり42に下がりましたよ』、とのことだ。言葉の雰囲気からすると、かなり落差があるようだ。実は、比較目的で切り替えたのではなく、SR-01の電源がいきなり落ちるという不具合があったので、急遽87Rに切り替えたのである。(リグに原因があるのか、外部電源に原因があるのか不明)

いずれにせよ、単にメーターの違いではなく、聴感上も明らかに差が出る。恐るべきSR-01だ。

こちらからの変調はどうなのか?各局から、「いい音ですね」、と言われる。深くて聞きやすいようである。こちらからコメントを求めていなくても、そういうインプレッションが自然に返ってくるので、まあ本当にそうなのだろう。

今日は天気は曇り時々晴れのはずだったが、大はずれで、到着後一時間程度は雲間から青空も見えていたりしたが、その後は濃霧の中で全く視界が効かない。リグが濡れるようには感じないが、空気中の細かい水の粒が肉眼でも見える。アンテナには水滴がたまるので、SR-01は霧の加減を見ながら、車にひっこめたり出したりしながらの運用だ。ということで実験もなかなか思うように進まないが、主に受信側のRSは次のような感じだ(カッコ内は比較リグとメータ読みS/耳S)

  ■ さいたまUR2局(移動地メモ忘れ) RS51 (87R、1未満/カスカス)
  ■ さいたまFL20局 (埼玉県東秩父村二本木峠)RS56 (707、2/3)
  ■ さいたまMK2局(埼玉県ときがわ町弓立山)RS56 (707、3/4)
  ■ とうきょうMG59局(東京都八王子市長沼公園)RS51 (87R、0/殆ど入感なし)

SR-01のアンテナは先端部までかなり太く、87Rのようなひ弱な感じは全くない。770より以上にしっかりしている感じでFBなアンテナだ。締め付け機能(角度固定機能)も大型のノブによるもので、調整は容易だ。しかも、一旦好みのトルクに設定してしまえば、展開、収納時にいちいち回して調整する必要はないのでラクチンである。よくできている。

飛び受けが良いのは、大型のベースローディングコイルで、きっちり設計・調整されているからだろう。さすがに現役CBerが性能オリエンテッドで設計されているだけある。これはアンテナの勝利だ。


他の機能は?

フィルタレーションやRITはどうなのか?実はこの二つの機能については、本当に必要なのか個人的には少々懐疑的だった。当然ながら、通過帯域幅は広いほうが忠実度、ひいては了解度(Readability)が上がるので、フィルタリングによる近接妨害波からの選択度向上は忠実度とはトレードオフの関係にある。隣接周波数帯に占有幅が狭い信号がひしめくCWならいざ知らず、果たして電話のダブルサイドバンドで、狭帯域フィルターなど必要なのだろうか?というのが当局の疑問だった。特にCBの場合は41、51といったレベルの微弱信号の中身を「理解」する必要があるので、Readabilityがものをいう場面が多い。選択度という意味では、ある意味「耳フィルター」というのも存在する(笑。しかもCB帯では、違法局などは隣接周波数というより何十キロヘルツにもわたる汚い電波の場合が多い。RIT機能についても、どれだけ周波数がずれた信号、もしくはずらす必要性が存在するのかは、これまでCB機では経験がないので、今のところその必要性はよくわからない、というのが正直なところだ。

今回ごく短時間運用してみて、違いが確かに出るという意味でその効果は確認できた(世の中にはスイッチはあっても、なくても全く一緒ということがよくある)。フィルターとRITの組み合わせで、ピープー音などはほとんど軽減できるし、隣接信号の混信もある程度カットできる。フィルターを狭帯域にするとその分エネルギーの総和は減るので当然明瞭度は下がるのだが、SR-01の場合はそのデメリットはあまり感じない。そういう意味では、よくできているのかも知れない。

