[炮烙山展望台]


見通し外

なんといっても、CBの醍醐味は、いかに小さい電力で遠くへ飛ばすかということではないだろうか。[遠く・・・]、言い換えれば、いかに見通し外に飛ばすか、ということになる。これはEs等の電離層による遠距離への伝播も、山岳回折等による遠距離への伝播も見通し外という点では変わらない。電波は基本的には何もしなければ直進する性質のものだから、要は、電波を反射したり、屈折させたりするものがどこにあるのか(何なのか)という違いと見ることも出来る。その反射したり、屈折させたりするものが、電離層伝播の場合は空高く電離圏にあり、山岳回折等は地面にある。(ダクトの場合は、空気中にある。)

グランドウェーブにおいては、一般に、見通し外交信における「見通し外」には、2種類ある。一つ(仮にタイプA)は、通信経路の途中に高い山などが立ちはだかることによる「見通し外」の場合で、障害物(山など)をどければ見通し内という場合と、もう一つ(仮にタイプB)は、地球は丸いので、仮に山などの遮るものが無くても(=0mの平原が続いたとしても)、地平線の向こう側(地平線の下)という見通し外である。

タイプBにおける概略見通し限界距離(つまりそこから先が見通し外)は、二つの通信地点の高さと大気の屈折率のファクターに基づく、アマチュアでもおなじみの公式で簡単に求まる。しかし、その限界を超えて飛ばそうとすると、逆に「障害物」が必要になってくる。つまり、何かで電波を大地に沿って「曲げ」なければならないからである。


潮見の森&炮烙山

3月20日(金)のOADは、きょうとKP127局、いしかわAS36局主宰による、北陸RCが予定されており、当局もOADを兼ねてRC参加を狙うことにする。木曜日まで大阪でバタバタしているので、20日(金)は遠出も出来そうにない。名古屋市内近郊から、京都府丹後半島移動のキー局KP127局(京都府宮津市世屋高原)側の電波を狙うことにする。カシミールの地図を見ると世屋高原は日本海に突き出た丹後半島の中ほどで、名古屋市内近郊からだと、ある程度高さを稼がないと「タイプB」の見通し外で、仮に障害物など無くても、完全に地平線の下である。したがって、「曲げる」ために、どこかで一箇所は回折ポイントが必要である。また、名古屋近郊から狙うには、伝播経路をうまく関ヶ原上空を通過させねばならない。

これは、関ヶ原の北側は伊吹山山系が、南側は養老山系が立ちはだかるので、すっぽり歯の抜けた関ヶ原上空の回廊を通し、ここでの減衰を少なくして、福井や滋賀県側の山で回折させることが必要と思われるからだ。そうでないと二つ回折ポイントが必要になる。

関が原の回廊を通す必要性云々は、合理的裏づけがないので、当局の思い過ごしに過ぎないかもしれないが、少なくともこれは京都府舞鶴方面とのこれまでの実績(舞鶴市槇山-潮見の森、おおい町頭巾山-潮見の森間伝播実績)からくる経験則に基づくものである。


しかし今回は、キー局の位置が、これまでの槇山や頭巾山より北側にずれているので、関ヶ原周辺を通過させて、経路を取ろうとすると、いつも京都舞鶴方面への見通し外を狙う潮見の森(岐阜県多治見市)よりかなり南側にロケをとらねばならない。これをあたって行くと、豊田市の猿投山から、十明山、炮烙山(ほうろくさん)あたりが候補になるが、炮烙山以外は山に登るのに時間がかかるので、炮烙山にロケを定めることになる。厳密に言うと、養老山系が少し引っかかるが、カシミールの断面図からは「いける」と、判断。当局に限らず、おそらく多くの局がカシミールの図から見通し外でも「いける」場合と、「いけそうもない」場合が判断できる勘所を、既にお持ちではないかと思う。


前日になって、掲示板をチェックしていると、OADではナガノJA01局が長野県下伊那郡高森町か、豊丘村から出られる予定という。2月22日のJA01局との山越えQSOで不思議な体験をしているので、このチャンスに追試できたらと、アサイチは当局も2月22日に移動していたのと同じ場所である潮見の森(472m)に移動することにする。ただし、北陸RCが11:30から始まるので、9時~10時まで潮見の森にQRV、場所を移動して、11:30前から豊田市炮烙山(683m)からQRVするという変則的なスケジュールを組んでみる。ナガノNP152局が茶臼山から朝からオンエアされるというので、久々のQSOも非常に楽しみになる。



