うかつでした



うっかりしていたが、例の無線友達は墓参りの専門家だった!! 彼に呼んでェ~!毎日!」の創刊号を上げたのは失敗だったかもしれない。創刊号の「It’s COTA!! (Cemetery on the Air) 21世紀のキセキ」の記事がいたく気に入ってしまったらしい。

さっそく6月号は自分で買ってきたらしいが、「6月号の内容もYK局の運用記でぜひ紹介しておいてくださいよ」という。「いやいや、そう言われても、当分運用の予定はないから~」とやんわり断ったのだが、今、彼を落胆させるのは得策ではない。彼は例の「アマ損!!」事件から、今せっかく立ち直りつつあるからだ。

仕方ない。後段に記した通り、今月、今年の島嶼運用第一弾を行う予定で、もともと「お知らせ」は載せるつもりでいたので、今回は運用記ではないが、6月号の「It’s COTA!! (Cemetery on the Air) 21世紀のキセキ」の記事内容を紹介しておきます。(ということで、今回は写真はありません。)



6月号の「It’s COTA!!」


6月号の「It’s COTA!!」は、現在60歳前後?の女性の話だ。彼女は昔やっていたアマチュア無線を最近再開したところだという。子供も皆独立して、時間ができたのは事実だが、なぜ今頃になってもう一度始める気になったのかは、正直なところ彼女にもわからないという。今号は彼女の、その若い頃の話を載せている。内容の概略は次のようなものだ。(=悠Q出版許諾済み。)



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彼女の高校時代の彼氏は、電気いじりとバイクが好きで、隣町の高校に通っていた。

彼女と高校は違ったわけだが、毎夕、彼は学校帰りの決まった時間に彼女を6mでコールしてくるのだった。帰宅部だった彼女は毎日それが楽しみで待ち遠しかった。というよりそれが楽しみで帰宅部になったのだ。彼女も彼に言われて、無理やり電話級を取らされていたのである。

当時はRJX-601といった6mのAM/FM機が、中高生の間ではまだ盛んに使われていたころだが、彼は自分で6mのハンディ機を作って、彼女との交信に使っていたのである。2Chのみのスーパーで、出力も500mWほど、アンテナはもちろんロッドアンテナだ。もっとも彼女の方は市販のリグだ。彼が作ったようなロッドアンテナ付きのハンディ機は、どうも子供だましのおもちゃのような気がして、頼りなかったのである。

彼は部活でいつも遅く、高校にはバイクで通っていたのだが、毎日、彼女の家まで無線が届く範囲までくると、交信して帰っていくのである。彼女が住んでいるのは都内とはいえ、当時はまだ田園がたくさん残る多摩地区で、ちょっと小高い場所ならかなり見通しが効いたのである。

もちろん、無線なのでお互い甘いささやきのような会話はできないが、だからこそお互い自分の思いをなんとか伝えようとしていたのか、逆に彼の愛情や優しさのようなものをよく感じることがあったという。もちろん、彼とは常日頃電話でも話していたし、日曜日などに公園や遊園地でデートもした。ただ、無線で話をしていた時のことは、妙に楽しい思い出として鮮明に記憶に残っているのだという。


高3の七夕のデートで、彼は冗談交じりに、『大学を卒業したらすぐに、俺も7月7日の日にプロポーズでもするよ』、とおどけて言っていた。『7月7日って一年で一回しか会えない日じゃない。そんなのダメェ~』、とむくれたのが懐かしい。

その夏休み、彼は『Esで東京まで電波飛ばすから、いつもの時間に待っていて』と言って、母親の実家がある北海道に向けてバイクでツーリング旅行にでかけていった。普段の通学は校則で原付の制限付きだが、ツーリングは自動二輪だ。出発するときの、彼の嬉々とした子供のような笑顔が今でも瞼の底に焼き付いているという。

彼が出発してからというもの、彼女は連日自宅や、ポータブル機を担いで川べりで待ち受けていた。

しかし東北の立ち寄り先はすべて終わったはずなのに、まだ信号は入ってこない。そして道内を走破して目的地に着く頃合いなっても、一向に彼からの入感はない・・・。

「やっぱりあんなおもちゃのような機械じゃだめなのね」、と彼女は深く考えていなかったが、実は彼は到着する直前、交信叶わぬまま交通事故で帰らぬ人となっていたのである。


