風船

平成最後の年末だ。振り返ると、平成の「事件」のひとつとして思い出されるのは、「風船おじさん」事件だ。風船にぶら下がって日本から北米大陸まで渡ろうとした、自称冒険家のいわゆる「風船おじさん」による事件である。風船おじさんは、周囲の制止を押し切るように滋賀県から離陸し、二日もしないうちに北太平洋上で行方不明になり、それきりだ。その準備段階からの計画の杜撰さと無謀な試みが大いにマスコミを賑わせた、お騒がせ事件のひとつとして、世間では挙げられている。

今年の最後の運用ということで、今回選んでみた場所は埼玉県東秩父村の登谷山(とやさん)だ。標高は668mほど、秩父高原牧場から北へと続く山脈の最も北側に位置する。この山脈は、ほぼ稜線を車で移動可能なので、無線運用に使われる場所がたくさんある。秩父高原牧場、二本木峠、皇鈴山(みすずやま)、その他無名ロケなどなどだ。奥武蔵や秩父界隈は、堂平を筆頭に、アマでもよく使われる場所が多い。その理由は山頂まで、もしくは、山頂直下まで車で行ける場所が多いからである。特に、リグ一丁でも運用OKという11mとは違い、アンテナなど機材が比較的大掛かりになるアマでは、車で山頂まで行けるというのは重要なことである。関八州見晴台、黒山展望台なども11mでもよく使われる。してみると、車でいける重宝な運用場所という意味では、奥武蔵の方が奥多摩より圧倒的に多いように思われる。

「山頂」を車から降りて0分、「山頂直下」を2~3分以内と仮に定義するならば、前述の場所はすべて山頂もしくは山頂直下に該当する。登谷山の場合は、頂上まで5分程度歩く必要があるが、感覚的にはほぼ山頂直下と同じだ。

左)山頂は、狭いながらも広場のように開けている。戦時中は高射砲陣地として使われる予定だった
   というのもうなずける。
中)下に寄居町の中心部が見える。
右)左から笠山、その右向こうに堂平山が見える。


この登谷山を運用場所に決めたのは前週月曜の17日ごろだ。最近なぜか朝日新聞の天声人語欄とはシンクロしているようで(笑、20日付の同欄で風船爆弾の話が出てきてビックリ仰天だ(びっくりするほどのことでもありませんが)。今年のSVの時も見事にシンクロしてました(笑。もっとも天声人語の主題は風船爆弾ではなく、サイバー攻撃の話であるが。

なぜびっくりしたかといえば、運用ロケを決めた後、風船爆弾のことをちょうど思い起こしていたからだ。いわゆる「風船爆弾」は周知のとおり太平洋戦争時に実戦投入された、爆弾を風船に積んだ兵器だ。これを日本の海岸などから飛ばし、アメリカ本土を攻撃しようというものである。人手いらずの無人兵器で、爆撃地点(着地地点)も当然コントロール不可という代物だが、9千個程度飛ばされたうち300個ほどが北米に到達、無人の森林などを「爆撃」したと言われている。一説では、1,000個くらいが到達したという説もある。旧日本軍もどれだけ戦果に期待していたかは不明である。むしろ結果的には、前線などとはほど遠い平和な日常生活の中で、いつどこから日本に攻撃されるかわからないという不安を駆り立てる情動作戦の意味合いの方が強い戦術となった。実際、戦時中は日本からの攻撃によるものだということは米国内では極秘扱いされていたようである。

話は若干それるが、疑心暗鬼になっている状態の人は過剰ともいえる反応に出やすい。戦時中ならなおさらだ。例えば、いわゆる「ロサンゼルスの戦い」事件。1942年2月24日深夜(25日)、ロサンゼルス上空に突如未確認飛行物体の編隊が出現した。その数15機とも40機ともいわれる。「日本軍の突然の襲来」に慌てふためいた軍は高射砲や戦闘機で必死に応戦するものの、すべて徒労に帰する。無論、旧日本軍がロサンゼルス上空に進出したという史実は存在しない。では誰なのか?目撃情報や公式報告等を総合すると、今でいうところのいわゆるUFOだ。相手がUFOなのだから、撃墜されたり、損傷を負うなどということはあり得ない、いわばゴーストと戦っているようなもので、戦果などあり得るはずはない。結局この応戦で、一般市民が落ちてきた弾丸の破片にあたるなどして死亡したという。「UFO」という概念は当時は存在していなかったから、米軍が日本軍の襲来とみなしたのは当然だが、開戦からまだ数か月、真珠湾での奇襲攻撃などの影響が心理的には大きな伏線になっていたに違いない。

ところで、旧日本軍の風船爆弾は、「風船」と言いながら実際は「気球爆弾」で、気球の直径は10メートルにも達する。この気球の素材は和紙とこんにゃく糊である。和紙はこの(今でいうところの)東秩父村や小川町一帯の特産のものがベースだ。東秩父村には、今でも道の駅「和紙の里」があるくらい、和紙づくりの伝統を引き継いできた土地柄だ。こんにゃくは、量産時は全国的にかき集められたようだが、もともとこんにゃくといえば、すぐお隣の群馬県の特産でもある。

ひょっとしたら、この風船爆弾のことが、風船おじさんの頭の片隅にあったのかもしれない。俺も偏西風に乗ってすぐにアメリカまで行けるにちがいない、と。




オンエア~






リグ当てクイズ?

