高見山運用 |
目的地変更
11月18日は、13時からの伊勢湾ロールコールチェックインも兼ね、三重県最高峰(県境を除く)といわれる桧塚奥峰(1,420m)から運用してみることにする。
6時25分、ずいぶん遅くなった日の出の時刻の頃、湖そして渓流沿いの林道を遡って、桧塚への登山口に着いたときは、まだ少し残った紅葉が確認できるほど、もうすっかり山々の木々は姿を現していた。ただ、空全体には暗い雲がかかり、低く山の上部にまでも垂れ込めた灰色の雲は山を掠めながら、千切れながら右から左へと次々と流れていた。時折雨もぱらついてくる。
車の中で、一瞬、このまま登ろうか登るまいか戸惑う。そんな迷いのせいか、さっきから車で移動しながら林道を行ったりきったりするが、どうしても登山口が見つからない。ガイドの地図と、地形を刷り合わせると、確かに似てはいるがどことなく違う。駐車場とおぼしき場所は類似しているが、ここには沢と沢の出会いがあるのに地図にはない。たかをくくって2万5千分の一の地図を持ってこなかったのが災いしたか。
あれこれ迷って7時10分を回る。学生のときの試験もそうだが、こういうときの時間は経つのが異様に速い。少々焦りが募り始めた時、もしや!と思い、カーナビの地図を縮小してみると、予感が的中した。なんと林道を一本間違えて遡上してきている。これでは目的地の山の裏側にいることになる。カーナビの地図を見るとナビのゴールは正しく設定されているが、林道が私有林にあるためか、林道の分岐の手前でカーナビの案内が終了してしまっている。間違っているのも知らずにその分岐から一本手前の林道を思い込みで走り込んできたことになる。林道を戻って、正しい林道に入りなおすとおそらく15kmのロス、うまく山歩きに出発できたとしても、予定より1時間15分ほどのロスということになる。山登りは2時間だが、ただでさえ日没が早いのにこれでは、運用時間がかなり短くなってしまう。車で考えあぐねている間に、空もいっそう怪しくなってきた。これは更なるお手軽登山(ハイキング)で時間を稼ぐしかないと判断、潔く、以前から下調べ済みの奈良県との県境の高見山(1,248m)に目的地を変更する。高見山なら駐車場から50分で登れるし、運用中に天候が急変しても、すぐに小屋に退避できる。カーナビでも26Kmの近さと出てくる。
山道を登りながら考えた......越後屋か?
駐車場には8時前に着いたものの、外に出ると(出なくてもわかるが)風がまるで台風そのものだ。これで本当に山頂運用なんてできるのか?と思いつつ、しばらく車の中で待機する。待機したところで、天候が好転するはずもなく、しかたなしにいつもとは違い重い気分で準備を開始する。いつもより遅々とした足取りで、鳥居をくぐって登山口の階段を、一応頂上へと登り始めてみた。
「お前も悪よのう...。」というのは、悪徳代官が、越後屋に向かって言う、いつものせりふだが、「お前もアホよのう....。」と自嘲しながら、風と梢が織り成すざわめきの山道を、一歩一歩登っていく。雲の加減か、時折氷水のような冷たい雨がパラつく。色を失った景色の背景が、余計に冷たさを倍加させていた。振り返ると、登る予定だった桧塚奥峰や、池木屋山は、ほとんど灰色の雲とガスに覆われている。おそらく山頂はかなりの視界不良だろう。
高見山(7:43)1月ちょっと前にどこかで見たような光景。アプローチする時点で、高見山は上半分、すっぽり雲(ガス)に覆われていた。天気予報は大ハズレ。当局の普段の行いが悪いのか? |
振り返ると...濃灰色の雲が次から次へと流れていた。桧塚(1,402m)・桧塚奥峰(1,420m)方面の山頂は小雨だろうか。写真正面は迷岳(1,309m)。(三重県側) |
神が坐す山頂
高見山は1年前に運用した三峰山同様、冬季の霧氷で有名な山で、夏よりも冬のほうがハイカーが多いと言われるほどの一風変わった山である。山頂は狭いが、高い木々もなく展望は360°開けているので、アマチュア無線でもそこそこ知られた移動場所でもある。FBな展望台が山頂より5mほど下にあるが(山頂は社があり神が祀られている)、とてもではないが、あまりの風の強さと寒さで、展望デッキに限らず、風が当たる場所では文字通り1分とは持ちこたえられない。ところが山頂の社の隣は、社がちょうど北西からの風の盾になって、なんとか我慢して運用できそうである。胸の高さほどに、金属製の山名案内板もおあつらえ向きに設置されている。「神は我に味方したか!」.....寒さで半分イカレてしまった頭(元からか?)で考えながら、707を設置。ウォッチに入ると、ノイズ加減からある程度のアース効果もあることがわかる。しかしリグを常に片手で押さえていないとすぐに吹き飛ばされそうになる。(現に昼飯時に、吹き飛ばされることになるのだが...。)
