2021運用記
御座山(秋オン)
長野県北相木村



[八ヶ岳の山裾に広がる野辺山高原: 御座山山頂より]






おぐらやま



御座山と書いて、すぐに「おぐらやま」と読める人はそれほど多くはないのではないだろうか。もっとも、「ござやま」という山もあるだろうから、必ずしも、「おぐらやま」と読むのが正解というわけではないが・・・。

 右後方は浅間山
御座山(標高2,112m)は、長野県南相木村と北相木村にまたがる山だ。世間一般にはそれほど有名ではないと思われるこの山の名前を認識させられたのは、少なくとも当局にとっては1985年8月の日航ジャンボ機墜落事故時の、一連の報道からである。

現在のようにGPSも何もなかった時代、しかも夜間ということで、墜落場所を特定するのに相当の時間がかかり、それが今でも墜落場所が分かっていながら意図的に公表するのを遅らせたのではないか、という謀略説が消えていない原因となっている。

つまり、民間人にすぐに現場にかけつけてもらっては困るという特殊な事情があり、時間稼ぎのために意図的に「現場」の偽情報を出して、「何者か」が情報操作をしたという説である。謀略かどうかはさておき、実際、一刻も早く救助に向かおうとしている消防や警察はもちろん、報道陣も右往左往、翻弄されたことは事実である。

夜間なので墜落場所の火炎は航空機からは確認できたものの、正確な緯度経度は分からない。報道用の民間ヘリなどは現場上空でホバリングできるわけだが、当時は羽田などのTACAN(戦術航法装置)等からの電波で距離を測定するしか測位する方法がなかったのである。誤差はすくなくとも数キロの範囲に及ぶ。現地の人でさえほとんど分け入ることもない、人跡未踏ともいえる山の中であることや、墜落の目撃者がいなかったことも、現場に人が接近するのに時間がかかった理由の一つでもある。

墜落時間は午後7時少し前だが、墜落現場が特定できて救助に向かえたのは夜が明けて視界が効くようになってからだ。その間、墜落場所の情報は二転三転する。墜落したのは長野県側だ、いや、群馬県側だとか情報はかなり錯そうしたようだ。その情報の中で出てくる地名が、三国峠やぶどう峠、この御座山などである。場所を指し示すのに、当然だが、どこか起点になる地名が必要だからだ。










ポータブルゼロより



ジャンボ機墜落事故について書くのはこの運用記の目的ではないので、別の場に譲るとして(2012年の三国山運用記でも同じことを言っていた気がしますが(笑)、秋オンは御座山からの運用だ。

今年の春オンでは、ポータブルセブンの、実質地上高200mにも満たない福島の山から、東京や埼玉の奥多摩、奥武蔵方面と交信できるのかというのがテーマだった。そしてGWの一斉OADでは、関東平野の北端に位置する1,200mの低山から、埼玉や都心方向の平地に向かってどこまで交信できるのかというのがテーマだった。今回も、関心事は関東平野向けだ。御座山の標高は一応2,112m。奥秩父、奥武蔵や奥多摩の山々の頭越し?にどこまで電波が届くのかということである。ポータブルゼロの位置ながら、埼玉や東京、神奈川などの1エリア向けに、間に存在する山々がどのように影響するのかという漠然とした関心である。果たして、城山湖(神奈川県)などとはどうなのか?ということである。

おおむね、ある山からの飛び受けのイメージは、だいたい地図を見ていると想像ができる。これは誰でも一緒で、であるからこそ、電波的に人気のある山とそうでない山が出てくるのであり、しかも大方そのイメージは実際と合致している場合が多い。今回、御座山は東京・埼玉向けには「悪い」、という第一印象だ。おそらく他の局長さんの印象もそうだろう。しかし、もしそれが一点の場所でも想定外に交信できることで覆るのならば、それはそれで面白いと思うのである。



「山地」越えはどのような飛び受けなのか?



