[都心の街]



眠りから覚める街

3連休の真ん中の日曜日、朝8:30、まだ都会は完全には眠りから覚めていないように見える。寝ぼけ眼の遅い朝はまだこれから動き出すところだろうか。

ここ天覚山(埼玉県飯能市)は標高445mと、丘に毛の生えたような高さだが、東から南にかけての展望が優れている。スカイツリーや都心の高層ビル群、横浜のランドマークタワーまで「都会」が綺麗に見えている。真南から南西へは、湘南平から大山、丹沢山塊、そして間近には大岳山から御前山までばっちりだ。特に神奈川方面の視界の開け方は抜群で、他の奥多摩や秩父の山々からはなかなかこうは見えない。

いちばん隅っこのベンチの、更に一番隅っこにデイバッグを降ろし、さっそくリグを取り出してみる。本日のリグは前回の顔振峠移動と同じ、NECのNTR-808と87Rのコンビだ。本日のメインテーマは前回の続きでNTR-808の試験と87Rの調子の確認だ。87Rは5台所有しているが、順次新技適を取得していくつもりである。まだ取得しているのは1台のみ(=前回使用のもの)で、本日使用のリグの調子を確認、新技適取得をラジックスさんにお願いしようというわけだ。なにせこの固体は、動かすのは7~8年振りである(笑。この87R、新品同様なのだが、なぜかカバーが保管している間に傷んでしまったので、迷彩風カバーにお着替えである。これは、ゴンベイ・ハンドメイド・ショップさんが販売されているものだが(しかも手造り!)、もはや87Rの新品カバーは手に入らないので、こういうものを販売して頂けるというのは非常にありがたい。感謝である。

遅い朝
日曜日は遅いお目覚め
南方向
丹沢~大岳山。丹沢の左には大山も
よく見えいていた。
迷彩カバー
ゴンベイ・ハンドメイド・ショップの特製
カバーで87Rもお着替え



87R比較

快晴・微風、808の固めのボリューム兼電源スイッチを回すと、やや高めのノイズ音が銀色のスピーカーハウジングから響きだす。

CQを繰り出してみる。視界の開けた東に向かって?CQは飛んでいく(爆。・・・でも誰も捕まえてはくれないのだが・・・。日曜の朝のこの時間、当然と言えば当然だ。しかし、今日に関しては早めにデジ簡も投入(笑、ねりまTN39局からさっそく応答がある。固定からと思いきや、こんな時間に既に日和田山(埼玉県日高市)におられるようだ。まだ9時を少し回ったところだ。しばらく運用してから、ぶどう峠に移動されるご予定のようだ。TN39局とはその後11mでも無事つながる。前回報告している通り、808のSメータは極めて重いが、距離が近いだけあって、S7まで振っている。リグはRJ-380を持ってこられたようで、こちらからは59+20dbで飛んでいるようである。

筑波山中腹の子授け地蔵には、イバラギTK657局、サイタマKK007局が移動されている。KK007局は57と強力入感だが、なぜかTK657局は41~51と厳しい入感だ。コールサインの数字がなかなか取れないほどだ。87Rでもほぼ同じ入感具合だが、信号が弱いTK657局は87Rの方がわずかに信号をピックアップし易い。

写真上:大岳山と御前山の間に見える、
木が疎らな頂は現地では同定できな
かったが、帰って調べてみると岩茸石山
だった。

視界にはバッチリ飛び込んでいる丹沢山系の蛭ヶ岳には、ちばCH47局が移動されており、808にもCQが超強力入感してくる。さっそくお呼びしてみる。RSは57/56だ。808がメータ上で7まで振るというのは滅多にない。ここまで振るのは相当強力な信号で、耳Sでは当然59である。リグはICB-680をお使いとのことで、変調も770同様深くて非常に聞きやすい音だ。

こちら側はQSO途中で87Rにチェンジ、87RではSが+40dB近くまで振れている。こちらからの飛びは57で、808との差はわずかに1だ。808は130cm程度の短いアンテナながら87Rとほぼ同等の飛びを維持しているようである。さすがに変調についてはやはり87Rにしたとたん、明瞭度が上がったとのことで、音としては87Rの方が聞きやすいようである。これも前回ねりまTN39局より報告されたとおりである。

CH47局はこれから更に丹沢山頂まで移動されるようで、着いたらまたQRVされるとのことだ。こうしてみると87Rはやはり、飛び、受け、変調音、再生音など、非常にバランスの取れた完成度の高いリグなのかもしれない。


超限界微入力

10時半頃になると、電離層も活発になってきたのか、石垣島のYC228局も51~53で入感し始める。福岡や山口県の局も聞えてきて、8Chは夏の一時を思い起こさせるくらいにぎわってくる。今まで全く聞こえていなかったローカルさん各局(それでも2~3局だが)も、いつの間にかコールに回っている。いつどこから出てきたのか??、Esなど電離層が活発になるとどこからともなく局が現れてくる(笑。こちらはコールに回らず、87Rと比較しながら、808でYC228局等の受信具合の確認に専念だ。しかも、コールに回っているローカルのなかには、入感ギリギリの局もあり、こちらにとっては808の限界状態を確認するにはうってつけだ。