空は朝から微妙~な雰囲気だ。今にも雨が降り出しそうなくらい雲で覆われたかと思うと、すぐに雲が切れて陽が差し始めたりする。ところどころ青空が広がったかと思えば、再び起伏のある灰色や黒色の雲が3Dの造形を空一面に創り上げる。風はほとんど全くなく、気温もそれほど低くはないので、じっとしていても寒く感じることはない。ただ見える景色は、主に寄居町ぐらいで、東京方面は低く垂れこめたガスでふさがれてしまって全く見えない。本来はもっと景色のいい場所のはずなのだが・・・。

日曜日ということで、各局さん、おなじみの場所にポジショニングされているようだ。大岩山(栃木県足利市)では4局程度で合同運用されているようだ。さいたまBB85局は珍しく太平山から出てこられるが、その後は定位置の三毳山へと移動される。自宅近辺からの平地運用の局長さんも結構おられるようだ。

大岩山のさいたまFL20局から、QSO終了間際に質問がある。『今日使っているリグは何ですか?』というものである。『SR-01か、87Rのどちらかでしょう』、と言われる。かなり聞きやすい変調音だったらしく、どうも合同運用中の各局がバックグラウンドでリグ当てをされていたらしい。そして最終的に候補は二つに絞られたようだ。「正解はSR-01です」、という回答に、どうも87Rだと思っていたFL20局はハズレということになったようだ(笑。

房総半島の先っぽ、鴨川市峯岡山からは、ちばBG92局が聞こえてくる。RSは55だが耳Sでは結構強力だ。峯岡山といえば自衛隊のレーダーがある場所だ、ロケが良いせいもあるかもしれないが、登谷山も標高の割に意外と受けはよいようだ。1,200m超の御荷鉾山や1,500m超の赤久縄山から同じく鴨川や南房総市とつながっているが、RSは55程度で、700mに満たない登谷山とあまり変わりはない。もっとも鴨川との距離は、登谷山の方が短いが。

つづいて筑波山中腹のいばらきSO47局からコールをいただく。57と非常に強力だ。「強力」、という意味は、S以上に変調が力強いからである。深くて聞きやすい。まるで近くにおられるようだ。リグをお尋ねすると870ということでごく普通だが、予想通り外部マイクを使用されている。『円筒形の普通の細長いやつですよ』、と少し恥ずかしそうに?言われる。いわゆるマイクマイクしたダイナミックマイクなのだろう。おそらくマイク感度が高いか、インピーダンスが一般的な600Ωより若干低めなのかもしれない。マイク選びは、マイクそのものより、リグとのマッチングが最も重要であることは言うまでもない。


ブラックバードが聞こえてきました・・・・ょ
(笑

2016年のCB界の話題をかっさらったのがサイエンテックス社のSR-01なら、今年2018年の話題をかっさらったのは、ポラリス・プレシジョン社のブラックバードだ。来年は西無線研究所あたりか??(笑。西無線研究所は新しいCB機を開発中とのことで、販売までされれば、また一つ新技適対応の新しいCB機がラインナップに加わることになる。我々CBerにとっては、うれしい限りだ。

ブラックバードはいよいよ出荷が始まったようで、おろしたてを使用中のむさしのFM812局のQSOが聞こえてくる。ロケは狭山湖のようだ。鴨川のチバBG92局と交信を開始されたようだが、どうもマイクが戻ってきたところで、電源が落ちてしまうのか、PTTの接続が悪いのか、なかなか応答が聞こえてこなかったり、信号が途切れ途切れになってしまっている。理由もわからずに応答を待っている、BG92局から目に見えない「」マークがたくさん飛んできているような雰囲気だ(笑。

FM812局も、鴨川のBG92局も55での入感だ。圧倒的に距離はBG92局の方が遠いいが、高さがモノを言うのが11m、FM812局は狭山湖から出られているので、Sが同じなのは妥当なところだろう。それより意外だったのは、狭山湖と鴨川がつながるという事実である。やはり相手のロケの良さが効いていそうだ。

狭山湖と言えば・・・関係ない話だが、先日山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」の名称が決まった時、昭和の初期(=戦前)、この狭山湖のある狭山公園周辺には、「狭山公園駅」、「狭山公園前駅」、「狭山公園際駅」の三つがあって、競合していたことを記事にしていたのも、これまた天声人語欄だった。

