2016運用記
月山 (秋オン)
山形県鶴岡市・庄内町



[静かに風に揺れていた]




雲の峯幾つ崩れて月の山 (芭蕉)

「おくのほそ道」によると、芭蕉が参詣の装束に身を包み月山に登ったのは旧暦の6月8日(新暦の7月24日)のことだそうだ。「氷雪を踏みて」登ったらしいので、当時も今とかわらず、雪が遅くまで残っていたのだろう。しかし周りの空気はすっかり夏、登る途中の昼の空には入道雲がにょきにょきと湧き出でていたのに違いない。芭蕉は、昼間の入道雲とは対照的な、月齢6日の山頂で一夜を過ごし、翌日湯殿山側に下山したらしい。

芭蕉がこの地を訪れたのは1689年のことである。それから現在までの時間は「わずかに」327年間だが、芭蕉が訪れる800年以上前から、この三山(月山、羽黒山、湯殿山)は人々の崇拝を集めてきたのである。(記録に残っていない範囲では、それ以前からだが)

本来、月山山頂からのQRVは今年のSV(7月31日)で計画していたのだが、諸般の事情により、蔵王に切り替えたという経緯がある。今回はその代わりとして秋オンで実現させようという魂胆である。SVのとき、蔵王から見た月山は、山容のスケールが壮大だった。芭蕉が7月(新暦)になっても「氷雪を踏みて」、と記しているように、斜面にはまだたくさんの雪が残っていた。実際月山スキー場は、7月まで滑走することができ、日本では最も遅くまでスキーができる場所のひとつで、エキスパートのトレーニング等には貴重な場所である。


 蔵王/熊野岳から見た月山:
大きな山容だ。7/31日、SV時に撮影




このところ日本列島に沿って秋雨前線が停滞している。小雨の中、頂上を目指して登っていく。高山植物の時期はもちろんとうに過ぎているが、登ってくる道すがらには、エゾオヤマリンドウ?がそこかしこに群生しているのには驚きだ。秋の長雨で目にはさやかに見えねども、頂上付近の低木の葉はすでに色づき始めているようだ。

 
 
   


雨の秋オン?

12時過ぎに山頂神社までやってくるが、天気は相変わらずの小雨の中だ。もとより、この天候は想定の範囲内だが、この分だと11mの運用は厳しそうだ。隠れる場所もない。とりあえず、神社脇のベンチにリュックを下ろし、87RでCQを飛ばしてみる。たまたま、小雨が一瞬、停まった感じだ。運よく、さっそくみやぎHO40局にピックアップいただく。登る前にネットで確認したところでは、今年の秋オンでは土日に移動される局がほとんどのようで、とすると、日曜日の午後からというのはもうすでにOADも終了時間間近ということになる。敬老の日が第三月曜になってからというもの、秋オンの日程がどうもハッキリしない。土日なのか、日月なのか???、ルール通り日月(敬老の日前日21時~敬老の日15時まで)と確信して移動してきた当局は、きっとオオボケなのに違いない(笑。

一見、雨は停まったかのように見える。伸ばした手のひらが濡れるようにも感じない。しかし実際には、真っ白な空からはかなりの「水」が落ちてきているのだろう、わずか1QSOの間に、87Rのアンテナは水滴だらけ、根元からは早くも水がとめどなく滴り落ちてくる。ん~やはり、11mは厳しすぎか?こんな雨のときこそDCRの出番だ。当局的には普段はCBメインの運用で、DCRは運用上どちらかというと付け足しなのだが、今日こそ脚光を浴びる番?である(笑。11mは、今回はICB-R5も持参してきているが、取り出すなどもっての外、ザックカバーに守られた、ザックの中で眠っていてもらう以外にない。87RもHO40局との1QSOで早々に撤収である。

雨が停まったかに見えたのはやはりほんの一瞬だった。雨が再開する。音が聞こえるか聞こえないかぐらいの静けさだが、しとしとという表現がぴったりの永続性がある。

DCRはSVに引き続いて、今回もアンテナは350DH、1/2λホイップだ。OAD終了間際とはいえ、鳥海山の湯の台登山口にはニイガタAA462局が、福島県二本松市の麓山(はやま)にはふくしまFD55局、福島市の天井山にはフクシマJM700局などがまだ展開されている。といっても各局、もう撤収間際のようである。その後はつながるのはほとんどが固定局か、モービル局だ。OADとは思えない寂しい移動状況だが、この天候、この時間では致し方ないところである。2時間ほど運用して、早々に山小屋に撤収することにする。





秋オン 本番??





