P社製E電池


CB機に使用する乾電池については、けっこう気にされる方がおられる。少しでも飛び受けのロスを少なくしようということだが、使用する乾電池の基準と言うものはどういうものだろうか。コストか、持続性か、はたまた、電波の飛び具合か?
単三電池を例にとってみよう。コストという面では、100円ショップのマンガン電池から、最新のP社の乾電池(ここでは便宜的に「E電池」と呼ぶ)まで、レベルは豊富だが、そのコストvs性能がどのような意味を持つか、余りレポートを見たことがない。そこで、12Vでの簡単な放電実験をして、おおよその容量のイメージをつかんでみることにする。

新品の単三乾電池を三種類用意する。
1) 100円ショップD社のアルカリ電池(便宜的にA電池と呼ぶ)、中国製
  コスト:4本で100円(25円/個) 12V当たり200円
2) 100円ショップD社のマンガン電池(便宜的にB電池と呼ぶ)、中国製
  コスト:8本で100円(12.5円/個) 12V当たり100円
3)P社製E電池 日本製
  コスト:8本で1080円(135円/個) 12V当たり1080円

E電池については、店によってバラツキがあるので、もっと安く買える店もあるだろう。当局近くのY電機では、980円であった。(1,080円は近所の一般的なドラッグストアで購入したもの。)B電池とE電池では、実に10.8倍のコストの開きがある。12Vを達成するのには、絶対額で980円の差だ。

容量については、JIS等に決まった測定方法があるだろうが、ここでは単純に放電試験をしてみる。回路は極めて簡単、負荷として110Ωにつなぐだけだ。測定は、トランシーバーで用いる8本積層(12V )で行う。したがって、12V 時には約109mAの電流が流れることになる。87Rや707等のSONY系のトランシーバーは、受信時60mA、送信時160mA(無信号・無変調時)程度であるから、平均して受信対送信5:5で運用しているような状況と同様である。実際の運用では、この様に送信時間が長くなることはない。9:1~せいぜい8:2位で、アマ機などのハンディー機のカタログ等では電池の持続時間の目安として9.5対0.5というのが良く出てくる。したがって放電電流としては、CBトランシーバーの消費電流と比較すると多めであり、乾電池にとってもけっこう「つらい」電流値であるが、送信時には、当然160mA以上の更に大きな電流が必要になるので、この位でみてみる必要がある。

 アルカリ電池


まず、アルカリ電池のA電池はどうか。無負荷時初期電圧は12.88V、回路ONで、一気に11.85Vまで、1V以上降下する。その後30分で、11.37V、70分で11Vジャストまで降下する。110分で10.8Vを切り、10.78Vとなる。つまり、2時間経たないうちに、12Vのマイナス10%である、10.8Vを下回ることになる。10.74Vまで降下を見て、回路をOFF、乾電池は最終的に11.80Vまで復帰する。
ということは...運用前に無負荷でテスターで電圧を測定して「11.8Vあるからまだ安心!」、といっても、運用してすぐに、送信時にはトランシーバーの回路には10.2V程度しかかかっていないことになる。よくあるように、定格電圧のマイナス10%=10.8Vまで、CB機の定格出力が出ると仮定すると、無負荷状態で11.8Vでは、送信時には定格出力を下回ることになる。
乾電池がいかに内部抵抗が大きいか良く分かると思う。もうお分かりだろうが、電池を8本積層して(直列にして)実験する意味合いはここにある。2、3本の直列なら問題にならなくても、8本にもなると大きな影響を受けてくる。100mA程度の小さい電流だからまだ、ましな方だが...。

<*グラフは「0分」時に、無負荷時と回路ON直後の二つの値を記している。右側、電圧が上昇しているのは、回路OFF後に電圧の復帰状況を見たもの。(以下同様)>

 マンガン電池

マンガン電池のB電池ではどうか。
マンガンの測定結果を見ると、さすがにアルカリ電池は、だてに「アルカリ」でないことが良く分かる。(ちなみに「アルカリ電池」は正確には、「アルカリマンガン電池」。)マンガンでは、無負荷時の初期電圧は高いものの、スイッチONで一気に12.16Vまで、1.1V以上低下。10分で11.38Vまで降下すると、22分経たない内に11Vを切り、30分で10.8Vを下回る。10.8Vに低下するまでアルカリが110分持ったのとはえらい違いだ。アルカリの値段が、4本で600円位していた大昔ならともかく、さすがにこれではマンガンは使う気にはなれない。




 E電池

P社の最新電池、E電池はどうか。
無負荷12.96V、スイッチONで12.25Vと、0.71Vの電圧降下で、一見して内部抵抗が少ないことが分かる。A電池では既に10.8Vを切っていた、120分では10.94V、10.8Vに低下するのは166分(A電池の1.5倍)である。しかし、ここからまだ粘り強く、10.53Vまで降下するのが280分(4時間40分)、ここで回路をOFFにすると、最終的に11.76Vまで復帰する。
一見、普通の?アルカリ電池(A電池)とはたいした差でないように思われるかもしれないが、これは相当大きな性能差である。