手袋と、スキーウェア、そして今日こそは、と持ち込んだ使い捨てカイロ3枚を装着、それでもないよりはまし、というほどの効果しか感じられないほど、風が容赦なく体温を奪っていた。
山頂神が坐す、小さな社 |
神のご威光は...裏側の山名表示板(右端の石積み)の上で運用 |
四国は聞こえるか。
9:15分過ぎにオンエアを開始、すぐに、名古屋市北区庄内川移動のなごやAD144局にピックアップしていただいたものの、その後30分、空振りのCQが続く。こちらのお空も今日一日お寒い状況を予感させた。日曜日の朝だから出足が鈍いのはわかっているつもりでも、この寒さが余計足を鈍らせているのだろうか。そういえば、「15時まで晴れ」という昨晩までの天気予報は大ハズレだ。そんな同じように寒い中シズオカAD964局は、朝から三ヶ根山でがんばっておられた。続いてつながった、奈良県御所市の山に移動されているオオサカHNC24局によると、ロープウェイの支索まで、強風で横揺れしていたという。
HNC24局が50mW機を試されるというので、信号を確認してみる。Sは500mW機(ICB-707)より1〜1.5落ちるものの、なんら不都合はない。変調音も聞きやすい。使用機はRJ-8だそうで、TX時はスピーカーをマイク代わりに使うタイプとのこと。そういえば、確かに昔なつかしい、ダイナミック(スピーカー)系の変調音である。
QSOの合間に東の方に目をやると、釣鐘型の尼ヶ岳やこの日の移動候補地の一つだった大洞山が寄り添うように仲良く見えていた。さっきからあちらのほうは日が射しているようで、そこだけ明るく光っている。神社のおかげで、風はある程度回避できるものの、強風のせいで周りの木々の枝のざわめきが、もはや騒音に等しかった。トランシーバーの受信音もかなり音量を上げないと聞き取れないくらいである。イヤホンも試してみるが、Sメーター感度が若干落ちるようなので、スピーカー運用を続行する。
しばらくすると、とくしまMX21局のCQがFBに入感してきた。HNC24局が応答されているのでしばらく聞いていると、ミマシ、コヤダイラという場所に移動されているようだ。当局はまったく土地勘がないので、徳島のどのあたりだか分からないが、後に交信いただくと、標高1,000m近辺の峠(美馬市木屋平)からでておられるとのことだった。RSは51/53。更に高い場所まで移動できるようで、なかなかFBな運用場所と思われた。後から気づいたことだが、この日の当局の707はなぜかSメーターの振りが鈍く、同じ場所でも総じて87RよりSが2〜3程度低かったように思われる。87RではおそらくS4位振っていたのではないか。徳島側はちょうど神社の反対側で、もろに建物の陰になるのだが、建物の反対側の障害物のないところよりも、神社の影の方がFBに入感してくるから不思議だ。これも神様のご威光か?
しずおかDD23局、申し訳ない!
ひざをカタカタ震わせながら、3ChでヒョウゴAB245局/宝塚市と1stQSO、前回と引き続き交野市交野山にQRVされている、きんきCJ86局とQSOしていると、時々合間に何やら運用局が聞こえてくる。朝からめずらしく8Ch、6Chあたりで業務局が聞こえていたので、まさかこちらからは届いていまい、と気にも留めずに運用をつづけていると、なんとしずおかDD23局だった。(当局の確認不足により、QRMを与えたこと、この場を借りてお詫びいたします。)運用場所は富士山の2合目とのことで、まさか富士山、しかも2合目から聞こえてきていたとは思いもせず。
海外局がちらほら聞こえていたものの、この日のコンディションはノイズレベルも僅少で大変聞きやすい状態だった。早めに到着して、伊勢湾ロールコールの準備中だったイワテB73/2局、愛知県豊田市猿投山展望台よりコールを頂く。展望台下の駐車場からパーソナルでもガンガンにQSOできていたが、CBはそれに勝るとも劣らない強さで入感してくる。いくら見通しとはいえ、B73局の標高は470m程度、距離は130Kmくらいは離れているはずだ。しかし、ライン入出力でトランシーバーがつながっているのではないかと思われるくらいノイズレスで強力、マジで周りを見回したがそこにB73局がいるはずもなかった。59+20dBは振っている。こちらからも59+10dBくらいで届いているようで、地上波の直接波は本当におもしろい飛び方をする。73局側では、展望台に設置された丸太を模したコンクリート製の手すりがアース効果を果たしているようで、73局が試しにトランシーバーを上下させながら送信すると、Sメータがそれにともなって、S8〜S9+20dBの間をゆっくり上下する。トランシーバーを上げ下げする姿が目に見えるようである。
