[朝日を浴びる妙高山]


本番は暴風雨?

秋オンが近づいてきた。しかし、台風も2個近づいてきた(笑。今年はSVも雨にたたられたが、16日金曜の夜、あきらめ半分で車を新潟県妙高市に走らせる。今年の秋オンはなぜか?火打山(標高2,462m、妙高市・糸魚川市境、百名山)に決めていた。今年も環日本海特小ダクト実験が計画されており、火打山の標高としては高すぎて不向きだが、一応実験にも参加してみることにする。(火打山は日本海の海岸線まで20㎞ちょっと)

土曜日(本番前日)朝、やはり雨が降ったり止んだりだ。小屋までの登山中は奇跡的に雨粒が落ちてくることはなかったが、霧雨のようなガスの中で、何も見えない。小屋前のベンチで早速QRVにかかるが、アンテナもあっという間に水滴がしたたりおちてくる。午後の時間から運用を楽しもうと思ったのだが、大雨になるのは時間の問題のように思われた。それでも、ガスの中、高層湿原の一角を成す高谷池の前からCQを出しているとミエAA469局のコールが返ってくる。佐渡島ということで余り距離はないはすだが、当局側のロケは平坦な場所なのでRS41と厳しい入感だ。「イベント開始(夜9時)以降にまたよろしく~」とのことだが、この天気では今夜はQRV不可能だろう。ながのK2局?らしきYL局も傍受するが、運用開始30分もすると雨が降り始め、「台風的な」風も強まり始めた。小屋に引っ込んだ後も風はいっそう強まり雨も時に強く屋根をたたくのがわかる。

夜聞いた天気予報では、長野北部地方はなぜか「曇りのち雨」だ。台風が近づいてきているはずなので、どうみてもこの風と雨では、明日は朝から暴風雨である。明日の天気は語るまでもないので、寝る前には、無線運用はダメでも、せめて山頂だけ踏んで帰れればいいと思っていた。


奇跡は起こる
大雨のはずなのに、なぜスケジュール通りの行動をとったのか当局自身にもよく分からないが(笑、まるで何事もないように早発ちを決め込んだのは当局のみだった。小屋の宿泊者は皆、今日の天気は諦めているので、皆さん朝寝坊だろうか?

4:00、一人小屋を抜け出し、恐る恐る暴風雨のはずの?外に出てみると、なんと厚い雲の向こうにほんのおぼろげながら、月が明るい点になって見えている。暴風雨どころか、雨も風もない。山頂だけは間違いなく踏めそうだ。不思議に思いつつも、ヘッドランプを頼りに、真っ暗闇の木道を抜けていく。やがて、火打山の肩の尾根の登りにかかると、東の空が白み始める、というより、赤らみはじめる。下界には妙高市郊外の街明かりも見えている。日本海側には視界が効いているようだ。

空の様子も詳細が分かり始める。切れ始めた雲間からは、月と星が煌々と輝き始めていた。山側からのガスが大きな白い塊の滝となって、妙高山の前を滑り落ちていく。全く思いも付かない天気だった。不思議なことに、良い意味で予想を完全に裏切ってくれた(笑。

山頂の一歩手前でご来光になる。台風の暴風雨ではなく、静かな明るい朝だった。

ご来光を納めた写真機をウェイストバッグに収め、ふたたび、もう少しばかりの登りにとりかかる。日を受けた登山道の辺りが、どこも薄黄色に輝き始めていた。ゆるやかな朝日を背中にも感じる。なんて穏やかな時間なのだろう。一つずつ歩を進めながら、ただ一人、色のついた至福の時に浸っていた。



やうやう白くなりゆく
清少納言もびっくり?の奇跡の天候回復。
妙高郊外の明かりも見える。
ご来光
朝日を背に受けながら登る、至福の時間
新潟方面
中央三角形:米山、左奥:弥彦山。



山頂は、周囲にハイマツが生えるだけで、360°全く視界をさえぎるものがなく展望が開けている。無線にはもってこいの場所だ。それにしても空はよく晴れ上がっている。長野側は雲海状態だが、その上に北アルプスの峰峰が、ところどころ白い斑点を伴って薄水色に浮かんでいる。程なくすると、八ヶ岳の左となりに、富士山の上半身も姿を現す。当局のすぐ背中には日本海と佐渡島が横たわっているのだが、こんな場所から見える富士山もあくまで端正だ。





