全日空186便が通る頃
『遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休める時、
遥か雲海の上を、音もなく流れ去る気流は、
たゆみない宇宙の営みを告げています。
満点の星をいただく果てしない光の海を、
豊かに流れゆく風に 心を開けば、
煌く星座の物語も聞こえてくる、夜の静寂の、
なんと饒舌なことでしょうか。
光と影の境に消えていったはるかな地平線も
瞼に浮かんでまいります。』
『夜間飛行の、
ジェット機の翼に点滅するランプは、
遠ざかるにつれ、
次第に星のまたたきと
区別がつかなくなります。
・・・』
本当に、名文だ(笑。本当に消えていった地平線が瞼に浮かんでくるようだ。そしてその奥に広がる夜の静寂と、やすらぎを感じさせてくれる。言わずと知れた、FM番組「ジェットストリーム」のオープニングとエンディングのセリフである。読んでいるだけで、頭の中に、あの誰もが知っているBGMが勝手に流れてくる。
ジェットストリームと言えば、看板スポンサーのJALとすぐに結びつくが、現在、当局の上空を一日の最後に飛んで来るのは、全日空の186便だ。ハワイ行きである。通常、通り過ぎる時刻は22時30分頃、羽田のゲートを離れて約20分以上過ぎたころあいだ。その5分くらい前には、同じくANAの116便、バンクーバー行きが飛んで来る。高度は3,500m程度に達しているが、耳を澄ますと上空を通過する音も聞こえてくる。夜の静寂の、なんと饒舌なことか(笑。この186便を見送って?一日を終わるのが今日この頃だ。
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犬吠埼上空から洋上へと抜けていく。
(FlightAwareより) |
南風か、北風かで羽田を離陸する方向は異なるが、春オン運用記で記した通り、いずれも東京湾の江戸川河口付近から関宿(千葉県野田市)方向へ一旦北上していくのが標準的な北米方面への出発経路だ。プラン上は関宿経由なのかもしれないが、実際には関宿手前から右旋回を開始して茨城県南部から利根川沿いに犬吠埼(「INUBO」ウェイポイント)へ抜けていくのがハワイ行きのフライトの一般的な通り道だ。
いつもANA186便が通り過ぎると、行き先であるハワイというリゾートを思い浮かべながらも、それとは対照的に、「今日もそろそろ一日が終わってしまう・・・」と、一杯やりながら現実のわが身を思うのである。そして、最近はこのANA186便が、ジェットストリーム代わりなのだが、「たゆみない宇宙の営み」を感じる前に、「ああ今日も何もせずに終わってしまった」と、一日を無駄にしてしまったわが身の情けなさを、ほろ酔い加減に思うのである(笑。
山田ARSR
関宿の前後あたりで東京ACC関東北から、あるいは羽田のディパーチャーから直接、関東東へと管制周波数は切り替わる。関東東セクション133.6MHzでの交信が、最後に追っかけられる交信だ。その後飛行機は犬吠埼周辺上空を通過して洋上へと抜けていく。
・・・という理由からではないが、今回は久しぶりに犬吠埼にQRVしてみる。主な目的はブラックバードのEs局の入感具合と外付け用のスピーカーをいくつかチェックすることだ。今月の離島運用ではブラックバードを持ち込もうと考えているのだが、使い物にならなくては話にならない、そのためのチェックだ。しかし、そんなことはともかく、一日中潮騒を聞きながら浜辺で寝転んで寛ごうというのがそれ以上の目的だ。
しかしせっかく犬吠埼まで行くので、その前にまずは関東東エリアをカバーする航空路監視レーダー局(ARSR: Air Route Surveillance
Radar)へ立ち寄ってみる。場所は千葉県香取市(旧山田町エリア)の一角だ。東京ACCは、ここのレーダー画像を所沢で見ながら当該エリアの管制を行っている。
建物の下まで行っても仕方ないので、全体が望める南側から攻めてみる。車一台ほど通るのがやっとの道を進んでいくと、朝早くからすでに農家の方が作業中だ。そんな田園風景の向こうにレーダーサイトの建物が現れる。ANA186便は毎晩、このレーダー覆域を抜けて洋上飛行を続けていくのだろうか?