808で聴感限界の信号を良く聞いてみる。ごくごく微小入力では、PLL機の808では信号がプツリ、プツリと途切れるように聞こえる。プツリと途切れると、それらをつなぎ合わせるのは実は難しい。人の聴感とはたいしたもので、同じ限界微小入力でも、アナログ的に連続的に信号が変化する場合はそれらを補完して聴くことができるのであるが、デジタル的に途切れると再生が極めて難しいのである。アナログ的な87Rだとそれがうまくいく。つまり、87RはAF出力が小さいので、ボリュームをかなり上げることになる⇒が、しかし、ソニー系リグはボリュームをあげても中高音がうるさくないので余りノイズに邪魔されることなく信号を分離して聞くことができる。これが770などソニー系リグの特徴であるように思われる。つまりはsensitivityが特段よいというのではなく、聴感上のSN比の問題だ。770は更にスピーカーが大きいので、この効果がより大きく現れるというところが、DXで最も多用されている所以ではないかと思われる。

808に限らず、この、ごくごく微小入力がつぶされるというのは、PLL機の特徴であるように思われる。PLLループ内のシンセサイザ信号が関連するのではないかと思われるが、当局は専門家でないので良く分からない。ただ聴感上そのように聞こえるだけである。当局が使っている限りでは、この現象は同じPLL機、ソニーのICB-790Tでも発生する。2006年だったか、奈良県の大台ヶ原で伊豆半島滝知山移動のイワテB73局の限界ぎりぎりの信号を790Tで受けた時のことが印象深く残っている。まあ、いずれにせよ超限界入力時の話なので、実用上はほとんど問題になることはない。880T(=PLL機)も所有しているが、こちらは実戦投入の機会が殆ど無いので分からないが、同じ様な特性なのかもしれない。


すべてが珍局(笑

フォーンで限界ギリギリの信号が問題になると言うのは、考えてみると11m特有のことかもしれない。つまり、みなそのことが好きだから11mにはまっているのである。アマチュアのように、59(ファイブナイン)が当たり前の交信の世界にあって、31だとか41だとか、限界ギリギリの信号は、よほどの珍局でない限り相手にする気になれないのが普通だからだ。なぜなら、いつ交信が途切れるか分からないからで、そんな局とあえて交信する必要はないからである。しかし、11m、AM波QRPの場合は、51とかは当たり前、このいつ途切れるか分からないすれすれのところで交信するところに価値があるわけであって、だからこそつながった時の喜びがひとしおなのである。

この天覚山は、大高山から子の権現、伊豆ヶ岳方面へと通じる山脈のいわば東端に位置しており、世間では「飯能アルプス」などと呼ばれているらしい。(このコースの概要はサイタマKM117局さんの「山岳移動の香り」に詳しい)適度な標高の丘陵なので、トレイルランのトレーニングにも向いているようで、その手の格好のランナーが時々現れては過ぎ去ってゆく。

『今日は帰りに茶屋とか寄れませんねぇ~』、・・・そう、ねりまTN39局さんがQSOで言われた通り、東吾野駅(西武秩父線)とこの天覚山の間には茶店もコーヒー店もケーキ屋もない(笑。運用後はそのまま電車に乗って帰らねばならないところが、このロケのデメリットかもしれない。


各局TNX!!
                                               ('15/1)

山頂から湘南方向
東吾野駅



運用データ
■運用日時・運用場所:
 
 2015年1月11日(日) 8:40~14:00
    
 埼玉県飯能市天覚山(標高445m)
  
■使用&装備リグ:
  CB : NTR-808(NEC)、ICB-87R(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ
     
■使用電源
  ・乾電池、リチウムイオン電池10.8V/1.6Ah


QSO局
21QSO TNX!!  
(敬称略)

1月11日(日)   
ねりまTN39/埼玉県日高市日和田山(DCR) M5/M5 とうきょうMG59/東京都大田区(DCR) M5/M5
ねりまTN39/埼玉県日高市日和田山 57/59+ イバラギTK657/茨城県筑波山中腹 51/51
サイタマKK007/茨城県表筑波子授け地蔵 57/56 ちばCH47/神奈川県丹沢山系蛭が岳山頂 57/56(59+/57)
サイタマAD966/東京都清瀬市M(DCR) M5/M5 カナガワTK301/神奈川県逗子市二子山(87R) 52/52
ねりまTN39/埼玉県所沢市ぶどう峠(87R) 59+/58 サイタマW101/埼玉県鴻巣市(DCR) M5/M5
サガミFJ1300/神奈川県相模原市M(DCR) M5/M5  ヨコハマAA815/神奈川県横浜市(DCR) M5/M5 
さいたまUR2/埼玉県  56/59  かまくらYH69/神奈川県清川村経ヶ岳(87R)  59/57 
ちばCH47/神奈川県丹沢山系丹沢山頂(87R)   57/56  しぶや4989/東京都瑞穂町六道山(87R)  52/53 
サイタマAC109/埼玉県吉見町(87R)  54/55  おおたY16/東京都足立区舎人公園(87R)  53/53 
ヒョウゴAB337/東京都東久留米市(87R)  53/55  さいたまBB85/栃木県佐野市三毳山(87R)  58/59 
ちばCH47/神奈川県丹沢山系丹沢山頂(DCR)  M5/M5     
*11m無印は、NTR-808によるQSO。(RSのカッコ内は87Rによる比較QSO。)



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