'09/10/12 長野県飯田市 |
[時間のゆらぎ:このまま眠りにつきそうになる]
二つの目的
10月12日は、特小オンエアデーだが、2エリア近辺は、CBでの北陸RC(京都府宮津市)と伊勢湾RC(滋賀県米原市)が予定されている。今回は二つの目的で移動をかけてみることにした。ひとつは、北陸RCへの260Kmの見通し外からのチェックイン、もうひとつは伊勢湾RCへの100mWでのチェックインである。移動場所は、両方の目標を達成するのに手ごろな、しらびそ高原(長野県飯田市)に定める。
幸い3連休は、土、日と快晴の連続で、本当に家にいるのがもったいないほど、秋らしいスカッとした青空が広がっていた。連休最終日の12日も好天の予想だ。
国道をそれて樹林帯の峠道にさしかかると、目的地である「ハイランドしらびそ」も近づいてくる。紅葉にはまだ少し早いようで、木々の色づきもこれからのようである。峠の途中で車を停めると、山影をすり抜けた光が、朝の山並みに幾何学的紋様を造り出す。
7時10分過ぎに山荘横の駐車場に到着する。気温は4℃。晴れ渡って明るい日差しを浴びるせいか、薄手のダウンを羽織る程度で、心地よい涼しさだ。さっそくテーブルとイスをセットし、リグ……ではなく、コーヒーの準備に取り掛かる。一応リアル板にはQRV情報をインプットしたが、CBのOADとは違うので、こんな朝早くからQRV局があるわけがない(笑)。
どこまでも青く、どこまでも白く
コーヒーを何種類も飲み干しながら、その合間に時々CQを出してみる。コーヒーブレイクとは逆で、CQブレイクである(笑)。もちろん応答局はなく、イスに深々と腰を下ろして、空を仰ぐと、明け方まで輝いていたであろう、半月が、底なしの青空の中にぽっかりと真っ白に漂っている。50Kmほど西に離れた中津川(岐阜県)上空は、東西航空路のひとつのウェイポイント(航空路上の通過点)になっているので、白く銀色の機体を輝かせて、よく飛行機が上空を通りかかる。もっとも、8,000mも9,000mも上空の話だが。
あ~静かだ!これぞ高原の秋!コーヒーをいただきながら、至福の時・・・。CBはどうでもよいから、イスに深く腰を下ろしたまま目をつぶるとこのまま眠りについてしまいそうになる。
見通し外
おっと、そうは言ってはいられない。「成功確率4割程度と思うが、チャレンジするため、しらびそまで移動する」旨、きょうとKP127局(北陸RC、3エリア側キー局)にも昨日伝えていた。
KP127局が運用される、京都府宮津市世屋高原岳山(637m)とは、今年の3月に愛知県豊田市の焙烙山からチェックインに成功している。今回は見通し外からのチェックイン距離を伸ばす(前回203Km、今回258Km)のもあるが、むしろ若狭湾上での回折後(しらびそ高原側から見て)の伝播が、何か好影響をもたらすのかどうか、確認するのが目的である。いつも確実につながるところからチェックインするだけでは面白くない。今回は可能性にチャレンジしてみることにする。
見通し外といっても、一般的に殆どのQSOは、何らかの遮蔽物や障害物の陰になっているところで行われている。そういう意味では、距離の遠近に関わらず、その殆どは見通し外での交信である。したがって見通し外で交信できること自体は普通の現象である。しかし、それを意図的に狙うのは、「たまたま聞こえてくる」のとは大違いで、そう簡単ではない。山岳回折でねらう場合の問題は、ルート上の反射面や回折ポイントの地形や状態が、どのように影響するか読めない点だ。この影響は、カシミールの断面図や、地形図などで見れば、理論的数値はともかく、ある程度の予測は立てられる。しかし得られる情報は乏しい。しらびそ-世屋高原間では、世屋高原側の特定部分が若狭湾上の海面反射になるので、地面に比べれば相対的にこの分のゲインは期待できるが(ただし回折ポイントと送受信ポイントの高さにもよる)、実際にはどの程度なのかはやってみないと分からない。確率4割(つまり失敗する確率が6割)というのは、そのような定性的な判断に基づくものである。
ロールコール |
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北陸RC京都府宮津市世屋高原 岳山(637m)。かなり厳しいが、若狭湾上の海面反射に期待する。 |
伊勢湾RC滋賀県米原市伊吹山(1,377m)。100mWでチェックインを狙う。距離は150Kmもない。 |
運用を開始してから2時間が経過する。運用といっても、10:30開始のRC待ちなので、運用らしい運用はしていないが、北陸RCのため早めに移動されていた、フクイZ136/9局(福井県池田町部子山)にCQをピックアップ頂いた。あちらの天気ももちろん「ベリーファイン」。前回の秋の一斉OAD同様、部子山でも四方に開けた山頂からの景色がきれいに映っているようだった。10時頃になると、そろそろ各局RCに合わせて、運用を開始され始めたようである。RCが行われる予定の3ChでCQを出してみると、京都府南丹市深山移動のヒョウゴAB245/3局にコールを頂く。コンディションは朝から静かで、2Chや5Chで時々海外の南方系の局が、聞こえてくる程度だった。AB245局の信号もノイズレスの中、RS51ながら変調がFBに伝わってくる。
続いて、徳島県のトクシマMN72/5局にコールを頂く。今日は高城山からのオンエアということで、390Km近くあるはずだが、52で、前回の烏帽子岳からの交信時(410Km)より、かなり「強力に」聞こえてくる。旭丸峠といい、高城山といい、羨ましいFBなロケである。
そろそろ北陸RCの開始時間が近づいてくる。準備のためワッチに入ろうとすると、なごやCE79局のCQが聞こえてくる。三重県四日市港から運用されているらしい。これから「三つの場所」で送信を試されるというので、Sメータで比較してみると、確かに明らかに入感が異なる。79局側でリグを空中で手に持って送信した時は52、高さ50cm程の、埠頭の?車止めに置くと55、車のルーフ上に置いての送信だと56+に跳ね上がる。これだけ歴然とした差があると、リグや個別の状況にもよるだろうが、やはりルーフの効果は無視することはできない。当局からの信号は当初55が、ルーフ上では57!まで跳ね上がるとのことであった。
いよいよ11:00を回った。しばらく注意深く音を探ってみるが、何も聞こえてこない… と 突然ギフAA365局の、KP127局を呼ぶ声が入感してくる!