「夜間飛行の、ジェット機の翼に点滅するランプは、遠ざかるにつれ、次第に星のまたたきと区別がつかなくな」るのだが、レーダーは太平洋へと抜けていった機影を、まだしばらくは追い続けるのである。
迷宮に落ちて、そしてEsは上がる
犬吠埼の南側に外川(とかわ)という街がある。丘陵の上から南の海に向かって坂を下るように斜面に広がる街だ。日本史をかじった方は良く知っているであろう「干鰯」(ほしか)で栄えた街だ。この外川漁港でまずはコンディションチェックをしてみる。87Rのスイッチオンと同時にイワテB73局のCQが飛び込んでくる。今日はポータブル8、北海道移動のようだ。天気がもう一つパッとしないせいか、コンディションは朝からパッとしているようだ。Esは常に天気とは裏腹の関係にある(笑。
犬吠埼は、いつもの君ヶ浜だ。浜辺の階段状のコンクリートにブラックバードをセッティング、潮騒がかなりの音量で響いてくる。今日は灯台から少し離れた北寄りのポジショニングだ。コンクリートの一番上の道を、浜辺の気持ちよさを味わうようにジョギングの人や、自転車がゆっくりと駆け抜けていく。風は微風、空もどんより、日差しもほとんど感じないぐらい優しい。寝転んでのんびりするには絶好のコンディションだ。これでビールが飲めたら最高なのだが・・・
潮騒を聞きながら浜辺で横になっていると、いつの間にか迷宮に落ちていた。午前は眠りとともに過ぎ去っていった(笑。意識が戻ってきたのは12時半だ。普段なら気になるブラックバードのノイズも、潮騒にかき消されて意外と目立たない(笑。
スピーカーはいろいろ試してみるが、どうも気に入った音のものがない。メーカーはまじめに作る気がないのではないかと思えてくる。自分で作った方が手っ取り速いのだが、作っている時間がもったいない。最近は、Bluetoothでアウトドア用のパワードスピーカーがたくさん出回っている。スマホや携帯オーディオデバイスから、気軽に音楽を楽しむためだ。しかし、それらのスピーカーは低電圧で、効率の良いアンプを使う傾向にあるので、ほとんどすべてがデジタル増幅のD級アンプだ。効率の良いD級を使うのは、付属バッテリーでの使用時間を極力長くするためである。
これらのパワードスピーカーをブラックバードと組み合わせて使う場合もあるかもしれないが、その場合の注意点としては、ブラックバードは基本的には「高感度設計」なので、デジタルアンプのものは避けた方がよい。リグの近くで使うと、デジタルの発振ノイズをブラックバードが拾うことになる。つくりの悪いアンプでは、ボリュームを上げ下げするとブラックバードのSメータもググっと上がったり下がったりする(笑。D級を使うときはリグから極力離す必要がある。お薦めは普通のアナログアンプだ。また、市民ラジオの制約上、接続コードで外部スピーカーを使用する場合はコードは2m以内にする必要がある。Bluetooth接続の場合は、再生音が零コンマ何秒か遅れるので、気になる人は気になるかもしれない。
外部スピーカーはさておき、ブラックバード自体も、どうも内部のデジタルノイズを拾っているような節がある。このノイズでAGCがかかってしまっているようにも見えるのだが・・・思い過ごしかもしれない。もしそうだとしたら高感度設計であるが故のジレンマかもしれない。その他、これまで使った限りの印象としては、一般のリグに比べてアースがやや不安定、回路のユニットのノイズのシールド等ももう少し向上の余地がありそうな雰囲気だ。しかし中身を見たことがあるわけではないので、なんとも言えない。
13時過ぎからは山口県などのEs局がちらほらと入感し始める。そしてボケーと海を眺めながら、何杯もコーヒーを味わっている間に、徐々に遠くのEs局の音量のレベルや聞こえてくる時間が増えてくる。15時過ぎからは急激にコンディションUP、三重県の熊野からなごやCE79局が57で強力入感してきたのを皮切りに、各局が強く入感し始める。30分もしないうちにチャンネル内はぐちゃぐちゃだ。誰が誰を呼んでいるのかわからない状態だ。