 リチウムイオン電池(2.1Ah)

参考までに、全く同じ負荷で、当局のリチウムイオン電池2.1Ahでも測定してみる。初期電圧12.62V、スイッチオンで12.39Vと0.23Vの低下。11.52Vまで降下するのに実に7時間(420分)を要した。いつまで測っていてもきりが無いので、途中で実験を打ち切る。スイッチOFFで放置後の回復値は11.75Vであるから、運用前に無負荷でこの程度の電圧値であっても、乾電池と違って、額面と余り変わりなく受け取れる。(107mAちょっと負荷時でマイナス0.23V)



 総合すると…

以上4つの電池のグラフを合成するとどうなるか。
友情出演のリチウムイオンは圧倒的に強い。強すぎて話にならない。
「参考」とは言え、そもそも2.1Ahという容量が比較としてズルイのではないか、という意見があるかもしれないが、最近の単三型ニッケル水素が2.5Ah以上あることや、2.1Ahと言えば、容積的にもいわばアバウトにデジカメの電池6個分の容積と質量である。(=単三8本分より小さい)これを考えると決してズルイとは言えない。そもそも容量というのは放電終止電圧や電流値の条件設定を同じにしないと意味がない。したがって同じくらいの容積や質量なら、どっちが長持ちするかという方が素人的には分かり易いし、重要である。

乾電池では、さすがにE電池は、世界最高容量と宣伝しているだけあって、内部抵抗が少ないし、10.8V近辺の粘りも強い。なかなか立派な性能だ。ただし、100円ショップアルカリのA電池のコストの5.4倍であるのも事実だ。このコスト差をどう判断するかは、貴局次第である。


ところで、額面11.8Vが実際は送信時に仮に10.2Vしか出ていないとして、それがどれほど、CB機の送信性能に影響するのかといえば、まだその電圧レベルではほとんど影響がない、というのが実情ではないだろうか。仮に定格500mWの出力が400mWの出力に低下していたところで、受け側でその差を検知することは極めてむずかしい。電圧降下による若干の出力低下を気にするよりも、障害物がない場所や見通しの良い山の上等、また、Es狙いであれば、より飛び受けのよいとされるロケで運用することの方が余程重要ではある。

それでもやっぱり電池(運用中の電圧)が気になる!という方は、電源電圧・容量を大きめにとって、安定化電源をかまして12V を供給するか(安定化電源といっても、親指程度の大きさに収まる)、リチウムイオンやニッケル水素電池等を使用したほうが良いと思われる。少しだけ重いのが気にならなければ、一番手っ取り早いのは1.2Ah程度の小型の鉛シールドバッテリーである。お馴染みの鉛バッテリーは、リチウムイオンなどより更に圧倒的に内部抵抗は小さい。CB機の送信電流程度ではびくともしない。 

今回の実験は夏場なので、室温30℃くらいでの話である。しかし、もし同じように乾電池に気を使うならば、実は低温特性の方にもっと注意を払うべきである。気温0℃くらいでは、極端に容量は低下する。昔は、「乾電池は使わないときは冷蔵庫で保管しろ」と言われたくらいで、化学反応のかたまりである電池は、低温下では「冬眠状態」に入る。当局も、三重県の御在所岳山上で冬場に運用した際、新品の電池にもかかわらず87Rが全く動作しなくなったことがある。気温は-5度位だったろうか。暖房のきいた家に帰ってきたら、何事も無かったように動作し始めたが...。実際、昔のトランシーバーの取扱説明書などには、低温下で運用する際は、タオル等で保温しながら運用して下さい、とよく書いてあった。Cberの場合、冬場は、スキー場で運用したり、スキー場のリフトを利用して夏場なら何時間もかかるような道のりをいとも簡単に高所に行けたりするので、極低温下での性能は意外と重要である。
したがって、夏場に何の変哲もなく性能の違いが出ない電池同士でも、冬場の低温下では大きな差が出る場合がある。

次回は、100円ショップ電池ブランド間で差があるのか、一般的な国産ブランドのアルカリと100円ショップ電池で差があるのか等を見てみたい。

(本文は、単三電池に関する記述です。単1や単2は状況が異なります。またN数(サンプル数)も、「1」なので、あくまでイメージとして捉えてください。)

                                               
('08/8)

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実際に使用したLi-ionは、右裏側のものだが、最近の電池であれば手前の大きさになる。


1.2Ah鉛シールドバッテリー(参考)

測定

単三電池は大きさ比較用。 自動記録装置のような高尚なものはないので、カメラのインターバル撮影で記録(笑)。


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