OAD開始




ミョウコウDA910
6:00ちょうどに地面に置いた580Dのスイッチをオン、8ChでCQを出してみる。すると待ち構えていたかのように、佐渡島にいるイワオさんことミエAA469局より応答がある。イワオさんは、昨日雨が降り出す前につながった唯一の局だ。さすがに今日も朝から気合が入っている。CBで日光白根山移動のとうきょうMF33局とも聖岳の話などをしながら交信、6:20からは特小ダクト実験を試みてみる。今年も、いたばしAB303局さんが、昨年同様、特小による環日本海ダクト実験を設定されている。(実際には6:00の回は中止になっていたのだが。)火打山の標高からするとダクト実験には不向きなのだが、一応、実験専用コール、ミョウコウDA910でCQを出してみる。聞こえてきたのは米山(新潟県柏崎市・上越市境)に移動中のながおかHR420局のみだ。何かモゴモゴと聞こえるような「気」もするのだが、やはり空耳のようだ。

天気予報が外れたので、現在の地表面と上空の温湿度の関係からすると、ダクトの条件はそれほど悪くはなさそうにも思えるのだが、やはりその後も特小局の入感はない。移動局が少ないせいもあるかもしれないが、6時の部の特小実験は、HR420局以外に入感がないまま一段落する。


DCR351
ながおかHR420局の信号を受信中のDPR5
一応350MHz帯のDCRでもダクト実験をしてみようと、CQを出してみると、長野県伊那市の高烏谷山(たかずやさん)に移動中のナガノNP152局よりすかさず応答が返ってくる。NP152局がDCRを入手されていたことは知っていたのだが、イベントのこんな早い時間帯につながるとは思ってもみなかった。しかも、もう運用を切り上げ、一旦撤収する時間だと言われている(笑。なんと出だしの早いことか。NP152局の信号は明快に聞こえてくる。デジタルの復調音は、デジタル特有の聞き取りにくさがあると聞いていたが、きわめてまともだ。使用リグはケンウッドのはずだ。リグにもよるのかもしれないが、NP152局からの信号はアナログとほとんど差異がない。当局からは1W送信だが、アンテナ1本(=Sメータ)で十分NP152局にも届いているようだ。DCRの信号強度は、携帯電話と同じくアンテナ式表示である。

DCRについては、各社が製品を出しているので、メーカーやデザインの好みで、各局使用するリグが分かれるところだろう。当局は、購入前に各社の製品の取扱説明書を熟読?(笑、結果的に今のところアイコムのIC-DPR5を使用している。

DCRの場合、30Chあるうち、「15Ch」が呼び出しチャンネルに設定されており、呼出し後は他のチャンネルに移ってQSOすることを前提としている。アイコムやアルインコでは、「プライベートチャンネル」機能で、たとえば呼び出しチャンネルである15Chをプライベートチャンネルに設定していれば、任意のChで運用していても、アンテナ横のプライベートチャンネルボタンの長押しひとつで、呼び出しチャンネルに飛び、チャンネルのUP/DOWNキーなどを押すだけですぐに運用チャンネルに戻ってこられる。これは、例えば8Chなどを常運用チャンネルとして、呼び出しチャンネルである15Chなどと行ったり来たりするときに便利である。また、通常チャンネルで運用時に、呼び出しチャンネルを定期的にスキャンして、通常チャンネルで運用中でも呼び出しChでの信号の入感の有無を確認できるようになっている。

2チャンネルスキャン機能などはどのメーカーにもついているが、「2波」ということに関しては、アイコムの場合、HFアマ機などでのスプリット運用やデュアルワッチの操作性のノウハウが生かされているような気がする。また送信出力の切り替え(5W/1W)も、「エディットキー」の長押し一つで簡単に切り替え可能で操作性は良い。一方、アイコムの後に出た、スタンダードやアルインコのDCR機では、スケルチ感度が設定できるようになっている(アルインコは9段階、スタンダードはなんと13?段階)。また、スタンダードはマイク感度も8段階調節可である(アイコム、アルインコは3段階)。もっとも、スケルチ感度やマイク感度は一旦設定してしまえば、頻繁に使う機能ではない。いずれにせよ、今後DCRの使用局が増えるにつれ、性能等に関するレポートがたくさん上がってくるので、それらを参考に機種選びをするのも楽しいだろう。