特に安定して聞こえてくるのは、ポータブル7だ。秋田県湯沢市から運用中のおおたY16局はず~っと、57ぐらいで聞こえている。GW一斉OADでお世話になったミヤギNE410局も58と強力だ。岩手県からは、イワテAA169局やCA29局他、さまざまな局長さんが聞こえてきて、まるで東北との距離が一足飛びに縮まったかのようだ。これだけいろんな局が聞こえてくると、グランドウェーブでやっているような感じである。そんな混とんとした中、えひめCA34局がCQを出されているのがしっかりと聞こえてくる。しかし、なぜか誰も応答しない。ということで呼ばせていただく(笑。余りにぐちゃぐちゃすぎて新たな出現局は捉えづらいのかもしれない。
近距離Esも発生しているようで、富士宮など静岡局が57から58を振ってくる。いつもの盟友(笑、しずおかDD23局もQRVされているようで、53くらいでQSOがよく聞こえてくる。さらに栃木や群馬の局も聞こえてくる。とてもグランドウェーブとは思えない場所からなので、電離層反射で間違いなさそうだ。かなり強力な近距離Esである。
途中87Rと比較しながらワッチを続けてみるが、ブラックバードの「感度」は決して悪くはない。総じて、「感度」という点だけに関していえば、87Rより細かい信号を捉えている場合が多い。ただ、当たり前だがブラックバードで聞こえて87Rで聞こえないということは全くなく、聞きやすさという点では87Rの方が圧倒的に上だ(笑。
6月になっていつの間にか長くなった日に、時間の感覚がまだついていけてないのだが、すでに17時を回っている。コンディションはまだまだ続くようだ・・・。
今晩も、186便はこの上空を通過していくのだろうか。潮騒は相変わらず、定期的なリズムを刻んでいた。
17QSO、各局TNX!! (´19/6/15)
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■運用日時・運用場所:
・2019年6月2日(日) 9:30~17:20
・千葉県銚子市君ヶ浜
■使用&装備リグ:
CB : Blackbird (Polaris)+外付けスピーカー
ICB-87R(SONY)
SR-01(サイエンテックス)
■使用電源
・リチウムイオン電池10.8V/4.2Ah、10.8V/1.6Ah
リチウムイオンポリマー電池11.1V/3.0Ahほか
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銚子電鉄犬吠駅 |
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QSO局: 17QSO TNX!!
(敬称略)
2019年6月2日(日) 9:30~17:20 |
イワテB73/8 |
53/54 |
ヤマグチSV221/山口県周南市 |
52/52 |
きょうとON36/3 |
53/55 |
ひょうごCY15/3 |
53/53 |
なごやCE79/三重県熊野市 |
57/57 |
ぎふBR37/2 |
56/51 |
ひょうごCY15/3 |
56/55 |
シマネMS228/島根県隠岐の島 |
52/51 |
ミヤギAB137/7 |
52/52 |
ミヤギNE410/7 |
58/57 |
ソラチAA246/8 |
54/52 |
フクシマSP302/宮城県 |
58/54 |
おおたY16/秋田県湯沢市 |
57/55 |
えひめCA34/3 |
52/51 |
ちばAB31/7 |
54/54 |
かがわMC36/香川県丸亀市 |
57/57 |
ミエAA469/三重県 |
55/56 |
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備考:QSOは、イワテB73局を除き、すべてブラックバード。
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