世屋高原(京都府宮津市)へは・・・

(いずれも右側が世屋高原)
潮見の森から
いつも舞鶴方面を狙う潮見
の森だが今回はさすがにきつ
い。伊吹山の1200m近辺が
壁のように立ちはだかる。
猿投山から
見事「関ヶ原回廊」(爆)を抜け
て一回の回折でOK。ベストだ
が山登りに時間がかかり
すぎ。
炮烙山から
ぎりぎり2回回折となるが、
間のポイントが送受信双方
とほぼ同標高のため、沈み
込みを考えると、余り気にする
必要はない。
[理論的には、世屋高原には回折ポイントからの直接波と大地からの反射波が届くが、回折ポイント-世屋高原間の反射点は若狭湾上の海面反射になるため、この点も回線には有利に作用する可能性がある。]


追試はできるか?
9:05分、潮見の森に到着してさっそくQRVを開始。リアル板を確認するとナガノNP152/0局は既にオンエアを開始されたところで、87Rを点けると、さっそく元気なCQが飛び込んでくる。前夜までの天気予報では午前中まで小雨という予報だが、当局側では既に雨は上がり、薄日が差してきていた。名古屋市中心部を見ると、もう陽があたっているようで、10分くらいQSOを続けていると、上空には青空が広がってくる。しかし潮見の森からいつも見える御嶽や中央アルプスは、まだまだ厚い雲に閉ざされたままだった。


NP152局が、100mW機も試されるというので、当局もたまたま持参していた、100mW機RJ-270Dと、87Rの両方で比較送受信してみる。NP152局の、ナショナルのRJ-130D!からの波は、RS41程度(当局側270Dで受信)でノイズが厳しい目の中、弱弱しいながらも音の輪郭はハッキリと聞こえてくる。それにしても、RJ-130Dといった、近距離構内用?トランシーバーでもちゃんと距離50Km近くを飛んでくるのだから、バカには出来ない。

当局の270Dからの100mW波は、R4.5、S2程度(先方500mW機での受信)で飛んでいるらしい。これまで各局から指摘されているように、やはり変調は87Rに比べてかなり薄めのようである。

270Dによる、500mW機の送信波受信では、Sメータが違うので余り意味はないが、87R受信で58が、270Dでは52~53という振れ具合である。聴感上は55~56といったところか。

NP152局と実験しながら、10時近くまで潮見の森で運用してみるが、残念ながらナガノJA01局からの信号は入ってこなかった。まだ長野方面の空模様はぐずついているようだったので、これは致し方ない。心残りではあるが、JA01局との実験は諦め、北陸RCに参戦すべく、愛知県豊田市の炮烙山へと移動を開始する。カーナビではジャスト50Kmの距離と出てくる。



朝の潮見の森では・・・

9:30頃までは・・・
雨はあがっているものの、厚い雲が。
やがて明るい日がさしはじめる
潮見の森より名古屋市中心部方面。
(東京でいくと、日野‐新宿間の距離に相当)

北陸ロールコール
炮烙山に着く頃には天気は晴れ上がってくる。しかし、日差しに比例して風も同時に強くなってきていた。山頂にある立派な展望台にあがって見ると、当然360度視界が開けているため、やたらと風当たりが強い。11時10分過ぎにQRV開始。RC前に出来るだけロケの状況を確認すべく、ICB-707を展望台の床面に置いてラクチン運用しようとするものの、そんな甘い考えもリグとともに、いとも簡単に風に吹き飛ばされてしまう。707はバッグにしっかり仕舞い込み、仕方なしに87Rを両手でビシッと掴んで運用する。それでもロッドアンテナのしなり具合が半端ではない。本体にもアンテナが受ける力がもろに伝わってくる。下に置いたバッグも、しっかりジッパーを閉めておかないと中身が吸い出されて飛ばされそうになる(笑)。


1stとなるアイチAD301局、続いてギフAA365局とQSO、様子を確認後、RCチャンネルである3ChにQSY、ワッチに入るものの、どうも2エリア局の信号が飛び交っている。海外局もうるさく、かなりノイジーだ。