DCRではその後、長野県安曇野市の一般局、「AZ104局」、ミエAC129/0局(木曽御嶽山頂移動)とつながる。AZ104局は一般の固定局で、グランドプレーンを上げているらしいが、ビンビンに入感してくる(もっともデジタルは入感さえすれば常にビンビンだが)。DCRで、こんなに早く一般局とつながるとは思ってもみなかったが、相手も呼び出しチャンネルからいきなり「CQ」が飛んできたので、びっくりしたようである。DCRをホビーユースで使っている局はまだ少なく、「AZ104局」も業務用の固定局のようだ。ただ、オペレーターがたまたまアマチュア無線もやられているようで、QSOは手馴れたものだった(笑。

AZ104局とのQSOは、米山移動のHR420局もキャッチしており、何度かブレークを入れられたらしいが、当局の方では全く気づかなかった。デジタルは送受切り替え時に微妙にタイムラグがあるようで、その間はマスクされてしまう。したがって、HR420局曰く、意識的に切り替え時間を少し長めに取ったほうがよい、とのことである。


巻機山
巻機山(1,967m、新潟県南魚沼市、百名山)には、サイタマKM117局が移動されており、CBでお声掛けをいただく。ちばKX56局と一緒に登られて、合同運用をされているようだ。それにしても、巻機…、当局も以前から登ってみたい山の一つで、なんとFBな場所から出ておられることか…。さすがに両局とも山岳移動のエキスパート、当局のようなドシロウトとは目のつけどころが違う。

「火打山は良く見えてますよ」、と言われるKM117局の信号は、もちろん59+でガツンと入感してくる。巻機の天気も無論Very Fine、お互い山岳移動局として、いきおい奇跡的に晴れ上がった天気の話になるのだが、当局同様KM117局も今日の天気は全くあきらめていたようで、まさかこんなに晴れ上がるとは思われなかったようである。ご来光もしっかり享受されたようだ。KM117局とは、6月の西表島運用でのEs QSO時に、「山岳移動の方でもよろしく」、との言葉を交わしており、火打-巻機で実現したことになり当局としてもうれしい。

8:00近くになると、CBは海外局のQRMとノイズが徐々に激しくなってくる。夏の盛りを思わせるようなコンディションだ。しかし、昨日はどこも天気が悪く、今日も予報では悪天候が予想されたためか、どう見ても移動局が圧倒的に少ない。特に山形、宮城以北の7エリアからの入感が全くない。予報では停滞前線が新潟の少し北から東北にかけて延びる予定であり、東北地方はやはり悪天候なのだろうか?少しでも前線が南に下りれば、甲信越も雨、しかも南には台風があり湿った空気を運んでくるはず。大雨になっても少しもおかしくないのだが、こちらはピーカンだ。


特小レピ
イベントデーとは言え、移動局が少ないので、朝も10時頃を過ぎるとチャンネル内をワッチしていても聞こえてくる局がほとんどない。そんな中、富士山5合目にはしずおかDD23局が移動されており、精力的に運用されている。今日は河口湖側、富士スバルラインの5合目から出ておられるようだ。

山頂でくつろぐ
山頂からの景色を改めて堪能しながら、DD23局@3ChのQSOをずーっとラジオ代わりに聞いていると(笑、さすがにロケは一級、関東一円の局と次から次へとQSOされている。11時過ぎに再び(三度目?)お声掛けしてみると、シズオカAD964局が静岡のどこかから富士山の特小レピ経由でイベントに参戦しておられるとのことだ。そういえばここから富士も見えてるじゃん、と思いつつ、富士山にレピーターが上がっているのをすっかり忘れていた。