北海道が大好きだと言っていた彼は、そのまま、母親の実家近くの墓地へ埋葬されることになった。彼が愛用していたハンディ機も一緒に。

彼女は、大学に入ってからも、そして卒業して社会人になってからも、しばらくは無線機を手放さずに、毎年7月7日になるとスイッチを入れて、なんとはなしに無線機から漏れくる音を聞いていたのだった。

それは会社の同僚との結婚が決まって、そろそろ身の回りの物を整理しなければならない時が迫ってきた時だ。高曇りの蒸し暑い夕暮れだった。


『これが最後になるね』、少し感慨深げに、7月7日いつもの時間にスイッチを入れて、落としていたボリュームの受信音を少し上げた瞬間だった。

・・・それは紛れもなく彼の声だった。

『xxx、結婚おめでとう・・・。しあわせになって・・・。』

はじめは力強かった信号も、すぐにQSBがかかり始め、1分もたたないうちに電波は落ちていった。(xxxは女性の名前)

『一人だけ勝手にしゃべって、ずるい!・・・』

彼女があわててPTTを押した時はもう遅かった。


15年後、彼女は子供を連れて、北海道に家族旅行にきていた。

ふと一人だけの自由時間ができた彼女は、彼のことを思い出し、彼のお墓へ墓参りすることにする。「思い出す」、というのは実は正確ではなく、今まで一度も来たことがなかった・・・というより、来ようとしなかったことが、ずっと心の奥底に引っかかっていたのだ。

その墓地は海も遠望できる、緩やかな坂道を登った小高い丘の上にあり、彼はその中でも一番高い場所に眠っていた。そしてその敷地のすぐ裏手には、物置のような小屋と少し古びたコンクリートタワーが一本立っている。タワーにアンテナらしきものはない。しかし彼女は一応無線をかじっていたので、それが何に使われていたのかは想像がつく。

お墓参りを済ませた彼女は、住職に尋ねてみた。住職曰く、お墓の近くだとアンテナが妙に目立ってしまうので、鉄骨のタワーではなく目立ちにくいコンクリートポール式の控えめなタワーを立てて一時アマチュア無線をやっていたという。

しかもできるだけ目立たぬよう、まずは入門バンドとしての6mのみで、3エレ八木一本で始めたのだという。ローテーターも付けずに、ビームは本州方向固定だ。しかし開局したとたん、なぜか本業が急に忙しくなって、実質QRVしたのはわずか2か月程度で、一年もたたないうちにアンテナも撤去してしまったらしい。

驚いたことに、住職が無線を始めたというその日は、なんと彼女が結婚した年で、彼女が彼と最後に「交信」するひと月前のことだった。


回廊の片隅に佇んで、もう一度彼女は丘の上で眠っている彼の方を見遣ると、つぶやいた。

『やっぱ、ロッドアンテナじゃダメじゃない・・・。』

『でも、私はしあわせだから。』


・・・ようやく彼に応答できたのだった。


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話の概略は以上だが、さらにくわしくは呼んでェ~!毎日!」6月号を読んでください。


 ←「呼んでェ~!毎日!」6月号。

■サイドルテクニック社の「SR-007 v.F」は、創刊号で紹介されていた、「SR-007」に諜報無線周波数の受信・デコード機能を追加したものらしい。米国諜報機関が開発した新技術を搭載しているようだ。なお、メーカーの説明によると、v.Fはversion Fの略だそうで、FはFelixを指すとのこと。





OADがスタート・・・・・する頃には、潮騒の音がもう一度届いていると思います(謎。


お知らせ



今年の離島(島嶼)運用第一弾を下記のとおり行う予定ですので、各局入感ありましたら、よろしくお願いいたします。

第一弾は、長崎県の五島列島での運用となります。

なぜ、ここなのか??? 「呼んでェ~!毎日!」創刊号の「美しい海と無線運用 五島列島への無銭旅行」の記事(笑)を読んで触発された部分もありますが、元々は長野の某局長さんの勧めによるものです。


運用日時及び場所

  ・2025年5月29日(木)から6月2日(月)、五島列島(長崎県)
     ・29日午後: 福江島
     ・29日夕方~30日午後: 奈留島
     ・30日夕方~2日午前 : 福江島

  ・周波数: 11mのみ

*気象条件その他の諸般の事情により、予告なく計画変更する場合がありますのでご了承ください。



 (2025/5/23)



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