12:30を過ぎた頃から、みぞれが降る回数と時間が急激に増えてきた。このまま雪に変わるのだろうか。神社の表側に回ってみると、大阪方面の地面が時折キラリと輝いて見えるが、すぐに真っ暗になってしまう。強風は相変わらずで、一瞬気を許して、握り飯を取ろうとザックに両手を伸ばした瞬間、707は1.2m程の山名板の上から宙に舞っていた。3m位吹き飛ばされたが、幸い落ちたところが地面だったせいか、アンテナも無事でボディの小傷だけで済んで何よりだった。これも神様のご威光か。以降、本格的な雪に備え、いつでも逃げられるよう、すべてザックに撤収、87Rだけで運用を続ける。
猿投山展望台Key局イワテB73/2局による第22回伊勢湾ロールコールが行われた猿投山展望台。(写真は10/28当局運用時のもの) |
尼ヶ岳、大洞山方面冬は周囲の木々が霧氷になる。後ろは、尼が岳(957m)と大洞山(雌岳985m、雄岳1,013m)。(左、木の上) |
更に5エリアと
13:00になり、ロールコールチェックインのためワッチ体制に入っていると、ヒョウゴAC315局/六甲山と、かがわHC18局/香川県讃岐市のQSOが入感してくる。当局もコールすべく両局のQSOの間に神社の周りをウロウロして、ベストポジションを探るが、建物の影でも前でも横でも、ほとんど全く差異はなかった。QSO終了を待ってコールすると、HC18局より応答を頂くことができた。HC18局へはかなり厳しい入感だったようなので、レポート交換を終えショート目のQSOにて失礼する。若干ボリュームをあげねばならないが、こちらではノイズが少ないせいか、問題なくオールコピーできていた。グランドウェーブでは、普段5エリア局とは交信実績が乏しいだけに、この日2局目のQSOができたのは正直嬉しかった。神社の前から、今電波が飛んできた四国方向の空を見遣ると、灰色と、白く陽が射した雲のコントラストが、いっそう濃灰色の空の下に見え隠れしていた。
みぞれが舞う中、1Chに戻ると、B73局のロールコール波は相変わらず強力に入感していた。87Rでは+40dBを振っている。他のチックイン局もほとんど聞こえてくる。あまりの寒さに、『ロールコール時間まで持ちそうにない』、と午前中話していた、ミエBN70局/津市経ヶ峰も、無事チェックインされているようだ。盛況なうちに、ロールコールもひと段落する。
早めに撤収しようかとも考えるが、この日QRVを予告されていた、とくしまYF99局とはまだつながっていなかった。さすがに、もうこの時間になると撤収されたかなと思いながら5、6Chをワッチしていると、YF99局のCQが入感してくる。予告通りであれば、徳島県板野郡大山からの電波のはずだ。コールして、無事応答を頂く。タイミングよくQSOが出来たのは幸運だった。当局側87RではRS41だが、YF99局はRJ-310を使用、といわれている。当然Sメータはないものの、CB機終盤のPLL機だけに、使用している半導体数も半端でないが、あのボディ容積とアンテナの長さからすると、RJ-410シリーズの性能はやはりかなり評価できるものと再認識させられる。
六甲山では、ヒョウゴAC315局と、こうべAA805局が、猿投山からの伊勢湾ロールコール波をキャッチすべく待機されていたが、猿投山からの回折波は今回は残念ながら六甲には入感しなかったようである。
14時を過ぎた頃から、陽射しが少しずつ出てきたように思われたが、早めに撤収することとする。下山途中は、時々雲の切れ目から晴れ間も見えてきたが、風は相変わらずのままだった。朝一番は、寒いお空の状況を予見させたが、結局18局と交信することが出来た。「意地を通せば」何とかなるか?....寒い中移動されていた各局に感謝。
高見山運用データ:運用時間: 9:15〜14:15使用リグ: ICB-707、ICB-87R、PR-6、DJ-R20D |
山道を登りながら考えた...実際、山道(やまぢ)を登っていると、いろいろなことを考えさせられる。漱石はいったい何を考えたのだろうか?(下山時撮影)下りの時はほとんど何も頭に浮かばないのは当局だけか?(笑 |
内蔵型充電池 |
今回、ICB-707用に、先日製作した充電池を使用してみた。3時間半運用、交信局数11局(残り1時間半、交信局数7局は87R使用)で初期電圧12.34V→11.78V。風による周囲のノイズのため、かなり音量は上げていた。リチウムイオンはこのあたりから粘りが出てくるので、5時間半は全く問題なく運用可能と思われる。ちなみに、受信のみ(ボリューム位置9時方向)だと、9〜10時間/1セットは運用可能。今回は2つ電池を準備したが、2つめは当然使うチャンスはなかった。 |