今日もDCRで・・・

本来?なら、今日がOADの本番のはずだが、実質的には昨日終了してしまっているので、今日運用するのはCMの合間の方とか、昨日はOADで不完全燃焼といった方々だけである。しかも、今日も明け方から小雨。というより昨日から「ずっと」である。果たして運用局は出て来られるのか?(笑。天気に関しては、二日目は大陸からの高気圧がもう少し早い時間に前線を下に押し下げてくれることを少しだけ期待していたのだが、残念だ。雨なので今日もDCRメインになる。幸いDCRは固定局やモービル局もおられるので11mよりは、はるかに交信確率は上がるのが唯一の救いだ。

6:20分、OAD?にしては、かなり遅めのスタートだ。それでもどっこい、一発目のCQで応答がある。昨日つながった、ふくしまFD55局だ。昨日は福島県の麓山に移動されていたはずだが・・・。FD55局もご他聞にもれず、基本的に昨日でOADは終了、今日はCMで、朝8時の会議に呼び出されたということで、なんとつながった場所は山形県の鶴岡市モービルだ。ということは朝早く福島を出られたに違いない。どうも、今日はOADの残党がいるかもしれないということで、モービルアンテナを取り付けてウォッチしながら移動されてきたようである。0.2Wながらフルスケ入感である。

OAD終了翌日の、しかも二日連続の雨という天気で、一発目のCQは全くテンションがあがらなかったが、すぐに応答が有り、しかも昨日つながったばかりのFD55局ということで話しもはずみ、俄然元気がでてくる。現金なものだ(笑。



しかしDCRとはいえ、呼び出しチャンネルで、再三CQを出すのは気が引ける。基本的に20~30分毎に一回のCQだ。その間は、神社の片隅でレインウェアに包んだ体に頭を下げて、じっと雨を耐え続けることになる。朝の早い時間は当然ながらほとんどまったく登山者はやってこない。山頂神社にはおのずと一人だけの静かな時間が流れる。ガスは峰を越えて、勢いよく右から左へと流れていく。自分は今なぜここにいるのだろう?、といった不思議な思いも浮かんでくるが、普段の喧騒の中ではそんなことを考えている暇もないので、むしろ良い機会なのかもしれない、と思ってみたりもする。われながら実にポジティブ志向だ(笑。

CQもあまり出さないので、つながるのは一時間に2~3局程度だ。ミヤギFT161局は、宮城県大崎市、ニイガタMS763局は新潟県佐渡市からといった、固定局とのQSOがメインだ。

三川町からはヤマガタAC130局からコールをいただく。フルスケだ。AC130局の場合は、今日も「OAD」の続きのようで、これから鳥海山の湯の台登山口に移動されるところらしい。昨日ニイガタAA462局が運用されていたロケだ。ヤマガタTR839局と合同運用されるらしいので、なんとか到着までがんばって、11mも試したいところだ。なにせ、これまでのところ、二日がかりで11mでのQSO数はわずか1QSOのみ、このままでは当局にとっては、前代未聞の「OAD」ということになってしまう。

今日も昨日と同様、基本的には小雨、時々霧雨に変わり、そしてほんの時折その霧雨が停止するといったサイクルの繰り返しに変わりはない。したがって今日もR5はザックの中、ただし、87Rは雨が停止したときにいつでもゲリラ運用できるよう、ザックから出して防水袋に待機だ。雨の停止する時間はごく短期間、サッとすぐに取り出して運用できるようにしておく必要がある。


AA169局と11mにて

最後のCQから何分すぎただろうか。久しぶりに雨に打たれた体を起こし、DCRを手にしてCQを出してみる。・・・来ました来ました、イワテAA169局からのコールバックだ。『ここまでくれば月山とつながるだろうと思って出てきましたよ』、といわれるAA169局は岩手県奥州市の阿原山高原からだ。もちろん当局だけが目的ではないにせよ、わざわざ移動していただいたようで、全くありがたい話しである。(TNX!AA169局)ひょっとしたら、朝一で「月山山頂運用中」と、リアル板にインプットしていたのもよかったのかもしれない(笑。SVに引き続き、今回ももっとイワテステーションとつながることをひそかに期待して移動してきたのだが、昨日といい今日といいこの天気である。しかも昨日は結果的に完全に出遅れてしまった。

AA169局とは、7月初めの沖縄運用時に伊平屋島からつながったのが最後だ。沖縄移動最終日、しかも月曜日の朝につながったのは印象深いが、SVで蔵王に移動した際には、期待しつつも残念ながらタイミングが合わずつながっていなかった。DCRで、沖縄運用時の話しなどしつつQSOしていると、折りよくほとんど雨が停止してくる。AA169局には、半ばお願いするように11mに移行させてもらいQSOを敢行する。

11mでは、なんとOAD2局目(笑、RS52/52だが、阿原山からはSメータ以上に強力に変調が入ってくる。いつもは当たり前のようにQSOしているCBだが、これほどまでにQSOにありがたみを感じるのは久しぶりのことだ。(TNX!AA169局)しかしロングにQSOしている時間はない。再び雨が降り始める。AA169局にファイナルを送り、急いでアンテナを畳む。アンテナはそれでも、既にびしょ濡れだ。