登山道を歩いている最中は、霧の中で、時折雨粒も落ちてくる白い世界だったが、山頂に到着するころにはすっかり晴れ上がっていた。台風一過で、雲一つない快晴だ。空気中の微粒子も洗い流してくれたせいか、紫外線が強く降り注いでいる気配である。おかげで?天頂の色濃い青色から、地平線方向に向かって薄くなっていく青のグラデーションが見事だ。

この山頂は特に西側の視界が開けており、八ヶ岳全体が手でつかめるほどに、全容を見渡すことができる。ジオラマのように八ヶ岳の山裾に広がる野辺山の景色が美しい。(=冒頭写真) 

山頂の周囲は、近くから遠くまで、すぐに同定できる山だけで枚挙に暇がないほど、たくさんの山々がよく見える。過去に運用した場所が特に目を惹くのだが、埼玉県側の両神山、群馬県側の西・東御荷鉾山や赤久縄山、赤城山、榛名山全体、北方向に浅間山、そして今日は空気が澄んでいるせいか、槍ヶ岳などの北アルプスの山々までよく見える。


 左)我思う・・・(笑。というか、危ないですよ。
 中)北アルプス槍ヶ岳。左端は、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳。向こう側は岐阜県だ。
 右)右端から、西御荷鉾山、赤久縄山。中央、赤城山、左手前、榛名山全容。



・・・と景色の鑑賞に浸っている場合ではない。さっそく岩場にNTS115をセッティング、QRV開始だ。山名標のある岩場の山頂はせいぜい2,3人がやっとなので、ここでQRVするわけにはいかない。15mほど引き返して、同じような岩場の上で店開きである。ただし、ここも山頂とほぼ一緒で、一歩よろけただけで、数百メートル下に真っ逆さま、一巻の終わりである。

8:40分、QRVを開始する。御座山は南相木村と北相木村に跨る山だが、地理院地図では山頂は微妙に北相木村側にあるようなので、ロケのアナウンスは「北相木村」とさせていただく。最初にコールをいただいたのはサイタマYT220局だ。本日のテーマに沿って?(笑)いきなりさいたま市だ。RSは51/53、やはり想像通り、奥秩父・奥武蔵の「山地」越えから平面にむかっては、電波はかなり弱まるようだ。

しかし、長野方面には、埼玉・東京方面のように、間に「山地」がない。視界も下まで開けているので、そこそこ飛ぶようで、木曽御嶽中腹(田の原)のアイチBS105局とは53/55である。続いて福島県田村市(仙台平)からフクシマYS950ともつながる。ポータブルセブンの福島県だが、こちらもある意味想定通りで、間に「山」は入っても「山地」が入らないルートでは、相手の高度がそこそこあれば、普通に飛んでいくようである。同じポータブルセブンからは、後からふくしまTT244局(福島県田村市)、きょうとKP127局(いわき市)からもコールをいただく。いずれも51/51だ。

 八ヶ岳赤岳:KM117局が居ま・・・・せん(笑。
今日はOADにもかかわらず、運用局が少ない。いつもならチャンネルはすべて埋まっているのが普通だが、使われているチャンネルはせいぜい二つか三つ程度、飛んでくるCQもほとんど聞こえてこない。ここは確かに飛び受けは良くはないだろうが、それほどまで悪いわけではないはずだが・・・(笑。

移動局が少ないので、「間の山地」にあたる、秩父や奥武蔵界隈の600~800m程度の山との交信具合も思うように確かめられない。結果的にこの辺りから聞こえてきたのは、武甲山のおおさと59局、秩父高原牧場のサイタマYM518局、関八州見晴台?のとうきょうP55局、黒山展望台のかわごえAK61局、少し平地側に下って仙元山のサイタマHN209局ぐらいだろうか。

おおさと59局が56/56なのは、高さと距離の関係から納得のいく入感具合だが、奥武蔵界隈はいずれも52からせいぜい54程度の入感である。「山地」の中からの電波は、やはりある程度一つ頭が抜き出た高度がないと強力入感とはならないようだ。

二ノ宮山(滑川町)のさいたまCY55局が、高度がない割には57/56と意外な強さだが、基本的には当局から見て真東から北方向にずれるにしたがって、「山地」の被り方が少なくなるので、飛び受けが良くなるはずだ。だから、館林市のサイタマLB380局、太田市のグンマYH495局などとは平地でも54~55でつながる。すべてイメージ通りだ。