・・・ということは、KP127局はもう送信を始められた、ということである。ん~聞こえなかった!というより、聞こえない。入感がないことは60%の確率で想定はしていたものの、一方で、4割は31くらいのカスカスで入るのではないかと期待もしていた。幸いチェックイン局は、大阪地区の低山移動局も含めてかなり聞こえてくるので、チェックイン局がキー局にコールを返している間に、87R片手に駐車場内を歩き回って、入感ポイントを探し回る。何か信号があるような気配はあるのだが、やはり復調はできない。それでもとにかく入感するポイントはないか、隅々まで歩き回る。気のせいか、キー局のKP127局も、自分の送信時間をいつもより長く取ってくれているようにも聞こえる。それにしても、受からない。車のルーフ上に移した790Tも3Chに切り替えて同時に受信してみるが、やはり信号を捕らえることができない。
諦めずに電波を探し回り続けるが、時間は容赦なく伊勢湾RCに突入していく。結局KP127局の信号を捉えきることはできなかった。最後はあきらめて、どっぷりイスに腰を下ろした。後ろ髪をひかれつつ、伊勢湾RC終了後の交信に一縷の望みをかけることにする。
伊勢湾RC撃沈す!
北陸RCの後半くらいからは、海外局を中心にかなりコンディションは乱雑になってきていた。そんな中、滋賀県米原市の伊吹山から、同じ3Chで、イワテB73/3局による伊勢湾RCが始まった。
RJ-270Dを取り出し、100mWでのチェックインに備える。こちらも恵那山を介した見通し外になるが、距離が150Kmしかないので、さすがにこちらは楽勝だろうと思って聞いてみると、意外と入感が弱い。それでも270Dは51ながらしっかりキー局の電波を捉えている。余裕で呼びに回るが全く反応がない(笑)。チェックイン局が多く、ダブっているせいか?
局数が多いので、キー局は地域別コールに切り替えられた。地域別受付で、「なごや」コールが回ってくるのを待つ。途中、フクイZ136/9局が見かねたのか、B73局に、当局が呼んでいる旨、QSPしてくれている。(TNX Z136局)
いよいよ「なごや」コール受付だが、何度呼べども応答はない(爆)。ためしに87Rの電源を入れて、キー局を聞いてみると、S2しか振ってこない。この頃には海外局とノイズが相当うるさく入感してきていた。う~ん??ノイズのせいか?
「なごや」が終わり、「その他」コール受付になった。それでも、しつこく100mWで呼び続ける…応答はない(笑)。最後は仕方なくあきらめて、87Rで呼んでみるが、こちらも一発ではダメで、RSは41のレポートだった(大爆)。
390Km離れた徳島へ51、150Kmもない伊吹山へ41・…これがCBのおもしろさだ!...と、負け惜しみを言っておこう(笑)。
高草山から
二つの目的は未達に終わるが、天気だけは朝から味方してくれていた。12時を回ると、さすがに南アルプスや、中央アルプスの高山の頂きには少しずつ雲がかかり始めていたが、それは局所的なもので、天空の青さに変わりはなかった。伊勢湾上にはおなじみのMM局、アイチDI209局が釣りと無線の二刀流運用をされている。今日は、子供さん二人を連れての釣りを兼ねた海上散歩とのことのようだが、子供さんにとってはさぞ楽しい一日となることであろう。
RC後も、結局KP127局の信号を捕らえることはできなかった。
13時を過ぎて、最後にリグだけを残して撤収を完了すると、なにやら790Tからか細いCQ信号が聞こえてくる。ボリュームを上げると、シズオカAC703局/焼津市高草山のCQだ。当局が運用している駐車場の平面は広く、ポジションは焼津方面には最悪の位置だが、最良と思われる駐車場の反対側の崖っぷちまで移動している余裕はない。87Rを持って、とりあえず東側の端に移動すると、51で入感できる。AC703局にも何とか電波をピックアップいただき、QSOが成立する。こちらも、南アルプスの大障壁を越えての「見通し外」だった。
山岳回折・・・まだまだ奥が深い。
('09/10)
運用データ |
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運用日: 2009年10月12日 運用場所: しらびそ高原(長野県飯田市) 7:30~13:30 使用リグ: ICB-87R、ICB-790T、RJ-270D、DJ-R20D |
フクイZ136/9 福井県池田町部子山 | 52/52 | ヒョウゴAB245/3 京都府南丹市深山 | 51/51 |
トクシマMN72/5 徳島県那珂町高城山 | 52/51 | なごやCE79/三重県四日市港 | 56/55~57 |
イワテB73/3/滋賀県米原市伊吹山 | 51/41 | アイチAE114/0/長野県大滝村御嶽中腹 | 55/55 |
アイチDI209/MM/伊勢湾木曽川河口沖 | 54/53 | ギフAA365/9/福井県白山 | 53/52 |
シズオカAC703/静岡県焼津市高草山 | 51/31 |