うろ覚えのチャンネルb26-08でアクセスしてみるとピピッと反応がある。しかし、ポジショニングが極めて微妙だ。CQを出してみると、さいたまBB85局より応答があるが、当局の信号は完全に途切れ途切れのようである。「たぶんYK221局と思いますが、途切れ途切れでまったくわかりません!」と、いつもの聞きなれたお声が返ってくる(笑。「まったくわからない」というところが妙に強調されていて、思わず笑ってしまうのだが、しかし、BB85局からの信号は「全く」よどみなく、オールコピーで入感してくる。局名は合っているんだけどなぁー、と自嘲しながら(笑、BB85局とのQSOは断念しダウンリンクを引き続きワッチしていると、愛知県田原市の蔵王山移動のアイチDV65局と静岡県粟ヶ岳移動のシズオカAD964局とのQSOが入感してくる。M5で全く問題ない。しかしこちらからは何度呼びかけてもダメだ。レピーターの設置位置の関係からか、富士山から飛んでくる電波は問題ないのだが、どうやら新潟県側からのアクセスが厳しいようである。

すべてに感謝!
6時前に山頂に上がってきたときは、この天気も昼前には崩れるのではないかと心配していたが、若干雲は出始めたものの、11時を過ぎても全く崩れる気配はない。580Dから漏れ来る受信音をそっと聞いていてもすべてが平穏だった。

天候にも恵まれたので、後ろ髪もひかれることなく12時前に撤収にかかり始める。最後に巻機山のサイタマKM117局より再びお声掛けを頂く。「移動局が少ない、などと言っていたら、このような天気をプレゼントしてもらっているのに罰が当たりますね~」、とKM117局と共感しながら、去年の秋オンと全く同じせりふを思い起こしていた。「誰に感謝したらよいのかわからないが、とにかく感謝!

各局TNX!       (’11/09)





運用データ

  
運用日時・運用場所:
 新潟県妙高市・糸魚川市 火打山
  2011年9月17日(土) 
    13:00~13:30 火打山高谷池前(標高約2110m)
    
  2011年9月18日(日) 
    6:00~12:00 火打山 山頂 (標高2,462m)

主要装備:
  CB
   ・RJ-580D (ナショナル)
   ・ICB-87R (ソニー)
  DCR351(デジタル簡易無線)
   ・IC-DPR5 (アイコム)
  特小
   ・DJ-R20D (アルインコ)

電源:
  ・Li-ion 1.6Ah×2、2.4Ah×1、乾電池多数


QSO局

CB、DCR、特小
(敬称略)

9/17:高谷池前
ミエAA469/0/新潟県佐渡市どんでん山 41/51
9/18:火打山山頂
ミエAA469/0/新潟県佐渡市どんでん山 59/56 とうきょうMF33/栃木県日光白根山 55/53
ながおかHR420/0/新潟県柏崎市米山 (特小) M5/M5 ナガノNP152/長野県伊那市高烏谷山 (DCR) M5/M5
スギナミAA530/7/福島県福島市一切経山中腹 52/51 おおさと59/埼玉県ときがわ町堂平山 54/51
いしかわ4137/石川県珠洲市宝立山 59/55 いしかわQA34/石川県輪島市高洲山 55/53
トウキョウAB505/7/福島県福島市一切経山 55/54 サイタマKM117/0/新潟県南魚沼市巻機山 59+/59+
サイタマAD966/茨城県大子町八溝山 52/51 ながおかHR420/0/新潟県柏崎市米山 (DCR) M5/M5
サイタマMS118/群馬県藤岡市西御荷鉾山 54/54 ナガノTM285/長野県塩尻市高ボッチ山 55/57
チバKX56/0/新潟県南魚沼市巻機山 52/52 ニイガタAA330/新潟県糸魚川市 53/53
アイチAE114/0/長野県王滝村御嶽山 55/56 カワサキTR375/山梨県山梨市前国師岳 57/57
AZ104/長野県安曇野市 (DCR) M5/M5 ミエAC129/0/長野県王滝村御嶽山 52/54
しずおかDD23/1/山梨県富士河口湖町富士山5合目 59/55 ミエAC129/0/長野県王滝村御嶽山 (DCR) M5/M5
ながのBQ18/長野県長野自動車道姥捨SA 53/53 ナガノAA601/長野県塩尻市王城山 51/51
ながのBQ18/長野県聖高原 しずおかDD23/山梨県鳴沢村大沢駐車場 59/54
いしかわMB79/石川県羽咋郡宝達山 53/53 サイタマKM117/0/新潟県南魚沼市巻機山 59/


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    '11/09 新潟県妙高市・糸魚川市
火打山 (秋オン)