2013運用記 | |||
長野県伊那市・駒ケ根市 |
[高烏谷山山頂より、左から、仙丈ケ岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、右手前戸倉山(伊那富士)]
<前回のつづき>
木枯し紋次郎とS字カーブ (つづき)
11月2日(土)、杖突峠から高遠を抜けて、高烏谷山での運用に向かう前に、まずはオープニング映像の撮影ポイントに向かってみることにする。例の林道を北から南へと縦走する形だ。ここら辺りは、木々はもうすっかり色づいている。車が一台通れるほどの林道は、行き交う車も全くなくひっそりさびしい位だ。拡大したカーナビの地図とにらめっこしながら徐々に高度を上げていくと、いよいよ目的のU字カーブが近づいてくる・・・果たして、今はどうなっているのか???
・・・それはまさしく想定外の景色だった。な、な、な、な、なにも見えない!!林道を登ってくる途中から嫌な予感はしていたのだが・・・。
撮影場所であるU字カーブは、すっかり木々に覆われ、まったく視界が効かない。向こう側に見えるはずのS字はおろか、10m先を見通すのがやっとなくらいに、木々が生い茂っているのである。森林自体はある程度管理されているようなので、ジャングルのような雑多なイメージはないが、木間はほぼびっしりと埋まっている。逆に適度に管理されているがゆえ、視界が開けるような木間がないというべきか。あっちへうろうろ、こっちへうろうろ、なんとかS字があるはずの山の向こう側を樹間からカメラで狙おうとするのだが、どこをどうやっても、垣間見ることすらできない。
ん~、残念!!42年の歳月は、かくもその場所の情景を変化させるものか!
現代的なガードレール、コンクリート、そして舗装された道路といった形で、昔のイメージが覆されるであろうことぐらいは想定していたが、全くそんなことがなかった代わりに、木々がここまで成長して、景色を一変させてしまっているだろうことは、うかつだったが、全く予想していなかった。むしろ木々が成長したことで、差し込む日差しも薄くなり、開放的であったであろう昔の撮影場所を閉鎖的なイメージに作り替えることで、逆に42年前よりはるかに鄙びた、人里離れたイメージの場所に変貌させてしまったようである。つまり、42年もたてば、自然の摂理として誰しもが、自然にあふれる状態から、近代的で、人工的、都会的な方向へと自然を破壊し変化させていくだろう、と思うはずであるが、それに逆行する場所もあるのだということにはなかなか気づかないのである。
峠のS字カーブ
U字カーブの撮影ポイントの検証が済んだところで、今度はS字カーブの検証だ。U字から、S字カーブの遠景が撮影できなかったことは残念だが、撮影ポイントの木々の成長ぶりを見れば、仮に視界が開けていても、それが道であるかどうか分からない程度のものであろうことはすぐに想像がつく。その場所も木々が成長しているに違いないからである。
あの紋次郎が、とっと、とっとと下りてくるS字カーブを実際に歩いてみる。道は意外と急で、最近雨が降ったとは聞いていないが、湧水が常にチョロチョロと路面を流れている。生い茂った木々のせいで、晴れているにもかかわらず、なかなか地面まで日差しが届かない。楢?や杉の混成林になっているようで、よく見ると細めの木々ばかりで、「若い」森林であることがわかる。それにしてもわずか42年でここまで木々が成長し、景色を変えられるものだろうか。実に恐ろしい世界だ。
S字を上から下へ、そして下から上へ何度か行ったり来たりしてみる。S字の曲がり角から下を見ると、見事に曲がりくねった山道が、こちらの足の方へ折り返している。まさしく、あのオープニング映像のS字だ。そう、ちょうど42年前、「紋次郎」はここを足早にターンしていたはずだ。時間は11時54分過ぎ、ようやく地面に届くところに自分の影を見つけ出して、プロトレックで磁方位を計測してみると26°ほどだ。影の角度がもっと深いように見える動画映像の時間は、やはりもう少し後の時間のようである。当然だが、ここから撮影場所方向をみても、木々で遮断されてほとんど何も見えない。あの、オープニング映像の開けた視界の峠は、完全な森林へと変化していた。
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左 :峠を上から下りてくる。S字の最初の屈曲点が近づいてくる。 中 :第一屈曲点より第二屈曲点。こちらに道が戻ってくるのがよくわかる。 右 :第二屈曲点より、第一屈曲点。 |
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左 :第一屈曲点。 中 :2013年11月2日、11:54分。自分の影ができる方向は、磁方位26°(プロトレック簡易計測)だった。本来は7°方向のはずなので、真方位とのずれを考慮しても、誤差大きすぎか?笑) 右 :1971年11月10日13:40分、S字から見た太陽位置。215.5°方向、すなわち影は35.5°方向にできる。(Vは金星、Jは木星の位置) |
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S字カーブの峠の景色を遠くから撮影しようという企みは、見事に砕け散った(笑。それにしてもこの林道は一日にせいぜい車が10台も通ればよいような道だが、42年前によくこんな場所を見つけてきたものである。それとも42年前の方が、まだ人通りがあったというのだろうか?