RC開始時間を過ぎてしばらくワッチしていると、やはりRCは既に始まっていたようで、キー局きょうとKP127局/京都府宮津市世屋高原移動のチェックイン受付の信号が41で入感してくる!コールすると、何局か輻輳しているようだが、最初にピックアップしていただく。41/41ながら、ノイズの中、KP127局の信号は意外としっかり聞こえてきていた。あわててチェックインしたものの、後で展望台をウロウロしてみると、もっと強く入感するポイントがあった(これは失敗(笑))。

事前の下調べでの計測では、世屋高原とは見通し外約202~203km位のはずだ。

TNX、KP127局。

とりあえず、RCチェックインの目的を達成できてホッとする。

その後、3エリアからは、ヒョウゴAB245局(兵庫県猪名川町大野山移動)よりコールをいただく。兵庫からということは、こちらもどこかのポイントでの回折波には違いないが、51での入感だった。しかし、11:45くらいからは、とにかく海外局がうるさくなってくる。南方系かなにか分からないが、断続的にS7くらい振ってくるからたまったものではない。シズオカAD964局(静岡県掛川市移動)からもコールを頂くものの、ちょうど海外ノイズが絶好調で信号が中断されまくり、思うように聞き取れない。QSYしても、どこもチャンネルは同じ状態で、AD964局の信号は弱くもなんともないのだが、それだけ海外ノイズが激しかった。

三ヶ根山からは、サイタマHK123局にコールを頂く。ヘリカル機からでておられるとのことで、ポータブル機に比べれば41での若干弱めの入感だが、ロケを探しながら歩きながらオンエアされているという。ヘリカル機ならではの強みか?津島市からはなごやCE79局にお声がけをいただく。707をルーフにおいて車の中からの、ぬくぬくの?(笑)PTT運用のようである。岐阜の金華山展望台には、ギフTY32局が登られており、電波は59+で超強力だった。距離60Km程度?で完璧な見通し内(のはず)であるので、当たり前かもしれないが、強力という意味では、ミエAC129局/四日市港も59+40dBを振ってきていた。四日市港の主、イワテB73/2局は、四日市?の山側、宮妻峡という珍しい場所から電波を飛ばされてきていた。

追試は成るか?

池田山の移動部隊とも一通りQSOを頂き、リアル板を見ながら一服していると、なんとナガノJA01局の書き込みがあるではないか。午前中は悪天候だったため、午後17時頃まで延長して運用されるという。これは、朝できなかった再現実験のために、もう一度潮見の森に戻らねば、と、とっとと炮烙山での撤収にかかる。


50Kmほどの道のりを、高速道路&山道を飛ばして、潮見の森に戻ると、朝は全く視界が閉ざされていた御嶽や中央アルプスがはっきりと姿を現していた。朝とは景色が180度変わった。いつもの山岳風景だ。その向こうにJA01局がおられると思われる恵那山方向に向かって、3ChでCQを連発する。しかし、元気よく耳に入ってくるのは、スタンバイピーを使った、南方系の局ばかりだった(笑)。う~む、今日は一体どうした?この間は、あんなに簡単にQSOできたのに・・・。おそらく、長野県側ではJA01局も同じようにCQを連発されているに違いなかった。

CQを連発していると、池田山移動隊の一人、アイチJH316局からお声がけを頂く。池田山のほうはやはりかなり寒くなってきたようで、山頂付近から下ってきたという。当局もそろそろ撤収時期か?

残念ながらJA01局とはつながることも無く、時計の針は徐々に4時に近づいていた。

最後に三ヶ根山移動のサイタマHK123局よりコールを頂く。炮烙山での交信時は、HK123局側はヘリカル機での交信だったが、今回は770で出ておられるとのことで、信号も変調もかなり強い。日も傾き夕刻になろうかというこの時間の中で、QSOいただいていると、CB運用に対するHK123局の熱い思いが伝わってくる。今後、もっともっと再開局される局が増えたらナーと思う、瞬間であった。

                                   ('09/3)


本日2回目の潮見の森:景色は朝とは打って変わっていた。

御嶽
中央アルプス
駒ケ岳~空木岳
恵那山

運用データ
運用日:
  2009年3月20日

運用場所:
  1)岐阜県多治見市潮見の森(標高472m) 
    9:00~10:00、15:00~15:55
  2)愛知県豊田市炮烙山(標高683m)
    11:10~13:45
  
使用リグ:
  ICB-87R、RJ-270D、ICB-707
  
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御岳山
 '09/03/20