'09/11/03 長野県飯田市 |
光と影
「私は病人の枕もとで、ヒイタアに足を載せながら、手にした本の上に身を屈めていた。
そのとき病人が不意に、
『あら、お父様』とかすかに叫んだ。
・・・・
『あの低い山の左の端に、すこうし日のあたったところがあるでしょう?』彼女はやっと思い切
ったようにベッドから手でその方をちょっと指して、それからなんだか言いにくそうな言葉
を無理にそこから引出しでもするように、その指先きを今度は自分の口へあてがいながら、
『あそこにお父様の横顔にそっくりな影が、いま時分になると、いつも出来るのよ。・・・・・ほ
ら、ちょうどいま出来ているのが分からない?』」
長野県富士見高原のサナトリウムで結核の療養をしていた、「節子」は、窓の向こうに見える低い山の襞に、毎日夕暮れの同じ時刻に出来る影に自分の父親の横顔を見出していた。目に見えて、認識される影は、見る者の願望などの心理状態の投影である。「節子」は、否応にも死を予測させる日々の療養生活の中、会いたい自分の父親の横顔を投影させた。
先月(10月12日)に引き続いて、11月3日のOADも長野県しらびそ高原から運用する。峠道を登ってくると、3週間前に出来上がっていた、山襞の光と影が、同じように同じ場所の山並みに現れる。繊細さのかけらもなく、普段からオオボケの当局は、「風立ちぬ」(堀辰雄)の「節子」のように、同じ長野県の高原の山肌ながら、そこに何も見出すことはできない。しかし、前回とちょうど同じような通過時刻ながら、光が投影される山肌の木々の色づきと、光と影が形成される時間が3週間前より明らかに遅くなっているのが一見して分かる。もっとも、こちらは夕日ではなく、朝日の影だが。
投影 |
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11月3日7:20分前回3週間前に比べ木々が色づいた。前回より遅い時間ながら、光と影の出来上がる 時間も、秋の深まりとともに遅くなった。 |
10月12日7:07分紅葉前。この時間、既におおきな光の造形を造り出していた。 |
ノイズがS3を上回る。 これでは、運用できない。 |
この隣の氷では子供がスケートを楽しむ。 |
シズオカ局
運用局は少ないのは予想通りだが、それにしても、入感局が全くない。やはりいつもの場所とは大違いなのか?10時過ぎ、コーヒーの合間にCQを出してみると、ようやくシズオカAC703局から、いきなり「聞こえますよー」と元気なお声でコールを頂く。AC703局が静岡市の山伏(やんぶし)に移動される情報は事前に掴んでいたが、山伏はちょうど南アルプスの反対側になるので、つながるのか不安もあった。しかし、無事繋がって安心する。当然回折波となるので、距離が近いと逆に回折角度も急峻になるので、むしろQSOは難しくなる可能性がある。
10時半近くになると、それまで静かだった海外局が俄然強く入感しだしてくる。今日は南方系に混じって聞こえてくるロシア局の方が数は多いようだ。ノイズ音が最も少ない、メインでワッチしていた1Chでも強力に入感しだしてくるので、いよいよまともに使えるチャンネルがなくなってくる。
ノイズ音はどうしても消すことはできないが、それでも時々歩き回りながら少しでもノイズが減少する場所を探しながらCQを出してみる。3ChでCQを出すと、ノイズと海外の混信の影で、当局を呼んでいるらしき局が入感する。耳をそばだてて何度かQRZを繰り返すと、熱海市日金山移動のしずおかCE33局であることがわかる。RS31。ジリジリ音の裏でCE33局からのレポートを確認するのに苦労したが、こちらからは51で飛んでいるようである。CE33局も移動される予定は聞いていたので、なんとか繋がってほっとする。こちらも急峻な南アルプス越えだが、よくQSOできるものだと感心する。
同じく静岡県側からはシズオカYM181局にコールを頂く。YM181局は沼津市真城山(さなぎやま)移動だが、56/55で強力に入感してくる。CE33局もYM181局も、同じ伊豆半島上で、どうしてこれだけ受け飛びに差が出るのか。両局とも南アルプス越しの山岳回折で、日金山も真城山もロケ的にはそう大きく変わりそうにないように思えるのだが、YM181局の真城山の方は、駿河湾での海面反射が効いているように思われる。
今日の移動の目的の一つは、北陸RCへのチェックインである。先月は、同じしらびそ高原から京都府世屋高原へのチェックインに失敗しているが、今日は福井県の部子山からなので、間違いなくチェックインできる(笑)。
RCの始まる11:30近くに、RCチャンネルである3Chをワッチしていると、アイチDV65局(小牧市白山峠)が、北陸RCのキー局、フクイZ136局と交信をされているようである。しかし、2エリアながら、DV65局の信号は51程度である。いつものポジションであれば、51ということはないような?ノイズがあるとは言え、やはりロケ(ポジション)的にかなり、いつもの場所よりレベルは落ちるようだ。そういえば、今日は11時を過ぎても3エリアの局が1局も聞こえてこない。京都府の深山では、ヒョウゴAB245局が、兵庫県六甲山ではえひめCA34局が運用されているはずだ。同じ場所でも運用ポジションの重要性を改めて認識させられる。
12時になるとようやく気温も零度まで上がってきた。しかし、息を吐くと、快晴の真昼間だというのに、吐く息が白い。
いよいよ、北陸RCのチェックイン受付が始まった。さすがに部子山のキー局(フクイZ136局)とは53/54でQSOできるが、いつもと違って聞いていても取れないチェックイン局が多い。愛知・三重方面は余り飛び受けが良くないようで、三ヶ根山から運用されていたシズオカAD964局も、ようやく51で聞こえてくる程度である。四日市港近辺からもミエAC130局やミエAA4469局が聞こえてくるが、54~55振ってくるいつもの場所とは異なり、51~52程度の入感である。しかし、このポジションはギフ北部方面には比較的相性がよいようで、アイチAE114局などは54~55で入感してきていた。
今日の撤収時間は12時半を予定していたが、ノイズのおかげで、どうしても物足りなさが残る。13時近くまでリグだけ残して運用してしまうが、結局RC後繋がったのはナガオカHR420局(池田山)とイワテB73
/2局ぐらいである。
いよいよ車に引き上げる段になって、ふと気づくと、皮肉なことにノイズがきれいさっぱり、消えているではないか。山荘での何らかの作業の停止に伴い、ノイズもなくなったようだ。とはいえ、もう引き揚げる時間を過ぎているので、最後にいつもの場所に車で戻って5分だけ運用してみることにする。しかしRC後は各局引き揚げも早かったのか、結局つながったのは池田山のアイチHZ76局のみだった。
今日は湿度がかなり低かったせいもあるが、今後は、このノイズにも十分留意する必要がありそうである(笑)。
('09/11)
運用データ |
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運用日: 2009年11月3日 運用場所: しらびそ高原(長野県飯田市) 7:45~13:05 使用リグ: ICB-87R、ICB-790T |
シズオカAC703/静岡県静岡市山伏 | 51/52 | しずおかCE33/静岡県熱海市日金山 | 31/51 |
シズオカYM181/静岡県沼津市真城山 | 56/55 | アイチDV65/愛知県小牧市白山峠 | 51/41 |
フクイZ136/福井県池田町部子山 | 53/54 | ナガオカHR420/岐阜県池田山 | 52/52 |
イワテB73/2/三重県四日市 | 56/54 | アイチHZ76/岐阜県池田山 | 51/41 |