翌日、再びこのS字カーブと、オープニングの撮影場所であったU字カーブを訪れてみるが、結局視界の開けた場所を最後の最後まで見出すことができなかった。こうなると、次なる疑問は、オープニング映像のまさしく冒頭シーン、AA818局のカードにもなっているあの場所がどこなのか、ということだ。ただし、これもネットには頼らずにしばらくは自分で探求してみることにしよう(笑。
11月3日(日) OAD本番
[11月3日、朝の高烏谷山山頂]
いよいよOAD本番だが、この二日間はどちらかというと、オープニング映像の撮影場所の確認が主眼である。今日もU字やS字カーブの検証を行うため、午前中は高烏谷山での運用だ。
ここは本当に気持ちの良い場所で、眼前に、抱きしめられるほどに、中央アルプスが左右に広がる光景は、まさしく大パノラマと呼ぶのにふさわしい。昨日ほどにノイズレベルは高くはないものの、それでもこのシーズンにしては、海外ノイズがやかましい。今日もモガモガとSSBやら、ロシア語やらが聞こえているようだ。鹿嶺高原にはすでに、ナガノDF73局が移動されており、DCRでお声掛けをいただく。予定通り、ナガノAA601局と合同運用の体制に入られているようである。
下伊那郡阿智村の極楽峠には、ナガノAF45局が移動されており、こちらもDCRでお声掛けをいただく。AF45局とつながるのは、ゴールデンウイークの一斉OAD以来だろうか。今日のメインは特小のレピーター狙いのようで、どうやら御嶽レピーターもキャッチできているようである。
午後は、茅野寄りにロケを変更して、入笠牧場からのオンエアだ。入笠牧場は入笠山の南麓に広がる牧場だが、特段無線のロケがよい場所ではない。ただし標高が1700-1800mあるのでそこそこ飛んでいくようだ。北から東には山肌にさえぎられるのだが、横手山のさらしな801局や、富士山との連結レピーター実験をされている木曽御嶽のとうきょうMF33局などとつながる。そして再び、待望のナガノNP152局とつながる。今日は時間を見つけて、伊那リまで移動されてきたようだ。11mおよび、DCRで、NP152局にこの二日間の顛末を報告する。狙っていた映像は撮れなかったが、やはり来てみて良かったと・・・。
木枯し紋次郎の原作『女郎蜘蛛が泥に這う』では、伊那谷を通る三州街道から甲州街道へ抜ける、高遠から杖突峠、茅野・金沢へと通ずる、ここら辺の街道筋が舞台になっている。原作の中では、舞台となる場所について笹沢佐保氏はいつも細かい地名を記しており、ここでも「四日市場」や「御堂垣外」(みどうがいと)といった地名が出てくる。小説を思い起こしつつ、そこらあたりの景色を楽しみながら、二日間の運用?を終えた。
各局thanks!
('13/11)
運用データ |
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■運用日時・運用場所: 2013年11月2日(土) 12:55~16:50、11月3日(日)9:30~11:35 長野県伊那市・駒ケ根市高烏谷山山頂(標高1331m) 2013年11月3日(日) 13:40~15:35 長野県伊那市入笠牧場周辺 ■使用&装備リグ: CB: ICB-707(SONY)、ICB-87R(SONY) DCR351(デジタル簡易無線): IC-DPR5 (ICOM)+1/4λホイップ (第一電波) ■使用電源(予備含む) ・Li-ion: 7.4V/6.8Ah×1(DCR)、11.1V/2.6Ah×1 (707) 11.1V/0.9Ah×1 (87R) |
11月2日(土) | |||
ナガノAA601/長野県霧ヶ峰高原 | 53/53 | ナガノAA601/長野県霧ヶ峰高原(DCR) | M5/M5 |
ナガノDF73/長野県駒ケ根市(DCR) | M5/M5 | ナガノDF73/長野県駒ケ根市 | 59+/59+ |
ナガノNP152/長野県箕輪・辰野M(DCR) | M5/M5 | ||
11月3日(日) | |||
ナガノDF73/長野県伊那市鹿嶺高原(DCR) | M5/M5 | ながのAF45/長野県下伊那郡極楽峠(DCR) | M5/M5 |
ナガノDF73/長野県伊那市鹿嶺高原 | 59+/59 | さらしな801/長野県横手山(DCR) | M5/M5 |
とうきょうMF33/長野県王滝村御嶽山頂 | 51/53 | ナガノNP152/長野県伊那市伊那スキーリゾート | 57/53 |
ナガノNP152/長野県伊那市伊那スキーリゾート(DCR) | M5/M5 | ヨコハマFUR98/長野県霧ヶ峰高原 | 59/57 |
ナガノTM285/長野県高ボッチ高原(DCR) | M5/M5 |