肝心の埼玉、都心方向の平地はどうか?前述のサイタマYT220局のさいたま市以外は、狭山市51(ねりまTN39局)、加須市52(さいたまKS73局、RJ-410)、熊谷市51(サイタマSR400局)、熊谷市54(さいたまMK2局)といったところか。いずれも、平均的には51~52程度で、距離の割には入感が弱い。それでも、同じ平地でも、前述のとおり北に上がるにつれ強度は強くなる傾向であることは間違いないようだ。

QSOを聞いていると、ちばMR21局などもQRVされているようだが、MR21局の信号は捉えることはできない。それ以外にも、千葉県からの信号は全く聞こえてこないのである。城山湖については、つくばKB927局(茨城県宝篋山)が、かながわCE47局と交信されているのが聞こえてくるのだが、耳をすましてみても残念ながらCE47局の信号はこちらには入感なしだ。神奈川方向ともなると、間に入る「山地」は、当局が想定していた以上に更に手ごわいようである(笑。

今日は、山梨県鳴沢村から、しずおかDD23局が出られている。正確なロケは聞きそびれたが、57/57ということは、富士山4合目か5合目か??。そのようなスーパーロケでも、聞いている限りでは、入ってくるコールはほとんどないようだ。やはり今日は運用局が相当少ないということだろうか。

今回は残念ながら、実験的には少し運用局が少なすぎたが、「山地」の影響は想定通りで、意外性のない、極めて常識的な結果となったようである(笑。


34QSO、各局TNX!!

(2021/09/23)



  山頂(右後ろ)よりこちらのほうが、微妙に高いような・・・(笑。
  左後方は、蓼科山、横岳。






運用データ


 ■運用日時・場所:

 
  ・2021年9月19日(日) 8:40~12:40 
      長野県北相木村御座山山頂(標高2,112m)) 
     

 ■使用&装備リグ:
   CB : NTS115 (西無線研究所)
       ICB-87R (新技適ラジックス改)
       
 ■使用&装備電源
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ah
   リチウムイオンポリマー電池11.1V/1.5Ah
   ・乾電池



QSO局
34QSO TNX!!  
(敬称略)

2021年9月19日 快晴 8:40~12:40    
サイタマYT220/埼玉県さいたま市 51/53 アイチBS105/長野県木曽御嶽中腹田の原 53/55
フクシマYS950/福島県田村市仙台平 51/51 ニイガタRS450/新潟県小千谷市金倉山 51/51
まえばしHS75/群馬県高崎市箕郷町 54/54 さいたまCY55/埼玉県滑川町二ノ宮山 57/56
ナガノMA205/長野県上田市美ヶ原物見石山 52/52 グンマTK429/群馬県赤城山長七郎山 58/58
サイタマSR400/埼玉県熊谷市 51/51  ふくしまTT244/福島県田村市片曽根山 51/51 
きょうとKP127/福島県いわき市芝山 51/51  つくばKB927/茨城県宝篋山 57/59 
かわごえAK61/埼玉県越生町黒山展望台 51/51  サイタマLB380/群馬県館林市 54/54 
ちばBK61/栃木県佐野市三毳山 52/51  ながのEN07/群馬県渋峠 51/52 
しずおかDD23/山梨県鳴沢村 57/57  ヤマナシTA152/山梨県北杜市横尾山 59/58 
ねりまTN39/埼玉県狭山市入間川河川敷 51/53  とちぎFB21/栃木県日光市勝雲山 54/55 
さいたまMK2/埼玉県熊谷市荒川河川敷  54/54  さいたまKS73/埼玉県加須市 (RJ-410) 52/M5 
にいがたM33/茨城県笠間市  53/54  トチギAE560/長野県蓼科山  59/58 
サイタマHN209/埼玉県小川町仙元山  52/54  サイタマAB847/  51/51 
グンマYH495/群馬県太田市北部運動公園  55/55  さいたまBY36/埼玉県秩父市城峰山  54/53 
マツモトTK304/長野県乗鞍岳剣ヶ峰  53/53  サイタマMS118/東京都雲取山  57/59 
おおさと59/埼玉県横瀬町武甲山  56/56  サイタマYM518/埼玉県東秩父村ふれあい牧場  54/54 
しずおかDD23/山梨県鳴沢村 53/53  いばらきNT23/茨城県尺丈山  58/59 
  




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