 視界も全く利かず・・・

朝10時頃まではガスが晴れて視界はまだ良かったのだが、それ以降は完全に霧の中だ。ただ、それと引き換えに、11時を過ぎてからは、むしろ雨が止まっている時間が少しずつ長くなってくる。それでも5分が限界だが、息せき切ってCQを出していると、ほんのかすかに誰かが応答しているのが聞こえてくる。でもさすがにこれはちょっと厳しいか?半ばあきらめつつ87Rのボリュームを9ぐらいまで上げてねばってみると、ようやくコールサインが確認できる。11mは今まで全然ウォッチできていないので全然分からなかったが、コンディションはダイナミックレンジが非常に広く良好な状態で、これが幸いしたようだ。呼んでいただいていたのは、いわてAG22局だ。盛岡市郊外の天峰山からのようだ。普通は「テンポウサン」といわれてもどこだか全く分からないはすだが、幸い2014年のGWのOADで岩手県の新山から運用したときに天峰山とつながっているので、だいたいのロケはすぐに頭の中に浮かぶ。盛岡市中心部からは結構離れた東北側のロケのはずだ。

信号としてはカスカスのぎりぎり限界のところだが、このCBの聞こえ方はやはりたまらないものがある。自虐的ながら、この限界すれすれの信号をうまく拾えたときの聞こえ方や感覚が、CBの醍醐味のひとつのように思われる。昨日からDCRでずっとQSOしてきているので、余計にそう感じるのかもしれない。

11mでは、やまがたAA21局のCQも捉えることができた。当局の頭の中ではなぜか以前から、ヤマガタ=AA21局というコールサインの図式が出来上がっており、このような状況で11mで交信できたのは非常に光栄に感じる。

月山は、人気の山で、手軽に頂上までいけるので、夏場は相当の人出だ。今回は雨の運用となったが、次回はぜひ展望の利いた、入道雲の沸き立つ夏空の下で運用してみたいものである。できれば夏スキーも(笑。

29QSO TNX!!


山頂より:姥ヶ岳方向からの登山道が見える。斜面は色づき始めている。
 





運用データ


■運用日時・運用場所:

 
 ・2016年9月18日(日) 12:20~14:20 
  ・2016年9月19日(月/祝) 6:20~12:10 
     
山形県鶴岡市・庄内町 月山
山頂(標高1,984m) 
  

■使用&装備リグ:
  CB : ICB-87R(SONY)、ICB-R5(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/2λホイップ(ダイヤモンド)
  特小: DJ-R20D(アルインコ)
  
■使用電源
  ・リチウムイオン電池、乾電池





QSO局
29QSO TNX!!  
(敬称略)

9月18日(日)   
みやぎHO40/宮城県大崎市加護坊山  51/51 やまがたAB51/山形県天童市(DCR) M5/M5
ニイガタAA462/鳥海山湯ノ台口登山口(DCR) M5/M5 ヤマガタTR839/山形県鶴岡市(DCR) M5/M5
ふくしまFD55/福島県二本松市麓山(DCR) B1/M5 フクシマJM700/福島県福島市天井山(DCR) B1/M5
いわてDE56/岩手県平泉町(DCR) B2/M5 ヤマガタTA960/山形県鶴岡市(DCR) B3/M5
やまがたSA88/山形県寒河江市(DCR) B3/M5 ヤマガタRY325/山形県山形市(DCR)  B3/M5 
ミヤギOS147/宮城県大崎市古川(DCR)  B2/M5  ニイガタAS59/新潟県新潟市西区M(DCR)  B2/M5 
ふくしまZC72/福島県田村市大曾根山(DCR)  B2/M5     
9月19日(月)
ふくしまFD55/山形県鶴岡市M (DCR) B3/M5 ヤマガタRY325/山形県東田川郡三川町 (DCR) M5/M5 
ミヤギFT161/宮城県大崎市古川(DCR) B2/M5  ニイガタMS763/新潟県佐渡市(DCR) M5/M4 
ヤマガタAC130/山形県東田川郡三川町(DCR) B3/M5  ニイガタAA462/新潟県新潟市秋葉区(DCR) B2/M5 
にいがたAS59/新潟県新潟市南区(DCR) M5/M5   やまがたAB51/山形県天童市(DCR) M5/M5 
イワテAA169/岩手県奥州市阿原山高原(DCR) B2/M5  イワテAA169/岩手県奥州市阿原山高原 52/52 
ヤマガタAC130/鳥海山湯ノ台口登山口 53/55  イワテTK174/岩手県一関市 53/54 
ヤマガタTR839/鳥海山湯ノ台口登山口 53/54  いわてAG22/岩手県盛岡市天峰山 41/51 
やまがたAA21/ 54/53  ミヤギRK128/宮城県大崎市加護坊山(DCR) B2/M5 
*:「B数字」は、傘マーク+バーの数(B3でフルスケール)


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