別に消極的な意味合いではないが、これらの機能は、やはりないよりあった方が良いわけで、いずれ活躍する日やCB独特の使い方も出てくるのかも知れない。




SR-01の定格入力電圧は6V~15Vである。取扱説明書によれば、電源電圧9V時の消費電流は変調時400mA前後、受信時音量最小時で120mA前後だ。電流値だけを見ると、動作電圧が低いこともあり、数値は多めだ。12V動作のCB機に比べると、2倍くらいの値だ。したがって、できれば外部電源にするか、内蔵電池動作にする場合は、ニッケル水素電池等を使用した方がよいかもしれない。乾電池は内部抵抗が大きいので、電流が多くなるほど不利になる。電池内部で電力を消費してしまう。変調時の400mAという電流は、例えばEsでついつい声を張り上げてしまうような時はもっと電流は流れてしまうわけで(笑、乾電池ではちょっとしんどい電流値である。少し話が逸れるが、街に電気を送る巷の高圧線がなぜ高圧なのかと言えば、発電所から何十キロ何百キロ離れたところに電気を送るのに低い電圧ではその分電流が大きくなり送電線の抵抗による電力ロスが大きくなってしまうからである。したがって電圧を極力高くすることで電流値を下げているのである。電力ロスは電流の2乗に比例するので電流を半分にできれば電力ロスは1/4になる。送電線も電流を減らせばその分細くて済む。コストも安くなり、雪害に会わなくなったり、軽くなった分それを支える鉄塔の設計も楽になったりする。電池の内部も、無論、送電線の一部である。

従来のCB機は12Vが一般的だ。電源電圧をある程度高く設定すれば電池も多数必要になるので、電力容量も大きくなる。つまり、一回の電池交換で使える時間が長くなる。一方で、直列に電池が多数必要になるのでその分内部抵抗も大きくなる。その点、昔の乾電池の性能を考えると従来の12Vという動作電圧は、ちょうどバランスの取れた電圧だったような気もする。

今回は途中から、内蔵式の乾電池使用に切り替えてみた。電池は東芝ブランドの新品アルカリ電池で使用前は1.59Vだ。乾電池では6QSOを実施、リグは車に引っ込めたり出したりの断続運用で、ワッチ時間を含めて通算1時間15分程度の運用だ。運用後十分に時間をおいてから(二日後)電圧を測ってみると、1.47V、6本で8.82Vといった感じだ。

今回の運用ではすでに4局さんがSR-01を使用されていた。これまでEsなどではICB-770をメインに使われている局長さんが多かったが、今後第二ロット、第三ロットと出荷されるにつれ、このリグがデファクトスタンダードになってきそうな気がする。CBシーンを大いに盛り上げてくれることは間違いないだろう。


18QSO TNX!!


 





運用データ


■運用日時・運用場所:

 
 ・2016年10月10日(月、祝日) 9:30~14:10 
       栃木県横根高原(標高1,315m) 
  

■使用&装備リグ:
  CB : SR-01(サイエンテックス)、ICB-707(SONY)、ICB-87R(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ(ダイヤモンド)
  
■使用電源
  ・リチウムイオン電池、乾電池





QSO局
18QSO TNX!!  
(敬称略)

10月10日(月、祝)   
サイタマHK118/栃木県日光霧降高原  57/57 あんなかKM08/群馬県安中市安中榛名駅近辺 54/54
おおさと59/山梨県山梨市北奥千丈岳 55/55 ねりまTN39/埼玉県飯能市子の権現 53/53
とちぎSA41/栃木県日光霧降高原 57/57 ヒョウゴAB337/埼玉県飯能市子の権現 53/53
さいたまUR2/ 51/51 かながわCE47/神奈川県相模原市城山湖 53/52
さいたまHL20/埼玉県東秩父村二本木峠 56/55 グンマTO539/群馬県館林市(DCR)  B1/M5 
まつもとHN50/長野県八ヶ岳白駒池(DCR)  M4/M5  さいたまMK2/埼玉県ときがわ町弓立山  56/54 
とちぎSA41/栃木県日光霧降高原(DCR)  B3/M5  とうきょうMG59/東京都八王子市長沼公園(DCR)  B1/M5 
とうきょうHY26/埼玉県所沢市ぶどう峠 51/51  とうきょうMG59/東京都八王子市長沼公園 51/51 
さいたまBB85/栃木県佐野市みかも山 55/57 ぐんまRY28/群馬県前橋市赤城山麓 53/53
*:DCRの「B数字」は、傘マーク+バーの数(B3でフルスケール)


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