FM812局はリグの調子が悪いので、その後は「従来のリグ」に交換されたようだ。「従来のリグ」も、こちらに飛んでくる信号強度はほぼ一緒だ。変調の方はどうかというと、ブラックバードはオーディオ風に言うとどちらかというとフラット系で、その分聴感的には相対的にやや「薄め」の変調のように感じられる。その後の従来のリグの変調音の方が若干メリハリがあり、S強度は同じながら、その分耳Sは若干強いように感じられる。渋い音やメリハリのある音というのは、過変調と裏腹の関係にある場合も多いので、一概にどちらがいいとは言えない。ただし、EsなどのDX交信では、深い変調音の方が聞きやすいのは事実だ。ブラックバードはプリモのマイクの復刻版を装備だ。かく言う当局もスタンダードエディションの発注者の一人でもあるが、正直プリモを使う必然性がどこにあるのかはよく理解できていない。


1,700 vs. 2,700

今年の運用もこれが最後だ。なんとか最後まで天気も持った。来年も良い年になることを祈りながら、25QSO、各局TN・・・・・とその前に・・・・・。本来移動運用記であるはずなのに、なぜこうもケーキが登場するのか???その理由は「今回も」定かではない(笑。

 
左)東秩父村のチェファル。瀟洒な佇まいだが、残念ながら今日はClosed。
中)小川町のトリヨンフ。駅からは離れた場所にあるが、皆さん車で買いに来るので問題なし。
右)トリヨンフのガトーティーとレアチーズケーキ。
 


人口1,700人の神流町のカフェ、「まるはちカフェ」に触れたのは前回の運用記だ。今回は、人口2,700人の東秩父村のパティスリーはどうなのか?と、「チェファル」に立ち寄ってみる。ちなみに東秩父村は埼玉県で唯一の「村」だ。

あいにくクリスマス直前でクリスマスケーキの予約注文対応で手一杯らしく、店内営業はClosedだ。ということで、お隣、小川町のパティスリー「トリヨンフ」に寄ってみる。最初からこの2軒をはしごするつもりだったので全く問題ない(笑。こちらも、クリスマス直前とあって、ケーキ選びをする間も来店する人は引きも切らない。トリヨンフのレアチーズケーキは、天使が羽で舞い上がるようなスポンジの軽さが印象的だ。チェファルにしろトリヨンフにしろ、こうした地域にあるパティスリーが元気なことはよいことだ。

来年も良い年になることを祈りながら、25QSO、各局TNX!!

                            (’18/12/27)




運用データ

■運用日時・運用場所:
 
 ・2018年12月23日(日/祝) 9:40~13:40
  ・埼玉県東秩父村 
    登谷山山頂(標高668m)
  

■使用&装備リグ:
  CB : SR-01(サイエンテックス)、ICB-87R(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ
  
■使用電源
  リチウムイオン電池10.8V/3.2Ahほか

←「ヤング」はとっくに死語になったかと思いきや、
 どっこいまだ健在でした(笑。(トリヨンフ横にて)


QSO局
25QSO TNX!!  
(敬称略)

12月23日(日/祝) 9:40~13:40  
さいたまK7245/埼玉県 (DCR) M5/M5 せたがやCO760/埼玉県ときがわ町堂平山 58/59
さいたまQBM254/埼玉県志木市 52/53 ぐんまAD17/栃木県足利市大岩山 59/59+
いばらきHT44/茨木県筑波山子授け地蔵 55/53 ねりまCX72/東京都清瀬市 51/53
さいたまFL20/栃木県足利市大岩山 59/59 さいたまBB85/栃木県栃木市太平山 59/59
とちぎSA41栃木県足利市大岩山 59+/59  サイタマHK118/茨城県筑波山子授け地蔵 58/58 
さいたまKS73/埼玉県加須市 (RJ-410)  55/M5 イバラキAA944/茨城県  51/52 
ちばBG92/千葉県鴨川市峯岡山  55/55  いばらきSO47/茨城県筑波山中腹  57/57 
サイタマAB960/埼玉県吉見町  57/57  ミヤギKI529/栃木県芳賀町  53/52 
サイタマLB380/埼玉県上尾市  55/54  さいたまBY36/埼玉県横瀬町丸山  59/55 
サイタマRC130/埼玉県春日部市  53/55  イバラキRA136/埼玉県ときがわ町飯盛峠 56/54
さいたまUG100/東京都杉並区  54/54  カワゴエTH329/埼玉県 (DCR)  B2/B1
さいたまBB85/栃木県佐野市三毳山  59/59+  トチギAC427/栃木県足利市大坊山  58/59 
アダチYM240/茨城県筑波山子授け地蔵  58/58 
       
*Bは傘マークプラス、バーの本数。



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